劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
side立香
「はぁ…」
英霊達の説得を終えた後、私はオセオンの事務所で情報収集をしていた。が、あまりいい情報が入らない。どのニュースも緑谷君と立希の事でいっぱい。先ほどエンデヴァーが警察本部に行ったが…あまり期待は無い。
「(こうも警察を動かせるという事は…警察本部の上層部にいる…ヒューマライズ側の人間が…けどその証拠が無い…ああもう、ホームズ召喚すれば分かるのに…出来ないのが腹立つ!!)」
今だ体内の魔術回路が不調気味な事に苛立つ…っ……一度深呼吸し、落ち着くよう、言い聞かせながら、焦凍君がいるパソコン室に向かう。
「焦凍君」
「立香。丁度良かった。例のアレ、分かったぞ」
そこに、クレアさんもいた。直ぐに私は把握する。先日の事故の時見た、車の奇妙な穴について調べてもらっていた。
「知り合いの探偵から調査結果が来たわ。君達が見たという“個性”攻撃を受けた車。乗っていた人物はヒューマライズの団員だそうよ。」
「ヒューマライズ…そいつは今どこに?」
「意識不明の重体で…病院の集中治療室にいるわ。警察の護衛付きでね。」
奇妙なつながりに驚く。何か知っているかもしれないが…警察がいるとなると、情報収集は無理だ
「(英霊に憑依して治癒…は無理か。そもそも現在、殺人犯の姉の私が動いたら余計悪化する…か…)」
「それともう一つ。事故現場近くに、盗まれた宝石がブチまかれていたそうよ…」
そういって、クレアさんがタブレットで『道路にばらまかれた宝石』の写真と『開かれたケース』の写真を見せてくる。これには私と焦凍君はハッとする。
「…まさか…」
「うん…あの二人が追っていた、強盗犯の仲間が持っていたケースが…」
点と店がつながった時、焦凍君のスマホにメールが届く。画面には…『緑谷』君からのメールだった。
「緑谷からメールです」
「なんて?」
そのメール内容は、意外なものだった。
『暗くなったら
冷蔵庫にある
イチゴを
どうぞ』
「…あいつ、俺達にイチゴを…?「焦凍君違うよ…これ、暗号文…」…!そうか」
ここで天然発言はいらないよ…メールの文章をひらがなに変え、文面の頭文字を取って読む。そこには…
「く、れ、い、ど…」
その言葉に、私達は理解する。
「クレイドって…隣国のクレイドのことよね。」
クレアさんがそう言う。これで、私達がこれからの行動が決まった。焦凍君と顔を見合わせて頷く。
「緑谷達はそこに向かっている…」
「今から行ってきます…!」
「分かったわ。エンデヴァーには報告しておく」
私達は直ぐに向かう。
「あ?」
ちょうど爆豪君が戻って来た。私と焦凍君は爆豪君の両肩、両腕を掴んで、かまわず歩き出す。
「爆豪、行くぞ」
「なんだいきなり!?「二人の場所が分かったの」ああ!?」
突然の事に吠える爆豪君だが、直ぐに私達の様子から察知する。
「クソデクとモブがらみだな?」
「ああ。だが今は…」
事務所の外に出る私達。そんな私達を遠巻きに物陰からこちらを見ている警官に気付く。気付かないふりをして歩きだすと、警官が尾行してくる。
「まずあの見張りをまくぞ」
「了解」
「命令すんじゃねぇ」
アイコンタクトと同時、直ぐに走って建物と建物の間の細い道へと入る。数人の警官達が急いで私達を追いかけて来た。私達は物陰に身をひそめる。
「クソ、何処に……うっ…」
「!?どうし…っ!?」
「こ、これ…は…………」
急に警官達が倒れる。意識があるが、体が麻痺し、動けない状態となる。
「ふぅ…まずは安心かな?」
身をひそめる前に、私は『武則天』と憑依し、杖を使って警官の足元に『毒のみずたまり』を生成。バシャバシャと走って来た警官達は案の定その毒で痺れたのだった。
「これから先、警官達が待ち伏せしてる可能性があるかもな…」
「ちっ…めんどくせぇ…」
冷静に判断する焦凍君に悪づく爆豪君。
「まずは目立たないよう戦闘衣装から私服に着替えよう。うん…」
私達も移動を開始する。
side立希
「…よし、警察はいないよ。」
