劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order   作:小野屋陽一

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第8話

side三人称

クレイド国付近の街の、安いホテル。そのホテルを取り囲むように、身を潜めている警察達がいた。

「そっちはどうだ?」

「異常なし。部屋から出てきておりません。」

警察達…全員、ヒューマライズの団員達だった。彼らが監視している部屋…そこには轟、爆豪、立香がいた。カーテンで部屋の様子は分からないが、室内の明かりにより、3人の陰があった。

「地球の癌共が……奴らが眠り次第、突入。何処に向かうのか尋問。吐かないのなら、地に還すだけだ。」

「了解。」

そんな話をし、警察達は再び監視を再開した時だった。視界横に何か一瞬光る何かが映った

「ん―」

刹那、その警察の首に強い衝撃が走る。そのまま警察は気絶し、崩れ落ちる。

「なっ…誰だ!!「誰が、尋問するって?」っ!?」

仲間が倒れた事に気付いた警察。腰についていた銃を抜き、構えた瞬間、首に刀が添えられ、動けなくなる。警察は銃を落とし、両手を上げる。

「お仕事お疲れ様です。ですが…これ以上は、仕事しないほうがいいですよ…?」

「っ…緊急事態!直ぐに来てく―「お仲間さんなら、仲良く寝てます。」っ!?」

刀を持っている人物は…立香だった。『斉藤一』に憑依し、自分らが泊まっていたホテルの周囲にいる警察達全員を峰打ちで気絶させた。

「それじゃあ、おやすみなさい。」

「かっ―」

そのまま刀の峰で警察をたたっ斬り、気絶させる。

「ふぅ…さて、後は…『降霊:エミヤ・オルタ』」

立香は『斉藤一』から『エミヤ・オルタ』に憑依を変え、後方に銃を向け、発砲する。

「ガッ!」

「グっ!」

放たれた銃弾は、立香に銃を構えていた警察2人の脳天に着弾し、倒れる。

「ゴム弾だから安心して…まぁ火薬で飛ばしてるから、脳天に当たれば気絶するけど…いいよ。二人とも」

「すげぇな。」

「けっ…チマチマかったりぃなぁ…っ」

終えた立香が声を掛けると、直ぐ近くの物陰から関心した轟とつき纏ってくる警察にイラついた爆豪が現れる。ホテルにある3人の人影は、轟が『氷結』を生成し、爆豪の『爆破』と轟の『炎』で3人の形を象った氷の彫刻だった。それを窓側に配置し、警察達を惑わし、後は立香が闇夜に紛れ、瞬時に警察の意識を刈り取ったのだった。

「ここまで来るなんてな…やっぱヒューマライズの団員がいろんな所にいるんだな…」

「こんな奴ら、俺の『閃光弾』で一発で倒せんだよ…!「だから、派手に動くと余計に見つかるでしょ。」ちっ」

やはり性に合わない爆豪。

「それより…ホテルは止めよう…荷物はある。部屋はあのままで、今日は野宿するしかねぇ」

「そうだね。」

「だから命令すんじゃねぇ!」

轟の案に、急ぎ町から離れる3人だった。

 

一方、洞窟内。立希達3人は木々を集め、火を起こす。

「ふぅ…一時的だけど、危機は去った…」

「うん。治療ありがとう藤丸君。これなら直ぐに治るよ。」

「…………」

一安心する立希。傷を負ったばかりなのに、地図を見てクレイド国までのルートを考慮し始める緑谷。そして…ロディはそんな二人から目をそらし、目の前の焚火を見つめていた。

