マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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まさかもう三女神サポカが来るとは……(白目)


42話 どんな人にも苦手な奴っている

 

 おいしい。おいしい。

 もっと。もっと。

 もっと……たべたい。

 

 

 

 

 

「あー、あんま面白い事にはならなかったな」

「何が?」

「先週私が流した噂」

「そりゃそうだろ……」

 

 昼休みの人でごった返すカフェテリアの一角。食後の茶をシバキながらスマホで学園掲示板を流し読みするシリウスに、特性弁当(メインは茹でた卵と鶏胸肉、ブロッコリー)をつまみつつツッコミを入れる。流石にアレを真に受ける奴とかいて欲しくない。

 

「釣りでももうちょっと考えろよ。流石に露骨すぎだろ」

「学園にはノリがいい奴が割といるから、釣れると思ったんだよ。ほれ、ちょくちょくパンツを剥ぎ取る計画を立てるスレが立ってる上に、それなりに盛り上がってるぜ」

「それネット民の悪ノリ的なやつじゃね?」

「大半はそうだな」

 

まあシリウスが流した噂はネタとしてはまあまあ面白いとは思うし、悪ノリ的に乗っかって楽しむ奴はいるんだろうな。流石にアレを真に受ける奴とかいないだろ。

 

「まあ一つだけガチでやって証拠画像まで上げた奴もいたから、無駄にはならなかったと思えばいいのかねぇ」

「むしろあのガバガバおまじない(フィジカル)をガチで実行した奴がいる事実に恐怖を覚えるんだが?」

 

 前言撤回。マジでやらかしたやついるのかよ。こえーよ。

 

「お前らどんだけトレーナーが欲しいんだよ……。外にもいい男はいるだろうに……」

「諦めな。トレセン学園は婚活会場だ」

「前にそうなった理由は教えてもらったが、絶妙に納得いかねぇ……」

「そもそもアンタらトレーナーがトレセン学園の生徒の男性観をぶっ壊すのが悪い。思春期女子に自分の事を最優先で考えてくれる男なんて宛がってみろ。価値観歪むに決まってんだろ」

「ゆーて、仕事的にそれやるのがお互いにベストなんだが」

「その仕事で担当の男性観をぶっ壊すな。トレセン卒が社会に出て真っ先に驚くことのランキングで、『世の中の男がみんなトレーナーみたいな男ばかりじゃない』が一位な辺りどれだけヤバいと思ってんだ」

「それを俺に言われても困る」

 

 だからってそのスタイルを辞めたら勝てるモノも勝てなくなりそうだし、現状維持するしかないんだよ。

 そんな下らない事を駄弁っていると、

 

「……ここに居ましたか」

「ん?」

 

 背後から静かだが、しっかりと耳に響く多少聞き慣れた少女の声が聞こえてきた。振り返るとそこにいたのは、前の変態幽霊騒ぎで協力して貰ったマンハッタンカフェがいつの間にか背後に佇んでいた。……駄弁ってて気が抜けてたとはいえ、しれっと俺の背後を取れるとか中々やるな。

 

「よお、カフェか」

「……武藤トレーナー、お久しぶりです。そして……シリウスさんも、お久しぶりです」

「げっ……」

 

 シリウスがカフェの顔を見て露骨に嫌な顔をする。そういえばこいつ、前に霊障騒動に巻き込まれて以来カフェが苦手だったっけ。

 

「……シリウスさん、そんな顔をしないで下さい」

「お前といると変な事ばっかり起こるんだよ。逃げたくもなるだろ」

「……いえ、逆です。……シリウスさんがあの子たちに好かれやすい体質ですから、みんな喜んでいるんです……」

「良かったな、幽霊にもお前のカリスマは通用するらしいぞ」

「マジでやめろ」

「はい、すんません」

 

 シリウスにガチトーンでアイアンクローされたんで、即座に謝った。

 

「話を戻すが、俺に何か用事か?」

「……トレーナーさんが武藤トレーナーを探していました。……あ、こっちです」

「カフェ、ありがとう。武藤さん、こんにちは」

 

 カフェに呼ばれる形で俺たちがいるテーブルにやってきたのは、カフェの専属トレーナーをやってる後輩の寺田だ。

 

「よお、どうしたよ」

「来週の昼のトレーニングで武藤さんのチームは坂路を使うんですよね? 僕も使いたいので、相乗りさせてもらえませんか?」

「つーことは共同トレーニングか」

「そうなります」

 

