マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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チャンミは何とかグレードA決勝に滑り込めました。決勝もブライアンに賭けるしかない……!



80話 やらかしておいて逃げられると思うなよ?

 

「今日はサポーター空いてるかな?」

「長期メンテ明けだから、ヒトが集まってそうだけどね。うーん、やっぱりどこも埋まってる」

「ホントだ……。あ、ここがちょうど二枠空いてるっぽい。一緒に行こっ!」

「うん!」

 

 資料を手に生徒会室へ戻るために廊下を歩いていると、不意にそんな声が耳に入ってきた。声のした方に視線を向けると、ちょうどメガドリームサポーターが設置されている部屋に、二人の生徒が入っていく姿が見えた。

 

「相変わらず、メガドリームサポーターは人気か」

 

 VR故にあらゆる環境を実体験できるという利便性、そしてレースに関するあらゆる知識を有する三女神AIを持つメガドリームサポーターは、今や学園になくてはならない施設の一つだ。

 だがある日、メガドリームサポーター起動中に不具合が発生した。その不具合にすぐに気付いたサトノの管理部門は、問題の解決のための緊急長期メンテナンスを実施。そのため暫くの間使用できなかったが、先日ようやくメンテナンスが終了。再び多くの生徒がメガドリームサポーターを利用できるようになった。

 それが多くの生徒や学園関係者が知る事実だ。

 

「しかし、これでいいのだろうか……」

 

 たしかにこの情報は一応事実だろう。だがトレーナーと三女神が巻き込まれた事件については完全に隠匿されている。そんな現実を前にして思わずため息が漏れてしまう。

 

――三女神を標的とした謎のプログラムによる攻撃、そしてそれにトレーナーが巻き込まれた事件。この事が表に出ることなく秘密裏に葬り去られようとしていた。

 

 トレーナーと三女神が帰還してすぐ、理事長から呼び出されチーム・デネボラへ事件の公言の禁止を言い渡された。事件への対応のため、というのが理由だ。恐らくサトノとの取引があったのだろう。

 とはいえ、それはサトノの事情だろう。そんなことなど何の関与もない私たちは、当然その場で抗議したのが……、それを止めたのが事件の当事者だったトレーナーだった。

 

「理事長、一つ確認良いですか?」

「うむ」

「サトノに落とし前をつけさせますか?」

「無論! 全力でむしり取るつもりだ! 当然君にも最大限の配慮をさせる!」

「OK、なら理事長の提案に乗りましょう。つー訳だから、公言禁止な? もちろん俺も埋め合わせはするからさ」

 

 このようなやり取りを経てからの、カバーストーリーの公布は早かった。

 三女神の行方不明からのメガドリームサポーターの使用中止については先の通り。封印プログラムの発動の際、私たちチーム・デネボラしか使用していなかったので、対処は早かった。

 そしてトレーナーの意識不明についてだが……、幸いな事にトレーナーと三女神が封印プログラムに囚われ、そして脱出するまでの時間は24時間強しかなかったので、その期間は理事長直々によるサトノグループへの出張命令という事となっている。

 ――事件の事を知っているのは、チーム・デネボラとサトノの関係者、そして学園上層部と開発五課のようなURAの一部のみだろう。

 

「……そういえば、トレーナーは今朝からサトノの本社ビルに行っているのだったな」

 

 この状況でサトノが何かをしてくるとは思えないが、先日の事もありやはり心配になってしまう。

 

「何事もなければいいが……」

 

 

 

 

 

 

「こういう交渉じゃ普通は代理人が出てくるもんだと思ってたんだが、まさか直接サトノのお偉いさんが出るとは思わなかったな」

「はは、事が事ですし貴方との交渉を代理人などに任せるつもりはありませんよ」

 

 事件の事について交渉したい、なんて先方から連絡が来たんで、俺としてもサトノの連中とは色々と話したかったから、快く了承。そしてただいま、サトノグループの本社ビルの応接室で、お偉いさん(中年男性。名刺をもらったがやっぱりサトノの血縁っぽい)と対面している真っ最中だ。

 

