劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order   作:小野屋陽一

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第3話

side三人称

突然驚いたような悲鳴が聞こえたロディ。

「なんだ?」

声が聞こえた方を覗くと、向こうから風を纏った敵がやって来た。

「頼む!」

「!」

敵はロディの存在に気付くと、すれ違いざまにケースを渡される。ロディは驚き、少し身を引くと、氷結が這う。

「(やべ)」

勢いよく通り過ぎた轟―ヒーローに状況を把握したロディは直ぐに駆ける。

 

 

side立希

「緑谷!立希!ケースがねぇ!」

「そっちで見なかった!?」

焦凍君と姉が追いかけていた敵を捕まえて終わりかと思ったら、肝心の宝石が入ったケースが無い。直ぐに周りを見回す

「投げ捨てた!?「緑谷君!」!」

敵が持っていたケースと同じケースを持って走る少年を見つけた。緑谷君にそれを教える

「仲間がいる!」

「追いかける!」

それだけ言って、自分らは直ぐに追いかける。裏路地から大通りに出ると、見失ってしまった。人も車も多すぎる…

「何処に…「あそこだ!」本当だ!いた!」

車のクラクションが響いた。見ると赤信号で道路を横断しているケースを持った少年だった。道路を渡り、向こう側の路地へと入っていく。

「緑谷君は下から!自分は上から!挟み込んで捕らえよう!」

「分かった!」

自分は緑谷君に簡単な作戦を立て、動く。紫の翼を動かし上昇。緑谷君は『フルカウル』で噴水を足場に横断歩道を飛び越え、自分らは路地に向かう。

「彼は…いた…って動き速…」

少年を探すともう路地にいなく、アパートの非常階段を駆け上がっていた。けど問題無い。既に緑谷君も彼のことを見つけ、手すりを足場に跳躍して、接近している。そのタイミングで自分も滑空して押さえ込めば…!

「Pi~!」

「ンゴッ!?~~~っ!?」

「緑谷君!?」

その時、少年の髪の中からピンク色の鳥が出て、緑谷君の顔面に直撃。あろうことか、屁をかます。緑谷君の動きが止まり落下し始める。

「ちょ、大丈夫!?」

「だ、ダイジョウブ…」

直ぐに方向転換し、落下する緑谷君の両肩を掴んで落下を防ぎ着地。鼻を抑えて、若干涙目の緑谷君だったが大丈夫だった。自分らは見上げると彼は既に隣のアパートの屋上にいる所だった。

「もうあんなとこまで…っ」

「逃がさない…っ」

ちょっとコケにされた感があって、ムキになる。何が何でも逃がさない…直ぐに自分は飛翔し、緑谷君と共に屋上へ行く。彼は…もう隣のビルに飛び移っていた。

「すご…パルクールって奴か?」

高い身体能力に感心しながら、自分らは追いかける。それに気付いたあの鳥が少年に教えてるのが見えた。

「しつけーな」

そんな言葉が彼から聞こえるや否や、彼はケースを投げ、少し距離のあるビルへと飛び移り、そして落ちて来たケースを受け取って駆け出す。

「『黒鞭』!」

「ルビー!最低出力!フォイア!」

緑谷君は『黒鞭』を伸ばし、自分は建物が壊れない威力の『魔力弾』を撃ち飛ばして動きを止める…が、彼はそれをすんなり躱し、逃げ続ける。

「うっそぉ…」

「それなら…」

自分達の追いかけっこはまだ終わらない…

 

 

side三人称

高速道路を走る車。運転しているのはアラン。どこかへ向かっていた。助手席には大事に持ってきた布に包まれた何かが置かれている。だがその後ろから、他の車を強引に追い抜いて一台のバイクが近づいてきた。

「!」

バックミラーでその異変に気付いたアランの見ている前で、バイクの乗り手が弓を構え、射ってきた。

「ぐっ!!」

煌めいた矢が瞬く間にアランが乗っていた車の窓を突き破る。咄嗟にアランは車を動かし回避するが頬を掠め、血しぶきを散らす。大きく車体がグラつくが、必死に立て直し、スピードを上げ逃げる。

「…………」

それを追うバイクに乗っている女性-ベロスは“個性”で左手を『弓』に変え、背負っていた矢をつがえ、アランが乗っている車に再度射る。放たれる三本の矢。そのうち一本が軌道を変え、タイヤに突き刺さる。

