文章量2倍になったけど許して……
さて、最近もっと見てほしい欲が出てきてしまいました。これはいけない。
尚、今回も戦闘シーンまでたどり着けなかったよ…。
「そういえば君、名前を聞いていなかったね、教えてもらってもいいかい?」
ヘルメット内のスピーカーから声が聞こえる。
午後1:26、男は質問された内容に対して即答ができなかった。というのも自分の名前等考えた事がないからだ。最も、この場合の名前とは偽名なのだが。ここで仮に市民第何号だと名乗っても大した意味を為さないだろう。
盾持ちとして名を上げたいのなら偽名は必須だ。大抵の盾持ちはインパクトのある名前を求める。そのほうが噂が広まりやすい、というのが大きい。
だがこの男は、そういった有名になることへの憧れや夢などもなく、寧ろ今の地位を……即ち近所ではそこそこ知られている位の立場を崩したくないのだ。となると噂はあまり広がらない方が良い。そうすれば自分の預かり知らぬ所で変な噂をされる事も無いのだから。
「あー……、名前…名前か。考えた事も無かったな。悪ぃ、後で名刺渡すからそれでもいいか?」
「良いとも。それだったら僕の名刺も出さなくちゃね。」
そして世間話や観光案内へと話は戻る。
どこどこの料理が旨い、あそこの店は良いものを扱っている、どこそこは治安が悪い……。何の変哲もないただの日常のワンシーンだ。強いて言うのならこれは男が質問しているわけでは無い。トラッカーが質問し、男が答えているのだ。その点、やはり傍から見れば立ち位置が逆ではないか、と考えてしまう。
「さて、着いたよ。」
しばらく話しているといつの間に減速し、停車していた。こういう芸当が出来るのなら加速時ももう少しなんとかしてほしいと思いつつ料金を支払おうとする。
「………こんな安くていいのか…?地下鉄の三分の一くらいじゃねえか…。」
「いいのいいの。こっちの仕事は道楽だしね。趣味って言ったほうがいいかな?」
そう言うとトラッカーは自身のショルダーポーチから小さいながらもしっかりとした紙を渡して来た。
「はいこれ、僕の名刺だ。本職の方もよろしくね。」
手書きながらも読みやすくきれいな字で
【気になる行方、探します。捜索追跡は3区のトラッカーまで】
「……トラッカーって文字通りの意味かよ。え〜……あった、これが俺のだ。」
「ありがとう。……盾持ちだったのかい君…。それにしては軽装だね?盾はどうしたんだい?」
痛い所をつかれる。まぁ正直に言えば済む話なのだが、変なプライドが邪魔をしてなんとかして流そうとしていると
「ンェ……やっと来た…………どうせアームが壊れたから持って来れなかっただけでしょ………。」
聞き覚えのある声が分かりやすく説明してくれた。
「あー、ご説明どうもありがとうございます?でもできれば俺のプライドも気にかけて欲しいんだけどなぁ?」
「ンン…?自業自得でしょ…。にしても………珍しいね…………新しい物使うの………。」
「おや、君はあまりこういうのを利用しないのか。出来れば今後もご贔屓に、君と話しているのは楽しいからね。それじゃ、ここからは僕の出る幕でもないし失礼するよ。」
「あぁ、ありがとな。多分帰りも使うと思う。」
分かったよ、と軽く微笑んでトラッカーは去った………あの加速時の爆音と共に。
「ンェ………あんなのに乗ってきたの……?」
「いや、普通に快適だったぞ?実際あいつの宣言通り十分足らずでこっちまで来れたし。」
「ンァ……そうなの……。まあいいや……。色々探しといたよ………。」
どこか気怠げな足つきで店へと向かう。
この常に低血圧気味の少女の名は姐。
第五区ではこうした漢字…この世界では旧字と呼ばれる物が良く用いられる。基本的にはこの地区特有の物の為、他の区でこの字を見かければすぐにそれが第五から来たことが分かるだろう。