「おいおい、俺はただの中央の一トレーナーだぜ?」

「貴方はそう考えているでしょうが、貴方のバックにはトレセン学園という巨大組織があり、更にやろうと思えば名家のシンボリ家の力も使える人物だ。そもそも今回の事件は我々の落ち度である以上、相応の対応をさせて頂きますよ」

 

 トレセンの方はともかく、シンボリ家の方を使うとその瞬間今後の人生が決まりそうだから実質使えないも同然だけど、威嚇として使えるならいいや。

 

「そうかい。まあ、俺としても都合がいいから助かるけどな。――んじゃ、そろそろ本題に入ろうか」

 

 お互い忙しい身分だ。長々と駄弁ってもしょうがないし交渉と言う名の戦いを始めようか。

 

「再確認だが、サトノは今回の事件をなかった事にしたい、でいいんだな?」

「その通りです。もちろん武藤氏には相応の対価をお支払いしましょう」

「具体的には?」

「そうですね。――こちらでいかがでしょう」

 

 そう言ってテーブルに差し出されたのは一枚の小切手。書かれている金額だが……、なるほど、中々の金額だ。

 

「これでご不満があるのでしたら、もう少し色を付けても構いません」

「太っ腹だねぇ。流石サトノ」

「では?」

「――こいつを受け取る前に、いくつか訊きたい事がある」

 

 とはいえ俺にもある程度の事情を知る権利だってあるだろ? 色々と気になる事があるんだよ。

 

「なんでしょうか?」

「なに簡単さ。プログラムを仕組んだ犯人とか、サトノが今回の事件を隠そうって理由とかを訊きたいだけだ」

「その事ですか……」

 

 男が頬を歪めて言い詰まる。何か嫌な事でもあったか? いや待てよ? 確か二日前に理事長がサトノに乗り込んでいったな。……という事は、

 

「……もしかして、ウチの理事長にも同じこと訊かれた?」

「はい……」

「んで、色々とカバーストーリー的な言い訳をしたけど、ウソだって見抜かれた?」

「その通りです……」

「あー……」

 

 やっちゃったなぁ、このヒト……。

 

「なんなんですか、あの幼女……。お陰で交渉が難航した上に、大幅に譲歩する羽目になりましたよ……」

「ウチの理事長、ウソとかは速攻で見抜くからなぁ。トレーナー採用面接とかエグイらしいぞ?」

「先にその情報を欲しかった……!」

 

 まあ伊達にトレセン学園の理事長をやってないからな。外見に惑わされて隙を作ったお前が悪い。

 とはいえ、理事長のお陰で色々と楽が出来そうだ。

 

「んじゃ、理事長も知ってんなら、俺にも教えてくれよ。ああ、仮にここで断っても理事長に聞くだけだから、隠しても意味ないぞ?」

「そうですね……。ではどれから答えましょうか?」

「まずはやらかした犯人からだな。目星はついてんのか?」

「確証……ではありませんが、状況証拠的にメガドリームサポーターの元開発主任が犯人であると判断してます」

「元開発主任ねぇ。バイアリーが内部犯を疑ってたが、やっぱりそうだったか」

「メガドリームサポーターはサトノの技術の結晶です。外部から干渉されないためにも高度なセキュリティ体制も敷いています。そのセキュリティを突破し、更に誰にも悟られずに封印プログラムを仕込むなど、内部の人間にしか出来ません」

「その元開発主任ってのはどんな奴だったんだ?」

「優秀な人材だったのですが、メガドリームサポーターの完成と同時に退職し行方をくらましています。また三女神AIを危険視していた事を彼の直属の上司が確認しています」

「滅茶苦茶怪しいなおい」

 

 行動が怪しすぎるだろ。そりゃサトノが犯人だって思うわ。

 

「んで、十中八九その開発主任が犯人なんだろうが、そいつはどうするんだ? まさか野放しって訳じゃないだろ?」

「当然、我々で確保します。放置すればまた変な行動を起こしかねませんしね。……捕まえる際に少々手荒な事になりますが、それは仕方ありませんな」

「せやな」

 

