劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
第1話
side三人称
「昔、超常的異能…すなわち”個性”が人類にもたらされたのはなぜか…初めの異能者『光る赤子』が生まれたのはなぜか…」
薄暗く広いその空間-神殿のような場所。そこにローブを羽織り、顔全体を覆う灰色のマスクをした無数の人達がいた。その人達は高い檀上に立ち、語る一人の青い肌の男性―フレクト・ターンを見る。フレクトはその視線を一身に浴びながら、訥々と、けれど情感を煽るように語る。
「全ては悲劇である。“個性”は人類にとっての福音ではなく、終末への始まりだったのだ。この『個性終末論』に記されている…世代を経るにつれ、“個性”は混ざり深化し…やがて誰にも、その力をコントロールできなくなる…」
フレクトの声が熱を帯びていく。
「人類の八割が“個性”という病に冒された時代…残された二割の純粋な人類も“個性”保持者と交わり、その数を減らしていく。絶滅は目の前に迫っているのだ。」
純粋さは、狂気と紙一重…
「我々、『ヒューマライズ』は、今こそ立ち上がらなければならない。たとえ、大地に血に染めてでも…」
フレクトは本を胸に抱く。自身が守るべき未来―人類を救う救済主がヒューマライズであると…その意志を魅せる。ヒューマライズのシンボルを頭上に掲げたフレクトが大きく腕を振り上げ、声を張る。
「人類の救済を!!」
『人類の救済を!人類の救済を!-』
熱狂するローブを纏った者たちの歓声が上がる。熱狂が膨らんでいく空間はまるで破裂をまっているようだ。その期待に応えるべく、フレクトは機器を掲げる。
「では…始めよう…」
静かに、祈りの言葉のように宣言する。掲げた機器の先端を、スイッチの突起に突き刺し、起動。地下深くに眠る機械が動き始める。
「うわぁああああああああああああああ!!!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「ああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
とある国の都市一角にあるマンホールの蓋が震えるように揺れた直後、勢いよくガスによって吹き飛ばされ、そこかしこで一斉に噴出し、瞬く間に広範囲に広がった。そして、そのガスが空気中に充満すると、逃げ惑うに人々に変化を起こす。
―腕に羽を生やした者は、羽が急激に巨大化し…
―液体化する“個性”の者は、自身の体を保てなくなり…
―亀の“個性”の者は全身が亀化し…
―水を出す“個性”の者は周囲の者を巻き込み、建物を破壊させ…
―ビームの“個性”のヒーローは全身から過剰放出してしまい、ビル群を崩壊させていく…
整備された都市は、一瞬にして瓦礫の街へと変わり果てた。
「あ、ああ…ああああ……」
自分の意志はなく、ただ暴走し続ける“個性”保持者たちのパニックの中、変化なくただ呆然としている者がいた。その者に、優しい声がかけられる。
「あなたは、“個性”を持ってないのですね?おめでとうございます。あなたは救われたのです。」
白いローブとマスクをした女が、マスクを外し、純粋な瞳で微笑んだ。地獄のような光景に目もくれることなく、“無個性”であるその者に尊ぶ女の視線に、言い知れない恐怖を覚えた。
全てを操っているフレクトが、素晴らしい始まりの光景に愉悦した。
side立希
多数の被害者を出したガスによるテロは世界に衝撃を与えた。事件からまもなく犯行声明を出したヒューマライズ。世界二六ヶ所に施設を有している大きな団体。その団員は世界中にいる。再び無差別テロ悲劇を繰り返してはならないと、アメリカのニューヨークに統括司令部を設置し、世界規模の作戦が行われることになった。
「…ふぅー…「いつまで座ってんの?そろそろ時間」ん。大丈夫。」
自分…と姉は今、軍用輸送ヘリで、夜のイギリスを飛行している。軽く精神統一をしてから立ち上がり、ヘリ内のモニターを見る。モニターには今回の作戦の概要を示した映像と共に司令部長官の声が流れている。
『先日の無差別テロの犯行声明を出したのは、『ヒューマライズ』。人類救済を標榜する指導者、フレクト・ターンによって設立された思想団体である。テロに使用された装置は、個性因子誘発物質、『イディオ・トリガー』を強化したものだと推測される。以後、この装置を『トリガー・ボム』と呼称する。』
