劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
side立香
「ごくろうさまです」
私と焦凍君は事故現場に駆け付け、警官に事務手続きを済ませた所だった。運転手は意識不明。既に救急車で運ばれている。炎上していた車を焦凍君が素早く『氷結』で消化しなければ、命を落としていたかもしれなかった。
「…ん?」
ふと、その車を見たとき、気になるものを見つけた。
「焦凍君。」
「どうした?」
私は焦凍君を呼び、見つけた所を指さす。
「コレ…」
「これは……」
その車体には、いくつかの小さなひし形の穴が空いていた。
side三人称
「-クソ…ッ」
事故現場から直ぐ近くの路地裏。そこでベロスはケースの中身を見て、苛立ち、近くのごみ箱を蹴り飛ばす。ケースの中身は『宝石』だった。そして思い出す。先の事故にて、ロディが持ったケースこそ、ベロスが回収するケースだった事に…
「……!」
ベロスは携帯電話を取り出し、連絡する。通信先はヒューマライズのフレクトだ。
『…そうか、分かった…こちらでも手を打っておく…追跡を続けよ』
「ありがとうございます。」
先ほどの怒りは消え、打って変わった神妙な様子なベロス。
『忘れるな。ベロス。病魔に冒された者が唯一行える贖罪は…純粋なる人類を救済することだけだということを…』
「わかっております」
敬虔な態度で胸に手を置き忠誠を誓うベロスは、通信を終えると直ぐに行動を起こす。目標は―ロディだ。
side立希
「「本当~っにすみませんでしたぁぁっっ!!!!」」
駅。ケースの中身が違く、完全に勘違いした自分と緑谷君は少年に土下座して平謝りする。
「すっげぇ、これがジャパニーズドゲザ……!!」
周囲の目がすごいけど、これは謝るしかない。圧倒的土下座をする。
「っ、まぁ…疑いが晴れて良かった。なんてゆーの、ヒーローだって間違いの一つ二つしちゃうこともあるっしょ…」
少年は自分らの土下座に引きつった笑みで応える。
「(けど肝心の宝石は何処!?どこかですり替えられた!?)」
自分は土下座しながら宝石が消えた理由を考える…ふと、少年を見ると…何故か少年は内股になって足をガクガクと震えさせていた。心なしか顔が青いように見える…
「…?」
「汗すごいよ?大丈夫?」
緑谷君もどうやら少年の異変に気付いた。
「じゃ、じゃあ、時間無いから俺はこれで…」
そう言って少年はケースを閉じ、内股ガクガク早足で地上へと向かった。少年の姿が見えなくなり、自分と緑谷君は土下座を止めて、立ち上がる。
「…どうしたんだろ?あの少年…疑いが晴れた割には、なんか元気なかったような…」
「…何かあったのかもしれない…嫌な予感がする…行こう!」
緑谷君が少年が行った方に向かう。
「え!?ああもう…待ってよ!」
自分も直ぐに緑谷君の後を追う。
side三人称
「(まずい…早くあの場所に戻んねーと…でも、ケースあるか?誰かに拾われて中身見られたら確実にネコババされっだろ。相手は敵だ。無くしましたじゃすまねーぞ…どうすんだ?どうすんだ、俺~!!)」
ロディは内心焦りだす。心当たりはあった。あの事故の時、振って来た瓦礫を避けた時ケースを手放した。そして直ぐ近くにあったケースを中身を確認しないで持ってきてしまった事に…
「(完全に取り間違えたー……!)や、やべぇ…」
駅から出たロディは小声で呟いた時、誰かに肩をたたかれる。
「ヒィッ~!」
「あ、あの…」
「だ、大丈夫…ですか?」
敵かと思ったロディだったが、振り向いていたのは緑谷と立希だった。二人は心配そうにロディに近づく。
「体、本当に大丈夫?」
「顔が真っ青ですよ?どこか怪我をしたんじゃ…」
「ああ!?なんでもねぇよ!」
ビビってしまったのを強がりで隠し、歩き出す。
「あ、でも…」
それでも心配な緑谷と立希がロディの後を追おうとした時、遠くからサイレンの音が聞こえた。
side立希
「!?」
何重にもサイレンの音が聞こえた。その正体は大量のパトカーだった。しかも猛スピードでこちらに向かってきて、自分達を取り囲むように急停止してきた。
「(…いや、自分達じゃない…この少年が標的になってる!?)」
「…………」
驚き、青ざめている少年。そしてパトカーから大量の警官たちが銃を構え降りてくる。最前列の警官が叫んだ。
「両手を上げて、その場に伏せろ!」
「なっ!?」
銃口はしっかりと少年を狙っていた。確かに彼はさっき信号無視した。けどそれだけでこれほどの警官から狙われるような事じゃない。
「ちょっと待ってください彼は…!」
緑谷君が事情を説明しようと彼の前に出た時だ。
「お…俺…俺は何もとってねーから~!!」
パニックになった少年は逃げ出してしまう。
「止まれ!!許可は出ている。撃てっ!!」
次の瞬間、警官たちが発砲した。
「限定インクルード!バーサーカァ!」
あまりにも異様な光景に、自分は咄嗟に動く。『イリヤ』と憑依し、ルビーステッキをバーサーカーの『大剣』の変化。地面を抉り少年に銃弾が当たらないように防ぐ。
