劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
side立希
朝、目が覚めると、既に緑谷君とロディが起き、なにやら騒いでいた。自分も起き上がり、洞窟から出る。
「おはよー……ってえ!?この車どうしたの!?」
そこにはジープがあった。驚いていると、エンジンをかけていたロディがジープの窓を開け、顔をだす。
「おー、マギ。おはようさん。ちょっと借りて来たんだよ。ヒーロー協会名義の借用書書いてな。」
しれっと笑いながらロディが応える。
「少し離れた所にあった牧場から借りて来たんだって…アハハ…」
苦笑する緑谷君。この行為が良いのか悪いのかよく分からない表情だった。
「本当ならセスナを借りれれば、速攻でクレイドまで行けるんだけどな…」
そうぼやくロディに、緑谷君が訊く
「ロディ、操縦できるの?「冗談だって…乗れよ」え、あ、うん!」
「それじゃあ、自分は後方監視で荷台に座るよ。」
ロディに促され、車に乗る。運転手はロディ。助手席に緑谷君。席は3つあるが、手狭になるし、いざという時動けるようにするため、自分は荷台部分に乗り込む。
「そんじゃ、行くぞ!」
慣れた様子で車を発進させるロディ。日の出前のうっすらと白み始めた空。少し肌寒い風が心地よく、ただまっすぐ道を進んでいく。
「藤丸君大丈夫?」
「問題無いよ。このまま安全運転でよろしく。」
「オーケイ…なぁデク、マギ」
振動に揺られながら、ロディが訊いてきた
「「何?」」
「ケースの秘密がわかったら、俺、家に帰れるよな?」
「勿論だよ!」
肯定する緑谷君。自分は気になった事を訊く
「…家族がいるんだっけ?」
「ああ。弟と妹。俺の大事な家族だ。」
そういって、ロディは首元からペンダントを取り出し、蓋を開けて緑谷君に渡す。自分も緑谷君の背後から覗くように見る。その写真には笑みを浮かべるロディと、小さな女の子と男の子が写っていた。
「お袋は一番下の妹を生んだあと、すぐ逝っちまった。だから親父は、俺達を必死に育ててくれた…けど、いきなりいなくなった。」
さばさばと答えるロディに、緑谷君が戸惑いながら訊く
「いなくなったって?」
「ヒューマライズって知ってるか?」
「!…無差別テロを起こした団体…」
自分がそう答えるとロディは頷き、話を続ける。ロディの父親がそこの団員であり、それが世間にバレ、友人達は離れ、学校、家を追い出され、働き口も見つからないと…
「そうだったんだ…」
自分らは昨夜の会話を思い出し、その事実に胸が痛む。
「親父の事は恨んださ。恨んで恨んで…んで、どうでもよくなった。今は弟と妹の方が大事だ。まともな生活を送らせてやりたい。」
あっけらかんと笑うロディ。けど笑うその声色には、強い決意が見えた。
「「ロディ…」」
子供が背負うには重すぎる運命、恨みに飲み込まれないで、必死にあがくロディが…なんだかとてもカッコよく見えた…多分、緑谷君も同じ感じだろう…改めて、自分はペンダントの写真を見る。苦しい環境の中でも、笑い合っている家族。とても幸せそうだ。
「いい…家族だね。」
「うん。かわいいね」
自分らがそういうと、ロディは嬉しそうにペンダントを覗きこんだ。ちょ!?運転!?
