マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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トレーナーがちょっと掛かって色々動いてる回。


11話 もしもの時の備えはあったほうがいい

 

「フジ、ちと抑えろ」

「え?」

 

 俺が乗る原付に併走しているフジに声を掛ける。

 

「もしかしてペース上がってた?」

「思いっきりな。今の時期にランニングで負荷をかけすぎてもしょうがないぞ」

「うん、わかったよ」

 

 素直にペースを抑えるフジ。俺もアクセルを緩めてフジのペースに合わせる。

 

「これくらいで良いかな?」

「良い感じだ。その速度を維持しようか」

「うん」

 

 フジの横を走りながら周囲をチラチラと確認する。今走っているのは、フジがいつも早朝ランニングのコースにしている中でも、しばらく信号や車の通りが少なく走りやすい区間だ。とはいえ何かしらがあるかもしれない以上、ある程度注意は払っておく。

 

「でも今でも不思議な感じがするよ」

「ん?」

「朝のランニングはいつも一人でやってたからね。誰かと、それもトレーナーさんが毎日ランニングに付き合ってくれるなんて思わなくてね。なんだか嬉しいんだ」

「あーそれか」

 

 実際いつもなら、それこそレース前であっても担当のランニングにまでついていく事はない。

 

「フジが無茶してないか、怖くてなぁ」

「え、そこ!? 大丈夫だよ!? 無茶なんてしてないから!?」

「つーても、昔は色々不安になってオーバーワーク寸前だったとか割とあったし……」

「もー、それを今持ち出さないでよ!」

「まっそれは置いておくとしても、今の時期に怪我とかシャレにならないからな」

「うーん、確かにレース前だしね」

 

 フジは次のレースを一週間後に控えている。ちょっとした違和感でもレースに影響を与える以上、もしもの時にすぐに対応できるように備えておきたい。チーム・デネボラのメンバー全員にもそう言ってある。

 もっとも、

 

「っと、前から車が来てるぞ。脇に寄っとけ」

「うん、ありがとう」

 

 この言い分だが、半分くらいはお題目でしかない。

 俺がこうしてこいつの側にいる本当の理由は――護衛だ。

 フジが学園外に出る時は、適当な理由を付けてついていき、そして危険がないか周囲を警戒する。そんなことをここ一週間続けている。

 こんな事をするようになったのは……、全てあの殺害予告が原因だった。

 

 

 

 

 

「謝意! 本当に済まない!」

 

 件の殺害予告について理事長に呼び出され理事長室に入った所、真っ先に飛んできたのがこの謝罪だった。

 

「開口一番に謝罪って事は、要請が通らなかったって事ですかね?」

「うむ……」

 

 いつもの自信満々な様は鳴りを潜め、若干気落ちした様に小さく頷く理事長。そんな理事長をフォローするように、秘書の駿川さんが口を開く。

 

「武藤トレーナーの提案ですが、理事長も『嫌な予感がする』と、賛同していたんです。しかし理事会の面々から強固に反対されてしまい、最終的に提案は一部を除き却下されてしまいました」

「俺が提案したのは、主に『警察への通報』『フジキセキへの殺害予告があった事への通知』『フジキセキへの護衛の配置』『学園の警備の強化』で他に細々としたものも出しましたが、どれが通りました?」

「うむ、警察への通報だけだ。私としては護衛も通したかったが失敗した」

 

 最低限の要望は通ったか。だが同時に疑問も湧いてくる。

 

「しっかし要望を出した俺が言うのも変な話ですが、理事会も随分と冷静ですね。普通の学校なら生徒に殺害予告が届いた、なんてあったら割と動揺すると思いますが」

「うむ。……実の所、このトレセン学園はこの手の事件に慣れている」

「慣れている?」

「……今回のような生徒への殺害予告ですが、実は年一回は送られてきているんです」

 

 マジか。中々殺伐としてんなトレセン学園。

 