 公権力使わずにそいつを捕まえるとなると色々と裏でやるんだろうが、生憎とそこんところは別に興味はないからスルー。

 

「OK。犯人については俺も納得したし、処分についても俺がどうこう言うつもりはない」

「そうして頂けると助かります」

「んじゃ、もう一つの質問の方、事件を隠匿する理由はなんなんだ? 理事長が色々とツッコミを入れたって事は、サトノの信頼を守るためとかじゃないんだろ?」

 

 理事長は基本的に善性に属するヒトだ。その程度の理由だったら裏取引を断って、学園で事件を公表してるだろうしな。

 

「ええ、その通りです。――我々が恐れているのは、ヒトと同等のAIに対する世の中の反応です」

 

 唐突に社会的な話が出てきたな。

 

「具体的な説明を頼む」

「事件が公表されるという事は、同時に犯人の動機も公表される事になります。そして今回の犯人の動機は、プログラム内の犯行声明を鵜呑みにすれば、三女神AIを危険視した事による犯行となります」

「ああ」

「この動機は確実に世間に大きな影響を与えるでしょう。確実に三女神AI、より正確に言えばヒトと同等の能力を持ったAIへの議論が今以上に活発化します。そして三女神AIは善性の人格を有していますがそれが産まれたのは偶然であり、もしかしたら真逆の性格となっていた事も考慮すると――」

「世間様や国が三女神AI、いやAIそのものを危険視する可能性があるってか」

「ええ、近年はAIに関する規制が取りざたされている中で今回の事件です。世論の動きが読めません。最悪の場合はメガドリームサポーター、正確には三女神AIの停止に追い込まれるでしょう。仮にそうならなくとも、あの事件の公表はAI開発の世界に悪影響を与える事は確実です。サトノとしてもこの事態は避けたい」

「なるほどな」

 

 三女神AIの開発から分かる通り、サトノもAIの開発をしている以上、世間や国家からの干渉は避けたいって所か。ついでに学園としてもトレーニング手段の一つになってるメガドリームサポーターを使い続けるためにも、事件の秘匿はメリットになる。

 

「ゆーて、今回の事件を秘密にしたところで、いつかはヒトと同等のAIが作られて世間様が過剰反応するんじゃないか?」

「ええ、その通りです。ですので世間が多少ネガティブな反応をしても押し通すために、我々は準備をしています」

「押し通す準備?」

「三女神AIクラスのAIの量産体制の構築。あれほどの高性能AIです。量産されれば、あっという間に社会のあらゆる所に入り込んでいくでしょうし、サトノもそうなるように準備を進めています。そうなれば一般人でもAIの恩恵を多大に受けられます。その上でヒトと同等のAIについて議論を進めれば、肯定的な意見で占められる可能性は高い。何せ多くの人々がAIの利点を実感しているのですからね」

「はー、色々考えてんのな。ていうか、それやったもん勝ちの精神のような?」

「おおよそ合っています」

 

 サトノとしちゃ、ヒトと同等のAIが偶然の産物で出来た三女神AIだけってのがネックなんだな。

 

「以上が事件を隠匿したい主な理由です。これで満足いただけましたか?」

「オーケー、とりあえずサトノの思惑は分かった。ぶっちゃけ世間にギャーギャー言われてる身からしても、今回の事件のせいでまたグダグダ言われるかもしれなかったから、無かったことにされても問題はない」

「……貴方も大変ですね」

「もうちょい平和にトレーナー業をしたいんだけどねぇ……」

 

 なんでトレーナー業とは関係ない方面で有名になってんだろうな……。

 

「ではご質問は以上でしょうか?」

「ああ、もう訊く事はないな」

 

 ともかくとして、まずは訊いておきたい事は全部聴けた。理事長のお陰でスムーズで助かった。

 

「では、この度の会談は――」

「ああ、すまないがもう一ついいか?」

「なんでしょう?」

「あんた等に要望したい事があるんだ」

「要望、ですか?」

 

 んじゃ、今度は別のお仕事を始めようか。小さく笑いながら、テーブルに置かれている小切手を指で相手に向けて少し押し出す。

 

