名も無き鎮守府の日常   作:カーディナル

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どうもお久しぶりの方はお久しぶりです、そうでない方は初めまして。カーディナルと言います。
ここ半年近く学業、艦これ、バイト等でとてつもなく忙しかったのでログインすらできませんでした。
スクールランブルのSSをメインに書いていましたが、艦コレの日常話も書きたかったということで書かせてもらいました。スクランの続きを待っている方はすみません、もう少し待っていただけると幸いです。
この作品のコンセプトとして、作者のお気に入りの艦娘メイン、戦闘?他のSSや公式、アンソロジーでお願いします、妄想小話、ハーレムになると思うので注意。
そんでもって艦コレの世界観が曖昧なこともあって、この作品でも原作と原作キャラのイメージが違ったりするので、そこのとこも気を付けてください。一応設定の基盤としてはファンタジアの公式ラノベ、『鶴翼の絆』を参考にしてますがオリジナル、独自解釈の設定等もありますので本当に注意してください。
それでも大丈夫と言う方は…………お進みくださいませ。


【初めは】日常その1【プロローグ】

 

 

 

「…………」

 

――――――カリカリ

 

とある一室にてペンが走る音のみが鳴り渡る。この音を発している人物は少しばかり高そうな机の上で作業をしている。

書類と向き合っている表情は真剣そのもの――――――なのだが、恰好はだらしない。

男は海軍指定の白い軍服を着ている。……が、まともに着用はしていなかった。

帽子はきっちり被っておらず、被るというよりもただ乗っけていると言ったほうがいいだろう。少し頭を動かしただけで落ちてしまいそうで、斜めに乗っけていた。

服はボタンを留めるどころか一つも止めておらず、完全に前全開であった。それどころか、白を基調とした服のところどころにうっすらと別の色や文字が書かれているのがわかる。

具体的にいうと、!すでのな……と右横書きに書かれた文字やら、これまた右横書きで書かれたすぱしーばとやらお団子ヘアの女の子の顔が書かれていたり等々……証拠隠滅のために消したんであろうが、完全には消えておらず白以外のカラフルなカラーが微かに残っていた。

 

 

このだらしなさ……もはやだらしないという以前の問題なのだが、この二十歳前後と思われる男性は一応海軍の人間なのである。もう一度言おう、海軍の人間である。

とても軍人だとは思えないのだが……彼が軍人なのは揺ぎ無い事実である。

 

 

「……ん」

 

一枚の書類を書き終え、他にも終えた書類の上に置きまだ確認していない方の書類の束に手をだす青年。

なにか難しい問題にあたったのだろうか、眉をひそめ頬杖をつき一枚書類を持ち凝視する。

 

「……!」

 

と、その青年の動作を見て、近くで控えていた女性が戸棚まで移動し茶葉を取り出す。そのまま流れるような動きで室内に設置してあった台所でお茶を淹れる。その手際の良さは無駄な動きがなく、一人で服を着替える。そんな当たり前のことができるように慣れた手つきであった。

一つ一つの動きをするたびに彼女の自慢であろう長い銀色の髪が揺れる。お茶を淹れてる彼女の様子はどこか嬉しそうに見える。

今の彼女の服装は海軍指定の軍服でもなければ、彼女と近い年の女性が着る私服姿でもない。

弓道着を思わせるような服を着ていた。青年よりかは幾分もまともなのだろうが、それでも海軍にいる女性が着る服ではないだろう。

いったい彼女は何者なのか?彼女が来ている弓道着は普通の弓道着とは違い特徴的な箇所が一つある。

彼女が何者なのか裏付ける決定的な物ともいっていいかもしれない。

 

 

 

それは彼女の胸当てに書かれている『シ』という一文字。

 

 

「提督、お茶が入りました、どうぞ。一息ついてはどうでしょう?」

 

「……ん?おぉ、そうだな。一段落したし休むとしよう。ありがとな、翔鶴」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはまだ名もなき鎮守府。そこの執務室では若き提督とその秘書のようなことを務めている翔鶴と呼ばれた女性が仕事していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は2XXX年。文化は著しく発展し、世界は目まぐるしく変化している。

生活が便利になっていく反面、世界は今までにない危機に陥っていたりした。この星の海の6割以上が深海棲艦《しんかいせいかん》と名乗る、謎の多い軍艦たちに支配されていた。

なぜ彼女たちが海を支配しようとするのか?いつから彼女たちが出現してきたのか?……なぜ人型の容姿をした彼女たちが軍艦みたく砲台といった兵器を装備しているのか?重要なことは未だに不明である。

この無数に存在する深海棲艦と人類は戦っていた。深海棲艦が様々な海を占拠しているため、各国を繋ぐ海のルートはほとんど使用することができない。できたとしても通常の船、輸送船といったものでは彼女たちに沈められてしまう。

空を利用しても深海棲艦の中には空の戦いを得意とする艦が存在するため、飛行機が撃ち落されるケースが後を絶たない。

 

 

こんな絶望化の中、深海棲艦と戦えれる技術を我が国は開発に成功した。

そ第二次世界大戦期に参戦してたと言われる様々な艦艇が擬人化。その可愛らしい、見目麗しい容姿とは裏腹にモデルとなった軍艦の特徴を引き継いでいたりし、その強さは計り知れない。

そう、翔鶴もこの技術で誕生した……艦娘(かんむす)と呼ばれる軍艦である。

 

