劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order 作:小野屋陽一
side立香
ゴムを外し、中から取り出したそれは、掌サイズの立体パズルだった。私達は岩陰に隠れ、そのパズルを解こうとするが…
「ん~……なんだ、何がどうなって…」
わざわざケースの底に隠していた立体パズル…重要な手がかりがあるに違いないが、上手く解けない。
「こうじゃないのか?」
「それだと元に戻って…」
「それじゃあここを動かす!」
「いやぁ、無理でしょ…」
緑谷君が動かし、それを焦凍君、立希、私が指示するけど、一向に解けない。その様子をイライラしながら爆豪が見ていた。
「貸せ!こんなの俺の爆破でブッ壊してやんよ!」
「ダメだよかっちゃん!」
強引に開けようとする爆豪君に緑谷君が阻止する。そんな中、少年…ロディが立体パズルを見て、ハッとした。
「ちょっと貸してくれ!」
そう言い、ロディが立体パズルを緑谷君から渡され、弄ると、スイスイと動かす。慣れた手つきに私達は驚く。
「やった事あるの?」
「似たようなパズルを、ガキの頃やった事がある…」
そしてあっという間に解き明かし、最後にカチっという音が鳴る。
「解けた!」
「よし、これで…」
ロディが立体パズルを開く。すると中から何か小さい物が落ちる。それを緑谷君が受け止める。
「これは…」
入っていたのは、何かの鍵のような物と、SDカードだった。
side三人称
ヒューマライズ本拠地の神殿。フレクトは警察長官から報告を受けていた
『目標が、隣国のクレイドへ…私の権限でこれ状の捜索…』
「かまわん」
フレクトは無表情に言う
「クレイドならば、計画遂行中にここへ来ることもできまい。計画を実行に移す時は来た」
フレクトは通信を切り、神殿に控えていた大勢の団員達の方を向き、手に持つ機械を掲げる。
『人類の救済を!人類の救済を!人類の救済を!』
団員達はそれを見て、呼応する。その声を聞きながら、フレクトが神妙に宣言する。
「人類の…救済を……!」
再び機械が作動し、神殿内のモニターが世界各地を映しだす。
「緊急事態!」
ヒーローチーム司令部。オペレーターの一人がコンソールを操作しながら叫ぶ。
「ヒューマライズが、インターネットを通じて放送を始めました!」
直ぐにメインモニターに映す。そこにはヒューマライズのシンボルマークが表れ、フレクトの音声が流れる。
『我々、ヒューマライズは決起する。』
その放送は全世界へと放送される。
『“個性”という名の病に冒された者たちから、“無個性”と呼ばれる『純粋なる人類』を守るために、我々が開発した『人類救済装置』は世界26ヶ国に配置され、既に動き始めた。』
その言葉に世界各地のヒーロー達が息をのむ。
『人類救済までのタイムリミットは今から2時間。だが、我々も無慈悲ではない。この計画を阻止したいと願うなら『人類救済装置』を設置した地域をお教えしよう。我々と異なる考え方をしていようとも、チャンスは平等にあるべきだ…』
ヒーローチーム司令部内のモニターに爆弾がある箇所が表示される世界地図が映し出される。
「全てヒューマライズの支部がある区域と一致しています!」
「また罠の可能性が…」
危惧するオペレーター達。同じ事を考えていたオールマイトは、決意を固めた表示で口を開いた。
「…たとえ、そうだとしても…」
救けを求める人がいる限り、動かないという選択肢はない。ヒーローの気持ちは誰よりもヒーローが分かっている。司令部長官も同意し、直ぐに支持を飛ばす
「待機中のヒーローチームに出動要請を!!」
モニターに次々と緊張アラームが表示される。映像には先のヒューマライズの放送を見た人々がパニックになり、逃げ惑う。それが原因により、事故や渋滞が起こっていた。
そんな人々を救う為、人類救済装置-トリガー・ボムを捜索・回収するべくヒーロー達が動き出す。
side立香
私達はクレイド国のホテルにいた。そして立体パズルの中に入っていたSDカードをパソコンに差し込み、調べると、大量のファイルが表示された。
「うわ!すごい数…どこから調べれば…「どけ!タイムスタンプの最新…この動画ファイルだ。」」
困惑する緑谷君を押しのけ、爆豪君がサッと操作し、動画ファイルを再生する。それは音声データだった。
『…私の名は『アラン・ケイ』。ヒューマライズに拉致された科学者の一人だ。』
「拉致…?」
予想外の言葉に、私達は驚く。そのままアランの声が続く
『ヒューマライズは、多くの科学者たちの家族を人質に取り、個性因子誘発爆弾の製造を強要した…それを使った最初の無差別テロは、優秀なヒーロー達をヒューマライズの支部がある場所に集めるための布石…そのうえで、個性因子誘発爆弾を使い、ヒーロー達を根絶やしにしようと考えている…』
その言葉に息を呑む。私達、ヒーロー達の行動は全て、フレクトの手のひらの上だった。
