マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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やられっぱなしのR-18ゲームの反撃のターン


76話 時にはリスクを承知で地雷を踏まなきゃいけない時ってある

 

 シリウスさんが「多分応援として使えそうな奴らに声を掛けてみる」ってどこかに電話してから3時間。夜も遅いしアタシたちが学園に戻るかどうか相談していた時、そのヒトたちはやってきた。

 

「どーも、開発五課プログラム班到着しました!」

『三女神の危機と聴いて駆け付けてきました!』

 

 背中に『URA奥多摩支部 開発五課』って達筆で書かれている白衣を着た男のヒトを先頭に現れた白衣姿の集団。その人たちの瞳は凄い気合いに満ちていた。

 

「か、開発五課!?」

 

 そんな開発五課の応援に、管理責任者のヒトが驚いた声を上げた。

 

「な、何でここに!?」

「? プログラムのせいで三女神と武藤トレーナーがメガドリームサポーター内で行方不明になっていると聴いたので、急遽応援に駆け付けただけですが?」

「い、いや……この件自体、サトノと学園以外にまだ情報が出回っていないはず――」

「私が呼んだ。コイツ等はメガドリームサポーターの拡張パッチを作ってるから、それなりに戦力になりそうだったからな」

 

 管理責任者さんの前に立ったのはシリウスさんだった。

 

「なっ!? シリウスシンボリさん、なんでそんな勝手な事を!?」

「随分と人手不足に悩んでそうだったからなぁ。私の伝手で応援を呼んだだけだぜ」

「メガドリームサポーターの管理はサトノの管轄です! URAは――」

「おいおい、何を言っていやがる。三女神AIだけならサトノの領域って言い張れるだろうが、この事件じゃトレセン学園の私のトレーナー、つまりURA所属の人間が巻き込まれてるんだ。そうなった時点でサトノだけじゃ収まらないんだよ」

「ぐっ……。なら然るべき手順をもって――」

「普通に人命が掛かってるこの緊急事態に、そんな事やる必要とかあります? 事後承諾で良くない?」

「ちょ……!?」

 

 シリウスさんと開発五課のヒトに言葉でボコボコにされる管理責任者さん。そんな様子を見たシリウスさんは悪魔のような悪い笑みで続けた。

 

「おい、その髪の薄い頭で考えな。このままアンタらだけでアテもなくグダグダとキーボードをいじくり回すか、外部の人間とはいえ大量の応援を受け入れて事件解決の糸口を探すか。どっちが得だと思う?」

「うっ……」

「事件が長引けば長引く程サトノに、メガドリームサポーターを管理していたアンタ等にバッシングが行くだろうなぁ? しかもURAからの『善意』を蹴った、なんてマスコミが知ったら大炎上間違いなしだ」

「……」

「さあ、どうする?」

「……開発五課の皆さま、どうぞよろしくお願いします」

「オッケー! 行くぞお前ら!」

『イヤッハァアアアアアア!』

 

 リーダーのようなヒトの号令と共に、白衣姿の男のヒト、女のヒト、ウマ娘の集団がパソコンや物々しい機械を持って突貫していった。

 

「ハッハァ! まさかサトノの最先端技術を全力でいじれる機会が来るなんてなぁ!」

「拡張パッチ作るために多少は仕様を教えてもらえたけど、あれだけじゃ満足できないしな」

「サーチソフト起動するぞー」

「サーチ結果はこっちにも回してくれ!」

「それじゃ、私の班は現地で調査してきまーす。バックアップお願いしますねー」

「俺はバグ抜けプログラム持って行きます」

「おう! 思いっきり暴れてこい! 後、壁抜けミスって石の中にいるとかすんなよ?」

「大丈夫、プログラムを改良して、ヤバくなったら弾き飛ばされて荒ぶるだけだ!」

「それはそれで大丈夫なのか……?」

「よーしお前ら、メガドリームサポーターの全部を解析する勢いでやっちまえ! 朝には三女神の居場所を見つけ出すぞ!」

『おおっ!』

 

突然の乱入者に若干引いているサトノの技術者を余所に、その人達は物凄い勢いでパソコンをいじり始めた。その勢いと気迫そしてスピードは、サトノのプログラマーのそれを上回ってる。