 

「よっこい…しょっ!ふぃー、まだ日も暮れてねーってのに寒いのなんの。うちにも冷暖房完備してほしいってのに、上層部のドケチどもは予算じゃなくて自腹で用意しろたぁ……ここが夜どんだけ冷え込むかあいつらは知らないから言えるんだよちくしょー」

 

なぜか執務室にある押入れから炬燵を取出し、翔鶴から受け取った湯呑を持ち炬燵に潜り込む提督。

仕事をしていた時との表情とは一変、今の彼の表情は好物を食べている時の様に緩み切っている。

公私混同をきっちり切り替えているのは良い事なのだが、一応ここは執務室である。

ここの鎮守府は色々と特殊であり、建物はなんと旅館。有名旅館に引けを取らないほどの規模がでかく、ここで着任している艦娘は各々自室が割り振られており、日々生活している。

だが旅館といえども、ちゃんと会議室やここみたく執務室はあるのだ。初め提督が着任したてのこの部屋の内装は誰が見ても仕事をする場所なんだなーと認識できた。

それなのに一年近く経った現状この執務室は――――

 

 

                  床は畳

 

 

                  壁紙は旅館と同じ作りで変わりはないが、掛け軸やらポスターやらびっしり貼られている。

 

                  家具は執務机意外に押入れにしまってある炬燵も置いてあれば、ドレッサーやらメルヘンチックな食器だなやらゲーム機やらテレビやら明らかに執務とは関係ないものが置いてある。

 

 

しかも執務机の真上にはハンモックが付けられている。ここが海軍の執務室だと言っても一般人は信用しないだろう。休憩室と言った方がしっくり来るだろう。

 

「仕方ありませんよ。上層部も最低限の資金でやりくりしてもらいたいんですし」

 

「けっ!資金も最低限しか送らなきゃ休みも最低限しかくれねえってか。やってらんねーぜ」

 

翔鶴に淹れてもらったお茶を飲みつつ、対面に炬燵の中に入っている翔鶴に愚痴を溢す提督。

ここ最近執務室で休憩する時は大抵このスタイルである。

炬燵の中に入り込んで、上司と部下の関係なのだが、この時はそんな立場は忘れて過ごす。

最初のうちはこんな奇妙な関係に戸惑っていた翔鶴だが、ほぼ毎日提督に気楽にしろやら肩の力抜けやらとか言われ続けていたので、半年もそれが続いたらもう慣れてしまっただろう。

提督の執務のサポートを主にする秘書艦である翔鶴は他の艦娘よりも提督といる時間が長い。

この鎮守府内で一番提督のことを知っているのは彼女で、この鎮守府内で一番良く知っている艦娘は彼女。お互い信頼しあった仲といっても過言ではないだろう。

 

「それでも提督のお蔭で瑞鶴も、他の艦娘の子たちもここでの生活は満喫していますよ。なんだかんだ言いながら提督は私たちのために頑張ってくれてるって」

 

「え、うそマジで?あいつらそんな素振り見せたことねーけど」

 

苦笑い混じりに言う翔鶴に、炬燵の上に置いてあったみかんを剥く手を止める提督。

なにやら、彼にとって衝撃の事実だったのか綺麗に皮を剥いていたのが途中で途切れてしまっていた。

実はこの提督、さっきまではまともに仕事していたのだがやたらとサボり癖がありしょっちゅう執務を放り投げては他の艦娘たちと戯れたり遊んだりしているのである。

翔鶴みたいに、この鎮守府に着任して古株の艦娘は提督が遊んでいるように見えても、一応やることはやっていることがわかっているのでそこまで評価は悪くないのだ。

それどころか、ちゃんと自分たちを見てくれていて兵器扱いせず、人間として扱ってくれる提督に好意を持つ艦娘は多い。

 

着任したての艦娘や真面目な艦娘は提督のサボり癖に目くじら立てて、ほとんど怒ることのない翔鶴に代わって説教したり捉えたりするが、その提督の能力の高さと仕事は後伸ばしにしつつも期限日には絶対に終わらせる無駄に計算高いとこに強くは言えなかったりする。

まぁ、そんなこんなでまだ未登場の艦娘からは提督の評価はかなり高いということだ。だがこの提督はその艦娘たちの好意に気付かないで、説教されている場面のことが強く頭の中に印象付けられてるため、こんなアホなことを口走っているのだ。

 

 

――――瑞鶴。翔鶴の妹で正規空母。翔鶴よりも後に着任したがそれなりにここの鎮守府では長くいる。多分この小説の翔鶴に続くキーパーソンかも?

 

 

「あいつら絶対影で俺の悪口とか言ってる質だって!この間だって大井にMVP取ったこと褒めたら、うざったそうに睨まれて、魚雷撃たれそうだったし」

 

「それは照れているだけですよ。あの子は口でああは言っても提督のことを本当に悪くは思っていませんよ」

 

「嘘だ!北上共々あの度を越えた姉妹愛を持つ片割れが俺のことを良く思ってるわけねぇ!!」

 

自分がどれほど嫌われてるかみかんを頬張りながら、過去の出来事を思い出し自分がどれほど嫌われているか翔鶴に伝える。だがそれは愛情の裏返しだと言うように否定する翔鶴だが、まったく受け入れようとしない。

お互い信じ合っているとはいえ、いつもボロクソに言ってくる大井が自分のことを憎からず思ってるどころかその真逆だということは信じたくないようだ。たとえそれが翔鶴の言葉でも。

 

 

――――大井&北上。元軽巡洋艦であり、現重雷装巡洋艦姉妹。そのお互いを想う強さは姉妹を超える。けど最近のお二人は提督を――――?

