マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》 作:とらんらん
「俺らってもうラスダン前までは攻略してたんだな」
「でもサブクエストの取り逃しが多いみたいだ。最後のダンジョンが終わったら、取りこぼした所も見ていこう」
「私たちが使っている最高級の首輪は、NPC用ではあるが強力な装備の様だな。武藤トレーナーに渡したのは間違いではなかったか」
「問題は出てくる敵ね。何体か物理攻撃を軽減してくる敵がいるわ。注意しましょう」
空中にモニターを何個も出しつつ、4人でワイワイと議論を重ねる。ただいま新しい街で見つけた拠点(また空き家を勝手に接収)で、現実世界から届いたwikiを全員で確認している真っ最中だ。遊んでるならともかく、今の俺らは冗談抜きの真剣勝負でこの世界で戦ってるからな。Wikiによる情報収集はマジで大切だぞ。お陰様でここ数日のダンジョンの攻略速度が格段に上がった。
「よし、では明日最終ダンジョンの攻略を開始する。進行は最短ルートで行くから、各々ルートを頭に入れておけ」
「おう。……ゆーて、俺が一番頑張って覚えないといけないんだけどな」
「俺たちと違って武藤トレーナーはヒトだからな。出来なかったら俺たちがフォローしよう」
「おっと、もしかして俺はわざわざ覚えなくてもよさげなパターン? てかwikiならいつでも出せるし、マジで俺が覚える必要はなくない?」
「そうかもしれないわね。でも咄嗟の判断が必要になるかもしれないし、ちゃんと覚えておいて損はないわ」
「その通りだ。明日の出発前にテストをしてやろう。それまでに勉強しておけ」
「うーん、そうそう都合のいい話はなかったか……」
こういう時はAIやってる三人が羨ましくなるな
「でも武藤トレーナーは、あれでよかったのかしら?」
「ん?」
頭を掻き毟りながらモニターをいじってると、ゴドルフィンがそんなことを言い出した。どこか気落ちしているような声色だったから思わず顔を上げたんだが、見ればゴドルフィンだけじゃなくて、ダーレーとバイアリーもどこか微妙な表情をしている。
「どうしたよ?」
「俺たちのために、この世界に残ってくれた事さ」
「武藤トレーナーは私たちの事情に巻き込まれた被害者だ。あのまま帰還してもよかったんだぞ」
「あー、あれか……」
確かに状況だけ見りゃ、俺は完全に巻き込まれた被害者だからなぁ。この三人は優しいし、全員が無事に帰還するにゃイレギュラー枠兼バフ要員の俺が必要なのは分かっていても、気後れはするか。
「俺がいた方が合理的ってのもあるが……、結局は俺がやりたいと思ったから、残っただけだな」
「最悪死ぬかもしれないのにかい?」
「言いたかないが、これまでの人生何回か死にかけてるからもう色々慣れた。てか今回は俺の力が割と通用する上に仲間もいるから、大分ヌルいぞ?」
「その考えは、どうかと思うわ……」
「そもそも何度も死にかける経験なんぞ、あってたまるか」
「因みに軽い奴だとニラとスイセンを間違えて喰った時だな。しかも山の中で連絡手段も持ってなかったから、落ち着くまでのたうち回ってた」
「ああ、偶にそんな事故があるね。なんでそんな事に?」
「え? 子供の頃、クソババァが失踪して金がない上に、家のガス水道電気が止まってたから、山でサバイバル生活してたんよ」
「軽く言っているけど、その状況自体が普通ではないわ……」
余計に三人から引かれた。解せぬ。
そんな感じでワイワイとやっていると、不意にポンという音と共に、俺の目の前に新しくモニターが出現した。そこに表示されているのは現実世界からのメッセージ。
『メガドリームサポーター管理課です。
皆さんが無事に脱出できるゲートの生成に成功しました。座標を送りますので、そちらから脱出してください』
そして俺たちが求めて止まないブツの情報だった。
「マジか。思ってたより早かったな。外の時間換算で6時間程度だろ」
「それだけ頑張ったのだろう。それよりも――」
「ええ、今すぐ座標の場所に向かいましょう。どんな場所か分かるかしら?」
「wikiによると、ここから近くのサブクエスト用の短いダンジョンの最奥の広間だね。ダンジョンのエネミーもこの近辺に出る個体と同じだから、問題なく進めそうだ」
「うっし、んじゃさっさと行って、現実世界に凱旋と行くか」
――ほぼ同時刻。
「ゲート形成、固定完了しました!」
