マッチョトレーナーがこの先生きのこるには《完結》 作:とらんらん
「ねえトレーナーさん、ちょっと気になったんだけどさ」
「んー?」
「よくトレーナーが担当ウマ娘にうまぴょい(夜戦)されたから、責任を取って一緒になるって話があるよね」
「もうトレセン学園の常識だよな。世間では非常識だけど」
「うまぴょい(昼戦)されても、逃げようとするトレーナーっているものなのかな?」
最早完全に日常の一コマになった夕食後の担当との駄弁りタイム。本日の来訪者にしてリビングのソファーにて俺の隣でくつろいでいるフジが、不意にそんなことを訊いてきた。
……リラックスタイムに半分下ネタ入ってる話題を訊くのはどうかと思うぞ?
「偶にいるぞ」
「え、そうなの?」
まあそれはそれとして答えるけど。
「別に喰われる=付き合う&結婚ってルールがある訳じゃないしな。喰われたからって諦めずに足掻く奴はいる」
「それもそうだね」
「もっとも、そういうタイプのトレーナーの場合、ウマ娘側もそうなるのは分かってるから、事前に外堀埋めてて逃げられなくしてあるんだけどな。それで基本的にゲームセットだ」
「うん、逃げられないように外堀を埋めるのは基本だよね。でも『基本的』という事は、それでも逃げるヒトもいるって事だよね?」
「そ。たまーに恥も外聞も投げ捨てて上に掛け合って担当と契約解除しようとしたり、トレーナー辞めて物理で逃げようとする奴もいる」
契約解除はともかく、トレーナー辞めてまで担当から逃げようとするのは、別の意味で覚悟決まってるよな。
「その場合ってどうなるのかな?」
「契約解除の方は基本当人たちで話し合ってくれってスタンス。これはウマ娘の襲撃失敗と同じパターンだな。で、レアケースの逃亡ルートの方は……、恋するウマ娘がその程度で諦めると思うか?」
「諦めないだろうね。そうなると探し出すって事?」
「全力で探し出して改めて捕まえるらしい。で、今度は逃げられないようにするんだと」
ウマ娘の愛ってのは重いとはよく言うが、これはその最たる例だろうな。
「でもそこまでするトレーナーは、本当に偶にしかいないんだよね?」
「せやな。大概はうまぴょい(偶発)されたら諦める」
「やっぱり自分の担当が好きだから?」
「好きって言っても、担当がLoveとしたらトレーナーの方はLikeが大半だから大違いだけどな?」
「でもそのLikeがLoveに変わるんだよね?」
「そうなるんだろうな。でなきゃそのまま結婚なんてしないだろうし」
うまぴょい(必然)されるくらい担当に好かれるという事は、つまるところそれなりの年月を担当と過ごしてきたという事だ。年単位で一緒にレースを戦っていれば、程度の差こそあれ担当に情が移るってもんだ。ましてやそのトレーナーが彼女とかいない独身だったら、「もうこのまま付き合っちゃうのもいいかなー」ってなるって、小林が言ってた。
「それに若くて美人なウマ娘が結婚相手なのは、トレーナーとしても嬉しいんじゃないかな?」
「生々しいけど、それも結婚する要因の一つってのよく聞くな。世間じゃウマ娘と結婚できる=勝ち組って構図だし」
ウマ娘っては総じて美人ってのは常識。そんな訳で婚活市場じゃウマ娘ってのは、総数が少ないってのも相まって売り手市場だ。特に若いウマ娘は本気で相手を選びたい放題だ。そんなウマ娘と結婚できるってのは、野郎としてはメリットではあるな。
「後担当と結婚するってのは、トレーナーとしての仕事も理解してるって事だし、そこら辺もメリットだな。チーフトレーナーや武澤さんみたいに一般のヒトと結婚したはいいけど、色々あって離婚ってのは早々ないらしいし」
「トレーナーとしての仕事を一番間近で見ているからね。もっともそんな素敵な旦那様が他のウマ娘を構っているのを見ると、複雑な気持ちになるらしいけど」
「それがあるから、よくOGが牽制目的で学園に顔を見せるんだけどな」
ただそういうOGは旦那のチームの女将さんポジやってくれる娘が多いから、そこら辺もメリットがあるんだよな。夫婦ともどもマヤノを可愛がってる遠藤のチームなんかはその典型だし。
「こういううまぴょい(夫妻)が切っ掛けでトレーナーと担当ウマ娘の結婚って、トレーナーは担当への気持ちと結婚する事へのメリットが合わさったものなんだろうね」
「学園にいると忘れられがちだけど、教師と生徒の結婚って世間からじゃ割と白い目で見られるヤツだからな? ちゃんとデメリットあるからな?」
