マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》 作:とらんらん
「結構盛況だな」
クリスマス本番当日。カフェテリアにて開催されているクリスマス前哨戦ポジションになっている生徒会主催クリスマスパーティーに参加した時の正直な感想がこれだった。今は邪魔にならないように壁際に陣取っているんだが、右も左も見渡す限りウマ娘だらけ。みんな楽しそうにメシを喰ったりおしゃべりしたりと、クリスマスパーティーを楽しんでいる。
そんな俺の呟きに、隣に陣取っているフジが当然とばかりに頷く。
「このクリスマスパーティーは12月最大のレクリエーションだからね。参加自由とはいっても出る子は多いんだよ」
「トレセン生は基本的にノリがいいからな」
「特にトレーナーがいない子は出席率が高いんだ。クリスマスに何もしないというのも寂しいしね」
「それもそうだな」
忘れがちだがトレセン学園において、担当トレーナーがついていない生徒の方が多数派だ。そんな娘たちの参加率が高いんなら、そりゃ大盛況にもなるってもんだ。
因みに俺のチームの面々もこのパーティー会場で各々過ごしてるぞ。フラッシュとマヤノは友人たちとお喋りを楽しんでるし、シリウスもいつもの取り巻きの娘たちとワイワイやってる。エアグルーヴは主催メンバーって事で生徒会メンバーと色々とやっているし、今話しているフジはさっきまでファンクラブの娘と談笑してた。
そんな多くのウマ娘たちが集結しているカフェテリアだが、明らかに生徒じゃない奴の姿もポツポツと目に付く。
「あと意外とトレーナー同伴組もいるみたいだな」
「そうだね。でも専属系のヒトは結構少ないかもしれないよ?」
「そうか?」
「ほらあのトレーナーの側に3人ウマ娘がいるし。それにあそこも同じ感じだよ」
「あー、ホントだ。こりゃトレーナーが主導して引っ張ってきたな」
担当たちがチーム内でバチバチにトレーナーを巡って水面下で争ってる、なんてちょくちょくと聞く話だ。まあそもそも、全員がトレーナーを狙ってるのに一致団結しているウチがレアケースなだけだけど。
ともかくそんな空気が妖しいチームのトレーナーがこれ以上事態をややこしくしないために(具体的には複数人から二人だけでクリスマスを祝いたいとねだられて、更に空気が悪くなる)、何とかこのクリスマスパーティーに担当たちを連れてきたんだろうな。
「一応専属系っぽい奴もいるっちゃいるな。トレーナーが滅茶苦茶いい笑顔してるのが気になるけど」
「対してその担当のウマ娘の方はちょっと不満顔だね」
「トレーナーが相当頑張ったんだろうな」
あそこまで持ち込めれば、パーティー後に担当を寮まで無事に送り届ければ勝ちだろうしな。外泊届が出されていたらアウトだけど。
「彼女は他の専属の子のように、聖夜をトレーナーと二人で過ごしたかったんだろうね」
「だろうな。……やっぱそういうの狙って動いてる娘って多いん?」
「当然。もうトレーナーと結ばれてる子は、早々に外泊届を出してるよ。宿泊場所はトレーナー寮だったり、どこかのホテルだったりするけどね」
「うーん、ある意味で順当だな」
多分そいつ等が一番平和なクリスマスを過ごしてるんだろうな。もちろんうまぴょい(聖夜)の六時間込みだけど。
「後担当トレーナーを狙ってて、ここにいない上に外出届を出してる子もいるけど、彼女たちは今どこにいるんだろうね?」
「分かってて言うのはやめよ?」
おおよそトレーナーをモノにすべく大暴れしてんだから……。
――幕間その1 ある哀れなトレーナーの結末 速攻編
「トレーナー、プレゼントは私だよ!」
「いや、パーティー始まる前にそれぇええええ!?」
「さあさあさあ! 二人で存分にクリスマスを楽しも!」
「ちょっと待とう!? 初手うまぴょい(贈り物)とかロマンもへったくれもないって!? って力つよ! 待っ――ああああああぁああああ!?」
「今頃喰われてんだろうなぁ……」
「でもまだ7時だよ? 狙いはともかく、彼女たちもふさわしい雰囲気は欲しいだろうから、まだ平和に二人きりでパーティーをしてるんじゃないかな?」