 

「あのお嬢様だってそうだ!出勤が遅いって言うから出勤時間を1時間も早めたっていうのにあのおぜう様は「わたくしよりも遅くては意味はなしえませんわよ?」だとよ!なんで俺が早起きすること見据えてあいつまで早く起きるんだよぉおおおおおおお!お蔭で俺の目覚まし時計はマルゴーマルマルセッティングだよ!これ以上早く起きるなんて無理だっての!!」

 

「熊野さんも恥ずかしいだけですよ。着任したての頃と比べたら随分棘がなくなったんではないでしょうか。それに早起きのことだって裏を返せば提督ともっとお傍にいたいだけかと」

 

「まー、あんときと比べたら高圧的な物言いは減ったけどよ……あいつが俺と一緒にいたい?……常時召使にでもするつもりなのかあいつは」

 

今度は別の艦娘を引き合いにだす。この提督熊野という艦娘が来る前はそれはもう朝が弱いというレベルでは済まないほど起きる時間が遅かった。ていうか、朝起きるじゃなくて昼頃に起きることがほとんどだった。

それもまぁ、翔鶴が秘書艦になってからはちゃんと朝に起きるようになったのだがそれでも起きる時間は遅かった。

この鎮守府内で艦娘たちをまとめる存在である輩が朝早く起きれないせいで鎮守府がまともに動き出すのは昼からという始末。なので、熊野が提督を早起きさせることにできたのはプラスに考えるべきなのだが……

で、お嬢様気質である熊野は翔鶴の言うとおり初めのうちは提督を召使、または僕みたいに対応していた。

だがなんだかんだで文句を言いつつ熊野の希望通りに動き、愛想を尽かさないでいてくれた提督にこれまた他の艦娘と同じく今までとは違う感情が芽生えてき始めていたのだが……これまた提督はおかしな方向に考え始める。

 

 

先ほど提督が嘘だ!の下りで炬燵をドンと叩いた拍子に、剥き終えた丸裸のみかんが畳の上に転がり、それを翔鶴が拾う。ぐでーんと炬燵の上に顎を置いて、愚痴りながらたまに口を開けて翔鶴にみかんを食べさせてもらおうとするこのだらけっぷりである。

翔鶴も翔鶴で、なにも言わない提督に対し自らみかんを拾って、ただ口を開ける動作になんも言わず、それどころかこれまた手慣れた感じであーんをする翔鶴であった。

……これまた嫌そうにしない辺り、この二人の親密度がわかる方はいるだろう。

 

 

――――熊野。元重巡洋艦。現航空巡洋艦。この鎮守府内の中でもファッションやらお肌に気を使っている艦娘。お嬢様言動が目立つが女子力は高い。

 

 

「あとは~あーんっむ。むぐむぐ……加賀だってそうだ。雑務は全部終わらせたのに、駆逐艦の連中とミントンやってたら室内でやるなって怒りやがってよぉ」

 

「あの……それは加賀先輩が正しいですよ」

 

「イラっときたからあいつの分の夜飯、カレーライスをライスをメインにルーを小盛りにしてやったぜ。その後やったのバレて艦載機飛ばされたけどな」

 

「あぁ……だからあの時先輩機嫌が悪かったのね……」

 

明らかに提督が悪いというのに、しょうもないことを仕出かしたことにさすがの翔鶴もため息をついた。

自分の先輩とも呼べる正規空母の加賀がいつぞやか異常に機嫌が悪かった理由がこんなとこで判明してしまった。

 

「そういえば…さっき書類を見て頭を抱えていたみたいですが、なにか問題でもありました?」

 

休憩前に提督が悩んでいたことを思い出し、話題を変えようとする。

聞かれた提督は特に困った様子もなく、翔鶴に食べさせてもらったみかんを食べ終えたので、も一つみかんを取りモミモミもんで皮を剥きやすいようにしている。

今度は提督が翔鶴にみかんを食べさせるようで、小さく口を開けた翔鶴に的確に口の中にみかんを放り込んでいく。

……これまたあーんに恥ずかしがってた翔鶴だが、提督にされ続け慣れてしまったご様子。

 

「んにゃ、そういうわけじゃないんだけどな。他鎮守府の報告書なんだけどな……どうやらアルフォンシーノ方面の攻略に手こずってるみたいなんだとさ」

 

「アルフォンシーノ……もしかして出撃要請が?」

 

「いや、まだ要請は来てないが文面を見る限りうちが出撃する可能性が低くはないってことだ。どうやらあの海域は空母を中心とした編成じゃないと進行は無理なみたいだしな」

 

「出撃する時はどのような編成をお考えなのですか?」

 

「翔鶴と瑞鶴の正規空母二人と金剛、榛名の高速艦ペアかもしくは大和か長門の高火力ペア。もう二人は重巡か航巡から一人。後一人が軽巡……かね。ここの出現する深海棲艦は空母が多いとのことだ。対空が高く、練度の高い編成で出撃してもらうつもりだ。旗艦は頼むぞ」

 

「はい。必ずや提督のご期待に添えてみせます。そして……みんなで無事帰還してきます」

 