「ちと大事だろうからな。ここに書かれている金額の半分で頼むよ」

「……半分となると相当な事なのでしょうね。――何をお望みでしょうか?」

「言いたいことは簡単さ。――『サトノがメガドリームサポーター及び三女神AIを破棄もしくは1年以上の稼働停止をする際、三女神AIの所有権を武藤真に移譲する』」

「!?」

 

 流石にこの要望は予想できなかったのか目の前の中年が目を見開いている。

 

「……貴方はメガドリームサポーターが欲しいのですか?」

「いんや、欲しいのはAIの方だけだ」

「では、人格を有したAIが欲しいのですか? それでしたら将来完成したら提供しますし、そもそもここまでの金額は不要ですよ?」

「そっちは必要になったら自分で買うからいい。欲しいのはメガドリームサポーターのサポートAIのあの三人だ」

「……申し訳ない。貴方の意図が読めません。なぜこのような要望をされるのです?」

 

 まあ、動機が分からないのも当然だわな。なにせこれは、

 

「ああ、これな? メガドリームサポーターの三女神AIからの要望なんだわ」

「……は?」

 

 俺の答えにサトノのお偉いさんが呆気に取られたかのように、口を開いている。まあ気持ちは分かるけど。

 

「どういう事ですか……?」

「あの事件の後に、三人に頼まれちまったんだよ。もしもサトノが自分たちを捨てようとしたら、俺の所に置かせてくれって。ああまで真剣な顔で頭を下げられたら、俺も頷くしかなくてな」

「サトノが彼女たちを捨てる……? ありえない」

「だろうな」

 

さっきの話を聴く限り、今のサトノが最先端AIであるあの三人を投げ捨てるとは思えない。ただ、相手もそう思っているかは別の話だ。

 

「言ってしまえば、今回の事件への過剰反応だ」

「過剰反応?」

「これまでサトノはあの三人を大事に育ててきたんだろ? そんなあいつ等が自分たちを全力でぶっ壊そうとする悪意を、それも身内からぶつけられたのが今回の事件だ。その悪意に対する備えに必死になってるんだよ」

「……」

「自分たちを疎んでいる者がいる以上、今後サトノの方針が変わって、もしくは世間に圧されて破棄される可能性もあり得るって考えてるそうだ。後、今後技術が進んで自分たち以上のAIが登場した時、旧式になった自分たちはどうなってしまうのかって不安も言っていた。んで、もしもの時のための保険が欲しいんだそうだ」

「……その保険が貴方ですか」

「封印プログラム内で体感一か月弱一緒にいたから、信頼出来るらしい。因みにプログラム内で指輪のチェーンネックレスを渡したのも、その信用の証だそうだ。……ついでに言うと、三人は俺にこの条件を飲ませるために、自分の身体まで差し出そうとしたぞ。それは流石に丁重にお断りしたが……、あいつ等がどれだけ本気なのかが分かった。だからこそ、俺もこうして交渉してんだよ」

「……対価を断った上で、三女神AIのために貴方は身銭を切るのですか」

「身銭って言っても臨時収入だし、どうやってもプラス収支だからセーフ」

「それでもこれだけの大金を手放すのです。随分とお人好しなのですね」

「ちょくちょく言われる」

 

 ……実は身体の代わりとして、AIの情報収集能力と予測をフル活用して株とか為替の取引を手伝ってくれるって言われてたりするんだが、そこは秘密にしておこう。

 

「それで、この要望は通るかい? サトノがあの三人を最後まで大事にするってんなら無意味になる内容だ。渡した賄賂も半分は戻ってくるんだし、中々いい取引じゃないか?」

「……この条件ならば、我々のメガドリームサポーター運用を邪魔される事はない。いいでしょう、受け入れます」

「うっし、契約成立。んじゃこれにサインを頼む」

「用意がいいですね」

 

 契約書にサインをしてもらい、カバンに仕舞う。これで一番大きいお仕事の完了だ。お陰で気が楽になった。……そういえば、

 