 その様子を見て――アタシは直感的に事件解決のための歯車が噛み合い始めたように思えた。

……そんな時だった。

 

「あれ?」

 

 メガドリームサポーターの箱体の中で眠るトレーナーちゃんの身体が少し動いた。

 

 

 

 

 

 ゴドルフィン発案の野郎NPC酷使無双、正確には首輪で捕まえたNPCを使ったエロギミック解除方法の確立は、俺たちの行動の選択肢を広げたのは確かだった。

 棒()が入ってくる(意味深)タイプのギミックなら、代わりにNPCの汚ったない穴()で代用できる。

 そして白因子が必要なタイプのギミックなら、野郎ならいくらでもいるから、そいつ等をとっ捕まえて出させれば(強制)いいだけ。

 と言うか首輪で捕まえたNPCが便利すぎる。生贄にヨシ、トラップ解除にヨシ、肉盾にヨシの三拍子が揃ってる。ダンジョンアタックじゃフル活用させてもらっているぞ。

 

そんな協力者(強制)のお陰様で、俺たちの封印プログラム内の探索は3日で一気に突き進むことができた。

 先の白因子収集で開いた盗賊ばっか出る洞窟型ダンジョンは、現地で得た協力者(仮)をフル活用してサクッとクリア。

 次の狼やら牛やらの動物系モンスターばかりでるフィールドは、珍しくトラップ系がなかったので力と力のぶつかり合いの末に制覇。なお攻略中に、癒しを求めたゴドルフィンがモフモフした狼をテイムしていた。

 次のダンジョンは触手やらスライムやらのそれっぽいモンスターばかりな上にトラップもあちこちにあったが、拠点の街や盗賊ダンジョンから人員をリクルート(拉致)して、触手トラップを生贄で踏み越え、襲い掛かる触手を肉盾で身代わりにするなどして、何とか攻略。

 

 一日一ダンジョン攻略のハイペース。このままの勢いで、全ダンジョンを攻略出来るだろうって思っていたんだ。

 ……もっとも、エロギミックとは別の問題でそれが難しいってのがすぐに分かったんだがな?

 

「ふっ!」

「えいっ!」

「やっ!」

「グオオオオオオオっ!?」

 

 ただいま、オークやらホブゴブリンやらの如何にもなモンスターが出る洞窟系ダンジョンを攻略中で、そろそろ最奥って所でエンカウントした敵と殴り合ってる真っ最中だ。

ウマ娘三人組が俺の二回り位デカいオーク相手にフルボッコにしている。相手の攻撃も当たらないし、このまま行きゃ完封は出来るだろう。

 で、対して俺はと言うとだな。

 

「相変わらず碌なドロップがないな……」

 

周囲を警戒しつつも、さっき俺が潰した鎧姿のホブゴブリンの戦利品を漁ってる最中だ。

……そんな事やってないで、戦ってる三人の援軍に行け?

 うん、正論だな。……でもな? 悲しいかな、俺が全力で殴った所でオークは怯みもしないんよ……。もう純粋にパワー不足。いくら俺がマッチョでもウマ娘程のパワーはないから、オークの硬さを突破出来ないんだよ。

この世界で探索を進めている内に段々と敵が強く硬くなっていってたし、いつかこの日が来るだろうとは思ってたが、ここに来て現実になったって感じだ。

 ……ただこの攻撃力不足の問題は、なにも俺だけが関わっている課題って訳じゃない。

 

「おおおおっ!」

「グォオオッ!?」

 

 俺が隅っこでガサゴソやってる間に、バイアリーの蹴りがオークの顎に決まった。オークはそのまま動かなくなって戦闘終了。

 傍目から見りゃオークを無傷でフルボッコにした完封勝ちだ。だが、

 

「……倒せはしたけど、ちょっとこれはマズいかもね」

「そうね……」

「三人がかりでこれでは、いつかは行き詰る……」

 

 戦っていた三人は見え始めていた問題を前に、一様に顔を顰めていた。

 

……攻撃力不足の問題は、なにも俺だけが関わっている課題って訳じゃない。ウマ娘三人にとっても、直ぐそこまで迫っている問題でもあるんだ。

 

