マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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そろそろウマ娘の方もチャンミ用キャラも作らないと。いつもはチャンミ用キャラを作るのに結構悩んでるのですが、艦これのイベントの方がエグくてウマ娘の方を考える方が楽。


40話 良い事も悪い事も教えてくれるのは良い先輩

 

「これは……、中々ライバルが強敵ね……」

 

 職員室から場所を移して遠藤トレーナーのトレーナー室――だと待ち伏せされちゃうから屋上へ。

トレーナーちゃんが来てないのを確認して、早速アドバイスを貰おうとお話してたんだけど、トレーナーちゃんの事を話したらリコリスさんが難しい顔で黙り込んじゃった。

 

「やっぱり、リコリスさんもそう思います?」

「まさか武藤トレーナーが、マヤノちゃんを含めてチームメンバー全員に告白されてるなんて思わなかったわ……。環境で言えば私の時より難易度が高いわ」

「うん。そうだよね……」

 

 分かってはいたけど、ちょっとガッカリ。でもリコリスさんの言いたいことも分かる。だって恋愛漫画みたいに恋のライバルが多すぎる上に、エアグルーヴさんもフジ寮長もシリウスさんもフラッシュさんも、皆綺麗なウマ娘なんだもん。

 

「とはいっても、武藤トレーナーはまだ誰も選んでいないのよね?」

「うん。トレーナーちゃんはいつもそういってるよ」

「一応確認しておきたいのだけど、誰かと隠れて付き合ってるとかはないのね? もしくは恋愛方面で誰かを気に掛けてるとか」

「んー、それはないと思う。もしそうだったら、みんなが直ぐに気づくし」

「よし。ならまだいけるわね」

 

 アタシの返事にリコリスさんは安心した様にホッと胸を撫で下ろした。

 

「武藤トレーナーの意思が固いのが不幸中の幸いね。まだまだマヤノちゃんに振り向かせるチャンスは幾らでもあるわ。――分かってると思うけど、トレーナーからウマ娘に告白するなんてほぼありえない事よ。例え担当に恋愛感情があったとしても、倫理観のせいでトレーナーは押し隠しちゃうわ」

「だからトレーナーと付き合うためには、私たちウマ娘が積極的にアピールしなきゃいけない、なんだよね? でもトレーナーちゃんって、アタシのアピールに中々靡いてくれないの」

「でもそれは他のメンバーも同じなんでしょう? ならまだ戦えるわ」

「んー、じゃあこのままトレーナーちゃんにアピールし続ければいいの?」

 

 でも効果が薄いのにやってても、余り意味がないような気がする。

 

「それは大前提よ。大事なのはアピールの方法ね。ここは自分の武器は最大限に利用しましょう」

「自分の武器?」

「マヤノちゃんのお子様ボディを全力で活用するの」

「えぇ……」

 

 リコリスさんの結論に思わず引いちゃった。というよりお子様ボディって……。確かにアタシは他のチームメンバーよりは子供だけど、そこまでハッキリ言う事ないでしょ……。

 

「うん、マヤノちゃんの気持ちは分かるわ。でもね」

 

 そんな私の不満を感じ取ったのか、リコリスさんは小さく頷きつつ、私にスマホを見せた。画面にはURAで公表されているチーム・デネボラメンバーのプロフィール画面が映し出されている。

 

「これを見ると分かるけど、マヤノちゃん以外のメンバーはみんなほぼ大人の身体の子ばかりよ。このメンバーの中ならマヤノちゃんの成長途中の身体は個性になるわ」

「アタシが小さいからそれが目立つって事?」

「そう。トレーナーの視点からすれば、このメンバーの中じゃ分かりやすい身体的な個性なの。この個性を生かしたアピールは有効なはずよ」

「でも身体が小さいのって、結構欠点じゃないの? 前に水族館でデートしたけど、兄妹って間違われちゃったし……」

 

 あれって地味にショックなんだよね……。あの時はトレーナーちゃんがフォローしてくれたけど、付き合ってる彼女とまでは言ってくれなかったし。

 

