マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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投稿日が丁度元旦だったので、それっぽい話にしてみました。なお本編時間軸は、別に元旦ではないですので注意。


81話 偶には神頼りとかしたい時ってある

 

 トレセン学園なんて言う巨大なスポーツ校の周辺には、自然とトレセン生向けやレースに関連する店や施設が多いんだが、その法則は神社にも適用される。

 トレセン学園の近くにある神社なんかは、タケミカヅチ(武神で有名だが、現在ではスポーツの神様扱い)を祀っており、必勝祈願のためにウマ娘とトレーナーがこの神社に訪れる姿は最早風物詩だ。

 だからこそ、

 

「この神社に厄払いとか向いてなくね?」

 

 ただいま初詣でしか行かない神社の境内。本殿へ続く参道を歩きながらも、思わずボヤいちまう。そもそも論、神様なんぞ信じてない(初詣は正月の行事の一環として行ってる)から、正直やる気がでない。

 ……だが同行者はそうは思っていないようだ。聞こえないように滅茶苦茶小さく呟いたのに、耳聡くウマ耳がピクリと動いた。

 

「何もしないよりはマシだろう」

 

 呆れたようにそう返したのは、今回俺を神社まで引っ張って来たエアグルーヴだ。

 

「貴様は最近トラブルに巻き込まれ過ぎだ。本当なら厄払いを受けさせたいところだが、貴様がお金の無駄といって聞かないから今回は参拝で妥協したんだ。ちゃんと参拝しておけ」

「面倒事っていっても夏合宿以降の奴は割とサクッと終わる奴だったし、大分マシじゃね?」

「……貴様本気で言ってるのか? 霊障に巻き込まれたり、お金目当ての母親から嫌がらせを受けたり、ゲームの世界に閉じ込められるのがマシだと?」

「……ゴメン、割とやせ我慢で言った」

「たわけ、ここでやせ我慢してどうする」

 

つくづく変なトラブルに巻き込まれてるなオイ。ホントいい加減、平和にトレーナー業をやりたい。

 

「私も別に信心深い訳ではないが、ここまで貴様がトラブルに巻き込まれているのを見ていると、何か良くないモノにでも憑りつかれているのかと疑いたくなる」

「まあ、前にカフェに見てもらったけど、別に変な霊に憑りつかれてるとかはないらしいんだけどな? むしろ悪霊が俺を見たら逃げるって言ってた」

「……とりあえず、変な霊に憑りつかれてはいないのは良かったとしておこう。ともかくこれ以上変なトラブルに巻き込まれないように、お参りしておけ」

「うーっす」

 

 神に祈るなんざ性分じゃないが、こうまでエアグルーヴに強く言われたら行かざるを得ない。まあたまにはいいか。

 とまあ、そんな感じで境内を歩いていると、

 

「今度のレースは勝つぞ!」

「はい!」

 

 そんな威勢のいい声が聞こえてきた。声の方に目を向けると絵馬掛所で制服姿のウマ娘と若い男――セリフ的にトレーナー――が丁度絵馬を掛けている所だった。

 

「ありゃ……」

「む、あれはフレアハーモニーか」

「知ってるのか?」

「私がよくアドバイスをしている後輩だ。飲み込みは遅い方だが、人一倍努力を重ねているウマ娘だな。最近は重賞レースの出走が決まって、よりトレーニングに力を入れているようだ」

「ほー、中々有望な娘だな」

 

 場合によってはデネボラとの対戦もあり得るな。なら注意は払っておくべきか。

 

「フレアの隣にいる男は見た所トレーナーのようだが、貴様は知っているか?」

「確か俺の後輩で名前は……草隅だったか」

「随分と曖昧だな」

「俺とは全然交流がないトレーナーだしな。確か少し前まであまり勝てなかったが、新しくスカウトしたウマ娘がアタリで急に成績を伸ばしてきてるって奴だったな。なるほどな、あいつがスカウトしたのがエアグルーヴの後輩だったか」

 

 成績不振だったトレーナーが相性がいいウマ娘と組んだら勝てるようになった、ってのはよくある話だ。草隅の場合はまさにそれなんだろうな。

 

「折角だし声でも掛けるか?」

「いや、止めておこう。邪魔をしてはいけない」

「それもそうだな」

 

 よっぽど今後のレースの話に集中しているのか俺たちに気付く様子はない。確かにそんな所に割り込むのは無粋ってもんだろうな。

 

「しっかし、相変わらずこの神社は絵馬の量がエグイな。もう掛けられそうなところが殆ど無いぞ。しかも全員が全員全力で願いを込めてるせいか、心なしか絵馬掛所からオーラが見える気がするし」

「当然だろう。この神社は昔から必勝祈願のために多くのウマ娘が訪れているんだぞ」

「それもそうか。折角だしエアグルーヴも書いていくか?」

「いや、当面レースはない。次のレースが決まってから書くとしよう」

「それもそうか」

「代わりに貴様のお守りは買うぞ。ちゃんとしたモノを選べ」

「うっす」

 