「やっぱキツイか?」

「ああ。今はオークが一体だから戦えるだろうが、複数体出現すれば苦戦は必至だろう」

 

 今の戦闘は余裕で勝てたように見えるが、三対一で数的優位で戦ってたからに過ぎない。正直な話、この三人でもこのダンジョンのオークみたいな強個体とのタイマンだと苦戦必至なのが現状だ。

 

「わたしたちもゲームのスキルや魔法を使えればよかったのだけど……」

「うん、格闘戦だけだとそろそろ限界が近いよ」

 

これまでは俺と三女神による格闘戦で押し通せたが、流石にここに来てジョブ無しの弊害が目立ってきていた。強敵相手に搦め手無しの格闘戦一辺倒はかなり苦しい。

 

「俺も半分くらい役立たずになってるし、そろそろマジで詰みかねんな」

「……前半についてはまだ戦えているだけ十分すぎる気がするけど、後半については同意するわ……」

「俺たちがやっている事は飽くまでも地形の把握だから、行き詰ったら外からの救援や脱出路を作ってもらうのを待つのもありだけど、それが何時になるのか……」

「……封印プログラムを作った相手も、外部からの救援については想定しているはずだ。何かしらの罠が仕掛けられている可能性は高い。……最悪自力での脱出も覚悟しなければいけないだろう」

 

 バイアリーの最悪の想定に、この場の全員が思わず顔を顰めた。

 自力脱出するにもこのゲーム世界の把握は必要だ。それはつまり最低でも全てのフィールド、つまり全ダンジョンの制覇をしなければいけないという事でもある。……既に戦闘力的にも限界が見えているにも関わらず、だ。

……この先どこまでダンジョンがあるかはまだ分からないが、ラスダンに挑む前に攻撃力の限界のせいで進軍できなくなるだろう。……詰みが近い。

 そんな迫りくる最悪の未来を振り払うように、ゴドルフィンは一つ咳ばらいをした。

 

「……今、そのことを考えるのは後にしましょう?」

「せやな……」

 

 まだダンジョン攻略中だし目の前の事に集中しよう。まずは今さっき倒したオークから戦利品を漁る所からだな。エネミーの持ってる武器って俺らじゃ使えないから(どういう訳か死体から剥がせない)、おおよそ金を漁るだけだけど。

 

「おっ、いい感じに持ってんじゃ――「ギャギャっ!」ん?」

 

 嫌に甲高い鳴き声がしたのでそっちに視線を向ける。そこにいたのはこのダンジョンでよく遭遇する敵で、今の俺でも単独撃破が出来るホブゴブリンが一体。ただし、

 

「何故全裸なんだ……?」

「しかも頭にお札がついているよ……」

 

 変態が多いこのゲームの世界でもこの謎ファッションをやってる奴はいないぞ。しかも武器すら持ってないというストロングスタイルだ。

 とりあえず敵は敵だ。さっさと潰すのが吉。汚いモンを俺らに見せつけているホブゴブリンに構えを取る。

 

「ギャっ!」

 

それに反応したのか先手必勝とばかりに飛び掛かってきた。ゴブリン系の基本モーション、つまりいちいち雑って感じだ。そしてそのスピードも精々中学生男子よりちょっと遅い程度、

 

「って!?」

 

 のはずだった。

 ウマ娘並の驚異的なスピードで距離を詰められ、更に勢いそのままに拳が繰り出される!

 

「うおっ――って!?」

「ギャギャっ!」

 

 完全に虚を突かれてカウンターを取る所の話じゃなくなり慌てて回避! 幸いテレフォンパンチなお陰で躱し切ったんだが、その後が問題だった。繰り出された拳が石造りのダンジョンの壁に当たったんだが、轟音と共に壁にヒビを入れやがった!