「おう。ま、うちは特殊だしどうなるかはわからんが、出撃する可能性があるってことを頭ん中に入れておいてくれや」

 

いつもは温厚で優しげな瞳の翔鶴だが、提督に忠誠を誓っている時の彼女は強い意志を持ち艦隊をまとめる旗艦としての重大な役割を務める時の表情になっていた。

この鎮守府の特徴としてはまず出撃回数はそれほど多くはないこと。艦娘を導入している鎮守府や泊地はほんの一握りであり、その中でも名もなき鎮守府は実践の回数は一番少ない。

だが艦隊の練度は一番高い。なぜなら……この名もなき鎮守府にしかない特別な設備があり、それにより実践となんの代わりのない訓練が可能だからだ。

そんでもって、この提督が余り艦娘たちに出撃を好ましく思っていなく、ただでさえめんどくさがり且つサボり癖のある男だ。

上から出撃指令がない限りは出撃させず、基本戦果よりも無事生還することを願っている提督である。生きていればまだなんとかなる。そんな考えをモットーにしているのだ。

 

一通り話終えた提督は、そのまま後ろに倒れ込みゴロゴロと寝返りを打つ。

 

「あ゛~~~~こうやって炬燵ん中で寛いでいるともうなんか全てを忘れて寝たくなってくるな」

 

「お気持ちはわかりますけど、まだ今日の執務は終わっていませんから寝てはいけませんよ」

 

大の字になって夢の世界に飛び立とうとしている提督を起こそうとし、炬燵から出て提督の隣で正座をしゆさゆさと肩を揺する。

……が、翔鶴の努力空しく炬燵から出る気配もなく、本格的に寝ようとしていて、いつのまにかアイマスクを装着していた。

 

「提督……あの、そろそろ起きて仕事しないとまた徹夜になってしまいま――――ひゃぁ!?」

 

それでもなお炬燵の魔力に取りつかれた提督を救い出そうとする翔鶴だったが、突然腕を引っ張られ提督の腕の中と炬燵の中に引きずり込まれてしまった。

 

「いいじゃねぇかぃ……今日は全国的に休日なんだし……ぐぅ」

 

腰のあたりに手を回し強く抱きしめる提督。まるで翔鶴を抱き枕代わりにしてるようだ。

唐突の提督の行為により、半分目が回り一気に顔が赤くなってしまった。

翔鶴にとってせめてものの救いはアイマスクをしてることにより、提督と目が合わないことだった。

ちなみに今日は平日であって休日というわけではないので悪しからず。

 

「あのあのあの提督っ?……求められるのは嬉しいのですが、まだ日も沈んでいませんしお気が早いのでは……」

 

なんとか抜け出そうとし抵抗――――するどころか、体の力を抜き提督の胸に顔を寄せ体を縮こませた。

言ってることとやってることが違っていた。

 

 

 

シックな窓から差し込む夕日。

 

 

 

部屋には二人っきり、邪魔をしてくる艦娘はおらず。

 

 

 

相手は寝ているが、自分をその気にさせてしまったのはその寝ている相手。

 

 

もうなにも怖くない!普段は欲望のままに行動をすることはあまりない翔鶴だが、今ここで好機《チャンス 》を逃したら不幸艦である自分に、またこのようなチャンスが巡ってくる可能性はほとんどない!

そう直感的に感じた翔鶴が取った行動は――――

 

 

「(いい……わよね。キスしても……寝ぼけてたとは思うけど、提督からしてきたんだし。……瑞鶴、ごめんなさい。貴方相手でもこれだけは譲れないから……!)」

 

高鳴る鼓動を抑え、腰に手を回されつつも体を前に前にと進んで行く。

誰にもこの想いは負けない。誰にもこの人を渡したくないと強く思い、提督の顔を至近距離から見つめる。

今までいの一番に妹のことを考えていたのに、それが今となっては自分の気持ちのままに動こうとしている。

自分たちは艦娘といった存在なのにも関わらず、兵器として乱雑に扱わないで人として接してくれ、口調は荒くても自分のことよりも私たちのことを優先してくれる……そんな優しさに溢れる人を好きになってしまった。

たった一人で色々なことを背負い、誰にも弱みを見せない。誰かに甘えられたりされてもこの人が心から甘えて来ることはなかった。部下に弱気なとこを見せてはいけないのだろうと思っているのかもしれないけれども、秘書艦である自分にはもっと頼って、甘えて欲しかった。

 

「提督……お慕い申しあげております…………」

 

この人を誰よりも近くで支えたい。自分だけを見てほしい。

瞳を閉じて、ゆっくりと自分の唇を提督の唇に重ねようと……お互いの距離が今まさに隙間なく埋まろうとして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまーっ司令官!艦隊が帰投したわ。お疲れ様っ!」

 

「司令官。ひびk――――じゃなかった。Верный率いる第六駆逐隊帰投したよ」

 

「ちょっと響!暁率いるの間違いでしょ!」

 

「司令官さん、遠征から帰投したのです。これがその報告書とお土産なのです」

 

「……傍からみたら電ちゃんが一番しっかりしてるように見えますよね」

 

「名もなき鎮守府《うち》で最も長くいるのは電ちゃんだからね。翔鶴姉が着任するまでは秘書艦をしてたみたいだし、その後も二人のサポートをしてたからこういったことは慣れてるんでしょ。そうだよね、翔鶴ね――――ってどうしたの翔鶴姉?」