そして姐の後ろを着いていく男にはどんなものがあるか、よりもいくら持っていかれるかという心配の方が大きかった。
カリンカリーン
第五区特有の鈴のようなドアベルが音をたてる。
店内の照明は十個に満たないカンテラと(外の光をあまり取り込めていない)窓のみで賄われている。故に少々…いやそこそこ商品が見にくい。そのせいかあまり普段からの客は少ないのだが品揃えや品質は雑貨商売人の多い第五区でも高水準に位置する。
それを知っている者はこぞって入るが、大衆からの認識は「え?あれ廃墟か倉庫だと思ってた」という物が大半である。
「いつもの事だが……暗いな…。」
「ンゥ……だって明るいの嫌い………。」
「そういやあいつは……あの…なんか喧しいのは?」
「ンェ…?あぁ……今はレジ打ちを「旦那ぁ!?黒鷹の旦那じゃぁないっすか!!いやぁ〜〜何ヶ月ぶりですっけぇ?今日は何をお求めにきたんすか!!??」
そこまで広いとは言えない店内には過剰とも言える声量が響き渡る。声の主であるパンチパーマにエプロンといった男はそのことについて全く気にしていないようだが。
「あー……久しぶりだな…ただ元気なのはいいがその………雇い主の話を遮るのはどうよ……。それに黒鷹の旦那って何…?」
「ンゥ……もう慣れたよ……。黒鷹っていうのは「それはっすね!!旦那ってば名前決めてないって言うしなんかいい呼び名無いかなって思ってたんすよ!そしたらほら!旦那ブラックホーク使ってるでしょ!?それを旧字に直したらそれっぽくなったんで!!これ使おうって決めたんすよ!」
「あー……まあ良いけど……はぁ、次までになんか考えとくからそれはやめてくれ…。」
「そうっすか……分かりました!」
「ンァ……舎弟……何回言えばいいの……?店内では…声量抑えて………。」
そう言われた途端人が変わった様に
「あっ…すいませんっす…。気をつけます…。」
と普通の声量に戻る。
「ン……舎弟…用意してたやつ出して…………。」
了解っす、と少し張り切ったように言い、バックヤードへ入って行った。
5分程経った頃、舎弟はレジカウンターへと戻ってきた………大量の物品を抱えて。
「だ、旦那ぁ!姐さん!ちょいとカウンターの上のもんどかしてくだせぇ!このままだとこいつらが置けねぇんで!」
「おう…にしても…おい姐…多くねぇか…?色々と…。よくあれ一人で持てるな…。」
そう、舎弟が持ってきた物品は明らかに一人で持てる量ではない。何回かに分けて持ってきたとしてもおよそ尋常ではない重さだろう。
しばらく舎弟がバックとカウンターを行き来した後、ついに姐の用意した物品とそれらのカタログが全て揃った。厳密に言えば一部の物は取り寄せや依頼して作る必要があるためいくつかこの場に無いものはあるが、それでも過剰とも思える量が出てきた事に驚きを隠せなかった。
「どうっすか!?姐さんと二人で頑張って色々探したんすよ!さぁ!どれから見ていきましょう?」
「ンゥ……舎弟…取り敢えずサイドアーム出して……黒鷹……どの型にする……?」
「うぅ…お前までそれで呼ぶのか………もう今はそれでいいけどさ…。出来れば…五爪三節型で頼む。」
サイドアームにも当然種類がある。最近の流行りとしては五指触腕型という人の手の形と蛸の触腕を組み合わせた形の物が多い。汎用性に優れ、出力も安定しているが構造が複雑な為メンテナンスや修理が難しい事が難点だ。
対して黒鷹が使い慣れている五爪三節型はいわゆる旧型の物で電車の連結機のようないかにも機械といった爪五本で物を保持するタイプで、関節部は三つしかない。壊れやすいが、メンテナンス、修理の両方が容易で安価なタイプ。だがこの時代に好き好んで使う者はあまり居らず、安価で長持ちなアームも存在するためあまり市場にも並ばない型の一つだ。
「ンァ…………いつも通りだね……。新しいの試したりはしないの…?」