 

「おいおいおいおい! こいつホントにホブゴブリンか!?」

「援護する! ハァ!」

「ギッ!?」

 

 このホブゴブリンが他のザコとは違うと直ぐに感じ取ったバイアリーが距離を詰め、不意打ちの蹴りを食らわせぶっ飛ばした! 普通のその一撃で撃破出来る程の威力だ。だが、

 

「おいおい、アレ食らって普通に立ちやがったよ」

「ああ。しかも手ごたえが変だ。妙に硬い」

 

 ぴょいっと跳ね起き、ホブゴブリンがまた襲い掛かろうと腰を落としてやがる。しかもバイアリー曰く、防御力も中々のモンらしいし、ますますヤバい敵だな。

 

「ギャギャっ!」

「って、また俺か!」

「武藤トレーナー、引け!」

「いや、この程度ならヤれる」

 

 ウマ娘並のスピードと圧倒的パワー、そして妙な防御力。こりゃ強敵だ。多分こいつがこのダンジョンのボスなんだろう。多分このゲームをプレイする奴にとっては、中々の強敵なんだろうな。

 ……ただし、俺にとっては強敵でもなんでもない。要するにこいつって、

 

「はいはい、いつものいつもの」

「ギッ!?」

 

 パワーとスピードだけ見れば、俺が偶に使ってる対ウマ娘戦闘訓練プログラム、「バーチャルファイト」の仮想敵と変わらんもん。そんなもん怖くも何ともない。

 つー訳で、フェイントを入れて雑なパンチを躱しつつ、サクッと足払い! 雑なモーションしか出来ないホブゴブリンはまんまとすっ転んだ! そうなりゃ後はまな板の鯉って奴だ。

 

「ゴドルフィン、行くよ!」

「ええ! せーの!」

「グギャァアアアアア!」

 

 動けないホブゴブリンに、ダーレーとゴドルフィンが全力で踏みつける! 流石のホブゴブリンもウマ娘二人による全力スタンピングには耐えられず悲鳴を上げて動かなくなった。

 これで無事戦闘終了! 初見はちょっとビビったし防御力は中々だったが、俺でもそれなりに戦えた辺り、オークの方が強かったな。

 

「そんな事を言えるのは武藤トレーナーだけだぞ……」

「いや、桐生院でも出来たと思うぞ?」

「……そうか」

 

 最近桐生院も素手でシミュレーターのウマ娘を制圧出来たって喜んでたし、ホントあいつって多方面に才能あるわ。

 

「それはともかく、このホブゴブリンが異様に強かったのって、やっぱ頭についてるお札のせいなんかな? なんかアイテムとして取れそうだし」

「裸な事以外は他のホブゴブリンと変わらないようだし、十中八九そうだろうね」

 

 このゲームの世界はエネミーにも装備の効果は表れるタイプなのは確認している。そうなるとこのお札自体が相当強力なアイテムって事になるんだろうが……、

 

「……デメリットが怖いわね」

「ああ。これだけ強力なアイテムとなると、封印プログラムを作った人物が放置するはずがない」

 

 それが怖い所なんだ。店売りの武器にすらバッドステータスを着けるような奴だ。確実に変なギミックを仕込んでいるとみていい。

 ……ただ、走攻守全ての能力が飛躍的に上がるというメリットもデカいのも事実。放置するのも勿体ない訳で……。

 

「……試しに使ってみるか」

「本気か?」

「特に俺の場合、打撃力不足が深刻だからな。デメリットの内容次第じゃ、ピンポイント運用していきたい」

「そっか……分かったよ」

「でも異変があったら、すぐに外してちょうだい? 貴方が無茶をしてもわたしたちは喜ばないわ」

「分かってるって」

 

 ホントいいヒト(AI?)たちだね。

 

「んじゃ、試しに頭に着けてっと」

 

 お札を剥がして、ホブゴブリンと同じように頭に貼り付ける。次の瞬間――

 

 

 

 パァアアンっという盛大な音と共に、俺が着ていた服が全部弾け飛んだ……!

 

 

 

『……きゃああああああああああああああ!?』

 

 響き渡る三女神に悲鳴に耳をやられつつ、俺はこのお札の正体を察した。

 

 

 これエロカテゴリーのアイテムだわ……

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、サトノグループ本社ビルにて

――パァアアン!

「トレーナーちゃんの服が弾け飛んだ!?」

「どういう事!?」

 

 




不可抗力とはいえ武藤のトレーナー棒を三女神に見せつけるという最悪のアクシデントが……!
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