「よっしゃ! 後は4人が来ればミッションコンプリートだ!」
「よかった……」
そんな希望に満ちた言葉に、私たちは安堵しました。トレーナーさんが意識不明になってから23時間24分が経過。色々な事がありましたが、トレーナーさんが無事に帰ってこられるなら、何も言う事はありません。
「ダンジョンじゃなくて、街中につくれりゃ楽だったんだけどなー」
「しょうがないだろ、穴を作れそうなのが、あそこしかなかったんだから」
「まあ、そこら辺のザコなら楽に倒せるって言ってたし大丈夫だろ」
開発五課の方々が気楽そうに談笑しています。不安要素はもうありませんし、私もトレーナーさんが帰ってきた時のために、コーヒーを入れましょうか。残念な事にここにはインスタントしかありませんが、ずっと頑張っていたトレーナーさんに労いたいですので。
どこか緩くなった空気の中ゆっくりと席を立ったその時、
「ん? なんだ?」
不意にサトノの技術者の一人が声を上げました。
「どうした?」
「ゲートの目の前にエネミーが出現しました」
「自然にポップした奴じゃないのか?」
「いえ、wikiによるとこのダンジョンに魔法使い系のエネミーなんていませんよ? そもそもこんな物々しい装備をしてる魔法使い系エネミーなんて、このゲームにはいないですし」
「……ん? じゃあこいつはなんだ……?」
「……脱出路の前にイレギュラーなエネミーが居座ってる?」
仮拠点から近かった上に、ダンジョン自体も短いって事でサクッと攻略。いざ脱出口のある広間の扉を開こうとした所で、急にこんなメッセージと画像が飛んできた。上から撮られたであろう画像には、脱出口の前にローブ姿の如何にもって感じの魔法使いがやたらとデカい杖を構えている姿があった。
「確かに居座っているな。……しかしこのタイプの敵はwikiには記載されていないぞ」
「まって、このエネミーだけど魔術師用の武器も防具も最強装備よ。これは多分――」
「プログラムを作った人物がプレイヤーキャラクターを改造して配置した、という事だろうね。しかも脱出ゲートを作った瞬間に出現したというらしいし、相手はこの状況を読んで対策していたんだ」
「……わざわざご苦労なこって」
最後の最後まで面倒な事しやがって。現実世界に戻ったら犯人にブチかますプロレス技リストを更新しないといけないな。
それはそれとして、だ。最後の関門を俺らでどうにかしなきゃならない。
「何をやってくるかわからん。一時撤退も視野に入れて動くぞ」
「そうだね。俺たちもここまで来てやられたくない」
「同感だわ――って、武藤トレーナー? 首輪なんか出して何をするのかしら?」
「ん? ファーストペンギン用のエネミーでも捕まえて「ギィっ!」ナイスタイミングだゴブリン君! アイアンクローからの捕獲!」
「ギャギャっ!?」
「……手間が省けたな。早速扉を開けるぞ」
最近の戦闘スタイルであるお札を装備してた&三人への首輪バフをした上で、獲れたてホヤホヤのゴブリン君を前衛(肉盾)にして準備完了。バイアリーが緊張した面持ちで鋼鉄製の扉を開き突入。
そこに広がっていたのは、50メートル四方はあるであろう大きな広間。最奥の壁に青い靄を放ちながら渦を巻いているヒト一人が通れそうな穴がある。あれが現実世界の連中が用意した脱出路なんだろう。
――問題はその脱出路の前に陣取っている魔術師様だ。奴さんはローブのフードを被って顔は見えない。だが視界は効いているらしく、俺たちの姿にすぐに気付いて杖をこちらに向けた。そして魔法陣が展開され、
――!
ファンタジー世界には似つかわしくない、無数の光弾による弾幕が放たれた!
「うっそだろ!?」
「武藤トレーナー、引け!」
開幕ブッパされるのは予想していたが、流石に仕様にない攻撃が飛んでくるのは予想できなかった! 急ブレーキをかけて三女神に倣って肉盾の後ろに避難する! だが、
「ギギギギギギ――ギャっ!?」
「げっ!?」
弾幕の連続ヒットを前にあっという間に肉盾が破られる! こんなんじゃ戦いにもならない!
「撤退するぞ!」
「おう――痛って!」
形勢不利とみたバイアリーの号令に一も二もなく飛びつき、ボチボチと被弾しながら広間入り口へと駆ける。
だが、
「ぐっ――!?」
「ダーレー!?」
ダーレーのうめき声と、ゴドルフィンの悲鳴が響いた。慌てて振り返ると、ダーレーが倒れている。光弾は確かに痛いが多少被弾した所で動けなくなる程の威力はないはず。と、なれば――麻痺か!
