早乙女涼子の天罰   作:水野大陽

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早乙女涼子の天罰〜前編〜

 ある朝、洗面所で顔を洗っていた濱秋子は、タオルで顔を拭いていた

 

 濱「大知!ちょっと来て!」

 

 浴室に干してあったモノに気付いた濱は、大知を呼ぶ

 

 大知「どうしたんだ、母さん?」

 

 大知が現れる

 

 濱「何でアタシが買った覚えがないブラジャーが、干してあるの?…大知!あなた、まさか…下着泥棒なんかしてないわよね?」

 

 濱はアワアワしていたが…

 

 大知「そんなワケないだろ!日高京子のだよ…昨日、夕立ちがあっただろ…だから、ウチでシャワー浴びてもらった後、前に、しお姉ぇのジイちゃんが送ってくれた服貸したんだよ…で、一緒だった達姉ぇが、洗ってくれたんだよ!」

 

 濱「おどかさないでよ…」

 

 濱は脱力してしまう

 

 濱「…あれ…『京子』って誰?」

 

 大知「6年生の子だよ!交番勤務の父さんと2人暮らしらしいんだ…その父さんが、華連姉ちゃんの先生だったんだってさ!」

 

 そこへ、濱のスマホが振動する

 

 濱は腰が抜けていたため、大知が出る

 

 中屋敷「濱!俺だ、中屋敷だ!」

 

 大知「どうしたんだよ?」

 

 中屋敷「大知か…大知の方が話は早い、実は…」

 

 中屋敷は一部始終を、大知に話す

 

 ―――――――――――――

 

 警察病院の遺体安置室にて…

 

 警官「ご苦労様です!」

 

 警官は川原華連に加えて、一緒だったはじめに敬礼する

 

 検死医は遺体の顔の布をはがす

 

 華連「日高さん…」

 

 華連は暗い表情になる

 

 はじめ「なんてこった…」

 

 はじめも頭を抱える

 

 検死医「日高茂樹(ひだかしげき)巡査部長とは、どのような関係で…」

 

 華連「警察学校時代に、私を担当した柔道の先生です!」

 

 はじめ「俺にとっても、亡くなった級友の兄だったんです!」

 

 そこへ…

 

 ???「お父さん!」

 

 黒髪ショートカットの中性的な少女が、中屋敷に連れられて、遺体安置室に入ってくる

 

 中屋敷「簡単な現場検証の結果…君のお父さんは、『パトロール中に放火犯に遭遇して、逮捕する際に刃物で刺されたんだろう』って話だったよ!」

 

 中屋敷は少女に諭す

 

 はじめ「中屋敷、その子は…」

 

 はじめがたずねる

 

 中屋敷「日高巡査部長の娘の京子だよ!不動小学校の6年生で、父親と2人暮らしなんだよ!」

 

 すると、華連が歩み寄る

 

 華連「日高さんを殺した犯人、このアタシが絶対捕まえるから!」

 

 華連は京子の肩に、手を載せる

 

 その頃…

 

 真壁誠「今月に入って5件目だな…」

 

 真壁刑事が数人の鑑識係と共に、昨夜の放火事件の現場検証をしていた

 

 鑑識係「真壁刑事!」

 

 真壁「どうした?」

 

 真壁は鑑識係の方に向かう

 

 鑑識係「前の4件と同じで、灯油が使われています!!おそらく、同一犯の犯行でしょう!」

 

 真壁「なるほど!」

 

 そこへ…

 

 ???「真壁くん、君たちは署に戻りたまえ!!後は我々が引き受ける!」

 

 本庁の池内警部と、部下の刑事数名が現れる

 

 真壁「待ってくれ!ここは我々の管轄で…」

 

 池内「上層部の了解を得たんですよ!!」

 

 池内は書類を出す

 

 真壁はしかめっ面こそしていたが、白金署の刑事たちと共に、現場を後にする

 

―――――――――――――

 

 数日後…

 

 華連は徹と共に、日高の義弟(死別した妻の弟)夫婦の自宅を訪ねていた

 

