さらに時間が経過し…
フミは太陽を見上げる
フミ「そろそろだな…」
華連「うん!」
華連とフミは真剣な眼差しになっている
徹「消火器、持ってきました!」
両手に消火器を持った徹は、地面に消火器を置く
その直後…
『交通安全の御守り』の吸盤を通して、画用紙に紫外線が集まり…煙が出始める
さらに数分後…ついには炎が出た
直後に車が中から爆発し、炎上した
華連「徹くん!」
華連と徹は消火器で消火する
池内「これは、一体…」
フミ「吸盤が虫メガネと同じ原理を果たしたんだよ…その時発生した炎が、気化したガソリンと漏れ出したライターのガスに、引火して爆発したんだよ!」
英彦はこっそりと、逃げようとするが…
フミ「どこへ行く気?」
直後に、英彦は走り出そうとするが…
フミに襟首を捕まれる
フミ「ふざけないでよ!」
フミは英彦をパトカーのボンネットに押し付ける
英彦「あーーーーーっ!」
英彦は泣きそうな顔で叫び声をあげる
そこへ、真壁のパトカーが到着する
美沙子「英彦くん!」
パトカーから降りた美沙子は、英彦に駆け寄る
英彦「何でトリックをしゃべったんだよ!」
英彦は泣きそうな顔で、美沙子を問い詰めるが…
美沙子「えっ?」
美沙子は呆然とする
真壁「お前の奥さんは、トリックの事なんか、しゃべっちゃいないぞ…ここに来るまで、金田一と一緒に、お前と奥さんの馴れ初めの話をしてただけだ!」
英彦と美沙子は揃って呆然とする
はじめ「華連の作戦だよ!…それに俺自身も、『お前たち2人を引き離せば、必ずボロが出る』と予想してたから、協力させてもらったんだよ!」
腕組みしたはじめは、冷ややか目で説明する
英彦「騙したのか!」
美沙子「英彦くん、止めて!」
美沙子に制止される
美沙子「全て、私たち夫婦がやった事です」
美沙子は観念し、自供する
華連「やっぱり…」
華連は真顔になっている
華連「アタシ、どうしても納得いかなかったんだ…日高さんは、柔道6段の腕前だから、犯人に簡単に刺殺された事が…でも、『犯人が身内だと確信していたから、説得しようとしていた』と考えれば、辻褄が合う!」
ーーーーーーーー
事件当日…
日高「英彦、覆面を脱げ!」
中学校のゴミ置き場に放火しようとしていた英彦に、日高は懐中電灯の光を当てる
観念したのか、英彦は覆面を脱ぐ
日高「やっぱり、そうだったのか…英彦、お前が生徒に暴力を受けたり、モンスターペアレントからのパワハラを受けて、俺が呼び出された時に限って、放火事件が起こってた!」
英彦「もうしないよ…だから…」
英彦は手を合わせて、懇願する
日高「何言ってんだ、俺は警察官だ!そんな事はできない!」
英彦「俺に刑務所暮らしさせたいのかよ」
日高「俺も責任を取って、警察を退職する!だから、罪を償って、やり直そう!」
英彦「イヤだ…イヤだ…」
日高は手錠を取り出し、英彦を逮捕しようとするが…
直後に何者かに、背後からハンマーで後頭部を殴打される
さらに、後ろを向いた瞬間、美沙子に下腹部を刃物で刺されてしまう
ーーーーーーーーー
真壁「そして、アンタは英彦を逃した後、いざとなったら、罪を被るつもりで持ち歩いていた、自前の灯油で放火し、英彦が持っていた灯油を、早乙女涼子が住む社宅のエアコンの室外機の裏に仕込んだ…って所か?」
美沙子「ハイ!」
美沙子は正直に答える
徹「でも…一体、何があったんですか?」
徹は真顔で尋ねる
真壁「車ん中で、金田一たちに話してた事…徹たちにも教えてやってくれないか?」
美沙子は重い口を開く
美沙子「私は元々、英彦くんの姉の静香と親友だったんです…」
池内「その姉というのは、殉職した日高くんの奥さまという事ですか?」
美沙子「ハイ!」
フミ「京子ちゃんや雄一郎くんの、死別したお母さんだよ!」
フミが補足する
美沙子「英彦くんは幼少期から、父親の虐待を受けて育ったんです…そのせいで、殻に籠もるようになってしまって…だからこそ、私が英彦くんを支えてあげたくて、籍を入れたんです!」
『虐待』という言葉に、華連が反応する
華連「ねぇ!もしかして、英彦さんって小学3年生の時、ランドセルを刃物か何かで、バッサリ切られた事ってあった?」
美沙子「どうして、それを?」
美沙子は驚く
華連「やっぱり…」
ーーーーーーーーー
華連の警察学校時代の回想にて…
日高「華連!ちょっと、聞いていいか?」
学生食堂で相席した日高は、華連に尋ねる
日高「もし、華連の身近に、『小学3年生くらいの子がいた』として、その子が学校でランドセルを、刃物でバッサリ切られたとする…お前だったら、どうする?」