「私も昔はそういう事があったわね。私の最初は悩んだけど途中で吹っ切れて、逆に兄妹プレイなんてやってみたわ」

「兄妹プレイ?」

「昔私の旦那様から聞いた事があるけど、『トレーナーと生徒』だとトレーナーが周りの目を気にしちゃうけど、『仲のいい兄妹』として演技してると心理的にハードルが下がるらしいの。お陰で私も大胆な事がしやすかったわ」

「へー! 今度やってみよ!」

 

 夏合宿の時のカラオケでもアタシにも反応があったし、兄妹プレイで攻めるのはイケそう。そういえばカレンちゃんも自分のトレーナーをお兄ちゃんって呼んでるし、この兄妹プレイって実はメジャーな手法だったりするのかな?

 

「後、私も結婚してから分かった事だけど、トレーナーが甘えられる環境を作るのも有効だったりするわ」

「甘えられる環境?」

「トレーナーというのは担当の事を考えて色々と尽くしてくれるけど、トレーナーだって一人の人間よ。傷ついたり、落ち込んだりする事だってあるわ。だから自分のトレーナーと一生を添い遂げたいなら、そんな時に寄り添ってあげられないといけないの。――私としてはこれが一番重要だと考えるわ。こうなった時点で勝ちも同然よ」

「なるほど」

 

 ……そういえば、トレーナーちゃんていつもアタシたちの事を考えて助けてくれるけど、トレーナーちゃんが本当に困ってても、アタシたちには何もいってくれなかったっけ。トレーナーちゃんと付き合うのとは関係なく、トレーナーちゃんがアタシたちチームメンバーに頼れるような環境を作るのは必要なのかも。でも、

 

「でも甘えられる環境を作るって、どうすればいいのかな? トレーナーちゃんって結構頑固だし……」

「自分の担当に甘えるのは難しいからね。でも貯め込むのも良くないし、場合によっては無理矢理にでも甘えさせた方がいいわ」

「無理矢理かぁ……」

 

 今の私でも出来るトレーナーちゃんを甘えさせる方法なんて、すぐに思いつかない。トレーナーちゃんは良くも悪くも強い人だから、生半可なやり方じゃないと響かないと思う。そもそも年上の大人を甘えさせる方法って―― 

 

「あ……」

 

 不意にある事で有名な先輩の後姿が頭を過った。

 

 

 

 

 

「……来ないな」

「そりゃそうだろ……」

 

 腕組して堂々と待ち構える俺に、遠藤が呆れたようにツッコミを入れた。

 こちらはあの二人を補足するために遠藤のトレーナー室――ではなく、裏を読んで俺のトレーナー室にて待ち伏せしているが、一向に現れる様子がない。

 

「やっぱ素直にお前ん所のトレーナー室に行った方がよかったか?」

「鍵を渡した俺が言うのも変な話だが、普通追手いるのに素直にそんな所に行くわけないだろ」

「だよな」

 

 完全に読みが外れたか。こんだけ時間が経ってるともう諦めた方が建設的だな。

 

「まー、安心しろ。色々吹き込むとはいえ、リコリスだって常識はある。いきなりうまぴょい(肉)しろ、とは言わないさ」

「おう、自分が結婚する事になった切っ掛けを言ってみろ」

「あーあー、聞こえない聞こえない」

 

 こいつもいい性格してんな……。

 

「しっかし担当と結婚ねぇ。なんだかんだ上手くやれてるとは聴くが、トレーナーからすりゃ心理的にハードルが高いだろ。具体的には歳の差とか世間体とかで」

「そこは当然だな。俺たちトレーナーも一般的な倫理観は持っている。最初から生徒狙いの奴とかいれば、大丈夫なんだろうがな」

「そんな奴、トレーナーになる前に面接で落ちるだろ」

 

 例え優秀なのが確定でも、明らかに火種になるような奴をあの理事長が見逃すとは思えんし。

 