 華連は日高の遺影に線香をあげ、鐘を鳴らす

 

 徹と華連は目を閉じて、手を合わせる

 

 会沢美沙子「わざわざ、ありがとうございます!」

 

 義弟の妻である会沢美沙子は、緑茶を出す

 

 華連「本日、お伺いしたのは、気になる事がありまして…」

 

 徹「日高さんは殉職する数日前の非番の時に、華連さんを呼び出していたんです!」

 

―――――――――――――

 

 回想にて…

 

 日高「華連…俺、警察辞めようかと思ってるんだ!」

 

 華連「どういう事ですか?」

 

 日高「大した事じゃないんだ…ただ、俺まで死んだら、京子が1人になっちまう…雄一郎の足の事だってある…だから…転職を考えてるんだ!」

 

 しかしながら、日高の表情がゆがんでおり、何かを隠している様子だったのを、華連は見逃さなかった

 

―――――――――――――

 

 華連「あの後、日高さんに何度か電話したんですが、『忘れてくれ!』の一点張りで…」

 

 徹「白金署の真壁さんから教えて頂いたんですけど…会沢さん、以前の放火事件で、たまたま、現場近くに居合わせて、車に積んでた消火器で、消火したんですよね!!その時、何か分かった事は、無いんですか?」

 

 徹は躍起になっている様子だった

 

 美沙子「そんな事言われましても…突発的な事だったので…『女』だったって事くらいしか…」

 

 その頃…

 

 不動山市の郊外にある、リハビリセンターでは…

 

 早乙女涼子「もう…いい加減、慣れてよね!」

 

 陸上競技用の義足で歩く練習をする少年を、ヘルパーの早乙女が、大声で叱りつける

 

 日高京子の兄である雄一郎だった

 

 そこへ…

 

 職員「あちらが、早乙女先生です」

 

 池内「ありがとうございます」

 

 池内と部下の刑事数名は、早乙女の方へ向かう

 

 池内「早乙女涼子さんですね!警視庁の池内です!日高巡査部長殺害事件の事で、事情聴取したいので、我々とご同行を!」

 

 早乙女「ちょっと、どういうつもりよ!」

 

 早乙女が強引に連行される光景に、雄一郎や他の入所者たちは呆然としていた

 

 

 警察署の取調室にて…

 

 池内「こちら、あなたのアパートのベランダにある、エアコンの室外機の裏から出てきましたよ!」

 

 池内の部下の刑事が、血痕の付着したダガーナイフと、灯油が入ったペットボトルを出す

 

 刑事「付着してる血痕が、『日高巡査部長のDNAと完全に一致した』との事だ!」

 

 早乙女「し、知らないわよ!」

 

 さすがの早乙女も、狭い取調室内での高圧的な尋問に、かなり、動揺していた

 

 刑事「しかもお前、20年前に、学校の理科室の棚のカギを壊して、硫酸を持ち出して、演劇部の女子生徒に、頭から硫酸をかける傷害致死事件を起こしているな!」

 

 池内「実際、あなたにはこれまでの5件の放火事件の時のアリバイは、ありませんよね!」

 

―――――――――――――

 

 明智「わざわざ、ありがとうございます!」

 

 明智は電話を切る

 

 明智「真壁刑事、華連さん、捜査責任者の池内警部からです!!早乙女涼子容疑者が、『過去5件の放火』と『日高巡査部長の刺殺』を自供したそうです!」

 

 真壁「これで、一件落着だな!」

 

 しかし…

 

 華連は腑に落ちていない様子だった

 

 真壁「どうしたんだよ、喜べよな…日高さんは『警部』に昇進したんだぞ!」

 

 華連の様子に、何かを悟った様子だった

 

 明智「納得…いかないみたいですね…分かりました、上層部には私から話しておきますので…華連さん、あなたは納得できるまで捜査して下さい!」 

 

 華連「ハイ!」

 

 明智の一言に、華連は無垢な子どものように、元気よく返事する

 

 

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