「そんなに殺害予告が来てるってのは、聞いたことがないですが?」

「当然だが関係者には戒厳令を敷いてある」

「殺害予告なんて普通にスキャンダルですし、生徒たちにも悪影響を及ぼすという事で機密になっているんです」

「それもそうだ。因みに何となく答えは分かりますが、その殺害予告が実際に実行された事は?」

「皆無! 当然ゼロだ!」

「でしょうね。実際に事件があったら、いくら時間が経っていても噂は残っているはずだ」

「正確には約30年前に実際に生徒を殺そうとしていた人がいたそうですが、そちらは犯行前に警察が逮捕したそうです」

「あー……」

 

 毎年殺害予告が出てるが約30年間平穏無事。そりゃ理事会も動かんわ。たかだか愉快犯のイタズラに、無駄な金と労力なんて使いたくはないわな。

 

「ならフジ本人に伝えるのを却下したのは何故です? ほぼイタズラ確定とはいえ、多少なりとも用心させた方がいいのでは?」

「妥当! その疑問も当然である。だが生徒に伝える事が悪影響を及ぼす!」

「と、いうと?」

「生徒に過剰なストレスがかかってしまうからです。20年ほど前の有望な生徒に殺害予告があった際、トレーナーがその生徒に用心するように伝えたそうなのですが、生徒は自分が狙われている事に気を病んでしまったそうです。当然、練習にも身が入らず、レースでも敗北続き。持ち直すのに相当苦労されたそうです」

「メンタルの問題か……」

 

 10代の多感なウマ娘に「お前の命が狙われている」なんてなったら、そりゃメンタルに来るわな。理事会が懸念するのも当然か。

 

「ん? しかしその理論だと学園の警備増強は行けなくもないのでは?」

「否、先の靴下強奪犯出現の際に増強した警備員で十分だ!」

「今でこそ犯行が行われていませんが、警備部による警戒体制は続けられています。ですのでわざわざ増強の必要はないんです。ですのでこれについては理事長も真っ先に却下しています」

「……なるほど」

 

 そういえばあの事件が解決したのを知ってるのって、俺を含めた数人だけだった。そりゃ理事長含めた上層部連中は犯人がまだ捕まっていない以上、警戒するのは当然な訳で……。まあお陰で学園の中で警戒しなくて良くなったが。

 とりあえず、俺の要望が殆ど却下された理由はよくわかった。

 

「事情は分かりました。因みに警察には?」

「はい、既に被害届は受理されています」

「力になれず済まない、武藤トレーナー」

「いえ」

 

 俺が理事長相手にどうこう言っても今更決定事項は覆らない。なら今ある手札で戦うだけだ。

 

「フジへはそれとなくフォローします。幸いレースも近いですし、それを名目に外に出る時は俺が張り付きます。これだけでも大分違うでしょう」

「うむ、許可しよう! 元プロレスラーの君が護衛するなら安心だな!」

「しかしそれでは武藤トレーナーの負担も大きいのでは?」

「もしもの時の事を考えると、警戒するに越したことはないでしょう?」

 

 悲しいかなバカが実際に突っ込んでくる可能性ってのはゼロじゃない。低確率にかまけてたせいで実際に当たりを引いた、なんてことになったら泣くに泣けない。

 

「無理はしないで下さいね? ……それにしても、武藤トレーナーは随分と冷静ですね? 今回のように殺害予告を見つけたトレーナーはみんな慌てているのですが」

「うむ、それは私も気になっていた!」

 

 駿川さんと理事長の疑問は当然ちゃ当然か。まあ、こっちも色々あったんだよ。

 

「レスラー時代に似たような事がありまして……。こっちはガチでナイフ持って襲撃されましたが」

「なんと!」

 

 そんな経験なんぞしたせいで、警察に全部ぶん投げるってのが不安なんだよな。俺がフジの側に居ようとするのもそれのせいだ。

 

「それであんな要望を出したんですか。……でも、大丈夫だったんですか?」

「そいつ、よりにもよってレスラーで一杯の練習場に突っ込んできたんですよね……。結局全員でボコして警察に突き出した、ってオチがつきました」

「うわぁ……」

 