「っ!? やべぇっ!」
更にダーレーがいる床に明らかに何か仕掛けてきそうな魔法陣が現れる! それを見て、反射的にUターンしダーレーの元へ突貫! いくらか被弾しつつもダーレーをすぐに抱き上げる! 直後、魔法陣から幾本もの触手が出現、ダーレーを捕まえようとウネウネしてやがる!
「あっぶねっ!」
「武藤トレーナー!?」
「急げ! 体制を立て直す!」
「二人とも急いで! 後ろから敵が来てるわ!」
「げっ!?」
ダーレー救出に集中していたから気付かなかったが、門番が先に退避していた二人へ牽制の弾幕を放ちつつ、俺たちの目の前まで距離を詰めていた。
「あああああっ!」
――!?
このままだとマズい! 反射的にダーレーを抱えたまま渾身のミドルキックをブチかます! だが――
「っ!?」
やわらかいクッションでも蹴ったかのように手応えと言うもんがなかった。いやちょっとグラついたから少しはダメージが入っているんだろうが、ダメージの殆どを軽減されている!
そんな程度じゃ時間稼ぎにもならない。門番が俺たちに杖を向けようとしている――
「武藤トレーナー! わたしに魔法を使わせて!」
「っ! ゴドルフィン、魔法使用! 種類は任せる!」
「――水よ!」
ゴドルフィンの言葉に従って咄嗟に首輪の機能を解放! 直後猛烈な勢いの放水が門番の顔面に直撃し、若干ながらも怯ませた。その隙を突いて全速力で広間の入り口の二人と合流する!
「引け!」
そして俺たちは元来た道を全速力で逃げていった。
「例のイレギュラーに邪魔をされて脱出に失敗!?」
「なんなんだあのエネミー!?」
脱出失敗というトレーナーからの連絡に、サトノの連中が混乱した様に、いや実際混乱して悲鳴を上げてやがる。
気持ちは分からなくもない。全部の面倒事が片付く直前で邪魔されたんだから、悲鳴の一つも上げたくなるというものだ。
「テメェらうるせえ! 叫んでる暇があったら対策の一つでも考えろ!」
だがギャーギャー騒いだ所で問題が解決するはずもない。うるさいサトノの連中に怒声を浴びせ、さっきの戦闘(なぜか素っ裸のトレーナーが敵にケリを入れているアレ)をリピートさせているモニターを見ながら、キーボードをカタカタ打ってる五課の連中に声を掛ける。
「おい、何か分かったか?」
「ああ、シリウスさん。さっき撮った映像をスローで解析していますが、どうもあのエネミーは、プレイヤーキャラを改造したモノみたいですね。あの弾幕もゲーム本編にはないリブート版のMOD製の技を流用してるみたいです」
「ついでに武器も防具もチート系のMODの奴っすわ。火力マシマシ、敵からの攻撃も殆どカットするタイプ。こんなんやって面白いのかねぇ?」
「元々一人用ゲームだし、本人が楽しめるんならいいじゃねぇか? そうそう、このエネミーだがチート装備とチート技で固めてるが、代わりに行動ルーチンは割と単純っぽいぞ。ゲーム本編の拠点防衛系エネミーの行動ルーチンをまんまコピーしてるようだ。……もっとも素のスペックもチートで強化されてるみたいだから、結構強いんだがな」
「ついでにこのエネミーを作った奴は、このゲームに興味とかはないみたいですよ? あの弾幕技ってパッと見は魔法ですけど、内部処理的には物理判定です。それなのに殆ど物理攻撃力が上がらない魔術師系の杖を持たせるとか、滅茶苦茶ですよ」
「あの杖持ってると攻撃に麻痺属性が付くみたいだし、それを狙ったんじゃ?」
「あー、それがあったか。この情報は武藤さんに送っておくか」
相変わらず仕事が早いな。だが私が聴きたいのはそんな情報じゃない。
「それで、どうすればアレを倒せる?」
これが今一番に聴きたいんだよ。だが五課の連中は揃って若干渋い顔をしやがった。
「待ち伏せからの弾幕は、戦術としては単純ですけど強力です。現実世界なら色々と対処方法はあるんですけど、あのゲームの世界、それもプレイヤー側に不利になるような改造されている封印プログラムだと、対処は難しいですね」
「4人がゲートに飛び込むって勝利条件を狙う場合でも、最低でもあのエネミーの杖を強制解除しないといけない。麻痺がヤバすぎるからな」
「プログラム内の4人が取れる戦術は?」
「正面突破しかないですね。正直お勧めしませんが」
だろうな。今度こそ全滅する未来しか見えない。