「……どうして庇ったんだよ…」

「うん?」

「?…どうしてって?」

緑谷と立希はロディを見る。ロディは二人から後ろめたくなり、息苦しくもなるも、口を開く。

「俺はケースを持ち出した…あんたらを裏切ったんだ……俺なんか庇わず、ケースを取り返して逃げりゃよかったんだ…」

「そんな事、できないよ。」

「いやいや…流石にあそこに置いてくほど、酷い自分じゃないよ。」

しかし、ロディを庇う緑谷と立希。すると、ロディは二人に背を向け、ハッと鼻で笑う。

「昼間だって敵が盗んだ宝石を運んでたんだ。あんたらヒーローが嫌いな犯罪者だぜ!?」

「「困ってる人を放っておけないよ。」」

平行線の会話。緑谷と立希の同じ発言に、ロディはわけがわからず怪訝そうな顔で振り返る。

「…それでケガしたら割に合わねぇだろ?」

「あ、それは同意する。緑谷君無茶しすぎ。救う事は良いけど、もっと自分の体を大事にしてよ。」

「ふ、藤丸君には言われたくないよ!!確かにそうだけど…救けられれば、それで充分だよ。」

自分のなかの常識が二人には通じない。ロディは理解できない緑谷と立希に少し苛立ち、頭を掻き、その場に腰を下ろす。

「よくわかんねぇ…」

わかったのは、緑谷と立希。全ての行動、発言が心かそう思って、動いていたことだけだ。だからこそ理解しがたい…そんな時、緑谷が話す。

「…ずっと憧れてたんだ。笑顔で人々を救ける…そういうヒーローになりたくて…」

緑谷の顔が幸せそうに熱を帯びる。

「オールマイトのようになりたくて…」

「オールマイトって…世界的に有名な、あの!?」

「うん。僕の師匠なんだ」

「マジかよ…」

「え、そうなの!?」

初耳のロディ…と、立希。緑谷はしまったと思い、慌てる。

「え、えと…こ、この事はクラスの皆に内緒にして!」

「えぇ…(まぁエキスポから色々一緒にいるし、内心そんな関係かなって思ってたし…)まぁ、別に良いけどさぁ…」

何となく緑谷とオールマイトに何か関係があると思っていた立希だった。

「…アンタも、そうなのか?」

「自分?うーん…まぁ、そうだね。オールマイトじゃないけど、自分にはとても心強い、英雄達がいる。そんな英雄達のようにはなりたいね。」

ロディは緑谷と立希から目をそらし、うつむく。

「…あんたらはその夢を追いかけて、ヒーローになった…ハッ、俺とは大違いだな」

「え?」

「どういう事?」

ロディは自虐的に笑い、夜空を見上げる。

「俺は先の事なんか、なんも考えられねぇ。パイロットになりたいなんて寝言、言ってる余裕もねぇ。幼い弟妹を養うだけで、いっぱいいっぱいだ。」

「………」

「ぼ、僕は…「何も言うなよ。同情なんかされたくねぇ!」………」

何か言おうとした緑谷だったが、ロディは声を荒げ遮る。そして短い沈黙後、ロディは口を開く。

「ヒーローなんて…目立ちたがり屋で、人救けとか言いながら金儲けする奴等の集まりだと思ってた。現に、俺の住む町にヒーローは来てくれねぇ。金になんないからな。」

ロディは今までを振り返る…両親がいなくなって、世間から弾かれて、一番誰かに救けてほしかった時も、ヒーローは来てくれなかった。だから、自分で何とかしようと必死だった。

「…ヒーローなんて、いない。ずっとそう思っていた………でも、あんたらみたいなヒーローもいるんだな…あんたらに救けられれば、救けられるほど、俺は何やってんのかって思うよ…俺、カッコ悪ィ……」

ロディは思う。今、隣にいるのは紛れもなく、ヒーローだと。出会った時から、緑谷と立希はずっと変わらずヒーローだった。

「僕も、カッコ悪いよ…」

ロディの本音を聞いた緑谷と立希。緑谷は傷だらけの右手を見つめながら静かに続ける。

「幼いころからヒーローになりたいって思ってたけど…お前はダメだ。ヒーローなんかになれるわけないって、ずっと言われて…」

緑谷の脳裏、爆豪が思い浮かぶ。誰より辛辣だった幼馴染。道が見えなくて辛かった日々でも、夢だけはずっと握りしめていた。

「…自分もだなぁ…全然ダメって感じ。」

立希も、手の甲に刻まれている令呪を見つめながら話す。

「まだ緑谷君達に会う前に、すごい大変な事が起きて、それを解決する為に、右も左も分からないで、何度も挫けそうになって…今だって、もっとああしておけば、こうしておけばって、後悔ばかりしてるよ…」

立希の脳裏、人理を救出する為、ありとあらゆる特異点に行った旅の物語。何度も壁が立ちはだかった。でも希望だけはずっと信じて突き進んでいた。

「“個性”が上手く使えなくて、学校の落ちこぼれで…そんな僕はクラスメイトの皆に支えてばっかりで…」

「いつも、英雄達に助けてもらって、弱い自分を鍛えてくれて…そんな自分は、家族や皆に助けてもらって…」

二人は各々の出来事を振り返る。片や己と平和の象徴との出会い。片や己と英雄達との出会い。自分達はずっと、誰かに救けられているのだと二人は思う。

「僕はカッコ悪いままだよ…だから…カッコよくなりたいんだ…。笑顔で人々を救けられる、そんなヒーローに…!」

「自分は憧れている…だから強くなりたい…家族…仲間…皆を守れる。そんなヒーローになりたい…」

真摯な顔に、ロディは魅入られる。本気の言葉。カッコ悪いと言う緑谷と立希が、カッコよくなりたい。強くなりたいという緑谷と立希が、ロディはとてもカッコよく見えた。

「Pi~!」

「わっ」

ピノが緑谷の頭に着地する。

「あ、さっきの鳥。もうちょっとマシな起こし方にしてよ…なんか思い出すと耳痛くなってきた…」

「Pi…」

今度はピノは立希の肩まで飛び、頬ずりをする。

「そいつはピノっていうんだ。」

「「ピノ」」

「Pi~!」

ピノは二人に懐いたのか、頭の上で嬉しそうに飛ぶ。そして、ロディは二人に近づく。

「俺はロディ。ロディ・ソウル。あんたらの名前は?」

ロディの柔らかい表情に、緑谷と立希は笑みを浮かべる。

「僕はイズク・ミドリヤ…ヒーロー名はデク」

「自分はリツキ・フジマル…ヒーロー名はマギ」

「デク…マギ…覚えやすいな。」

「うん。気に入ってる」

「でしょ?結構いい名だと思ってる」

今まで名前を知らなかったのが不思議に思え、ロディは小さく笑う。緑谷と立希もそれにつられ笑い合う。

「少し寝ておこう。ロディ」

「明日も早いしね。ロディ」

「ああ、そうだな。デク、マギ。」

3人の横で、薪を燃やし尽くした焚火がゆっくりと消えていく。夜が優しく3人を包んだ。

 

3人が眠りについたその頃、ヒューマライズ本拠地の神殿ではフレクトがモニター越しに警察長官から報告を受けていた。

『申し訳ありません。寸前のところで取り逃がしました…現在、警官を総動員して行方を追っております…』

この長官こそ、緑谷と立希を殺人犯と情報操作し、オセオン国の警察達を動かしている犯人だ。

「軍は動かせないのかね?」

フレクトの言葉に長官はわずかにうろたえる

『流石に、私の権限では…』

「捜索を続けよ」

『はっ、人類の救済を…』

冷静に通話を切ったフレクトが隣のモニターに視線を移す。そこに映っているのはケースを持っているロディだった。

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