 

 

 

 

 そんな事情もあって、ここ一週間はレースを名目にフジを不自然にならない範囲で学園外に出さないように誘導し、どうしても外に出る用事がある場合は出来る限り俺が側にいるようにしている。具体的には朝の日課の外周ランニングに同行したり、外出の時は車を出すといった感じだ。

 ――個人的見解だが、仮にフジが一人の時に襲われた場合、逃げられる可能性は低い。襲撃者はウマ娘、それもG1に勝利出来るほどの脚力を持っている相手を襲おうってんだ。相手の正体は分からないが、確実に仕留めるためにも逃亡対策は練ってくるだろうさ。(車とかうってつけだ)

 それに対抗するためにも俺が警戒をする必要があった。

 ただ殺害予告の文面から考察するに、こんな日常風景の中で殺す気はないって感じではあるが。まあ、だからと言って油断していい訳じゃないがな。油断した所を急襲なんてパターンもあり得る。てか俺だったら確実にここで奇襲する。

 

 そんな訳で、襲撃への対抗は盾になる俺の行動が重要になる訳だ。警戒するにしろ、迎撃するにしろ、時間稼ぎをするにしろ――俺の頑張り次第でフジの運命は変わる。

 ……まあ警察も動いているし、殺害予告自体もただの質の悪いイタズラって可能性は十二分にあるがな。事実、ここ一週間張り付いた感じ不審な気配は感じてはいない。ついでにこの護衛モドキ自体も俺の自己満足の割合が大きい。まあ無駄にはならないと思うが。

 

「到着っと」

「おう、お疲れさん」

 

 学園の正門に到着。ここまでくれば、襲撃される可能性はゼロだ。

 

「トレーナーさんも一緒に校舎まで行く?」

「あー、悪いな。この後、すぐに出かけるんだ」

 

 それはともかく、盾になる俺の能力だが非常に残念な事にちと錆びついている。俺とてトレーニングは欠かしていないが、確実に勝負勘は失われているだろう。リングを降りて何年も経ってりゃ弱くもなる。

 

「またなの?」

「レース関係で打ち合わせでな」

 

――なら、その錆びを磨き直して落とす他はない。

 

「なら仕方ないね」

「おう。それじゃあ、また午後の練習でな」

「うん」

 

 幸い宛てはあった。交渉はちと手間取ったが、何とか許可はもらえた。そのお陰で最近は、大分勘が戻ってきているのが実感できていた。

 

「……いってらっしゃい、トレーナーさん」

「おう」

 

 フジの声に手を挙げながら、駐車場に向けて原付を押していった。

 

 

 

 

「………………」

「……へえ?」

 

 

 

 

 

 フジと別れ、愛車のワゴンで最近通い慣れた道を走る事約40分。学園では授業が始まっている頃に、俺は目的地に着いた。

 

「……おっと、今日は空いてるな」

 

 目的地に併設されている駐車場に車を止めて、ある建物に向けて歩く。もちろんその建物はURA関連の建物のはずがない。

 そこからは昔嫌というほど聞いた威勢のいい声が漏れ聞こえている。そして入り口にはデカデカと看板も掲げられていた。

 

『PUプロレスリング』

 

 こここそが――

 

 

「ほー、ここがアンタがいたプロレス団体か」

「なんでいるん?」

 

 いつの間にか隣にいるシリウスに思わずツッコミを入れちまった。

 

「どこから生えてきたんだよ」

「おい、私の事を雑草か何かと勘違いしてないか? 最近アンタ午前中にどこかに出かけているから、気になって後を付けてきたんだよ」

「うーん、ウマ娘特有の脚力を生かした尾行スタイルよ。てか授業はどうした?」

「サボった」

「どストレートすぎない? てか授業は出ろよ」

「出席日数は足りてるから良いんだよ。それでも文句言う奴はいるが、成績を見せれば大概黙る」

「こいつサボり慣れてやがる……」

 