 

「な、ななな何もないわよ!みんな、本当にお疲れ様!おほほほっ」

 

することはなく、今までのことをなかったことにしたいのか、提督の腕の中から一瞬で抜け出し提督の近くに控える。

口元に手を当てていつものように、全てを包み込むような笑顔で遠征から帰還してきた6人の艦隊を出迎える。

執務室の入り口に立っている6人はそんな翔鶴のいつもと違った様子に首を傾げる。いや、そのうちの一人の姉妹艦である瑞鶴は自分たちが来る前にこの場で何があったかなんとなく想像が付いていた。姉妹としてのシンパシーなのか、それとも違うパワーで直感的に感じたのかもしえない。

それにしてもなんてタイミングが悪いのか。今自分の指と触れ合ってる唇は後もう少し彼女等が来るのが遅ければ

そのみずみずしい唇は提督のカサカサしてる唇と触れ合えただろうに。

 

 

 

―――—上から順に遠征から帰投してきた艦隊を紹介しよう。

 

雷。らいじゃなくいかずちと読む。第六駆逐隊と呼ばれる部隊の一人で駆逐艦暁型の3番艦。

4姉妹の中で提督の役にたとうと日々奮闘している元気っ娘。かわいい。

 

響―――—現Верный《ヴェールヌイ》。同じく第六駆逐隊の一人。暁型の2番艦。

名前がロシア語になっているが、元は日本艦。響の軍艦としての能力が高まったことで更なる強化が可能となり、今のВерныйがいる。提督と一部の艦娘からは響と呼ばれている。理由は様々だが、提督を筆頭にベールヌイと言うのは長いからとのこと。

4姉妹の中でクールな性格で口数が少ない……が、雷に負けずと提督と共に頑張ろうと日々奮闘しているクールっ娘。かわいい。

 

暁。暁型駆逐艦ネームシップである暁。つまりは上記二人の姉にあたる艦娘で第六駆逐隊の一人。

暁型4姉妹の中で長女であることがせいなのか、自分が大人であることを強く主張し、できる女であることを提督にアピールしようと日々奮闘している背伸びしている年頃の娘。かわいい。

 

電。でんと読みがちだが稲妻……読み方はいなづま。上記3人の末っ子、暁型4番艦。

この鎮守府では一番最初にいた艦娘。秘書艦も務めていながら、後任の翔鶴のサポートにも回っていたこともあり見た目幼女ながら超優秀。健気に提督に尽くそうと日々頑張っている心優しき娘。かわいい。

 

 

瑞鳳。祥鳳型2番艦の軽空母。本人曰く元々は給油艦として設計され、名前も瑞鳳ではなかったらしいが艦娘で生まれた時は航空母艦瑞鳳としてだった。

良く仕事をサボって遊んでいる提督を連れ戻したり、一緒に仕事しようとするがその時に目にも見えないくらいの早業で格納庫を弄られ(意味深)逃亡されてしまう。

ちなみにその様子を見ていた艦娘にセクハラとして魚雷や主砲を撃ち込まれたり、なぜ自分にはしてくれないのかと提督に詰め寄ったり等、小話があったりする。

入渠ドック……艦娘が破損した時に利用する修復所なのだが、お風呂としても利用できる設備。そこのドックも嫌いではないらしいのだが、たまには温泉に行きたいとぼやいてたりする。無類の温泉好き。

余談だが初めの頃、提督に格納庫を弄られた時は羞恥で周囲もろとも提督を爆撃していたが、慣れというのは怖いもので現在は弄られていても満更ではなかったりする……もはやコミュニケーションの一種と化していた。

 

そして最後に瑞鶴。約6000行前に翔鶴が言った時にちょこっと紹介したがここではもうちょっと詳細に説明しよう。

瑞鶴が着任してきたのは姉妹共々、背景に美しい百合の花が咲くくらい姉妹愛が強く。翔鶴は気が利ける電に涙目で提督に縋るほど、病みが入っていた。……いない瑞鶴に代わり、写真の瑞鶴に向けて(艦娘になる前の写真)話していた。それもまぁ、提督と話し合ったおかげで瑞鶴が着任する前に解決はした。

瑞鶴にいたっては姉を強く思うあまり、着任当日提督を探していた瑞鶴は提督と翔鶴が廊下で仲睦まじく話していたところ……なんともタイミングが悪いとこで目撃してしまった。

某えっちぃラブコメハーレム漫画の主人公よろしく、この提督にも同じような特殊技能――――そう、世の男子が一度は憧れるであろうラッキースケベを持っているのだ。その主人公よりかは力が弱いけれども、ラッキースケベを持っている提督は翔鶴と話している時に発動してしまったのだ。

話を終え、二人とも執務室に戻ろうとした時翔鶴が何かに躓いてしまい、そのまま正面にごっつんこしてしまうその直前、提督が素早く動いて翔鶴を抱き留めた。

 

 

