マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》   作:とらんらん

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そろそろチャンミ用のキャラを作らないといけないけど、因子厳選をまだまだ頑張りたいという欲に負けてずっと厳選してる……。


85話 勝手に期待するの止めてくれない?

 ウマ娘のレースってのは、アイドルの面とスポーツ選手の面を併せ持つ事もあってか、日本においては人気のあるスポーツだ。それ故にG1級の大きなレースでの勝利ウマ娘や人気のある競争バとなると、当然の事ながらマスコミからの取材ってのを受ける事もあるのはこの業界じゃ常識だ。主役として取材を受けてその記事で彼女たちの存在を知り、そしてファンになるってのはよくある話。

 対してウマ娘のトレーナーだが、こちらは言ってしまえば裏方の人間。一応マスコミからの取材を受ける事もあるが、レース前後のちょっとしたコメントをするのが主だ。ウマ娘のように主役になる事はない。

 だがだからと言ってトレーナーがマスコミに対してのほほんと構えていいって訳じゃない。

 

「えー、それではこれより取材をさせて頂きますが、よろしいでしょうかエイシンフラッシュさん」

「はい、よろしくお願いします」

 

 トレセン学園の校舎の一角。レース雑誌の記者からフラッシュに取材をしたいって事で会議室を借り受け(取材用のために色々とセッティングしてある会議室。今回は写真写りのために、テーブルの上にティーポットやフルーツの盛り合わせが詰められた籠が置かれている)、そして今まさにインタビューが始まろうとしていた。

 

「あと事前の申し込みの通り、武藤トレーナーにもコメントを求める事がありますが、その際はよろしくお願いします」

「おう」

 

 記者(若い男)の言葉に、フラッシュの後ろに控えつつ頷く。あえて席には座らない。これが担当がインタビューを受けている時の俺のスタイルだ。

 

「えー、ではまず次回のレース出場が決まったようですが、次走に向けての意気込みをお願いします」

「はい。前回は不覚を取り不甲斐ない結果となってしまいました。しかしあのレース以来、トレーナーさんと共に前回のレースを徹底的に分析し、弱点の克服に尽くしてきました。このレースは寸分の狂いもなく勝利したいと思います」

「そうですか……。えー……、弱点の克服となるとやはり――」

 

 フラッシュと記者の対談がつつがなく始まった。

だが俺はそこに口を挟むような野暮な真似はしない。あくまでもフラッシュへのインタビューだしな。何か聴かれるまで黙ってフラッシュの後ろに控えるだけだ。

 

「出走される方々は皆さん強いですが、やはり警戒しているのはゴールドシップさんです。彼女のロングスパートは脅威の一言です」

 

 フラッシュのインタビューだが順調そのものって感じだ。事前に受ける質問を相手から貰ってたのもあって質問に淀みなく答えられている。

 

「えっと、そうですね……。では――」

 

 むしろちょっとどもってるのは記者の方だったりする。まあ気持ちは分からんでもない。フラッシュの後ろに強面マッチョが睨みを利かせてるんだから、そら怖いわな。

 当然こんな事やってたら相手から色々と言われたが、それを無視して延々と続けたお陰で相手も折れた。お陰で今じゃ俺がこうやって突っ立ってても、記者連中はなにも言ってこない。

 そもそも論、なんで俺がこんな事をしてるかって話だが、これはこいつ等記者連中が問題だからでもある。

 

「そういえば、先日エイシンフラッシュさんが管理しているというチーム・デネボラのウマッターが炎上したようですが――」

 

 おっと、ちょうど出張る用事が出来たようだ。

 

「フラッシュ、飲み物でも出そうか?」

「トレーナーさん? はい、お願いします」

「記者さんもいるかい?」

「え? あの、まだ取材の途中で……」

「いいからいいから」

 

 若干焦る記者を無視して、フラッシュに紅茶を入れてやる。

 ――これがこの取材の場での俺の仕事――明らかにフラッシュに不利益になるような質問への割り込みだ。

 元プロレスラーというスポーツ選手兼エンターテイナーが言うのもあれだが、マスコミって奴には注意しなきゃならない。なんせマスコミってのはヒトの不幸で白飯を三杯は食えるような奴らだ。あの手この手でウマ娘の失言を引き出そうと仕掛けてくるのが定番。もちろんやりすぎれば過去の事例のように学園やURAがブチ切れて報復ってのもあるが、性懲りもなくギリギリを攻めてくるよな奴らが多いんだ。

 そんな訳で記者のやらかさないように監視してんだ。これはトレーナーの中じゃ割と一般的な対応だったりするぞ。まあ俺みたいに露骨に監視してるってアピールする奴は殆どいないけどな。

 

「記者さんには……、折角だし搾りたて100%のリンゴジュースを出そうか」

「いえ、私は――」

「おう、遠慮するなって」

 

 何かほざこうとしている記者を横目に、空のコップを用意してついでに籠からリンゴを一つ手に取る。瑞々しい良いリンゴだ。

 ――そいつを両手で鷲掴みし、ゆっくりと力を入れてやる。砕かないように慎重に圧力をかけられたリンゴは、その身に蓄えている果汁を噴き出し、そしてコップに注がれていく。