 新進気鋭の二人組を見たせいでちょっと頭から飛んでったけど、元々は俺の厄払いが目的だったっけ。

 

「そういえば、参拝が終わったらどうする? 多少なら時間を取れるから、どこか行きたいなら付き合うぞ?」

「多少? 何か用事があるのか?」

「仕事」

「仕事をしろ……と言いたいところだが、折角のトレーナーの好意だ。甘えさせてもらおう。どのくらい時間が取れる?」

「まあ2時間って所か」

「ふむ、帰りがけにホームセンターで花の種を仕入れるのもいいが……。折角今日は神社に来たのだ。もう一社神社にいくぞ」

「まさかの神社巡り?」

 

 と言う訳で俺の厄払いを済ませ、エアグルーヴに連れられてやってきたのは、さっきの神社とは学園を挟んで反対側の神社。先程行った神社よりは規模は小さいが、綺麗に掃き清められている。

 

「……っておい」

「ふふ、流石の貴様もこの神社の事は知っていたか」

「そりゃ別の意味で有名だからな……」

 

 ただしここは俺たちトレーナーにとっての曰く付きで、出来れば担当ウマ娘とはいきたくない神社だ。

 

「御利益が縁結びと子宝とか、どれだけ盛ってるんだよこの神社」

 

 ご利益がトレーナーと結ばれたい、そしてあわよくば二人の子供が欲しいウマ娘におっそろしく都合がいい神社なんだよな。これもあって、担当ウマ娘がこの神社に通うようになったら、担当のトレーナーはほぼアウトって言われているぞ。

 

「貴様の仕事を考えれば縁結びは有効だろう。よいウマ娘をスカウトできるようにと参拝するトレーナーもいると聴くぞ」

「そりゃいるっちゃいるけど、俺の場合は担当5人で手が一杯なんだが?」

「だが今後もトレーナーとして仕事をするなら参拝しておいて損はないだろう」

「まあ、それもそうか」

「もっとも私は子宝のために手を合わせるが」

「お前も縁結びにしとけよ……」

 

 流石に在学中に子宝はアカンって……。

 

「そもそも論、なんで学園のすぐ近くに子宝神社があるんだよ……」

「む? 知らないのか? なんでもトレセン学園創設から暫くした頃、当時在学していたウマ娘のご家族が宮司をしていた子宝神社が移設してきたそうだ」

「神社の移転って早々起きる事じゃないような?」

「なんでも同時期にトレセン学園に在籍していたウマ娘の中に財閥の令嬢がいたらしく、彼女の家が推し進めたらしい」

「金の力でゴリ押すスタイルかよ」

 

てかそれ絶対そのご令嬢がトレーナーと結婚したいからやらかしたろ。

 

「だがそのお陰ですぐに良い結果を得られたらしい。この神社のウマ娘も財閥のご令嬢もトレーナーと結ばれ、後々子宝にも恵まれたときく」

「……で、それを見た学園のウマ娘の間にもこの神社が広まって、今も大人気ってか?」

 

 チラリと絵馬掛所に目をやる。そこには私服姿のウマ娘とどこか目が死んでる男が談笑しながら絵馬を掛けている最中だった。

 

「ふむ。あれは恐らく卒業した元担当ウマ娘とトレーナーだろうな」

「だろうな。声でも掛けるか?」

「それは無粋だろう」

「せやな」

 

 俺たちも空気は読むぞ。そしてそこのトレーナーは、同類を見るような目でこっちを見るんじゃねぇ……!

 

「てかここの絵馬、盛況すぎだろ。なんでさっきの神社と同じ位の量が掛けられてんだよ」

「担当トレーナーと結ばれたいと願うウマ娘は多いんだ。これだけの量になるのは当然だろう」

「お前らどんだけトレーナー大好きなんだよ……。あと心なしか絵馬からオーラが見える気がするけど、さっきと違ってオーラの色がショッキングピンクなのは気のせいだよな?」

「気のせいではないぞ。自分のトレーナーと結ばれるために魂を込めて書いているからな」

「気のせいであって欲しかった」

 

 ウマ娘は欲が強く恋愛面でも色々な意味で強いとは言われるが、魂まで掛けてくるんじゃない。てかさっきの神社との落差が酷すぎない?

 

「折角だ、私たちも参拝が終わったら絵馬も書くぞ」

「さっきは書かなかったじゃん……」

「あれはあれ、これはこれだ。では行くぞ」

「うっす……」

 

 こうしてエアグルーヴ主催、2回目の神社参拝(ウマ娘パワー全開での強制参加)が始まった……。

 




前回までの話で気力を使い切ったのか、イマイチパンチがある話に出来なかった……。
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