マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》 作:とらんらん
余談ですが、艦これは援軍到着前に攻略完了しました。
攻略中に新規ドロップ二隻来たり、攻略も順調に終わったので全体的に運が良かったものの、サーモン堀で140周する羽目になるという揺り戻しがエグかった……。
生臭い話だが、ウマ娘たちが競り合い華やかなレースの世界ってのはスポーツとして見られる事も多いが、相応に金も動く世界でもある。
レースを開催して客を呼び込み、そして稼ぐってのはレースの代表的な運営方法だな。URAのメインの稼ぎだ。これをしくじれば組織運営にも影響が出るから、URAも必死だ。
そしてレースに出るウマ娘にとっても、レースの場は名誉と同時に金も手に入れるチャンスだ。勝つもしくはいい順位に入る事が出来れば賞金が出る。G1戦線でいい感じに戦えている奴らなんかは、中々の金額を受け取っているってのは有名な話だ。中には現役時代に荒稼ぎして、引退後に悠々自適な生活をしているって奴もいるとかいないとか。
また競走バってアイドル的な立ち位置でもあるから、レース以外でも相当な金額が動くのが常だ。人気のあるウマ娘がライブをしたら下手なアーティスト以上に客が集まったってのはよくある話。売れないアイドルが競争バに嫉妬してる事が多いというのは、芸能界じゃ常識。
んでアイドル的立ち位置って事は、ウマ娘に関するグッズ販売も稼ぎになるんだが、これがまたデカい市場だ。URAの中じゃレース周りに次ぐ稼ぎを叩き出していてURAを潤しているし、同時に主役となるウマ娘の懐を満たしている。中にはグッズ収入がレース賞金よりも上回ってるって娘もいるぞ。代表例はオグリな。流石アイドルウマ娘。
余談だが必ずしもレースで強い=人気があるって訳ではなくて、レースで余りいい成績を出せないけど人気があるウマ娘ってのは、下手なG1勝利者よりもよっぽど稼いでるってのはちょくちょくある。具体的にはウララ。あの娘、相当稼いでると思うぞ?
閑話休題。
さて、そんな大金が動く世界であるのだから、当事者ってのは真面目にやらなきゃならない。主役たるウマ娘はもちろん(こっちは名誉も掛かってる)、彼女たちがレースで戦えるようにするためのトレーナーだって努力する。そして言い方は悪いがウマ娘を利用して稼ぐ面々だって稼ぐ努力をしないといけない。
だからな?
「性懲りもなくクソみたいなモン作ってんじゃねぇえええええ!」
「ああああああああああああああ!?」
仕事のせいで徹夜明けでイラついている所に、突然アポなしで俺のトレーナー室に飛び込んできた上に、明らかに売れなさそうなグッズのプレゼンを始めようとしたURA商品開発部のバカをアイアンクローするのは許されると思うんだ!
「た、助けてシリウスさ――」
「おい、もっと締め上げてやれ」
「よっしゃ」
「シリウスさん!? って、あだだだだだだだだっ!」
生憎と俺の隣にいるのはチームでも武闘派のシリウスだ! 助けを呼んでも止めんぞ!
「ヒート――エンドぉ!」
「ぶべらっ!?」
バカをアイアンクロースラムでソファーに叩き込んでフィニッシュ! クソボケ討伐完了だ! 一つ息を吐いて、改めてシリウスの隣に座り直す。
「まったく、フジの時に失敗したのに、全く同じことやって売れる訳ねぇだろ」
「こんなもん欲しがる奴なんざ、よっぽどの物好きだろうな」
俺とシリウス、二人とも呆れながらURAの商品開発部のバカ――確か熊田だったか? が試作品っつーて持ってきたバスタオルに目を向ける。
バスタオルに描かれているのはシリウスの写真と名前。これが右半分にプリントされている。
うん、ここまではいいんだ、ここまでは。問題は左半分な訳で……。
「てかトレーナー、こんな写真いつ撮ったんだ?」
「最近は撮られた覚えはないな。てかこれフジの時に撮らされたやつの使い回しだな」
このバスタオル、シリウスと対になるように左半分にデカデカと俺の写真が印刷されてるんだよ……。なんかタイトルマッチのポスターみたいだな。
「新商品を開発したって突撃してきたと思ったら出てきたのがコレとか、どれだけ舐めた真似してんだ」
「で、URAの開発五課の熊田だったか? アンタ等なに考えてコレを作ったんだ。下らない理由だったら今度は私がアイアンクローだ」
「う、うう……。説明させて頂きます……」
シリウスと俺による冷めた視線の中、ちょっと頭頂部が寂しくなり始めてる中年の男――熊田が復活する。
「えー、この商品ですが以前より商品展開している『ウマ娘&トレーナーシリーズ』の一環として開発しました」
「それは見りゃ分かる」
この熊田の言った「ウマ娘&トレーナーシリーズ」って奴だが、文字通りウマ娘とトレーナーがコラボしたグッズだ。
そもそもトレーナーのグッズに需要があるのか? って疑問もあるだろうが、実はボチボチ売れてたりする。それも単独で。もっとも商品化されるのは美人やイケメンのトレーナーだけだ。俺の友好関係の中だと、樫本さんや桐生院なんかがグッズを出してる。
で、そんなグッズ化出来るレベルのトレーナーなら、担当のウマ娘とコラボしても売れるんじゃね? って事で企画されてまあまあの評価されているのが「ウマ娘&トレーナーシリーズ」だった。