 

「ほれ」

 

 搾り切った所で、生搾りリンゴジュースを記者の前に差し出してやる。もちろん素敵な笑顔も添えるのは忘れちゃいけない。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 俺特性のジュースを素直に受け取る記者さん。その顔が若干引きつっている気がするのは気のせいだ。これ以上ツッコむようならリンゴと同じ運命になるってメッセージはちゃんと伝わってるならヨシ。

 

「……えー、では今度は武藤トレーナーに質問があるのですがよろしいでしょうか?」

「おっと、今度は俺か」

「安田記念の事件や赤い蹄鉄の事件によって、コメート・ムトウの人気が再燃しているのはご存じですか?」

「俺のグッズもまた売れ始めたとは聞いたな」

「ズバリ言います。またコメート・ムトウとしてリングに上がる気はありますか?」

「……」

 

 実際、エゴサーチなんてやってると、コメート・ムトウの現役復帰を望む声ってのはボチボチ見る事がある。ついでに言うと、古巣の社長である蝶野さんからも遠まわしながらスポット参戦でもいいからリングに戻らないかと誘いもある。だが、

 

「セカンドライフのトレーナー業の真っ最中なんでね。生憎と戻る気はないな」

 

 こうハッキリと言うのが今の俺だ。生憎とトレーナーとしてやる事があるんでな。ファンや蝶野さんには悪いが、リングに登る気はない。

 

「しかし多くのプロレスファンが望んでいます」

「ゆーて、リングに降りてから何年も経ってるんだぜ? 今の俺がリングに上がった所で、無様を晒すだけだろ」

「そんなヒトがウマ娘相手に勝てる訳ないでしょう……。それに武藤トレーナーは現役時代に1年程リングに上がらなかった時期があったそうですね。その事を考えれば、またトレーニングをすればリングでも戦えるのでは?」

「……あー、あの時期か。あれはただ単に治療と武者修行してただけだって。何せあれの直前ってイップスのせいで飛べなかったし」

「確かに公式ではそう公示されていますが――」

 

 まだツッコむんかい。こりゃ面倒な事になったな。いい加減無理矢理でも切り上げようとしたところで、

 

「記者さん。そのインタビューはレースとは関係がありますか? それでも続けるようでしたら……もう一杯リンゴジュースをお出ししましょうか?」

「……いえ、結構です」

 

 どこか作られたような印象の笑顔を浮かべた、フラッシュがエントリーしてきた。なお右手にはリンゴが握られている。これには流石の記者さんも沈黙する。

 

「しかしセカンドライフですか……。エイシンフラッシュさんもレース引退後の展望は何か考えているのですか?」

「おいおい、フラッシュにはその話題はまだ早いだろ」

「いえ、こういう仕事をしているので引退後の話もよく耳にするのですが、やはり引退後の進路について悩むウマ娘は多いんですよ」

「まあ、それは俺もよく聞く話だけどな?」

 

 実際、トレセン学園はレースから引退したウマ娘向けの講座とか色々やってるし。ただな?

 

「引退後ですか。ドイツに帰って実家のケーキ屋を継ぐ予定です」

 

 フラッシュの場合はそういうのには当てはまらないんだよな。そもそも論、俺と出会う前から引退後についても色々と予定を立ててる娘だし、ことフラッシュの引退後の進路に関しては全然心配してないぞ。

 

「もう将来について考えているんですか」

「当然です」

「その様子ですと、将来結婚する相手も決まっていそうですね」

「おいマテ」

 

 この記者とんでもない事言いやがった!? てかそんな質問フラッシュにしたら、

 

「? 当然、トレーナーさんですが?」

「なるほど」

 

 さも当然のようにこんな答えが飛んでくるに決まってるわな! 普通にスキャンダルじゃん! そしてスッゴイいい笑顔で頷くんじゃない記者よ!? 変な事言われる前に即訂正に入るんと……!

 

「一応言っておくが、別に付き合ってる訳じゃないからな?」

「しかし卒業したらちゃんと答えを出してくれるんですよね?」

「そーだけどさー……って、待て」

 

 こいつ、なんか変な事言ってないか。

 

「二十歳になったらだったような?」

「いえ、トレーナーさんがおっしゃったのは『お酒が飲める歳になってから』です。ドイツでは18歳から全てのアルコールの摂取は許可されますので、私の場合は18歳で問題ありません。またビールに限定しますと16歳から飲酒可能ですので、狭義としては今すぐにでも――」

「日本基準でお願いします……!」

 

 国籍の違いのせいで愉快な事になってやがった……。そんな俺を置いて記者&フラッシュの二人は止まらない。

 