「高い金出して失敗したくねぇんだよ。何より慣れてるやつが一番良い。……気にはなるけどな。」
「だったら旦那、ここに試用品があるんすケド……。」
「後で試させてくれ。」
黒鷹も新しい物に興味がないわけではない。しかし新型装備はお試し、とかいう気持ちで買える物でもない。大体の盾持ちは新しい物を使いたがる。事実その方が客受けもいい。
だが盾持ちとして過ごした時間が長い程そういった考えは消えていく。新品を使って自分の最大のパフォーマンスが出せるのならばそれで良いのだが、大抵は数段階パフォーマンスは低下する。道具を使い切れていないが故に。そして仮に戦闘依頼の場合、それは依頼失敗につながる上最悪死の原因にもなり得る。
だからこそ黒鷹は使い慣れた物を使い続けるのだ。が、無論新型のがスペックは良い。使用者の技量と慣れが追いつかないとそれが引き出せないだけだ。無論それは理解している。そういった事を考えた時、試用品があるという事の重要性は高まるのだ。なにせ買わずとも使うことができるのだから。問題があるとしたら試用品を扱う店の人間がその新型を装備した盾持ち等よりも強くないと持ち逃げされるリスクがあることだろう。
「じゃあ次は何を見ます?」
「あー…じゃあ盾を見ようか。76式のスクトゥム型タワーはあるか?」
「ありますケド……旦那ヒーターシールドとか合ってると思うんすけどね……。ラウンドは使いにくいと思いますケド。」
「んー…じゃあ適当に合いそうなやつリストアップしてくれ、後で試す。」
「ンゥ……これもういつものセットと僕たちが選んだやつ試せばいいんじゃない……?」
「うん。それは俺も思った。」
事実黒鷹の頭にあるのは使い慣れた装備だけだ。新しい装備等あまり知らないのだ。
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三人は店の地下に位置する試用場にいた。
壁はコンクリートで出来ており、無数の傷やヒビが刻まれている。
「じゃあまずはアームっすね。えーっと……あったっす。試すのは五指触腕だけでいいんすよね?」
「ああ。それと五爪の方も動作確認しておきたい。」
「了解っす。旦那は接続孔どこに開けてます?試用なんでこっちが着けなきゃいけないんす。」
サイドアームを着けるには接続孔を身体に開ける必要がある。基本的には四肢の付け根に空ける場合が多い。四肢の神経の一部を間借りして動作させる為、使用者は腕や足が増えた様な感覚で使うことが出来る。稀に変わり者が尾骶骨に空ける事もある。その場合は尻尾が生えたイメージで動かすという。
また、孔の型にも種類がある。最も古いものがビス止め式、中間世代のネジ型、最新のコネクタ型。大半が差し込むだけのコネクタ型に変えているが、手術を面倒臭がって変えてない層もまぁまぁいる。唯一ビス止め式は殆ど見ることはないが…。
「左肩にある。ネジ型だけどいけるか?」
「大丈夫っすよ。えーと…ここを回して………着きました!」
触腕部に緑の光が灯る。百足の節を何倍にもしたようなアームがうねる。案の定うまく動かせない。
「あー…?なんだコレ。手の方まで意識が届かねぇ。持ち上げすらできないとは……。」
「俺もやったことありますけど全然コツとか分かんないんすよね……。まだうねらせられるだけマシっすよ、俺びくともしませんでしたもん。」
「ンゥ…………これは技術よりも慣れの比重が高いからね……。流行ってるのもそれが理由らしいから……。技術がいらないって……。」
「嘆かわしいな……。」
と言いつつもアームはさながらうなぎのように踊り狂うだけである。
「……五爪持ってきて?これは無理だ。俺には。永遠に動く気がしない。」
「了解っす。関節はボール型だけど良いっすか?」
「おう。ヒンジ型前使ってたけどどうにも……。一定方向にしか動かせないのがな…。」