「ならどうするんだ?」
「とりあえず、他の場所に脱出ゲートを作るのもアリかもしれませんね。ただ状況的にまた「別地点にゲートを形成しまし――あ、また例のエネミーが出現!」……やっぱりダメみたいですね」
「やはりか。そうなると救助隊の装備を整えて突撃した方が早そうだ」
「今の装備だとダメなのか?」
「相手が完全チートで固めてますからね。こっちもチート装備を揃えないと……、って武藤さんからのメッセージだ。モニターに出します」
「なになに? ……『プログラム内の敵が活発化して安全地帯が消滅したようだ。今から脱出路への再アタックをかける』!?」
『なに!?』
モニターに表示されたトレーナーからのメッセージに、私たちは絶句する羽目になった。
「賭けになるぞ。本当に良いんだな?」
「当然。このままジリ貧で圧し潰されるよりは、脱出路目指して突貫した方がよっぽど生き残れる確率はあるぜ」
真剣な表情のバイアリーに、軽く頷いて返す。ここはさっき逃げ帰った脱出路がある広間の扉の前。俺たちは最後の賭けに出るべく準備を整えている最中だ。
……あの敗戦の後、街まで逃げ帰って拠点で一休みしてたんだ。ダーレーの麻痺も回復して全員で今後を話あってったんだが、あの敵と戦うのはしんどいし救援が来るまでこのまま待機しようってなったんだよ。
で、しばらく拠点にいたら、唐突に拠点の中にモンスターがポップしやがったんだ。その時はバイアリーがサクッとブッ倒したからよかったんだが……、嫌な予感がして拠点がある街を調べたら、これまではエネミーが出現しなかった街中やら建物の中に、敵がポップするようになってるって分かったんだ。恐らく封印プログラムを作った奴による、外部からの救援に反応して作動する仕掛けなんだろうな。……お陰様で安置も何もなくなっちまった。
「でも武藤トレーナーが先頭に立つのはどうかと思うよ? せめて俺が――」
「おいおい、ダーレー。この作戦はこの中で一番デカい俺がやんなきゃ全員をカバーできないんだぜ?」
「……武藤トレーナーには現実の肉体へのフィードバック機能が作動しているわ。多少のダメージならともかく、あれほどの弾幕の前に身を晒すとなると、最悪の場合――」
「おっと、ゴドルフィンさんよ。その先は俺もちゃんと分かってるって」
「なら――」
「分かった上でやるって言ってんだぜ? そもそも俺が身体をここまで鍛えてるのは、どんな状況になっても立ち上がれるようにするためなんだぜ。――だからこの程度、何も問題はねぇ」
生身の俺を三人に不敵に笑って返す。幸い外の連中から門番の予測情報は手に入っている。そして攻略法も、だ。
「んじゃ、行くぜ」
お札を股に張って服を吹っ飛ばして準備完了。そして
「オラァ!」
鉄扉を蹴り開ける! 広間の奥には初見の時と同じく門番が杖を構えている! さあ、リベンジマッチと行こうか!
「――!」
「GO!」
門番から弾幕が放たれると同時にピーカブースタイルを取り、一直線に突撃を開始!次々と被弾し身体中をぶん殴られるような痛みが襲うが、それに構わず進み続ける!
「ああああああっ!」
回避はしない。俺の後ろには三人のウマ娘が続いている。麻痺耐性を持っているのはお札を装備している俺だけだから、盾にならなきゃならない!
俺を盾にして脱出路まで突貫し、三人が脱出した所で俺は外の連中の手でログアウト。
これが追い詰められた俺たちが生き残るために導き出した……成功確率の低い特攻紛いの作戦だ。
この作戦の要は当然盾役の俺。弾幕の最後まで耐え抜くタフネスと根性が必要不可欠になる。……相当に苦しい戦いになるのは一目瞭然だ。だが、
「武藤トレーナー、大丈夫なの!?」
「こんくらいなら余裕余裕!」
こちとら元々はリングの上で派手に戦ってきたプロレスラー! 身体の頑丈さには自信があるんだよ! 高々一般人のジャブ程度の威力しかない弾幕なんぞで、俺が止まる訳ねぇだろ!このまま一気に距離を詰める!
――!? ……!
「モーションを変えた!? 何か来る!」
「武藤トレーナー、注意しろ!」
広間の半分まで進めた所で、門番も焦ったのか弾幕を止め、新たな魔法陣を展開する。そこから現れたのは――1メートルはあるであろう巨大な光球。それが高速で放たれた!