「当事者になってから分かったが、そこの辺りの問題で多少は苦労するだろうが、飽くまで多少程度に収まるぞ」

「そうなん?」

「担当契約している時点でお互い相性自体はいいからな。歳の差問題はほぼない。そもそも歳の差といっても10歳前後が大半だぞ? その程度ならお互い価値観が致命的にずれる程じゃない」

「そういや喰われるのって大体若いトレーナーだったな。確かにお互いの年齢差はそこまである訳じゃないか。俺の場合はそれ以上に差があるけど」

 

 担当に喰われるトレーナーは大概若い奴らだ。歳をとってるトレーナーが喰われる事例は殆どないらしい。(あくまで殆どだが) そう考えると、確かに歳の差問題はあってないようなもんか?

 

「後世間体の方も、学園内ならあってないようなものだから心配するな。誰も特に何も言ってはこない」

「そりゃ、俺らも事情は知ってるしな。むしろ哀れな被害者を遠目で眺めてるぞ」

「その視線は当事者からすればしんどいからやめてやってくれ」

「あと学園内は良いとして、世間一般の場合はどうなるんだよ」

「そこはスルーしろ」

「おい」

 

 シレっととんでもない事ほざいたぞ。

 

「まあよっぽど悪目立ちでもしてない限りは、そうそう変な事にはならないから心配するな。偶にウマ娘の方が暴走しそうになるが、それはトレーナーがうまくコントロールしてやればいい」

「……因みにコントロールミスったら?」

「在学中にコウノトリかキャベツ畑」

「絶対に回避しないといけない奴きたな」

「ここまで来ると流石の学園もフォローが出来ないから、気を付けてくれ」

 

 いわゆるデッドラインって奴だな。少なくともこれをやらかしたら、流石に学園にはいられない。

 

「まあ、世間体の方も成人して結婚すれば、そこまでうるさくはなくなるがな」

「結婚ねぇ……。遠藤の所の夫婦仲は――良いのは見て分かるからそこはいいや」

「なんだ、そこは良いのか。幾らでも語ってやったのに」

「惚気話に興味はないんでね。そういえばトレーナーが担当と付き合ってた場合、担当の引退と同時にトレーナーも辞めるってのはよく聞くが、お前の所はどうだったんだ?」

「ああ、リコリスから転職を勧められたな」

「理由はやっぱ他のウマ娘に盗られたくないからとか?」

「正解だ」

 

 担当ウマ娘と交際する事になったトレーナーが辞める原因の大半がこれだ。担当にとって、第二の自分が現れるような仕事場に自分の旦那を置きたくないという。まあ、言いたいことは分からんでもないが。

 

「もっとも俺もトレーナーを辞める気は更々なかったから、交渉が大変だったがな。結局、色々と注文は付けられたが、今もこうしてトレーナー業をやってる訳だ」

「しかも非公式とはいえチームを持てる程度には順調だしな。着実にキャリアを重ねている、か」

 

 対するトレーナー側は辞めるか辞めないかは、人それぞれといった所か。もっともそれにも傾向はあって、優秀な成績を残している奴は辞めたがらないが、周囲のトレーナーとの競争についていけなかったりする奴は辞める傾向があるんだが。

 

「もっとも、リコリスも不安はあるみたいで、月2回のペースで何かと理由をつけて学園に来るんだけどな」

「それよくある奴じゃん」

 

 担当と結婚した後でもトレーナーを続けている奴だが、カミさんが何かと理由を付けて旦那の職場、つまりトレセン学園に顔を出すってのはよくある話だ。

 目的は当然、旦那が受け持っている現担当への牽制。流石に現担当に露骨に威嚇するような奴はいないが、さりげなくアピールしてるとかなんとか。

 

「まあリコリスもOGとして俺に協力してくれるから、痛し痒しだけどさ」

「そういや元担当の嫁を持つトレーナーのチームって、チーム内の雰囲気がいいとか言うな。やっぱりカミさんの協力ってのは大きいもんなのか?」

「そりゃもうな。色々とフォローしてくれるからマジで助かる」

「ほー」

 