……そう抱き留めた。右手はお腹のとこ、左手は…………翔鶴の胸を鷲掴みにしてた。

胸当てがあるから感触は冷たく硬かったんじゃね?と思うじゃん?だがラッキースケベを持つ男は違った。

翔鶴を支えようとそのことに頭がいっぱいだった提督は……胸元の中に直接手を入れてしまったのだ。

その光景を目撃してしまった瑞鶴はというと……自分の姉を真昼間からセクハラする変態上司と確定してしまい、怒りに身を任せ提督目がけて艦載機を発艦させ爆撃した。

その後は……翔鶴の懇親丁寧な説明によりその場の誤解は解けたのだが、女性の胸を触れたのは事実。揉まれた本人は顔を赤くしていたが笑って許してくれた。だが着任したての瑞鶴は提督のことなんてほとんど知らず、偶然とはいえ自分の姉の胸を揉んだ男《変態》。翔鶴のいる手前、大人しくしていた瑞鶴だったが……もし翔鶴がいないで提督と二人執務室にいたら確実に飛びかかっていただろう。

 

 

そんな内なる敵意を秘めていた瑞鶴だったが半年以上経った今では……敵意とはまったく逆の感情を持つようになっているが。

 

 

 

「んぁ…さっきから騒々しいな。うるっさくてまともに寝れねーぞ」

 

静かだった部屋が急に騒々しくなったせいで、提督が目を覚ました。アイマスクを外して上半身を起こし、遠征から帰還してきた方へと寝ぼけ眼で見る。

 

「あー司令官っ!こたつに入りながら寝るなんてずるい!暁も入っちゃうんだからっ」

 

「あ、みかん!司令官一緒に食べましょ!」

 

一目散に提督の隣に潜り込む暁&雷。それなりに大きい炬燵であり、駆逐艦である彼女たちは体のサイズが小さいので提督と同じところに入るのは容易であった。

 

「ボーキ確保組か、結果報告頼むわ。後お前ら引っ付きすぎ」

 

が、暁と雷の間に提督が挟まれているため少し離れろと言う提督だが、みかんを食べている暁は「遠征がんばったんだからこれくらいいいでしょ。レディーを労わるのも司令官の務めなんだから」と口の横にみかんの白い筋が付かせたまま言う。

反対にいる雷は「外は寒かったんだもん。一緒に温まりましょ?はい司令官、あーん」とちっちゃな手でみかんの皮を剥き、にぱーっと笑顔をこちらに向けあーんをしてくる雷。

提督自身やることは必要以上にやってくれてる彼女たちにこれ以上何も言わず、軽く肩を竦め雷から差し出されたみかんを食べる。

 

その様子を羨ましく見ていた残りの艦娘(翔鶴はバクバク言っていた心臓を鎮めるためにもお茶を汲みに行った)は空いているとこの炬燵に入る。

 

「遠征の成果は大。艦隊全員破損もなく無事帰投。持ち帰ってきた資材は既に倉庫に貯蓄済み。…うん、みんなお疲れさん。今日のところは各自ゆっくり休んで骨を休めてくれ」

 

電に手渡された報告書を後ろの執務机にピッとスナップをきかせて飛ばす。

報告書を読んでいた時は死んだ魚のような目でいたが、今は活性化した魚のような目みたく仕事モードのスイッチをONにしたまま遠征組に言い渡した。

 

 

「司令官、司令官一緒にお昼寝しない?今なら電も一緒に付き添ってくれるわよ!」

 

「お、お姉ちゃん!……し、司令官さんさえよければお傍にいてもいいですか……?」

 

「司令官。この後入渠しにいこうと思っているんだけど、司令官も一緒にどうだい?」

 

「あ、響だけずるいわよ!暁だって司令官と背中流しっこしたいんだからっ」

 

「ねぇ提督、この後の彗星整備したいんだけど手伝ってくれない?その代わりと言ったらなんだけど、あとで提督の仕事も手伝ってあげるから」

 

その言葉を待っていましたと言わんばかりに瑞鶴以外の遠征組が提督と一緒に過ごそうと猛烈にアタックをしかける。その中で憲兵に聞かれたりしたら、詰所に送られてしまいそうな発言があったが、向こうから誘っているので無理やりじゃない限りは……そこまで酷い目には合わないはずであろう。

 

「わりぃが先に終わらせておかなきゃいけないことがあるからまた後でな。それと響。年頃の子がそんなこと言っちゃいけません。男は皆ケダモノなんだぞ。人の皮を被ったビーストなのだぞ」

 

仕事場で炬燵を用意してまで寛いでいたやつがそんなことをのたまう。

全員分のお茶を入れ終え、お盆に載せたお茶を配っていた翔鶴はたまにセクハラ紛いの発言をする提督に苦笑いをしていた。瑞鶴は周りに聞こえるか聞こえないかの声で「提督さんってやっぱロリコンなのかしら……」

と呟き、冷ややかな目で提督を見ていた。その瑞鶴の視線に提督は気づかず。

断りの返事をされた遠征組の反応は……

 

「そうなの?それじゃ肩揉んで上げるわ!司令官のコリをほぐして上げちゃうんだから!」

 

「お仕事なら仕方ないのです………!それならいなづまもお手伝いしていいですか?」

 

一回断られただけではまったくへこたれず。提督に尽くそうとガンガン攻めに入る雷。

引っ込み思案である電は寂しそうに顔を俯かせながらも素直に引き下がった――――が、雷が提督の役に立とうとしてまで一緒にいようとしたのに習い、電はグッと両手を胸の前で握りしめ、やる気をアピールする。

善意100パー且つ、提督と少しでも一緒にいようと努力を惜しまない雷電。

まだまだ甘えたいお年頃のようだ。

 

「大丈夫さ。こんなこと司令官にしか言わないよ。提督の仕事は後で私がやるからなにも問題はないさ。さ、一緒に行こうか」

 