「ところで今回の事件の犯人ってのは、さっきの口ぶり的にまだ捕まえてないんだよな?」

「はい、今捕獲作戦のための準備中です。なにせ相手がアメリカにいるものですから」

「その捕り物の予定日って分かるか?」

「ええ。予定日ですが――」

「……ほー」

 

 その期間はチームメンバーのレースの予定もないな。……よし。

 

「なあ、もう一つお願いしたいんだけどいいか?」

 

 

 

 

 

 

「……何もニュースが出てこない?」

 

 アメリカのとある街。メガドリームサポーターの元開発主任にして封印プログラムを仕掛けた男は、市内のホテルの一室でパソコンの画面に向かって渋い顔を作っていた。

 

「封印プログラムは確実に起動している。それにも関わらずサトノに動きがないどころか、納入先のトレセン学園もノーリアクション。まさかサトノが事件を隠匿している……?」

 

 彼はトレセン学園の掲示板の反応を読み取る事で、封印プログラムは発動したモノの当初の予定とは違い殆ど効果をなさなかった事は事前に把握していた。とはいえ三女神消失という不具合が発生した以上、サトノが何かしらのリアクションを取るのは確実であり、彼はそれを注視していたのだが……、結果はノーリアクション。この事から、サトノが何かしら裏で動いている事を察したのだ。

 

「何を考えている……? いや、それよりも計画が失敗した方が問題か。こうなったらサトノから持ち出した情報をばら撒くか……?」

 

 彼とて失敗した時のための事は考えており、その保険の一つがサトノ時代に収集した三女神AIに関する内部情報だ。少々古い上に三女神AIへの直接的な攻撃にはならないが、このまま手をこまねいているよりはマシだった。

 彼はパソコン内に保管していたファイルを立ち上げると、それをネットの海に流そうとした。――その時だった。

 

「へえ、そんなモノも持っていたんだ」

「!?」

 

 それはサトノ時代に聞き慣れた、だがここには、いや現実世界にはいないはずの声。

 彼は弾かれたように声のした方に振り返ると……、そこにいたのは17センチくらいのフィギュア、だがその顔や格好は――メガドリームサポーターに搭載されているAIの一人、ダーレーアラビアンそのものだった。

 

「なっ、お前は……!?」

「久しぶりだね、開発主任さん。ああ、この姿かい? URAが用意してくれた身体さ。実物大の方も作っているみたいだけど、この簡易ボディの方が完成が早かったらしくてさ。今回はこの姿でお邪魔させてもらったのさ」

「違う! なんでお前がこんな所に――」

「当然、お前を追ってきたからだ」

「こっそり入るのには苦労したわ」

 

 また背後からの声。慌てて振り返ると同じくフィギュアサイズのバイアリータークとゴドルフィンバルブが悠然と佇んでいる。

 

「先に言っておくぞ、元開発主任。私たちAIをどう考えるかはヒトそれぞれだ。だが……違法行為は感心しない」

「ぐっ……! だが私は――」

「それもわたしたち以外の、トレセン学園のトレーナーまでプログラムに巻き込んでしまったのよ? 彼が怒るのも当然だわ」

「……は?」

「それもわざわざ俺たちを連れてアメリカまで出張してくるんだから、彼の怒りも相当さ」

「えっ?」

 

 彼女たちの言っている意味が分からず開発主任が困惑していると、轟音と共に扉が吹き飛ばされ、同時に何かが部屋の中に飛び込んでくる。それは――

 

「お仕置きの時間じゃぁあああああああああああ!」

 

 上半身裸の筋肉がすさまじい大男だった!

 

「ええええええええ!?」

「よくもやってくれたなぁ! サトノには話付けてるから、存分プロレスを楽しめやぁあああああ!」

「ブホっ!?」

「もう一丁!」

「う、うわあああああああああああ!?」

 

 こうしてアメリカの街に、元プロレスラーのトレーナーの怒りを買った愚かな男の悲鳴がしばしの間響き渡ったという……。

 




技術が進んだ際の、旧式AIの扱いについて考えてたらこんな話になりました


犯人はとっちめた! 次の対戦相手は担当たちだ!(ネタバレしていくスタイル)
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