このアナウンスは自分らのヘリだけでなく、世界中で作戦に向かうチームに流されている。
『我々、選抜ヒーロー・チームの任務は、世界二六ヶ所にあるヒューマライズの施設を一斉捜索。団員達を拘束したのち、一刻も早く保管されているトリガー・ボムを確実に回収することである。』
選抜ヒーロー・チーム。そのチームメンバーには、自分ら雄英高校1-A組の大半が参加している。日本、エジプト、フランス、アメリカ、オセオン国、そして…自分らがいるイギリスだ。作戦の概要説明が終わると、最後にオールマイトから鼓舞が来る。
『ヒーロー諸君、この作戦の成否は君達の双肩にかかっている。テロの恐怖に怯える人々の、笑顔を取り戻そう。』
その声色には平和を願い、数々の修羅場を笑顔で乗り越えてきた力強さがあった。同じヒーローである。自分ら、そしてプロヒーロー達を十分に士気を高めてくれる。
「…さぁ、メイジ、マギ、仕事(ヒーロー)の時間だ。」
「「はい!」」
自分らの担当のゴールドさんが、自分と姉の肩を叩いて来る。その期待に応えるべく、自分と姉は動く。
『各ヒーローチーム…スタートミッション!!』
その声を合図に、作戦が開始された。イギリス上空のヘリのハッチが開き、自分らは勢いよく飛び出す。
side三人称
「我々のチームはトリガー・ボム回収チームの援護および団員達の拘束だ!」
「「了解!!」」
飛行の“個性”を持つヒーローに乗りながら、ゴールドは立香と立希に指示を出す。二人は急降下しながら激しい風圧のなかバランスを取りつつ、眼下に見えた大きな建物に注視する。一見、教会に類似する建物だが、その建物こそ、ヒューマライズの支部だ。
「姉、途中までお願い!『投影:平景清』!!」
―景清が参る―
「分かってる。『降霊:謎の蘭丸X』。」
―ランマニウム粒子、フルチャーージ!―
地面が近づく時、二人は英霊と憑依。立希は狐面、烏帽子をかぶり、腰には二本の長刀を装備。立香は眼帯に軍帽。腰に大きな青いリボンを付け、背にあった巨大な刀を抜き、そのまま乗って飛行する。
「そらっ、行ってこい!!」
「焔よ、此処に!」
刀に乗って飛行を始める立香は空中で立希の手を掴み、ある程度の高さまで減速してから手を離す。立希は地面に刀を突き刺すと同時に紫の爆炎を放ち着地し、走る。立香はそのまま低滑空で突き進む。
「と、止まれぇ!!」
「許可なく立ち入りするものは…」
「身柄確保!!」
入口にいた団員達が制止ようと動くが、それよりも早く、ヒーロー達が“個性”を発動させ、各々の方法で団員達を伏せさせる。入口を突破し、先に動くチームはトリガー・ボムを探索、回収するチームだ。
「ここで“個性”を使うなど…っ!」
「我らを冒涜するのと同義!!」
団員達が黙って見ているはずもなく、団員達は武装し、抵抗し始める。機関銃を先導するヒーロー達に向ける。
「斬!」
「ランマニウム粒子、フルバースト!」
刹那、ヒーロー達を援護するべく動いた立希と立香。立希は一足で跳躍し、二刀からの斬撃、立香は腰に付いてた短刀-不動行光を無限分離させ、投擲。
『ぐわあああああ!?!?!?』
団員達は斬撃で吹き飛び、飛んでくる短刀に翻弄される。
「今です!!」
「助かる!!」
団員達を気絶させ、その隙に大勢のヒーロー達が入り目的であるトリガー・ボムを回収…するはずだった。
side立香
「どこにも無い?」
講堂。そこで抵抗してきた団員達捕らえて、集え終えた私達。けど肝心なトリガー・ボムは見つからなかった。近くにいるゴールドさんが通信機で応答している。
「トリガー・ボムは何処にある!?」
「し、知ら…ない…そもそも…何だ…それは…?」
他のチームのヒーロー達は捕らえた団員達を“個性”を使って尋問するが、分からずじまい…
「姉…じゃなかった。メイジ。どうやら他の所もトリガー・ボムが無いらしいよ。それと指導者のフレクトもいないって。」
「(突入する事が知られていた?内通者がいる…?)相手の動きが分からない…」
今ある情報で思考するが目途が立たない…
「…許さぬ……許さぬ許さぬ許さぬ!!」
そんな時、捕らえた団員の一人が吠えた。その声は怒りで満ちていた