「ねぇ司令官、お風呂に温泉の素いれていい?瑞鳳さんからもらったんだけど、これの効能がねすごいんだって!一か月この素をいれたお風呂に入り続けると胸がおおk――――むぐぐぐっ!?」

 

暁型4姉妹の中で一番大人びているВерныйは一気に提督との距離を縮めようとし、提督の腕を取って立ちあがらそうとする。普段他の艦娘といる時のВерныйの表情は少し硬いことが多いのだが、今ここにいるВерныйは表情が和らいでいて、どこか楽しそうである。

長女である暁はもう既に入渠するき満々である。ケ○リン桶にアヒルの玩具。バスタオルに洗面用具等……お風呂スタイルでいた。どう見ても響よりも浮かれている。

一人前のレディーを目指している暁は瑞鳳から譲り受けた、とある一部分を成長させる効能があると噂されてる温泉の素を掲げ、提督に使用していいか聞き効能を説明しようとしたが……最後まで言い切る前に焦りに顔を真っ赤にした瑞鳳が軽空母らしからぬ速度で暁の口を塞いで、耳元で「その話は提督の前ではしないって約束でしょ!?」囁いた。

どうやら提督の前でこの手の話はしたくないご様子。

 

「……お前ら体を休めろって言ってんのになんで働こうとするのかね。まぁ、手伝う云々は後にして遠征組は先に入渠しておけ。入渠し終わってからまた来な」

 

「ふふふ、なんだかんだで司令官は私たちと入渠したいんだね」

 

「だから俺は入らないっつーの。大体まだ夕方だし入んないっての。……瑞鳳、そろそろ暁を離してやんな。苦しそうにしてんぞ」

 

「へっ?あ、ああああぁぁ!ごめん暁ちゃん!大丈夫?」

 

「……ぷはぁ!だ、大丈夫。こんなことで一人前のレディーは落ちないんだからっ」

 

腕を引っ張っていたВерныйにデコピンをかまし、その逆サイドにいる雷と電の頭に手を置き優しい笑みを浮かべた。

Верныйは痛そうにおでこを抑え、雷電コンビはほにゃっと見てるほうも幸せになりそうな嬉しそうにしていた。提督に言われて、ずっと暁を後ろから口を押えていたことに気付き暁を解放する。

自分の行動に気付かないほどテンパっていたみたいだった。

 

「にしても……瑞鳳さんよぉ」

 

「うっ……」

 

なにやら面白い玩具を見つけたかのようにニヤニヤと瑞鳳を見る提督。それに対し、提督の顔を見てこの後の展開が読めてしまい身の危険を感じた瑞鳳は提督から少し距離を取る。

 

「以前小さいことなんか気にしてないって言い張ってたのに、やっぱ気にしてたんだな」

 

「ちちちちがっ!むむむ、胸のことなんて全然気にしてなんかないんだからっ!!」

 

自分のコンプレックスである胸に視線を注がれ、両手を交差し胸を隠すような仕草をし顔を真っ赤にしつつ全力で否定する。

スキンシップと称して提督に体中を弄られたことがある瑞鳳だが、その時提督のスキルラッキー(ryが発動し胸を触られてしまい、意図せず瑞鳳の胸に触れてしまった提督は無意識にこう言ってしまった。

 

 

『……ん?これは……紙装甲?』

 

とても女性の胸を触ってしまったことに罪悪感の欠片も感じられない台詞に瑞鳳の数少ない地雷を踏んでしまい、逆鱗に触れた。その後の提督の末路は……言わずもがな。

初犯だったその頃とは違い、今となっては提督とのスキンシップと言う名のセクハラ行為に軽く注意する程度で、その行いには嫌というわけではないみたいだ。

それでも周りの空母たちは瑞鳳のコンプレックスである部分が大きかったりするのが過半数は占めているので、それがさらに劣等感を煽ってしまっているのだが。

 

「んん~?胸?俺は別に胸のことなんか一文字たりとも言ってないんだけど?それで反応するってこたぁ、自分が貧乳だって認め――――」

 

「それじゃ報告は終わったので私たちはこれでっ!みんなっドックに行きましょ!」

 

羞恥が限界を越してしまったのか、とてつもない速度と力を発揮し駆逐艦4人を両脇に抱え執務室から出て行った。4人を抱える前にちゃんと敬礼をして出ていく辺り、混乱していてもしっかりしていた。

瑞鳳に突然抱えられた暁、雷、電はあまりの速さに自分たちが瑞鳳に抱えられたことすら執務室から退出するまで気が付かなかったが、Верныйだけは自分の状況を冷静に把握したまま「それじゃ司令官、私たちは先に入渠してくるよ。後で司令官もくるt――――」なんて言っていたが、最後まで言い切ることはできなかった。

 

 

 

 

 

「ふふふ……かわいい反応してくれるな。それでこそいぢりがいがあるってもんだ」

 

「もう……提督?あまり女性の胸のことでからかうのは良くないですよ」

 

「……(むぅ、同じ翔鶴型姉妹なのにどうして私だけ……)」

 