『私のこの声が、ヒーローに届くことを望む。そして、私と同じく拉致された『エディ・ソウル』が命にかえて作ってくれた爆弾の解除キーで…どうか世界を救ってほしい…』
そこで音声が途切れた。机に置いていた解除キーを緑谷君が手に取る。
「…こんな事になるなんて…」
立希が緑谷君の隣で呟く。あまり非現実的で、無謀な計画。個性社会を根本から崩し、リセットしようしているなんて…
「キャアアア!!!」
『!』
その時、女性の悲鳴が上がった。私達は振り返ると、大勢の人々が逃げていく。原因はテレビに映っている緊急ニュースだった。
『繰り返しお伝えします。人類救済を標榜する団体、ヒューマライズが世界各地に爆弾を設置。二時間後…リアルタイムで一時間五二分後、爆発するという犯行予告を出しました。』
「っ」
私達は目を見開く。まさに先の動画ファイルで言っていた事が既に始まっていた。焦りが全身に駆け巡る。時間が無いこの時に、事実を知っているのは私達この6人だけなのに…
『ヒューマライズが公表した爆弾設置区域はパニックが発生しており、ヒーロー達が避難誘導及び爆弾回収作業にあたっております。爆弾の該当地域は次の通りです。』
切り替わった画面が、該当地域を表示した世界地図になる。
「ウソだろ…オセオンの被害地域…俺ん家も入ってやがる……!」
「そんな……!」
「っ……!」
それを見たロディが愕然する。緑谷君と立希が苦い表情をする。すると、焦凍君がパソコンを動かし始める。
「統括本部にこの情報を送って、ヒーローチームの撤収を―「するわけねーだろ」!」
操作する焦凍君に、わずかに悔しそうに眉を寄せた爆豪君が言う。私も同意する。
「…ヒーローはトリガー・ボムを探し続ける…爆弾の標的が私達だったとしても…罠でも…一般人を置いて逃げる事は絶対しないよ…だって、私達はヒーローなんだから……っ」
「…そこまで考えての作戦なんだ…」
怒りが湧き上がってるのか、拳を握る緑谷君…それは私達もだ。ヒーローは常に命懸けで命を救うために動いている。いくら対価がかかろうと生半可な覚悟で出来るものじゃない…
「(自分の理想を現実にするために、そんな誰かを救いたいという想いを利用するなんて…フレクト・ターン…絶対許せない…っ!)…なら、その解除キーで止めるしかないよね。」
「ああ。立香の言う通りだ。トリガー・ボムを俺達で止めるまでだ。」
私と焦凍君は言う。その言葉に緑谷君、爆豪君、立希がハッとする。
「でも、どうやって…」
緑谷君は改めて解除キーを見る。重要なものだと分かったが、使い方が分からない。
「さっきのSDカードにヒントがあるんじゃない!?」
「どけ!こん中にあるに決まってんだろーが!鍵作っておいてドアの位置を知らせないアホがいるか!」
立希が言い、再び爆豪君がパソコンを操作し始める。テレビに映っているのと同じ、爆弾該当地区を表示した地図を出し、見比べる。
「犯行声明にないポイント……!ここがクソどもの本拠地!!」
二つの世界地図を重ね映す。すると、1ヶ所だけテレビ画面の地図にないポイントがあった。
「オセオン国のある山岳地帯だ!」
立希が言う。その地域を拡大する。目的地が分かった。更にトリガー・ボムの制御システムを調べ、ヒューマライズの本拠地らしき建物のデータを出す。結果、解除キーを使う機械は、その最下層にあると分かった。
「…場所が分かったが、ここから直線距離で400キロ以上ある…」
焦凍君の言葉に、私達は考える。場所が分かったが、そこに行く方法が無い。
「…自分と姉が皆を担いで飛ぶ?」
「でき…無くはない。けど、目的地まで飛べるかどうか…」
立希が提案し、私は思考するが、この方法はダメだ。多分、魔力が足りなくて途中で不時着してしまう…仮に行けたとしても…動けなくなって足手まといになってしまう…
「間に合う」
そんな時、ロディが言った。隣のパソコンを操作し、この街の地図を出し、指さす。
「俺に考えがある。」
そう私達に言う彼の顔には、固い決意が表れていた。彼が見つけたのは、ここから少し離れた飛行場だった。
side三人称
ロディが見つけた飛行場。そこから中型のプロペラ機を無断で借り、ヒューマライズの本拠地に向かっていた。運転しているのはロディ。なんでもパイロットになりたいと言った彼に、父親が買ってくれた飛行機操縦の本を暗記するほど読み返していたらしい。そんな後ろで、緑谷達は戦闘衣装に着替えていた。気が引き締まるヒーローの正装だ。
「(必ず、トリガー・ボムを止める。)」
轟は決意し
「(イカれたクソどもをブッ潰す!)」
爆豪は定め、
「(絶対に守るんだ。ヒーロー達を…世界を!)」
緑谷は覚悟する。
「(また…世界を救うんだ…!)」
「(そう簡単に世界を壊させない…)」
立希と立香も、気を引き締める。
この5人に、世界の命運が手にかかっている。