 コイツ不良の王様気取ってるくせに、学業も優秀だから手に負えん。

 

「ついでにコイツもいるぞ」

「まだいんのかよ……って、おまっ」

「奇遇だね、トレーナーさん」

 

 車の影からひょっこりと顔を出したのは、よりにもよってフジキセキだった。

 

「お前も授業はどうしたんだよ……」

「寮長の仕事でちょっと外にね」

「おおう……」

 

 大誤算に顔が歪みそうになるのを必死にこらえながら頷く。授業中なら安全だろうと完全に油断していた。これからは寮長の仕事の方にも目を向けなきゃならない。

 

「途中でトレーナーさんの車とそれを追っているシリウスを見つけたからね。私もトレーナーさんの行き先が気になってたし、便乗する事にしたんだ」

「便乗すんなよ。てか仕事はどうした」

「もう終わらせてあるから大丈夫。あっ、因みに学園に帰る時間は指定されていないよ?」

「合法的にサボんなし……」

 

 合法な分、シリウスよりタチ悪ぃ……。

 

「それはそれとして。……トレーナーさん、私たちに何か隠してないかな?」

「……そんな事はないぞ?」

「とぼけんな。アンタは隠してるつもりだろうが、全員何かあったってのは気づいてんだよ」

 

 思わず頬が歪みそうになるが、必死にこらえて平静を装う。

 

「……なんのことだか」

「ならもう少し掘り下げてやろうか? アンタは明らかにフジキセキに意識を向けている」

「正確には私の周りに、かな? 毎朝のランニングや寮の仕事で出かけた時、トレーナーさんの視線がせわしなく色々な所に向けられていたのが分かったよ。それにトレーナーさんの雰囲気も、いつもと変わらないように装っているみたいだけど、どこか気を張っていた」

「第三者から見ても、分かりやすかったな。学園の中じゃいつも通りだが、フジが学園の外に行こうとしたときは、必ずついていこうとする。たとえ仕事が立て込んでいてもな」

「……」

「露骨すぎるんだよ。アンタはフジに関連する何かに警戒している」

「でも私には心当たりがない。……外で何かがあったんだよね?」

「…………」

 

 分かっちゃいたが流石に露骨すぎたか。ここまで不審に思われるとは思わなかった。……とはいえ真相を言う訳には行かない。

 

「あー、最近クッソしつこい記者に追い回されててな。ほらシリウスも覚えてるだろ? 取材時間過ぎてるのにやたらしつこく付きまとってきた三流週刊誌の記者。フラッシュの時もそうだったんよ。で、今回はフジのレースが近いから、警戒してたって訳だ。下手な事書かれたらかなわん」

「へー、じゃあトレーナーさんはその記者を警戒していたんだ」

「そうそう」

「ははっ、ならしかたないね!」

「あっはっはっ! そうかいそうかい!」

 

 ひとしきり笑うフジとシリウス。だが次の瞬間、

 

「ふざけてんのか、アンタ」

「ウソが下手だね。トレーナーさん」

 

 シリウスに胸倉をつかまれ物凄い力で引き寄せられ、更にフジが詰め寄る。二人の顔には先程まであった笑みが完全に消失していた。

 

「ウソは……」

「ああ、ウソは言ってないだろうな。だが今の言い訳はメインじゃない」

「……」

「ねえ、トレーナーさん。私たちを信頼していないの?」

「そんな事はないさ」

「なら本当の事を話してくれないかな?」

「…………」

「だんまりか。いいぜ、言いたくなるまでジックリとお話しようじゃないか」

 

 二人掛かりでズルズルと引きずられていく。二人に捕まっちまっている以上、どうやっても逃げられない。

 これは覚悟を決めるべきか? そんな考えが頭の片隅に過った時、

 

「あー、武藤? 何やってんだ?」

 

 唐突に聞き慣れた男の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「オラ来いやぁあああああああっ!」

「おおおおおぉらああああぁぁぁぁあ!」

「ダァラッシャぁぁぁあああああっ!」

「ぐほっ!?」

「おー、キレイなDDTだ!」

「おう練習生ども、武藤の動きしっかり見とけよ!」

「押忍っ!」

 