「!!」

バランスを失い曲がりきれずフェンスに激突する車。その衝撃でひしゃげ、割れた窓から布に包まれた何か―『ケース』が投げられた賽のように飛び出し、下の一般道路へと落ちる…

 

 

sideロディ

「へっ、この俺を捕まえようなんて100万年早いっつーの」

ようやくヒーローから逃げ切る事が出来た俺。路地裏は俺の庭だ。何処に何があるか知っている。どっかの誰かが飼っている犬。配線がやたら多い場所。あの時間帯には多くの服を干している。流石ヒーロー、市民を困らせない事はしないねぇ。律儀に落ちる服を回収するなんて…その間に俺はトンずらするだけさ。

「Pi~!」

ピノも俺に同意しているように鳴いている。後はこのケースを目的地、チャイナレストランに届けるだけ…

「!?」

そう、余裕だなと考えていた時だ。頭上にあった高速道路から急にフェンスや瓦礫が落ちてきやがった。

「どわああ!ちょ!待って!ギャア!」

 

 

side立希

「くそぅ…何処行った…?」

「まだそう遠くに行ってないはず…」

少年を完全に見失ってしまう自分と緑谷君。この辺りは彼の独壇場だった。彼を見失った所を中心に少しずつ捜索範囲を広くする。今は緑谷君を掴んで上空から二人で探している。すると、近くでもの凄い衝撃音が聞こえた。

「事故?「行ってみよう!」うん!」

事故現場に直ぐに向かうと、丁度そこに氷結で移動している焦凍君と飛翔して移動している姉と出会う。

「緑谷!あっちは俺達に任せろ!」

「さっさと追いかけて!」

事故の方は姉たちが向かう。

「お願い!」

「分かってる!」

姉たちに託した自分らは再び上空から少年を探す。

 

 

side三人称

「PiPiPi!」

「だ、大丈夫…!」

ロディは大慌てで瓦礫を避けた。何とか体を起こした時、手に何も持ってない事をに気付く。さっきの回避でケースを落としてしまったのだった。直ぐに周囲を探すと、そう遠くない所に自身が運んでいたケースを見つける。

「あぶねー…」

ホッとしたロディはケースを拾い、その場を離れる。

「時間に遅れちまう…「「見つけた!!」」げ!」

近くの地下鉄の地上出入口に向かう時だった。ロディは追いかけて来た二人のヒーロー…緑谷と立希を見つけてしまう。

「待て!」

「そのケースを置いてけ!」

「やなこった!」

ロディは直ぐに地下鉄へと走る。

「待って、待って、待って」

出発直前の電車に飛び乗ったロディ。危機一髪のハプニングとしつこいヒーロー達から逃れたとホッと息を吐いた。

「…ろくでもない日だな…あ~~せっかくの一張羅が台無しじゃねーか。それもこれも、全部あのヒーロー達のせい…」

「Pi~」

ふと、ロディは気付いたように顔を上げピノに言った。

「あんなヒーロー達、ここらの管轄にいたっけ?」

「Pi?」

考え込むピノにロディは肩をすくめる

「ま、いっか。もう会う事もねー「ひぃいい~!!」し?」

そんな時、近くにいた車掌の焦った叫び声にロディは振り返る。するとそこには…

「~~~~~~!!!!」

外から運転席の窓に張り付いている緑谷がいた。線路を走って追いかけ、電車にしがみついていたのだ。ガラスに顔を押し付け、まるでホラーのようだ。更に…

「ウォオオオオオオ!!!」

「マジかよ!?」

緑谷だけでなく、立希も電車を追いかけていた。それも『馬に乗って』だ。

「ヒヒーン!!」

「ハイよー!風の様に走れ!ラムレェーイ!」

『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』から『アルトリア・ペンドラゴン・ランサー・オルタ』に憑依を変えた立希は、飛翔移動より速度と加速のある黒馬―『ラムレイ』を呼び出したのだった。

「…………はぁ~~~……」

流石にこれは無理だ。と、ロディは逃げきるのをあきらめるのだった…

 