「弟は頭のデキがよくてさ、妹はかなりかわいい!将来、絶対美人になる!」
「前!前みて!ロディィィ~~!!」
覗きこんできたロディ。そのせいで運転が雑になり、大きく蛇行するジープ。緑谷君は思わず叫んで…
「ちょ、あ、安全運転…自分けっこう車酔いするタイプ…っ」
自分は顔を青くする…少しでも酔いを無くすため空を見る。瞬く間に昇る太陽が自分らを照らしていた。
side三人称
それからロディ、緑谷、立希を乗せたジープはクレイド国へひた走る。幹線道路は警察がいるかもしれないと考え、3人は道なき道を行く事にした。今までずっと地図を見ていた緑谷が最短ルートを見つけ、その指示にロディは運転し、立希はジープが走りやすいように邪魔な岩や木々を英霊に憑依して排除する。
「順当にいけば、明日の昼には国境にたどりつくよ!」
「了解!」
途中、別の道路に出てガソリンスタンドで給油と食料を仕入れる。緑谷と立希を怪しむ店主の目をロディがそらしたり、川を渡ったり、雨の岩場に苦戦したりしながら、なんとか進む。
「いやー、デクとマギの“個性”便利だな!」
深夜になり、建物に車を隠して休憩を取る3人。ロディは緑谷の包帯を取り換えながらしみじみ言う。
「そうかな?」
「いやーそれほどでも」
雨に降られた岩場で、ジープが動けなくなった時、緑谷は『黒鞭』でジープを引っ張り上げていた。立希もまた、『セミラミス』と憑依し、呼び出した鎖でジープを引っ張り上げるほか、通りやすいようにその鎖を何本も展開し道なき道を簡易的に舗装し、更には崖わたりで何本も鎖を束状にし、橋を掛けジープを進ませていた。
「…ねぇ、ロディ。君の“個性”はどんな“個性”なの?」
「あ、それ気になった。」
緑谷はふと思い出したように訊き、立希もそれに便乗する。
「言いたくねぇ」
ロディは即否定。これには緑谷は言いたくない事を訊いてしまったと思い、うつむいてしまう。立希も踏み込みすぎたかな…と思い、口を閉ざす。
「…笑わねーなら…」
しかし、妙な沈黙に耐え切れず、ロディは口を開く。その言葉に緑谷と立希はロディを見る。
「笑わない。」
「絶対だな。」
「絶対笑わない。」
念を押す緑谷と立希は真剣な顔のまま首を横に振る。ロディは恥ずかしそうに顔をしかめた。
「俺の“個性”は―…」
ロディの“個性”を聞いた二人は、ロディの“個性”を褒めたたえる―
side立希
ジープでの移動開始から一日が立ち、時刻は大体昼頃。ようやくゴールが見えた。オセオン国とクレイド国の国境は広大な渓谷の底にあった。
「…うわぁ…やっぱいるよ…警官達…」
自分は岩陰に身を隠しながら、双眼鏡で覗く。見えたのは国境に一番近い鉄道の駅。そこには警官隊が配備され、停車している列車から自分らを捜索していた。
「ものすごい警備だ…戦わずに正面突破は出来そうにない…」
緑谷君はそびえる崖を見上げる。
「ここを越えていくしかないね」
「マジか…まぁ、仕方ないか…」
崖は高くそびえているが、英霊と憑依し、飛翔すればいいだけだし、緑谷君も『フルカウル』で登れば苦じゃない。早速自分らは登る準備をする。ジープはガス欠になってしまったため、ここに置いて行くしかないが、後でしっかり返すとしよう…
「ロディ、乗って。早くしないと―「デク、これを持ってけ」…ロディ?」
ロディを背負おうとする緑谷君だったが、何故かロディはケースを緑谷君に突き出す。
「その怪我で俺を抱えて登んのしんどいだろ?俺はここまでだ。」
そう冷静にロディは言ってきた。
「嫌だめだ。車はガス欠だし、こんな所で一人にはできない。緑谷君が無理なら自分がロディを崖の上まで運ぶ―「今、大事なのはケースの中身を持ってオセオンから脱出する事だ。敵や警察が来て、足手まといの俺が人質になったら今までの事が全てパァだ。」いや…でも…」
自分が意見を言うが、ロディは頑なに拒否してくる。
「頼んだぜ。ヒーロー!」
心配になる自分と緑谷君にロディは笑ってみせた。心意気を感じたのか、緑谷君はケースを受け取ろうとした時だった。急激に何か近づいてくる音が聞こえた
「「「!」」」
爆音と共にヘリコプターが上空に現れた。そして、ヘリから自分達を狙う弓の敵がいた。
side三人称
「あいつ!」
「しつこ過ぎる!!」
「うわぁ!!?」