 他のチームやトレーナーと合同でトレーニングをするってのは、学園じゃよくある手法だ。普段とは違った刺激が得られるってのもあるし、今回の寺田のように人気があって予約が取りにくいトレーニング施設でも相乗りして利用出来たりと、結構メリットは多い。まあ相乗り戦法は専属や少人数担当のトレーナーしか出来ないんだけどな。

 

「併走してくれんなら良いぞ」

「当然です。それじゃあ来週お願いします」

「おう」

 

 基本こういった申し出は受ける事にしてるのが俺だ。よっぽど相手がアホをやらかすような奴でもない限り、デメリットなんてないしな。特に今回の場合、実力があるカフェだからいい刺激になるし、反対する理由はない。もっとも、

 

「おい、マジかよ……」

 

 俺の返事に頭を抱えてるシリウスは、全力でお断りしたいだろうがな。 まあ、カフェと会うたびにちょっとした霊障に合うんだから、気持ちは分からんでもないが。

 

「おい、その日は私はサボるからな」

「いや出ろよ。長距離のスペシャリストとの併走なんて滅多にない機会なんだから」

「ヤバい事が起こるのが確定してるのに、行く訳ねぇだろ」

「……酷ければ私が対処します」

「酷くなくても対処しろ」

「……ところでシリウスさん」

「なんだよ」

「最近、……夜に河川敷に行きましたか?」

「………………なんで知ってんだよ」

「………………………………………………ああ、それで」

「待て、私の背後を見ながら勝手に納得すんな! 絶対何か見えてるだろ!?」

「……大丈夫です、悪い事をする子じゃないですから。……多分」

「せめて断言しろ!?」

 

 キャーキャーやってる二人。こりゃ当分収まらんな。

……だがこれは都合がいい。

シリウスの意識がカフェに向いている隙に、改めて視線を寺田に戻し切り出す。

 

「で、本題は?」

「あ、わかりますか?」

 

 問いかけに寺田も苦笑しながらも俺の意図を察したらしい。

 

「そりゃ来週の共同トレーニング程度なら、俺が確実にいる午後のトレーナー室に行けばいいだけだからな。わざわざ昼時に俺を探し出す必要なんざない。それにも関わらずカフェと一緒に俺を探してたって事は、緊急の用なんだろ?」

「正確には緊急という訳ではありませんが、協力して欲しい事があるんです」

「協力?」

 

 思わず首を傾げる。寺田とは昔シリウスと巻き込まれた霊障以来の付き合いだが、こいつは基本的に優秀なもんだから、こうして何かを頼られるってのは初めてだ。

 

「最近なんですが、学園の空気が重いんです」

「学園の空気? いや別に変な事件が起こったとかないし普段通りだろ」

「いえ、具体的には霊障的に異変が起きるんです」

「……」

 

 そっちかよ。よりにもよってそっちかよ……。

 

「……前にカフェから俺にも霊感自体はあるとか言われたが、そういうのが見えない俺にどうしろってんだよ」

「でも二回も霊障事件を解決してるじゃないですか」

「そりゃふざけ倒した幽霊をシバいた事はあるけどよぉ」

「あと、霊障関係で相談できるのって武藤さんだけですし」

「そーだけどさー」

 

 そりゃ幽霊なんてオカルトを真面目に信じてる奴なんて俺と俺のチームの面子位だから、言いたいことは分かるけどな?

 

「話を戻しますけど、学園の空気の件についてはカフェも感じ取っています。今は悪さはしていませんが放置すると危なそうなので二人で協力して定期的に祓っているんですけど、すぐに変な空気が溜まってしまうんです。しかも変な空気に誘われて雑多な霊まで寄ってくることもあって、大変なんですよ」

「そういや、お前もお祓いとか出来るんだったけな……」

「カフェは学園の外からではなく中から発生しているように見える、って言っていたので調査を続けているんですけど、発生原因はまだ見つかっていません」

「あーなるほど?」

 

 とりあえず、とりあえず学園で変な霊障が起きてるのだけは分かった。あとこれが俺がどうこうできる代物でもないって事もよくわかった。その上で、だ。

 

「で、俺にどうしろと? 完全に専門外だから何も出来んぞ?」

「今は何も。霊障絡みの事件が起こるかもしれないので、警戒だけはしていてください」

「さよか」

「ただ場合によっては協力を仰ぐことになると思いますので、その時はお願いします。何だったら解決までしてくれると助かります」

「オカルト素人にんな事期待すんなよ……」

 

 こうして普段とは別方面からの厄介事に巻き込まれる事となった。

 

 




今回からまた中編が始まります。もっとも今回はそこまでシリアスにする予定はありません。
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