「なるほど、後数年後には結果が出ると」

「はい。しかし私の勝ちはほぼ確実ではありますが」

「自信満々ですね。そうなるとドイツへは武藤トレーナーと一緒に帰るという事ですね? 私としては日本でお二人が二号店を出店するのに期待しているのですが」

「……なるほど、確かに日本で出店するのもアリですかもしれません。これはトレーナーさんと詳細を詰めなければいけませんね。トレーナーさん、いかがでしょう?」

「おうフラッシュさんや、色々と話がぶっ飛びすぎだぞ? てかそこの記者もフラッシュを乗せんな」

「いやー、興が乗りまして。それにしてもそこまで将来設計を考えているとなると、お二人の子供についても考えているんでしょう?」

「当然です。私としては二人は欲しいですね」

「いいですねぇ。そうなるともし生まれた子がウマ娘だった場合は、やはりレースの道へ? エイシンフラッシュさんは当然として、武藤トレーナーも元プロレスラーですから、期待できそうですけど」

「それは本人の意思が大切ですので、強制する事はありません。しかしもしレースの道を選ぶのなら私たちは応援します」

「確かに本人の意思は大切ですね」

 

 アカン。なんかもう色々と滅茶苦茶だ。いい加減止めんと……。

 

「よーし、お二人さんよ。リンゴジュースはいかが――」

「いえ、結構です。それよりもトレーナーさん? パイナップルジュースはいかがですか?」

「まさかのカウンター!?」

 

 流石の俺もパイナップルには勝てなかった。で、結局、

 

「本日はありがとうございました。お陰でいい記事が書けそうです」

「そういって頂けると幸いです」

 

 いい笑顔の二人による熱い握手で取材は幕を閉じることになった。因みに内容はレース関連3割、その他7割のクソみたいな雑談って比率だ! アホかな?

 

「……原稿できたらこっちにも送れ。全力で添削するから」

 

 もう色々とやらかしちまったが、幸いにもこれはライブ配信じゃないからギリセーフだ。添削で世間が炎上しないように仕向けないといけない。

 

「ああ、そこは安心してください。ウチは芸能系週刊誌じゃなくてレース雑誌なんで、変な事は書きませんよ」

「そうかい」

「その代わり報告書にして上の連中に上げますがね」

「上げんな上げんな。てかレース雑誌を出版してるような会社の上層部がそんな情報もらってどうすんだよ」

 

 高々一競争バの個人情報(多分に妄想込み)貰った所でなんも役に立たないだろ。そんなツッコミを入れるが記者はよくわからないと言わんばかりに首を傾げる。

 

「え? ……あー、そういう事ですか」

「ん? なんか俺変な事言ったか?」

「ああいや、私の言い方が悪かったですね。上の連中っていうのは私の上司の事じゃないんですよ」

「え? ではどなたの事を言っていたのですか?」

「簡単ですよ

 

 

担当と結婚したトレーナーの互助会。通称うまぴょい互助会です」

「そっちかよ」

 

 まさかの色んな意味で怪しい互助会がエントリーだ!

 

「後輩から色んな所に手が回ってるって聞いた事があるけど、マスコミまで勢力が入り込んでるのかよ」

「そりゃうまぴょい互助会って、トレーナーとウマ娘をくっつけるために影に日向に暗躍する組織ですから、マスコミにもシンパはいますって」

「あー、そういえばウマ娘側の実家が太い奴が多いから色々と影響力が強いんだったけか」

「後、互助会ってウマ娘と結ばれて辞職する事になったトレーナーの再就職支援もやってるんですよね。かくいう私もそれのお陰で今の会社に再就職したクチです」

「え? では記者さんも元トレーナーだったのですか?」

「私は地方ですけどね。ああ、元中央トレーナーだと私の会社の上層部に一人います」

 

 ホントに色んな所にいるな元トレーナー……。

 

「てかそんだけデカい組織だと他にもなんかやってそうだな……」

「私も元担当の妻も一般家庭出身なんで関わっていませんが、名家とか会社運営に関わるような方々なんかは、互助会を利用して色々とやってるって聞きますね」

「それって談合というのでは……?」

「様々な分野の人たちが集まる組織って事なんで、そちらへのコネづくりがメインっぽいです。互助会で作ったコネを使って上手くやってるヒトも多いとか」

 

 名前はクソみたいなのに、やってることが色んな意味でヤバいなオイ。

 

「そういった面もあって、互助会は武藤トレーナーに注目をしているんですよ」

「そうなのですか?」

「何で俺なんだ? 優秀かつコネ持ちのトレーナーなら色々いるだろ」

「うまぴょい互助会の歴史はそれなりにありますが、流石の我々もプロレス業界への人脈はありません。ですので武藤さんには新たな開拓先の第一人者として活躍して頂きたいんだとか」

「おい……!」

 

 思いっきり我欲が混じってんじゃねーか!?

 

「なるほど。これは直ぐにでも応えるべきではないでしょうか、トレーナーさん?」

「色んな意味で勘弁してくれ……」

 

 ウッキウキで乗っかる気満々なフラッシュに、俺は頭を抱えて制止するしか出来なかった……。

 

 




日本の経済界、の裏にはうまぴょい互助会の影が……!ついでにこいつ等、実は政界にも少し影響力があったりしますw
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