「あー、それもそうか」
生徒たちも思春期だしロマンスとか憧れる娘も多いだろうから、そこら辺も考慮すると初手うまぴょい(ロマンス(仮))とかは流石にないか。……なんか悲鳴が聞こえた気がするのは気のせいだ。
「って、それ後々喰われるって事なんだが?」
「うん、そうだよ?」
「そこは誤魔化して欲しかったな……」
「あの子どんな手段を採るかはそれぞれ違って来るだろうけど、みんな自分のトレーナーを狙っているのは自明の理だからね」
「そりゃそうなんだけど、その手段が問題なんだよ……。最近は誘い受けスタイルが流行ってはいるが、クリスマスなんて絶好の機会が目の前にぶら下がってるせいで、その枷が外れて強硬手段を採りかねん」
「うーん、それは否定できないかな」
――幕間その2 とある哀れなトレーナーより 手仕込み編
「お味はどうですか、トレーナーさん?」
「うん、美味い。特にこのローストビーフとか滅茶苦茶美味いよ」
「よかった。腕によりをかけた甲斐がありました」
「うん。……ところでさ」
「はい?」
「……君料理に何か仕込んだ? こう……君の料理を食べ進めていたら、色んな意味で元気になってきたんだけど……」
「……ふふ、効いてきましたね。最近トレーナーさんがお疲れの様でしたので、元気になる(勃)お薬を使わせて頂きました。お陰で料理を食べた私も大洪水(陰)ですけど」
「や、やられた……!」
「さて、トレーナーさんも元気になられましたから――、そろそろデザートはいかがですか?」
「今年は何人喰われるやら……」
「うーん、今年はこれまでと違って誘い受けがトレンドになってるから、ちょっと読めないかな」
「だよな」
「私としてはトレーナーさんがその中の一人になってくれると嬉しいんだけどね。もちろん相手は私で、ね?」
からかうように笑って見せるフジキセキ。だが目はマジだ。そんなフジに肩を竦める。
「そりゃ勘弁だ。答えは今も変わらんよ」
「だよね。その答えは分かってたよ。だからこそ私たちも頑張ってるんだけどね」
「さよか」
俺が定期的に燃料を投下しちまっているとはいえ、みんなよくやるわ。しかも一時休戦して協力体制すら敷くんだから、どれだけ気合入ってんだよ。まあチーム内がギスギスするよりはずっとマシだが。
「そんな訳だから、クリスマスパーティーの二次会は覚悟していてね、トレーナーさん?」
「お手柔らかに頼む。しっかしホント、お前らが強硬手段に出ないタイプばかりで助かったぞ。全員からルール無用で来られたら流石の俺も負けてたし」
あ、前にフラッシュが掛かった件はノーカンな? ありゃ半分くらいもらい事故みたいな感じだし。
「んー、それはみんな自制出来るタイプばかりなのもあるけど、チームのみんながトレーナーさんを狙ってるからというのもあるんだよ」
「相互監視的なやつ?」
「それもあるけど、仮に強硬手段をとってトレーナーさんを手に入れても、他のみんながトレーナーさんを奪還しようと襲い掛かってくるのは確定してるしね」
「あー」
そこら辺はチーム系トレーナーのそれと似通ってるのか。チーム系トレーナーが専属よりも比較的無事でいられるのもそんな理由だし。
「でも逆に言えばトレーナーさんがちゃんと選んでくれれば平和に収まるんだろうけどね?」
「お、おう……」
「だから今日の二次会は一杯楽しんでいってね?」
フジがとってもいい笑顔を浮かべ宣言した。――本当の戦いはここから始まる!
――幕間その3 やっぱり悲しきトレーナーの末路 ウマの紅茶編
「いやー、料理もケーキも美味かった」
「ありがと。でもクリスマス料理に手間取っちゃって、ケーキは買ってきたやつだったんだけどね?」
「でもあのケーキって有名な店の奴だよな? 噂には聞いてたけど、ホントに美味かった」
「ふふ、あそこの店にしておいてよかった。あ、お茶出すね。アイスティーしかなかったけどいい?」
「ああ、ありがとう。頂きます。あー口がさっぱり……あれ、眠気が急に……」
「ふふふっ」
「あっ、やべ……。油断……した……! ……ぐう」
「お休み、トレーナー。――それじゃあ、頂きます」
次回、武藤が本格的に戦いに挑みますw