周囲を確認してから、自分達はバスの屋根から降りる。あれからずっとバスの屋根に乗り、そのまま終点に到着。バス亭付近はうら寂しい田舎で、所々に店があるだけだ。
「流石にもう暗いし、どこか姿を隠せる場所で寝泊まりかな?」
「そうだね…轟君達がこのケースに隠された秘密を掴んでくれれがいいけど…」
バス停の物陰で話し合う自分と緑谷君。道中、緑谷君が自分達の移動先を教えるメールを送った…今は託すことしか出来ない。
「…なぁ、ちょっと電話してきてもいいだろ?」
ふいに、少年が公衆電話を指さし言う。たぶん大丈夫だろう。彼の情報は出てないはずだ。なるべく手短に。と緑谷君が告げ、行かせる。
「はぁー…ヒーロー活動してただけなのに指名手配されるなんて…絶対この事世界各地にいる皆に知らされてるよね…」
彼が電話してる間。自分は疲労感を見せる。ずっとひた隠しにしていたが、そろそろ魔力が枯渇してきた。今のうちに休んで少しでも回復に勤しみたい。
「うん。けど、僕たちは無実なんだ。このケースを得るための情報操作…」
「そうなんだけど……姉達が何とかしてくれるのを願うよ…うん…」
緑谷君に励まされ?自分は疲労した体を奮い立たせる。泣き言うのはここまでだ。
「……クソ…」
少年が戻って来た。電話を終えたようだが…何処か怒り気味だ。
「どうかしたの?」
「……いや、なんでもねーよ…」
心配する緑谷君だが、彼は取り繕う笑みで応えた…何かあるだろうが、深入りは止めたほうがいいかな…
「…それじゃあ、食料と寝床確保しないと…何度も悪いんだけど、またお金渡すから…」
「はいはい、わぁってるよ…」
自分らは移動を始める。
side立香
「…はぁー…やっと一息つける……」
「大分警察から巻いたな…」
緑谷君と立希に追いつく為に、戦闘衣装が入ったリュックを持ってクレイド国へ向かう山岳列車に乗り込む。少しだけ緊張が解れる。ここまでの道中、かなりの数の警察をまいた。
「あー…疲れた…」
「んなチマチマやってから疲弊すんだよ。俺の『爆破』で一気に片づけりゃ突破出来る「そんな事したら余計に見つかって大事になるでしょ…」ちっ…」
性に合わないと分かっている爆豪君
「それにまぁ、いざとなったら二人の“個性”が大いに役に立つし、温存しててよ。それまで私が対応するから…」
「いいのか…?ここまでずっと立香を頼って動いていたが…」
焦凍君の言う通り、私は『武則天』と憑依し、追いかけてくる警察に毒を盛り続けた。麻痺で動けなくしたり、幻覚で誤認させたり、とにかく足がつかないように徹底的に動いた。
「(まぁ…個性が制限されて魔力が枯渇気味だけど…)大丈夫。緑谷君たちと会うまで、二人をサポートするから…ぁ」
ガタンと、列車が急カーブした時、ちょうど疲弊で体の力が抜けてバランスが崩れる。
「っ!あぶねぇ!やっぱ無理してんじゃねぇか…」
「っ……」
倒れる…かと思ったら思いっきり焦凍君に肩を掴まれ、引き寄せられ、支えてもらった。ちょ…か、カオガチカイデス……
「ダ、ダイジョウブデス…」
「本当か…?」
不安そうに私の顔を見てくる焦凍君。更にドアップされ、鼓動が速くなる。多分顔が真っ赤だ今…
「ケッ…乳繰り合ってんじゃねぇよ「乳繰り合ッテないヨ!?」」
爆豪君が言った事に否定するが声が上ずった…今私すごく恥ずかしい…
「さっさと本題にはいれや!こちとら何も言われてねぇのに動いてんだよ!」
そう爆豪君がイラついて怒鳴ってくる。そういえば何も教えてないのにここまで来てくれたんだった…コホンと私は咳払いし、焦凍君と一緒に、私達が推理した事の真相を爆豪君に話す。
「警察がクソデク達を追いかけ回してるのも、そのせいか?」
「おそらくな。そのケース。かなり重要な物なんだろ。そうじゃなきゃここまで大規模に警察は動かねぇ」
「そして、同然、警察の中にもヒューマライズの団員がいる。かなり上層部。じゃないとここまで情報操作はできないし、何より対応が早い…」
頭の中でピースを合わせるように、冷静に考え、つなぎ合わせて答えを確信する。そしてやっぱり結論は…
「緑谷君と立希が持っている。あのケースが、今後の命運が握られている…世界のね…」
「だろうな」
「ああ…」
二人は同意する。窓を見ると、電車は猛スピードで都心を脱出していく…