「んにゃろ――ぐっ……!?」
ガードの上から光球を受け止める。だがそれは弾幕とは比べ物にならないレベルの衝撃――それこそ同階級からの本気のドロップキックと同等の威力だった。後ろの三人のために全力で踏ん張って倒れるのだけは阻止したが、足が止まってしまう。
……だがこれほどの威力だ。門番が切り札的に出したって事は、そこまで連射は出来ないはず。その隙を突いて距離を詰め……
「次がくるぞ!」
「速いな!? づっ……!」
その目論見はアッサリと覆された。最初の弾幕程とはないとはいえ、あの威力を2秒に一発で撃たれた日には前進出来ない。広間のど真ん中で立ち往生してしまう。
「やべぇ……! おい、今なら弾幕はないから、迂回して脱出路に飛び込めないか!?」
「無理よ! わたしたちが飛び出せば、敵は即座に弾幕に切り替えるわ!」
「クソが!」
流石の俺でもドロップキックと同威力の攻撃を延々と受けきれる程頑丈じゃない。なら無茶でも距離を詰めるしかない……!
「バイアリー! すまないが、プランBいいか!?」
「本気か……!?」
「このままジリ貧よりはマシだ! それだったらワンチャン賭ける……!」
「……分かった! ダーレー、ゴドルフィン! 手伝え!」
「バイアリー、本当にやるの!?」
「武藤トレーナーが行くんだ! 私たちも覚悟を決めるぞ!」
「……わかった!」
何発目かの光球を受けて膝が落ちそうになる。それを止めるように後ろの三人が身体を支え――持ち上げた! そして――
「いけぇ!」
バイアリーの号令の下、息の合ったモーションで三人は俺を門番目掛けて投げ飛ばす!
「ぐっ!」
「がはっ!」
「キャッ!?」
その直後、飛来した光球が盾を失った三人に直撃し吹き飛ばされる!
「――やってくれたなぁ!」
そんな光景を空中で見ていた俺は、怒りに身を任せ攻撃モーションに移行!
「ああああああああっ!」
三人による投擲力と俺の体重を掛け合わせたフライングラリアットを門番に叩き込む!
――! ……
渾身の一撃だ。普通の相手なら一発でKOだろう。だがこの門番は多少のグラつきこそあるが、堪えた様子は欠片もない。
――だがそれでいい。本命はこのラリアットじゃない!
「貰ったぁ!」
そのまま組み付き――俺が装備しているお札を剥がし相手の頭に叩き込む! 直後――
――!?!?!?!?!?!?
門番のローブと杖、そしてその他諸々装備している物が、全てぶっ飛ばされる! 生憎と最初っから装備剥がしが狙いなんだよ……!
「バイアリー、ダーレー、ゴドルフィン! 状態異常回復! んでもってぇ!」
――!?!?!?
首輪の効果を使って三人の麻痺を回復させ、ついでに素っ裸で隙だらけの門番からお札を剥がしつつ本気のチョークスラムで地面に叩きつける!
ここまでくりゃ後は消化試合だ! アキレス腱固めを掛けて時間を稼いでいる内に三人が脱出路に飛び込めばゲームセットだ!
「いや、お前も一緒に帰るぞ」
「ん?」
振り返ると小さく笑う三人がいた。
「おいおい、予定と違うだろうに」
「一番頑張った武藤トレーナーを置いていくなんて出来ないわ」
「それに俺もやられっぱなしはイヤなんだ」
「それは私も同感だ」
「そうね」
あ、皆笑顔ではあるけど目が笑ってない。てか殺意すら漏れてるな!
「んじゃ、しゃーねーなっ!」
こりゃリクエストに応えないといけないな! ぶっ倒れてる門番を背後から抱き上げ、頭が下になるように持ち上げ、それを三人がフォローするように支える! そして――!
「いくぞー!」
『せーのっ!』
俺が尻もちをつく形で倒れ込み、更に三人が全力で押し込む悪夢のような一撃――超変則的なパイルドライバーをブチかます!
――!?!?!?!?!?!?!?
これには流石の門番も堪えたららしい。ビクビクと痙攣をおこし、しばらくして動かなくなった。
『おおおおおおっ!』
――すべてが終わった。それを確信した俺たちは右腕を振り上げ雄叫びを上げた!
こうして俺たちのアホみたいな世界での戦いは幕を閉じた!
やっぱり最後は本作らしくプロレス技でフィニッシュしてみました