 そんな感じで駄弁ってたら、不意に勢いよく扉が開かれた。

 

「トレーナーちゃん、ただいま!」

「おう、お帰り」

 

 飛び込んできたマヤノを手を上げて迎え入れる。それに反応して、ソファーでくつろいでいた遠藤が立ち上がった。

 

「おっとマヤノちゃんが帰ってきたか。それじゃあ俺も行くな」

「あいよ。次から変な事吹き込むなってカミさんに言っといてくれ」

「言うだけ言っとく」

 

 ひらひらと手を振りながら出ていく遠藤。てかその返事は期待できない奴やん。それはともかく、今はマヤノだ。

 

「ゴメンね、ちょっと準備してて遅くなっちゃった」

「準備?」

「うん。……ねえトレーナーちゃん、最近疲れてない?」

「んー、今日はそこまで仕事がなかったし、そこまでじゃないな」

「ううん、身体じゃなくて精神的に。……マヤ、知ってるんだよ? トレーナーちゃんは夏合宿の事件以来、ずっと変な人達を警戒してるの」

「……」

 

 マヤノの言葉に直ぐに返事が出来なかった。

悲しいかなこの指摘は事実だ。あの事件以来、自分の思想の強化のために俺を変に持ち上げる人間至上主義者やら、逆にやたらと目の敵にするウマ娘至上主義者、ついでにこんな危険に巻き込まれる奴にトレーナーをさせるなとかほざく担当たちのファン兼俺のアンチと、俺への評価が愉快な事になっている。

 

「ゆーてあんなもん一過性だ。俺へのバッシング程度なんざどうでもいいんだよ」

「でも……」

「それに俺は元々ヒールレスラーだぞ? ブーイングなんぞ慣れてるし」

 

 事実この程度のバッシングなんぞ屁でもないからな。幾らギャーギャー言われようが、どうでも良い。だがマヤノは首を振るった。

 

「ううん、トレーナーちゃんが警戒してるのはトレーナーちゃん自身じゃなくて……、マヤたちの事だよね?」

「……バレてたか」

「気を張ってるのはみんな気付いてるよ?」

「また気付かれてるとは、俺も修業が足りんな」

 

 悲しいかなこれも事実。今の環境は俺のグダグダが担当に被害を与えかねない状況だ。そのため最近はそこら辺について気を揉んでいる最中だった。

 

「まあ暫くしたら落ち着くだろうよ。それまでの辛抱だ」

「そうかもしれないけど、このままじゃトレーナーちゃんが倒れちゃうよ。――だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今だけはマヤがトレーナーちゃんのママになるね」

「いや、今の話からどういう流れでそうなった!?」

 

 

 

 

 

 この娘唐突にとんでもない事を宣ったぞ!? 

 

「精神的に疲れてる時は思いっきり甘えるのが一番なんだって。大丈夫、クリークさんにコツを教えてもらったんだ。だから思いっきりマヤに甘えていいんだよ?」

「よーし落ち着けマヤノちゃん! そこら辺は人それぞれだからな!」

 

 だからいつの間にか取り出したガラガラを持ってじりじり近寄ってくるの止めような!?

 

「トレーナーちゃんって頑固だから、こうでもしないと甘えてくれないしね」

「いやそりゃ担当に甘えるとか普通しないしな?」

「最初は恥ずかしかもしれないけど、すぐにリラックスできるから安心してね?」

「そこででちゅねに飛ぶんじゃない! せめてもうちょっとマイルドにいこうな!?」

「それじゃあ行くよ、トレーナーちゃん」

「待とう! ホントに待とう――」

 

 足に力を籠めるマヤノに、俺は迎撃のための構えを取る。

――こうしてマヤノとの尊厳を掛けた戦いが始まったのだった……!

 

 




なおマヤノは完全にトレーナーのためにでちゅねをしようとしてます。
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