華連「そんなの、犯人が誰なのかを聞き出して、犯人をコテンパンに、懲らしめてやります!」
華連は自信満々で即答する
華連「学校イジメでは、済ませません!立派な『器物損壊罪』です!」
日高「そう思うよな!」
日高は烏龍茶を一気飲みする
日高「だけど…そういうのは、被害者がその場にいない時に、起こるケースがほとんどだ…被害者自身も『現場を見ていない』以上、はっきり言って、誰にやられたのかなんて、分かりっこないぞ!」
華連「あっ…」
日高のツッコミに、華連は一瞬、固まる
日高「そこで、質問…お前だったら、どんな方法で、犯人を割り出す!」
華連はしばらく考えて…
華連「学校の教室で起こった以上、同じクラスの誰かである可能性が高いから…帰りのホームルームで、全員に目を瞑らせて、犯人に無言で挙手させます…『連帯責任』として、犯人が名乗り出るまで、帰らせません…犯人は、早めに名乗り出ないと、クラス全員から恨まれますから…」
日高「合格!」
日高は華連の顔を指差す
華連「あれ!…でも、何で、こんな事聞くんですか?」
日高「別に、深い意味は無いんだ!」
ーーーーーーーー
華連「アタシ、日高さんが何であんな事聞いたのか、気になってたんだ!」
華連は疑問が解けた表情をしている
徹「という事は、もしかして…」
美沙子「えぇ、英彦くんは、誰かにランドセルを刃物でバッサリ切られたのを、発見した時、私や静香にすぐに、報告しました…静香が母親に報告し、母親が父親に報告したのですが…」
フミ「お父さんが学校に怒鳴りこんだの?」
美沙子は首を横に振る
美沙子「父親は英彦くんに、『誰にやられた』のか問い詰める事しか、しなかったんです…無論、現場を見ていない英彦くんは、誰にやられたのか、分かるはずもありません…その上、母親は父親に告げ口した後、寝てしまって…」
はじめ「無責任にも程があるぜ!」
はじめは頭を抱える
美沙子「静香が一部始終を覗き見していたんですが、父親と英彦くんの『誰にやられたの?』『分からない』『3年生にもなって、なぜ、「分からない」なんて言う!』の、押し問答が3時間以上も続いて…」
華連「お父さんが英彦さんに、5〜6発ビンタしたんだよ!」
華連が口をはさむ
華連「日高さん言ってた…アタシだって、最初に聞いた時、そんな理不尽な事に怒りを持ったよ!」
さすがの華連も、目で怒りを表していた
徹「でも、何で『本人が知る由もない』内容を、『分からない』と答えるのが、まずいんですか?」
徹は首を傾げる
池内「おそらく、父親は『知っているのに教えない事で、困らせて楽しんでいる』と捉えたのでしょう…児童虐待では、よくある典型的なパターンです!」
徹「なっ…」
実両親である揚羽や深山からは、もちろんの事、館羽が生まれた後も、濱秋子から愛情を注がれて育った徹には、思いつかない発想だった
美沙子「辛い少年時代を過ごしたからこそ、同じ境遇の少年少女を救いたくて、英彦くんは教師になったんです…それなのに…」
はじめ「全面的に裏目に出ちまって、生徒からの暴力やモンスターペアレントからのパワハラに、苦しんじまった…ってトコか…そして、そのうっぷんを、放火で晴らしてた…」
はじめの発言に、徹は頭を抱える
真壁「あれ…由美や孝介ならまだしも…PTA会長を殺したのはどうして…」
真壁は腑に落ちない様子だったが…
はじめ「俺の予想だから、確信はないけど…小学生の頃の『ランドセル切り裂き』の犯人って、海津姉弟の母親だったんじゃないのか?」
美沙子「えぇ、そうよ…PTAの新年会の時、酔った勢いで、自慢げに語りだしたわ!」
はじめたちは、呆れて言葉も出なかったが…
フミ「ふざけないでよ!」
フミの大声が響く
フミ「『放火してる』って知った時点で、何で止めなかったの?…『いざとなったら、罪を肩代わりするつもりだった』って言うけど、その後、どうする気だったの?」
徹「フミさん、落ち着い…」
フミ「黙ってて!」
フミに圧倒され、徹は口ごもる
はじめ「フミの言う通りだ…仮にアンタが罪を肩代わりしても、コイツの心を救ってやらない限り、また放火してた可能性だってある!」
はじめも珍しく、厳しい口調になっている
はじめとフミの力強い主張に、美沙子は反論できなかった
池内「話はそれぐらいにしてもらっても、よろしいですか?」
手錠を持った池内は、美沙子に手錠をかける
真壁「お前がかけてやれ!」
真壁は手錠を華連に渡す
華連「うん!」
華連は英彦に手錠をかける