緑谷はとっさにロディを抱え、『フルカウル』で崖を跳躍で登る。襲い掛かってくる矢は立希が『イリヤ』に憑依し、飛翔しながらルビーから放つ魔力弾で弾き壊す。
「これ以上の失敗は……!「使え!」!」
素早い動きで移動する緑谷と立希に苛立ちをみせるベロス。するとヘリに同乗していた敵―シデロが拳から出した小さな『鉄球』をベロスに差し出す。ベロスはそれを矢の代わりに放った。
「っ!?」
「マジか!!」
放たれた『鉄球』は崖に当たる直前、突如『巨大化』。鉄球は緑谷達の頭上の崖に直撃し、崩れ始める。その様子は駅から目視出来た
「うわあああああ!!!くそっ、なんなんだよ、あいつら!」
「っ!」
ロディが思わず叫ぶ。落石が迫りくる。刹那、立希はそこから急上昇。そして緑谷達に向けて腕を伸ばす。
「緑谷君!!」
「!『黒鞭』!!」
立希の意図に気付いた緑谷は『黒鞭』を伸ばし、立希の腕に絡ませる。立希は一瞬、2人分の重さで高度が落ちるが立て直し、持ち上げる。
「んぐぐ…っ!」
「ロディ!しっかり捕まってて!!『エアフォース』!!」
「っ~~~~!!!」
『黒鞭』を巻き上げ、立希のいる高さまで行こうとする緑谷達に、『鉄球』が襲い掛かる。緑谷はロディにしがみついてもらい、ロディを抱えていた片腕を自由にする。そして鉄球に向けて『エアフォース』を撃ち、落としていく。
「行け!緑谷君!!」
「『デラウェアスマッシュ・エアフォース』!!」
立希は二人を持ち上げ、そして緑谷はタイミングよく『黒鞭』を解き、一気に上昇。そしてそのままヘリに向かって強烈な蹴りを放つ。
「くっ!!」
その蹴りの風圧で、ヘリが大きく回転し、離れる。体勢を整えようと、立希が空中に放りだされた緑谷とロディを受け止めようとした時、ヘリのほうから一発の『矢』が飛んできた。
「つぅ!!?「藤丸君!」「マギ!」おぐっ!!」
「ちぃ…!!」
執念。不安定なヘリからベロスは立希に向けて矢を射ったのだった。不意な攻撃に、矢は立希の肩を抉る。
それが原因で落ちてくる二人を上手く受け止めれず、激突。3人はそのまま崖の頂上に転がるように不時着した。
「ぐ…ロディ!藤丸君!大丈夫!?」
「いてて…ああ、なんとか…」
「刺さったわけじゃないから…何とか大丈夫…!」
立希がクッションになったのか、ロディは無事。立希は肩から出血し、服に滲ませてるが、まだ動けた。すると、ロディはハッとする。
「ケースが…!」
先の拍子でケースを落とした事を思い出す。周囲を見渡すと、少し離れたところにケースがあった。走りだしたその時、再び3人の頭上にヘリが現れた。
「「ロディ!!」」
「うわあああ!!!!」
落ちてくる『鉄球』で地面がめくれ上がる。不安定な足下にもかかわらず、ロディは弾かれたケースに反応して思わず飛び出した。
「ぐぅうう…!!」
落ちる寸前でなんとかキャッチしたが、かろうじて片手で崖にしがみついている。
「ロディィ!!」
「今助けに…っ!」
直ぐに駆け付けようとする緑谷と立希。だか、緑谷には『鉄球』が邪魔をし、立希には、複数の敵が立ちはだかる。
「くっ…!」
「まずい…!」
両手を『刃物』にする“個性”、口から『炎』を吐く“個性”、そして自身を『獣』に変化する“個性”が立希に襲い掛かる。その隙にヘリから飛び降りたシデロがロディの頭上に着地した。
「ぬうううう!」
そしてロディめがけて、ケースごと潰そうと巨大化した鉄球を持ち上げる。
「っ…受け取れ!デク!マギ!」
ロディは精いっぱいの力を込めて、緑谷と立希のいる方へとケースをブン投げる。
「「ロディ!」」
直ぐにでも駆け付けたい緑谷と立希。しかし立ちはだかる敵達に、なかなか近づくことができない。
「人類の救済を!!」
シデロがそう叫び、かろうじて崖にすがり着いているロディめがけて大きな鉄球を投げ落とそうとした時だった。
「っ!?」
突如、シデロが持ち上げていた鉄球が白くなり、そして『大量の花』へと変貌。その花々は風で舞い散り、鉄球を掻き消したのだった。
「なっ―」
「あの白い花…まさか…「やっっっと見つけた!!」ああ!!」
突然の出来事に驚いている敵達。そこに、誰かが崖へ降りて来た。花々に心当たりがあった立希。そして聞いた事のある声に、見た事のある姿に、心から安心できた。
「それじゃあ…行くよ!!」
降りて来た人物―白いフード付きローブを纏い、杖を持った立香だった。