「でも基本的にはそういうデメリットを飲み込んででも結婚するよね。そもそも学園でトレーナーを続けるなら、そんなデメリットなんてあってないようなものだし」
「まあ、そうなんだけどさ……」
ついでに離職するタイプの奴らもうまぴょい互助会が陰に日向に動いているお陰か、社会に出てもそういったデメリットを被る事は少ないらしい。やばいなうまぴょい互助会。
「それに男のヒトはウマ娘と何度もうまぴょい(日)するとウマ娘にメロメロになるって言うし、それもあるんじゃないかな?」
「どっからそんな話が湧いたんだよ」
「昔から私たち学園のウマ娘の間じゃ有名な話だよ。実際、ウマ娘がトレーナーを手に入れるための最終手段がうまぴょい(影)で、実際それで上手く行っているみたいだし、効果はあるんじゃないかな?」
「いやまあ、そうなんだけどさ……」
なんだかんだで、これって割と真理なんだよなぁ。
「そもそも論、ウマ娘とうまぴょい(愛)ってのは、野郎にとっては特攻でもあるんだよ。ヒトとは比べ物にならん」
「ウマ娘の恋愛漫画を読んでると偶にそういう話題が出るけど、やっぱりそうなの?」
「これはガチだな。実際経験したことあるし」
「え、そうなの? でも元カノさんはヒトだったよね?」
「レスラー時代の売れ始めた頃に風俗で一回な。いやホントえぐかった」
ホント腰が抜けるかと思ったのは今でも覚えてる。基本ヒト女の三倍というエグイ値段設定にも関わらず、ウマ娘の風俗にハマって散財する野郎が多いって理由が分かったわ。俺の場合は、本能的にこれハマったらマズいってなったからそれ以降は行ってないけど。
「養成校時代のスポーツ医学の講師がやってた雑談なんだが、野郎がウマ娘とのうまぴょい(心理)にハマりやすいってのは生物学の分野では有名らしい。なんでもヒトの女と比べて常に数的不利なウマ娘が、野郎を他の女に取られないためにそうなったんじゃないかって話だ」
「へー。じゃあ噂はあってたんだね」
「要するにトレーナーに快楽の暴力をぶつけまくって快楽漬けする、って話だしな」
ましてや相手は10代とかいう若さ全開のウマ娘。そんな快楽漬けくらったら、相当な精神力じゃないと担当から離れられないだろうな。
それを踏まえてだな?
「だからな、フジ?」
「うん、どうしたの?」
「映画を見てて流れでうまぴょい(映)、とかしたいのは分かるけど、だからってぴょいシーンが5割位占めてる海外の恋愛映画を持ってくるのはどうかと思うんだ」
かれこれ一時間位はこのフジが持ってきた映画を見てるけど、10分に一回のペースでぴょいシーンが流れてくるのは、もうツッコミしか入れられないからな?
「寮の子たちの間だと、トレーナーとこの映画を一緒に観るのが流行ってるらしいけど、トレーナーさんはお気に召さなかったかな?」
「面白い面白くない以前に、恋愛映画と言われたのにほぼぴょいシーンなのは見せつけられるのは、頭バグるんよ。ポルノ映画かよ」
「でもレーティングはちゃんと私でも観れるようだから、安心してね?」
「レーティング付けた奴の頭もバグってんじゃねぇか」
そして栗東寮の面々も、こんなモン流行にすんな。普通の恋愛映画の方がよっぽど効果あるだろ。
「それにこの映画は、正しいうまぴょい(恋)のやり方をちゃんと見せてくれるし、色々なシチュエーションのぴょいもやるから、とても参考になるって好評なんだよ」
「仮にも恋愛映画なのに、そっち方面で評価されるのはどうなんだよ……」
「因みにストーリーの方は、テンプレな上に雑だからいい評価は聞かないね」
「ねえ、やっぱりこれポルノ映画だろ」
もしくはクソ映画。
「あ、ちょうど今の私たちと同じシチュエーションになったよ」
「駄弁りもそこそこに野郎が抱き着いたな。相変わらずぴょいシーンへの導入が雑なんよ」
「でもこれはいいね。ねえトレーナーさん、これ真似してみない?」
「やらんやらん」
露骨にあわよくばぴょいを狙って来るのやめーや。
「んー、ならこれの一個前のシーンみたいに、一緒にお風呂に入るのはどうかな? 私のアレンジでマッサージもしてあげるよ。ああ、ちゃんと水着は持ってきているから安心してね?」
「更にヤバくなってんじゃん」
「因みに水着だけど、当然トレーナーさんが好きな――」
「よーしフジ、ハグしようぜ!」
だから俺の性癖を暴露するのやめよ!?
こうして水面下で戦いながらも、俺の平穏()な日々は続く……!
色々と整合性を考えるとウマ娘側に変なバフをかけるしかなかったんや……。(そもそも愛が重馬場の定番シチュを真面目に考察する事自体が変なんだけどね?)