華連の脳裏には、日高の言葉が蘇っていた
ーーーーーーーーー
華連の警察学校の卒業式の回想にて…
日高「これで、お前は警部補だな!」
華連「ハイ!」
卒業証書の筒を持った華連は、敬礼する
日高「最後にこれだけは、言わせてくれ…華連、警察官は犯人のどこに手錠を打つ?」
華連「どこって…手首じゃないんですか?」
華連は首を傾げる
日高「違うんだよ…人が殺人事件を起こしてしまうのは、あくまでも最終手段だ…そこまで、思いつめてしまったワケだから、それだけ深い動機がある…手首じゃない…『犯人の悲しい心』に手錠を打ってやる事こそが、俺たち警察官の義務なんだよ!」
日高の力強い主張に、華連は驚くあまり、固まっていた
日高「これを厳守しなかったら…これから先…俺の上司として、再会する事になったとしても、俺はお前を許さない…そのつもりでな…川原華連警部補!」
―――――――――――――
数日後…
達美「よし、これで全部かな!」
引越し業者の制服に身を包んだ達美は、社員数人と共に、日高の自宅アパートから、荷物をトラックに積む
大知「俺、京子のラーメン、絶対、食いに行くから!」
瑠理「瑠理も!」
出発間際になり、大知と瑠理は、しゃがんだ京子とハイタッチする
引越し業者社員「こちらに、サインと印鑑をお願いできますか?」
揚羽が代理人として、書類に署名する
達美「そろそろ、出発するよ!」
その頃、中屋敷学法律事務所では…
濱「え!京子さんが、月江さんのお店で…」
徹「はい!お父さんが叶えられなかった夢を叶えるため、お店に住み込んで、修行するつもりらしいんです!」
中屋敷「あそこなら、兄貴が入所してる障害者福祉施設からも近いからな!」
中屋敷がパソコン操作をしながら、口をはさむ
徹「そういえば、僕、気になってた事あるんです…京子さんのお兄さんの雄一郎さんって、何でパラリンピックの陸上選手を目指して、無理して競技用の義足を使いこなそうとしていたのか…」
中屋敷「知りたいか、徹…」
中屋敷は20年前に、はじめに尋問された時同様に、上目遣いになっている
中屋敷「その秘密はコイツだよ!」
中屋敷は封筒を、徹に渡す
徹「ん…何ですか、これ?」
封筒の中身は、年代物のフィルムカメラで撮ったと思われる写真が、数枚入っていたのだが…そのうちの1枚に写っていたモノに、徹と濱は固まる
徹「コレ、どう見ても、轢き逃げ事件の写真ですよね?」
写真に写っていたのは、陸上部のユニフォームを着た男性が、うつ伏せに倒れている光景だったが…その背中にはタイヤに轢き潰されたような跡があった
中屋敷「そこに写ってるのは、殉職した日高警部の弟で、日高織絵の次兄なんだよ!」
徹も濱も初耳だったようで、驚いている
中屋敷「海津姉弟の父親、つまり、海津里美の弟が、本庁の池内警部に正直に白状したらしい…20年前、ヤツは陸上部の選手だったんだよ!」
中屋敷は真剣な眼差しで、説明する
中屋敷「だけど、『日高(次兄)に勝てそうにない』と悟り、海津里美の提案で、とんでもない手段に出たそうだ!」
濱「大会当日に、会場に向かう途中に、車で轢き殺したって事?」
中屋敷「400m走のトラックに、F1マシンを乗り入れたんだよ!マシンのラジアルタイヤで轢き殺したんだ!」
徹と濱は、驚いたあまり呆然としていた
濱「でも、そんな強行手段使ったら、大会主催者が気づかないのは…」
中屋敷「億単位の贈賄で、主催者をだまらせたんだよ!和泉宣彦から根こそぎ売上げを横取りしていた海津里美にとっては、億単位の贈賄なんて、朝飯前だったんだよ!」
頭が混乱した徹と濱は、ソファーに座りこんでしまう
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一方、茉莉香の父が経営するラーメン屋では…
早乙女「何で私が皿洗いなんか…」
早乙女がブーブー文句を言いながら、食器を洗っている
早乙女「私は演劇部では、トップ女優だったのよ…せめて、接客にしてよね!」
茉莉香の父「ラーメン屋の道は、甘くない!まずは基本から!」
茉莉香の父はスープの仕込みをしている
茉莉香の父「ワシもな、お前さんをイジメたいわけじゃないんだよ!だが、懲戒解雇のほとぼりがさめるまで、お前さん、行くあては、あるのかな?」
早乙女は反論できなかった
早乙女「分かったわよ、やればいいんでしょ、やれば!」
月島冬子をはじめ、結果的に5人もの命を奪ってしまったため、20年の時を経て、天罰を受けるハメになった、早乙女であった