インフィニット・ストラトス サヨナラノツバサ 作:チャーハン好き
「まだ 1 時間しか経っていないか…」
YF-4のコックピットでデジタル時計を見ながら1人の男が小さく呟いた。
今、YF-4は元居た世界に向けて多次元空間内をさまよっていた。
周りに見える景色は多次元故に安定しておらず絶えず変化しており、勿論情報も通信も出来ない。そんな状況の中で、男は寂しいと感じていた。
今まではフォッカーや鈴が傍に居たおかげで分からなかったが、1 人になって初めて他人の存在に気付けたかも知れない。
「体ももう限界だな…」
男は左の脇腹を抑えて声を出す。
思い返してみれば、鈴を見つける為に鉄骨が当たって出血した状態で走り続けた。そのまま鈴を説得し、負傷した体に応急処置のみを施した状態で今に至る。
もう、身体が限界なのだ。
「ライトニング…コールドスリープは出来るか…?」
『はい。一応出来ますが、身体面の老化を抑えるのは難しくなります』
「構わん。少し、寝かせてくれ…」
『了解。起動まで 10 秒』
「早いな…まぁ取り敢えず…おやすみ…」
男がそう言いながら深い眠りについた。そして、コックピットは静寂に包まれた。
4月 7 日
日本ではこの日、ほとんどの学校が入学式もしくは始業式をする日である。
それはIS学園跡地と東京湾の一角を埋め立てて造られた『国際フロンティア総合学園』も例外では無かった。
前日までがらんどうだった 1 年生の教室に、入学式を終えた新 1 年生達が集っていた。
そして、その集団の中に、ツンツン頭が特徴的な彼も居た。
「では次、フォッカー君お願いします」
そう呼ばれた 1 人の少年が教壇の前に立った。
「カノン・フォッカーだ。好きな物はチャーハン。嫌いな物は鬱陶しくて、自己中なヤツ。以上アダッ!?」
そう自己紹介したのは、かの英雄イチカ・フォッカーと鳳鈴音との間に生まれた少年、カノン・フォッカーだった。そのカノンに拳骨を与えた人物が…
「お前はもっとまともな自己紹介が出来ないのか?」
「ゲッ、マド姉!?アダッ!?」
「学校ではマドカ先生だ」
黒いレディーススーツを着こんだ黒髪美人の女性、マドカ・フォッカーだった。
「きゃあぁぁ!マドカ様よ!」
「スゲー!美人だ!」
「騒がしいぞ!ヒヨッコ共!」
その途端、クラス内に居た男女から歓喜の声が上がった。
だが、それをマドカが制した。マドカは一旦カノンを席に座らせ、クラス内を見渡した。
「諸君等が知っての通り、私がマドカ・フォッカー。諸君等の担任を務めさせてもらう。高校生活を始める前に一言言わせてもらおう」
クラス内がシーンとなった事を確認し、マドカが堂々と言い放った。
「君達が選んだ航空科は間接的には人殺しに繋がる道にもなる。
そんな事を考えていない奴は
今すぐにでも学科を変えろ。生半可な覚悟しか持っていない奴は出て行っても構わん」
マドカが力強く言い放つと、クラスが静まり返った。
「それでもここに居たいと言うのなら、確かな覚悟を持って生活しろ。以上だ」
「「「「「「「「「「「「はい!!!!!」」」」」」」」」」
マドカのその言葉に、クラスから力強い返事が返ってくるのだった。