びちびちうねる触腕を外し、どう見ても洗練されているとは言い難いアームを取り付ける。
「お、おぉ。やっぱりこれだな。関節の素晴らしさを感じるよ。」
先程とは違い、とても滑らかに動く。盾持ちとして歩んで来た人生の中で使い続けているだけに、このアームであれば動作に狂いは無い。
「このまま付けてきます?」
「ああ。じゃあ次は盾と銃持ってきてくれ。」
黒鷹が注文した76式、姐によってしっかりと整備されたブラックホーク、それとは別にいくつか盾と銃が持ち込まれる。
「取り敢えずいつもの二つに関しては上でも確認してもらったんで渡しちゃいますね。で、まず盾の方から。まずこれが局所補強済みの15式ヒーターシールドっす。元々は重さと性能のバランスを重視したカイトシールドを小型化したものっすけど、軽量化と素材の改良を重ねた結果アームを使わずに持てるようになりました。当然ながらタワーほどの耐久性は無いっすけど、それでも連続七発なら耐えられるはずっす。」
「76式で連続最大十五発だから中々良いな。それにこの大きさと重さなら………。これも買わせて貰うよ。面白い使い方ができそうだしな。」
「ンゥ……もしかしなくてもそれ構えて突撃とかしないよね………?」
「そ、そんな事するわけぇ…ないじゃん……?」
絶対するんだろうなと心の中で思いつつ姐が銃の説明に移る
「ンァ……まず黒鷹が使ってるブラックホークは基本的には早撃ち向けな銃でしょ……?だから……ラウンドシールドも一発でぶち抜けないの……。マグナムなのに……。それは良いんだけどそれ一丁だけだから火力も弾数も不足気味……。だからそれを解決するための銃を持ってきた………。」
舎弟が銃の入ったカゴを抱えて来る。明らかに拳銃ではないのが遠目に見ても分かる。
「俺ライフルとかショットガン使わないよ?」
「ン………?拳銃しか持ってきてないけど………?」
舎弟が机に並べ終わるとやはり拳銃に見えない。およそ人が撃つ様な代物じゃない様な物がズラリと並んでいるのはある意味壮観だ。
「ンァ……じゃあまずこれ……ツェリスカ…。一番でかくて火力高いやつ……。」
「こんなん盾構えながらとか無理だろ。お前は俺になにをさせたいんだ?」
「ンゥ……じゃあデザートイーグル……。火力と装弾数の両方は確保出来る……。ただ反動は片手で扱えないレベルって聞いた……。実際そうだしね……。」
「ちょっと〜?姐さ〜ん?おっさんになんてもん持たせようとしてるのかな〜?」
「ング……しょうがない…じゃあ若干威力控えめなウェルディ・サバイバー……。装弾数は8発……、使用者の負担を抑える機構も入ってるし、マガジン式……。」
「おお……!良いじゃん。これにするよ、で、あの〜大きさの方もう少し小さいのを「これしかないよ…。18インチ………。」
「………じゃあこれで。てか火力しか解決してなくね……?」
「ン………まあ…………うん…。後もう一丁見せたいのがある………。これ…。Mk23っていう銃………。装弾数12発…。火力も耐久性も良い……。」
「おっ、丁度良いサイズだな!これも買うよ!」
「旦那………?感覚麻痺してるっすよ………?」
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「……はい、旦那の認可証も全部確認出来たんで大丈夫です!それで金額がですね……。」
その後、黒鷹は予想の5倍程の値段を告げられ気絶した。自分の持つ金の半分が一日で消し飛んだら誰だってこうなるだろう。
少なくともこれで仕事が楽になると考えれば安いものなのだが。
最後まで見てくれてありがとね。
因みに名前の読み方は舎弟(シャーディ)姐(ジェイ)黒鷹(こくよう)です。
主人公の名前は確定ではないです。
にしてもここに来てプロット組んでないのが効いてくる…。
まだモチベは続いてるから頑張るよ。