「で、問題は何で俺を頑なにコラボさせようとすんだって所だ。フジの時も爆死したろうが」
当然だが強面マッチョの俺に商品化のオファーなんぞ来ていない。プロレスと違って客層が違うから需要がないと判断するのは当然だ。
そう考えていたんだが、フジの安田記念の事件から暫くした頃、URAが何をトチ狂ったのか、
「今の話題性抜群な時期なら絶対売れるから!」
とかほざいて、相手に圧されてフジとのコラボグッズを作った事があったりするんだ。
結果? 見事な爆死だったよ。んな訳で同じ轍を踏む訳にはいかん。
「いえ、あのフジキセキ&武藤バスタオルですが、発売初期こそ全然売れませんでしたが、現場の営業努力で何とか売りさばけました」
「マジかよ」
意外過ぎるぞおい。てか押し付けられたショップが可哀そうなんだが。そんな考えが頭を過った直後、シリウスから待ったが掛かった。
「いや待てトレーナー。おい、そのバスタオルを作って利益は出たのか?」
「……」
「……おい」
「………こう、ワゴンセールを駆使して捌き切ったそうですが、売り上げ的には赤字です」
「よーし、マッチョさんジャーマンスープレックスかましちゃうぞー」
「待てトレーナー。その前に私のアイアンクローを忘れるなよ?」
「ストップストップストップ! ホント止めて!? 今回は! 今回は新たなギミックを付けたので勝算があります!」
「ちっ」
全力土下座を始めたから、慈悲でジャーマンはやめてやる。ただし内容次第ではパイルバンカーに進化するぞ。
「で、ギミックってどんなんだよ」
「このバスタオルですが、我が開発五課が開発した新技術により、なんと水に濡らすとイラストが変わります!」
「へぇ、中々面白いギミックじゃないか」
「……確かにギミックとしちゃ面白いが、これシリウス単独の方が確定で売れるだろ」
「いえ、普通にやってもつまらないですし」
……やっぱり今の内にシバいた方がいいか、こいつ?
「で、コイツは水に濡らすとどうなるんだ」
「実際に見て頂いた方が早いですね。――取り出しますはこちらの霧吹き! これをタオルにシュシュっとしますと――!」
バスタオルに水分が染み込んでいくと共に、タオルに印刷されていた俺とシリウスのプリントが消えていき、徐々に新たな模様が浮かび上がってくる。そしてそこに描かれていたのは、
「なんとメイド服姿の武藤トレーナーの姿が!」
「トレーナー、行くぞ!」
「おう! せーのっ!」
「待って待って待って! ――ぐほっ!?」
即座にこの頭の涌いたアホに、シリウスとのツープラトンでのブレーンバスターを食らわせてやった!
俺のメイド服姿とかどこに需要があるんだよ。物売る気あるのかこいつ。
「ともかく、このバスタオルは却下だ却下。てかこれじゃメインが俺じゃねーか」
「あ、その通りです。これ名目上はウマ娘&トレーナーシリーズとしていますが、武藤さんをメインに添えて新規客を呼び込む目的として開発しました」
「認めんな。そして誰がそんなモン買うんだよ」
「何を言っているんですか! ウマ娘も美人やイケメントレーナーは既に掘りつくされた漁場ですが、武藤さんはこれまでにない全く新しいタイプ! つまりブルーオーシャンなのです! そこに我々開発五課が新開発した技術をつぎ込めば大量待ったなしです!」
「その漁場はブルーオーシャンどころか死海だろ」
レースファン相手にマッチョを押した所で皆困惑するわ。
「技術を売りにする前に、需要を考えな。何かマシなグッズはないのかよ」
「目玉商品がボツとなりますと……、サブで持ってきたこちらのURA仕様にアレンジしたシリウスさんの航空免許証のレプリカや、シリウスさんをモチーフにしたセスナ機のプラモデルくらいしか……」
「いや、それでいいじゃん……」
温度差で風邪ひきそうな位に、滅茶苦茶まともなモンが出てきたな。
「確かにこれらのグッズなら、一般のグッズ程度には売れるでしょう。しかしこんな保守的なグッズでは大ヒットは飛ばせません」
「言いたくはないが、所詮競争バのグッズだしな。そういうもんだろ」
競争バのグッズって、そのウマ娘のファンじゃないと買わないから、大ヒットって出にくいんだよな。
「いいえ、それはダメです! 我々開発五課のモットーは『これまでにないモノを作る!』! こんな保守的なグッズの開発なんて簡単な仕事は、開発一課に任せればいいんです!」
「お、おう……」
熱意スッゴイなおい。思わず引いちゃったよ。だが燃え上る熊田を前にシリウスは思いっきり白けている。
「アンタ等の理想とかどうでも良い。とりあえずそこの筋肉ダルマをメインに据えるのは諦めて、航空免許証の方を売りに出せ」
「プラモはいいのか?」
「私のファンは女性層が多いかな。プラモは売れないだろ」
「なるほど」
「ぐぬぬ……」
熊田がどこか悔し気に呻く。そしてしばらく黙り込んだ後、燃えるような瞳を俺たちに向け言い放った。
「……一週間後です」
「あん?」
「こんな第一歩目で躓いていては五課の沽券に関わります! 一週間後、URA奥多摩支部にある開発五課にぜひお越しください! 必ずやこんな免許証のレプリカよりも満足できる商品をお見せします!」
『…………はっ?』
目の前の中年の唐突な宣言に、俺たち二人は揃って間の抜けた声を上げてしまった。
仕事明けで疲れてる時にネタを考えてたら、URAに変な組織が生えてきました