「緑谷君!」
「前、見て!歯を食いしばって!!」
「あああああああ!!」
パニックになる少年を緑谷君が抱えて跳躍。『黒鞭』を使ってその場から遠ざかる。勿論、自分も直ぐに飛翔して緑谷君と同行。後ろを見ればすぐさまパトカーが追いかけて来た。
「マジか…」
態と狭い通路を選んだのに、お構いなしにパトカーが追いかけてくる。そして狭い建物の間を抜けると、そこには道が無かった。丁度T路地で、崖端。視界の先には電車が見えた。
「あまりやりたくないけど……シュナイデン!!」
緑谷君が電車に向けて『黒鞭』を伸ばすと同時、自分は後ろを向いてルビーのステッキを振りかぶる。桃色の斬撃をパトカーに放ち、パンクさせ、車体を真横に倒す。そして後続のパトカーをせき止めし、そのまま緑谷君と少年がいる、走る電車の屋根になんとか着地した。
「どうして…いきなり発砲を…」
「もう…わけが分からない…」
突然の事に困惑する。少年を見れば、顔面蒼白になって放心状態になっていた。
「死ぬかと…思った…」
そう呟いている。自分は少年を見ながら考える。
「(警官たちはこの人を捕まえようとしていた…なぜ?…もしかして人じゃなく、彼が持っている荷物が原因?となると…ケース…)」
電車が大きな鉄橋にさしかかった時だ。視界横で、遠くの方で何か光る物が見え―
side三人称
ロディの緊張の糸がゆるみかけたその時だった。
「っ!」
「『投影:エミヤ』!『燈天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」
突如立希は『エミヤ』と憑依し、ロディと緑谷を守るように正面に立ち、紫の円型の壁を展開する。刹那、煌めく矢がその壁に直撃するのだった。
「なっ!?」
「走って!早く!!」
立希の言葉に緑谷は再びロディを抱え、電車の屋根の上を走る。複数の矢が飛んできた。
「ちっ…『干将・莫邪』!!」
飛んでくる矢に対し、立希は白と黒のナイフを投げ、矢を落とそうとする。しかし矢はナイフに当たる直前、意思があるかのように軌道を変え避け、緑谷とロディに向かっていく。
「緑谷君危ない!!」
「くっ!」
『フルカウル』で加速し、回避する。矢は電車の天井を貫通するが、再び緑谷達を追跡し始める。
「(おいかけて来た!?)」
唯の矢ではないと緑谷は気付く。鉄橋からかなり遠く離れた丘の上の塔…そこにベロスがいた。
「ちぃ…ヒーロー共が……」
彼女は『弓』で矢をつがえ、放つ。
「また来た!!」
襲いかかってくる矢に、立希は先のナイフを構え、斬り落とす。緑谷はロディを抱えたまま矢から逃げる。電車から飛び降りながら『黒鞭』で体を支える。降りた電車と入れ替わるように反対側からやってくる電車が迫るなか、先ほど回避した矢が再びロディを狙って戻ってくる。
「っ!」
それを『黒鞭』でギリギリ避けるなか、矢が頬を掠ったロディは意識を取り戻す。
「!?!?!?」
またしても危機一髪にパニック状態のロディ。
「また来るよ!!今度は3本!!」
立希の言う通り、ベロスが放った3本の矢がロディに襲い掛かってくる。回避をする緑谷だが、鉄橋と電車の間で、暴れる矢が電車の窓ガラスを破壊し、車内から悲鳴があがる。
「っ」
「(ここは巻き添えの危険が!)」
しまったと立希と緑谷が顔を歪める。
「来る!来る!矢が追っかけてくる~!!」
叫ぶロディ。自分を狙ってくる矢に、目の前を猛スピードで過ぎる電車。おまけに高所で抱えられたまま揺さぶられ続けていては、叫ぶのは必然的だ。
「ああっ!あぁ……」
限界を超えたロディが気を失う。その間にも次々と矢が襲いかかってくる。
「くっ……緑谷君!ちょっとだけ矢を引き付けて!!」
「藤丸君!?」
立希は『イリヤ』に憑依し、電車の屋根から飛び立つ。そして鉄橋の一番高い所まで急上昇。
「…あそこか!!」
そして直ぐに矢が放たれている場所を見つける。と、同時に再び『エミヤ』に憑依。飛翔が解除され、重力に沿って落下し始める。そんな中、立希は弓を呼び出す。
「『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』っ!!」
螺旋状の剣を矢の様に撃ち放つ。狙うは敵がいるであろう鉄橋から大分離れた丘の上の塔。
「…っ!」
ベロスは直ぐにその場から離れる。すると塔に『偽・螺旋剣』が着弾し、塔の一部を破壊する。
「(当たったか分からないけど…これでひとまず攻撃が止んだ!)後は…」
立希は再び『イリヤ』と憑依し、空中で静止して状況を確認。気絶し、落下しそうになったロディと、落としそうになったケースを『黒鞭』でキャッチしている緑谷。そして道路には既に大量のパトカーがやってきていた。
「(早くここから離れないと…)」
警察と戦うわけにはいかない。そう立希と緑谷は判断し、お互いアイコンタクトと取ると…そのまま眼下の川へと飛び込んだ。
「チッ………」
ベロスはそのさまを丘から確認するや否や、停めていたバイクにまたがり、次の手を打つため走り去る。