両手を組んでその上に顎を乗せ、むふーとほっこりとした提督に翔鶴が手のかかる子供を諭すように苦笑いで注意する。

そんないつも通りほぼ毎日見る二人のやり取りをしてる中、瑞鶴は目線を下に写し自分の胸の大きさを確認した後、見比べる用に自分の姉の胸を胸当て越しに見て落胆する。

普段は自分の姉を尊敬し甘えたりしているが、こればっかりはシスコンの瑞鶴であろうとも話は別らしい。

瑞鶴自身、戦艦クラスの巨大ほどは望んでないみたいだがそれでもそれなりの大きさは欲しいとのこと。

前まではこの鎮守府内で1、2を争う大きさを持つ艦娘みたく大きくなりたいと望んでいた瑞鶴だったが、ある日のこと提督と翔鶴の会話をたまたま聞いてしまったその時から考えは変わったようで……その時の二人の会話の内容だが、要約すると『提督の胸の好みは翔鶴くらいの美乳』というものだった。

なにがどうしてそんな会話になったのか瑞鶴にはわからずじまいだったが、提督の嗜好を聞いてしまった瑞鶴は他の艦娘たちにそれとなく言いふらし、ある艦娘は嬉々とし、またある艦娘は落ちこんだりと……その日は碌に提督も艦娘も仕事はしなかったとだけ言っておこう。

 

「はふぅ……めんどうな執務はほぼ片付いたし今日はこのまま炬燵ン中でだらーっとしようぜ」

 

「え?提督さん、さっきこの後やることがあるっていってなかったっけ?」

 

「たしかに時間のかかりそうなものは終わりましたけど……本日中にやらなければいけない執務はまだ残っていますよ」

 

提督が瑞鳳たちの誘いを断ったのは先にすることがあるからと言っていた。

秘書艦としてすべきことを把握している翔鶴に先ほどの一連の流れを見ていた瑞鶴の疑問は当然だろう。

 

「何言ってやがる。休むことも立派な仕事のうちだ。体調管理もきちんとできて且つ仕事もきっちり熟す。できるやつってのはそういうもんだ」

 

なんてそれっぽいことを言っているが、この理論に当てはめると提督の仕事のうち7割は休息(もしくはサボリ)である。

 

「……ま、というのは建前で。今日はてめーらとのんびりしたいというのが本音だけどな」

 

……と、照れもせずに自分の本心を言い放つ提督。いや、二人から目を逸らしてはいるのでほんの少し照れは入っているかもしれないが。

そんな提督のたまにしか見せてくれないストレートな好意の言葉を受けた五航戦姉妹はというと

 

「(提督……私を秘書艦にしてくれたあの日から貴方のお傍にいて支えていたいと思っています。貴方にとって私は一人の艦娘かもしれませんが……この胸の高まりは作られたものでも、偽りでもない。この想いは誰にも負けない……!一抗戦の先輩たちにも瑞鶴にも!)」

 

「(ううっ、提督さん無自覚でこんなこと言ってくるから反則だよね。今の私絶対顔真っ赤になってる。あーもう落ち着け瑞鶴!きっと提督さんは他の子にも言ってるはずで……はぁ。やっぱ提督さんからしたら私は翔鶴姉の妹でしかないのかな……そりゃ私が他の艦娘たちよりも提督さんと一緒に過ごす時間は多いけどさ。……ダメよこんなんじゃ!こんな後ろ向きな考えじゃ!私は!誰にも!!翔鶴姉にも!!!この想いは負けたりしないんだからっ!)」

 

二人とも顔を真っ赤にしていたが、思考が深くなってくるにつれ自分の気持ちを再確認し決意を新たにする。

急に黙り込む二人を見て、提督は首を傾け声をかけた。

 

「……?おい、黙りこくってどうs「「提督っ(提督さん)!!!」」ぬおっ!?」

 

今度は二人同時に大きな声で呼ばれ、驚く提督だが提督の驚きはまだ続いている。炬燵の中に入ってたにも関わらず、人ではありえないスピードを発揮し、右に翔鶴。左に瑞鶴と提督を挟み込むように座る。

 

「ちょ、本当にどうしたおまえr「「なんでもありませんよっ(なんでもないでーす)」……そうか」

 

両腕を組まれ、語尾に♪がつきそうなほど嬉しそうな二人を見て何も言えなくなり、自然と自分の表情も緩くなっていた。

 

 

 

 

 

今日も名もまだ無き鎮守府では平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば翔鶴姉?さっき私たちがここに来る前、提督さんに何かしようとしてたよね……何してたの?」

 

「そ、それは……提督の髪にゴミが付いてたから取っていただけ……ちょ、ちょっと瑞鶴?目が怖いわよ!?」

 

翔鶴&瑞鶴の寝室ではこんなやり取りがあったとかなかったとか………

 

 

 

 

 

 

 





というわけでプロローグっぽい話でした。
時系列とかは話によってたびたび違ったりしますが、本編もしくは後書きなんかに日時などは記載するつもりです。
もうこの話でわかってしまった方がほとんどでしょうけど、この作品のメインである艦娘は翔鶴&瑞鶴です。ホント鶴翼の絆と設定が同じかもしれませんが、この作品では戦闘はほぼない予定ですので……戦闘描写は鶴翼の絆で!
ちなみに、全艦娘を出演させる……というか万遍なく登場させるのは不可能なので、まえがきのとおり作者のお気に入りの子メインで書く予定ですので、もう既に嫌気がさしてしまったかもしれませんが、それでも大丈夫と言う方は次回もお楽しみにしてくださいませ

誤字報告、感想等がありましたら随時受け付けておりますのでどうかよろしくお願いします
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