「我らヒューマライズは人類の救済者!!英雄をこのような姿にして……許さぬぅううう!!!」
『人類に救済を!』
『なっ!?』
その場にいた私達、ヒーロー達は驚く。団員達を縛っていたロープが突如斬れ落ち、団員達が解放された。
「(誰かがナイフを隠し持ってた!?)」
一瞬、光る何かが見え、私はそう考える。
「再度拘束しろ!!」
ヒーロー達が動く。前に、団員達が懐から管のような物を取り出し、ピンを抜いた。
『人類に救済を!!』
その言葉を言い、地面に投げつけると、深緑の煙が舞い始める。
「「っ」」
私、そして隣にいた立希は煙が出たと同時に動く。まだ英霊との憑依を解いてなくて良かった。直ぐに私は不動行光を無限分離させ、投擲。ゴールドさん含め、講堂にいたプロヒーロー達の衣類に突き刺し、後方に下がらせる。立希は長刀を振るい、その風圧で煙が来ないよう吹き飛ばす。
「マギ!メイジ!」
ゴールドさんが私達を呼ぶ。直ぐに私達も煙から逃げようとしたが…もう遅い。
「ちょっと…煙の量が多いっ…」
紫の焔を放ち、守ろうとする立希だが、予想以上に煙の量が多く…私達はその煙に覆われ、吸ってしまう。
「くくく…二人だけ…だがいい…少しでも旧人類どもを取り除けば何も問題ない…」
最初に怒り散らした団員の笑い声が聞こえる。私達は咄嗟に口元を覆うけど…
「「~~~~~~っっっ」」
煙―個性因子誘発物質の効果が効き始めた。ドクドクと鼓動が速くなる。そして体も熱くなる。体内にある多くの個性―魔力が噴き出し始める。立希の方を見れば私と同じように、膝を付いて、顔中に魔力回路を浮き出していた。そして―
「「!!!!!」」
私達の個性―『英霊召喚』が暴走する…
side三人称
「くそっ…マギ!メイジ!」
「緊急事態!団員達が隠し持っていたイディオ・トリガーを暴発!ヒーロー2名がそれを浴びてしまった!」
講堂から脱したヒーロー達。立香と立希のおかげで無事だったが、肝心の二人に対し、ヒーロー達は動きたいが…今だ煙が舞い、講堂に入る事が出来なかった。そんな時、講堂から地響き、銃声音が鳴り響く。
「二人が危ない…っ!」
「どけ!俺が飛ばす!!」
プロヒーローの一人が肩からプロペラを生やす“個性”を使い、回転。その突風で煙を掻き消す。
「突入!!」
二人を助け、団員達を無力化するため、講堂に突入するプロヒーロー。
『!』
そこで見たものは…
「がっ……」
「…オイ、テメー…オレのマスターに何しようとしてんだ?あぁ!?!?」
団員の一人の首を掴み、持ち上げている。甲冑姿の人物。
「この程度か…つまらん…」
双銃にて既に倒れた団員に銃口を向け終えていた褐色の男性。
「ふむ…いっそ、亡き者にしてやろうか?」
黒い鎖で団員達を縛り上げている女性。
「これ、流石にそれはやりすぎじゃぞ?マスターはそんな事は望んでおらん。」
杖を振るい、その周囲には紫の液体を滴らせている少女。
「ちょ、何コレ、どうゆう状況よ!!しっかりしなさいよ、マスター!」
「ありゃ…こりゃ完全に気絶しちゃってるねー…」
十字架杖を持った女性と、白いフード付きローブをまとった男性が気絶している立香と立希の容態を見る…二人の周りには二人を守るように16人がいた。どうやらこの人物たちが団員達を蹂躙したと理解するプロヒーロー達。
「!…皆さん。どうやら援軍が来たようですよ。」
一人が、ヒーロー達に近づく。ヒーロー達は一瞬たじろぐが、一人が前にでる。
「君達は?」
「我々は…マスター、藤丸立希。並びに、藤丸立香によって呼ばれた英霊達…そして、その一人である私…ジャンヌ・ダルク。ひとまず、息をつきます。先はまだまだ長いですけどね」
その女性―ジャンヌ・ダルクの言葉に、一瞬の静寂。からの…
『ええええええええええええ!?!?!?!?』
驚愕。かくして、立香と立希の個性が暴走し、16人の英霊達が強制召喚されたのだった…
一方、そんな世界規模の作戦が行われている中、オセオン国の深い森の中。ヒューマライズの施設から逃げ出すように走り抜ける者―アランという男性は必至に駆け抜けていた。その胸には布の包まれている何かが抱えられている。
「…届けなくては…このままでは…世界が滅亡してしまう…!」
まるで自分を鼓舞するように言葉がこぼれた。アランは世界の運命を握る。それを放すまいと強く抱きしめた。