 

side立希

何とか少年に追いついた自分と緑谷君。誰もいない駅のコンコースに降りる。

「…何で追いかけてくんだよ?」

少年は自分らと顔を背けながら呟く。

「…そのケースに、盗まれた宝石があるからだ。」

「…はぁ?そんなわけないだろ。」

自分がそう言う。が、彼は意味が分からない。と言った顔でとぼけた。

「じゃあどうして逃げたの?」

すると今度は緑谷君が彼の正面に立ち、訊く。

「…仕事で急いでたんだよ。」

少年は顔を反対に背けながら、言う。

「何の仕事?」

再度、緑谷君は彼の正面に回り込んで訊く。

「商談だよ。商談。こう見えてもやり手の営業マンなんだよ。仕事の邪魔しないでくれるかな?」

彼はわざとらしくスーツとケースをアピールし、歩きだそうとした。

「やり手?失礼だけど、そうには見えない。そんな継ぎ接ぎだらけの服で商談?ビジネスマンならもっと身だしなみを意識している。更に言えば、貴方は横断歩道を無視。自身を軽視している。そんな人がやり手の営業マンだと言われても、肯定出来ない。」

逃がすわけにはいかない。自分は彼の肩を掴み、嘘だと主張する。

「…俺の一張羅に茶々入れないでくれる?次から歩道ある時は気を付けっからさぁ…マジで急いでるの。」

自分の手を払いのけ、歩こうとする。

「ケースの中身、見せてもらえないかな?」

緑谷君が動いた。

「…いくらくれる?」

「へ?」

変わらぬ笑みで振り返った彼に緑谷君はぽかんとする。

「見たいなら金払うの、当然だろ」

「(んな馬鹿な…)」

「中身を確かめるだけだから」

内心イラっとする。あきらめずに近づく緑谷君。彼はゆっくりと振り返る。

「あんたら、この国のヒーローじゃないよな?よその国で勝手にヒーロー活動していいわけ?」

わざとらしく訊いてくる。

「…確かに、自分らはこの国のヒーローじゃない。けどちゃんと許可は取っている。」

「(藤丸君!?)」

ブラフ。一瞬ハッとなる緑谷君を彼に見せないよう、自分は割り込むように彼と緑谷君の間に入って言う。

「だとしてもさぁ~俺を逮捕する権限なんてないだろぉ~命令しないでくれるかな?それとも、一方的に追いかけられて尋問されたって警察に通報するぅ~?しちゃおっかなぁ~?」

…ブラフだと見抜かれてる感じだ…表情に出さないようにするのがやっと…こういう交渉とか話術は姉の方が得意なんだよ……冷や汗が喉を伝う。緑谷君にいたっては困惑してるし…

「わかってもらえて嬉しいよ。そんなにヒーロー活動したけりゃ自分の国でやりゃあいい。そんじゃ♪」

自分らを言い負かした彼は満足げにウインクして歩きだす。

「待って」

が、それでも緑谷君は彼の腕を捕まえ、止める。

「…まだ何か?」

「ケースの中身を見るだけだから。」

正義を貫こうとする緑谷君に、少年もイラつき始めている。

「見たけりゃ金払え」

「払うから見せて」

「いくら?」

こうなるともう実力行使に移るしかない…自分も彼の腕を捕まえ、彼を見る。睨まれても自分らは一向にひかない態度を取る。

「10万ユール!」

「高過ぎ―「いくらでも払う。」…」

CDFの経費でいくらでも払ってやる。

「…やっぱダメだね!!」

急に交渉を止める少年。これは確定だ。自分と緑谷君はケースを引っ張る。

「ちょっとだけ!」

「やっぱり貴方か!」

「いいかげんにぃ!!」

お互いケースを引っ張り合う。

「Pi~!」

「「!」」

そんな時、またピンク色の鳥が来た。また屁をかまされると思い、自分らは思わずのけぞる。

「「「あ!」」」

だが、その拍子で手からケースが飛んでしまった。地面に叩きつけられ転がるケースに自分らは急いで駆け寄る。

「この!」

「どけ!」

「嫌だ!」

もみくちゃになりながらケースにたどり着く。落ちた拍子でケースが開いていた。その中身は…

「「「-は?」」」

書類と本だけだった。宝石は…ひとつも入って無かった。

「「「え?」」」

これには呆然となる。何故か少年もだ。

「「…宝石は?」」

自分と緑谷君は気まずそうに彼を見た。

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