 PUプロレスリングの練習場、そのリングの上でTシャツ短パン姿のトレーナーがスパーリング相手と闘っており、その光景を前に屈強なプロレスラーたちが楽しそうにやんややんやと囃し立てている。

 そんな景色を私とシリウスは練習場の隅で見守っていた。

 

「楽しそうだなアイツ」

「でも、毎日こんな事をしているんですか?」

「ああ、先週から毎日さ」

 

 そう答えたのは長身でガッチリとした体格、そして短髪が特徴の男の人、PUプロレスリングの社長である蝶野さんだ。

 

「あれには驚いた。急に電話を掛けてきたと思ったら、ここでスパーリングさせてくれって言ってきたからな」

「理由は?」

「それだけは話そうとしなかった。ただ現役時代の感覚を取り戻さないといけなくなった、とは言ってたな」

「ちっ、アイツ元上司にもだんまりか」

「俺も最初は断ろうと思ったんだがね。ただあまりにも必死だったから結局折れちまって、練習生扱いって事で許可した」

 

 この人ならトレーナーさんが隠している事を知ってると思ったけど、宛てが外れちゃった。でも「現役時代の感覚を取り戻さなさいといけない」となると、私が考えているよりもずっと事態は深刻かもしれない。

 

「貰ったぁ!」

「遅い!」

「げっ、おぁ!?」

 

「でも凄いですね。前にトレーナーがプロレスをしている所を見た事はあるけど、その時よりも動きが洗練されている」

「ははっ、まだまだ現役時代ほどじゃないさ。現に今だって技の連携をミスってカウンター喰らってるしな」

「スパーリング相手は現役レスラーだろ? 引退してから何年も経っている今ですら勝負になるとか、現役の時はどんだけだったんだ」

「技の切れに定評のあるヒールレスラー『コメート・ムトウ』、それがアイツだった。ほれ、左から3番目の写真。あれが現役時代の武藤だ」

 

 蝶野さんの指さした先、壁に掛けられているいくつもの写真の中には、確かにプロレスラー時代のトレーナーさんがいた。

 黒を基調にしたリングコスチュームに身を包み、顔には派手なペイントをしている。少し見ただけだと誰か分からなかったけど、よく見ればその顔は確かにトレーナーさんだ。

 ただ、当時のトレーナーさんと今のトレーナーさんとは大きく違う点があった。

 

「細いな」

「だね」

 

 シリウスの感想には、私も同意見だった。

 写真の中のトレーナーさんはプロレスラーとして鍛えられているけど、その身体は明らかに今よりも身体全体の筋肉が足りていない。今のトレーナーさんしか知らない私たちからすれば「細い」という印象を受けた。

 

「あれはかなり昔の写真だからな。あそこまで鍛えるようになったのは引退する何年か前からさ」

「あの写真の身体から、今の身体まで鍛えたって……。何があったんですか? よっぽど大きな切っ掛けがないとあそこまで変われないんじゃ……」

「……ちょっとあってな」

 

 蝶野さんが言い淀む。その表情には苦々しさがアリアリと浮かんでいた。

 

「それは置いておくとして、君たちはアイツと揉めてたようだが、あまり問い詰めないでやってくれ。武藤は割とボケる奴ではあるが、根っこはお人好しの善人だ。何か隠しているのは確かだが、おおよそ君たちの事を考えての事だろうさ。多分、話せる状況になったらアッサリと教えてくれると思うぞ」

「……ちっ。仕方ないか」

 

 それにあの調子だと、どれだけ問い詰めてもトレーナーさんは秘密を話すことはないだろう。――結局、私たちは秘密を聞き出す事を諦めるしかなかった。

 

 

 




本作の場合は、メンタル問題を出してフジキセキ本人には伝えていませんが、リアルだとこういった脅迫文ってのは本人に伝えてるんですかね? 調べてもイマイチ分からん。
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