やはり俺がアイドルライダーなのはまちがっている。 作:オルタナティブ
この作品は仮面ライダーと俺ガイルを主軸にしたものです
仮面ライダーも歴代の作品ではなく、あくまで作者が思いついたオリジナルの仮面ライダーをメインに据えたものです
今後他のアニメのキャラクターが登場します
設定上様々な曲の歌詞が本編に登場します
その他、これを呼んでいる貴方の「地雷」に当たる要素があるかもしれません
それでも「読んでやってもいい」という方のみ、本編をご覧になることをおすすめします
──────アイドル。
偶像という意味を持ち、そこから転じた英単語。
今では様々なアイドルが存在し、人々に希望を与えている。
……まあ、多少過激なファン層もいるが。余談だがファンの語源は熱狂的・狂気的を意味する
話を戻そう。今やアイドルとは、ただステージで歌って踊るだけではない。
バラエティ番組に出て水落ちしたり、運動系の番組で走り回ったり多種多様な
そして、新たなアイドルがここにまた現れる──────。
『GrRrrRR……GrruUAaaAAッッッ!!!』
敵は、生きとし生けるもの全てが数億年の時をかけて積み上げた進化の歴史を否定する異世界の怪物たち、『ウルニット・ダーニ』。奴らは本能の赴くままに暴れ回り、生命のあり方を否定する。
それに立ち向かうは、8人の男女。
その起動音が鳴り響いた瞬間──────世界が書き変わる。
惨憺たる未来を暗示するかのような曇り空を、無数の光に塗り替える。
荒廃した瓦礫の山が、歓声やまぬステージへと姿を変える。
その様に怪物たちは混乱せざるを得ず……その前に、彼らは立ちはだかる。
「さて、ここから先は──────俺たちのライブだ」
純白の装束に身を包んだ戦士、仮面ライダーカデンツァ。
ピンクの装束を纏った戦士、仮面ライダースルーズ。
槍とマイクスタンドを複合した武器を構え、その場でくるりと踊るようにターンする。
空色の鎧の戦士、仮面ライダーヴィヴァーチェ。
ハープと弓が合わさった武器を持ち、軽く音を鳴らす。
橙と青に彩られた二人の戦士、仮面ライダーウィングス。
トロンボーン型の武器を銃と剣に分割し、一糸乱れぬ完璧なコンビネーションを魅せる。
紫の装束を身につけた戦士、仮面ライダーディーヴァ。
片刃の斧とピアノを組み合わせた武器を地面に突き立て、優雅にお辞儀をする。
緑の鎧を纏った戦士、仮面ライダーレガート。
巨大なコントラバスの形をした巨鎚を担ぎ、力強く咆哮する。
そして。
黒き戦装束を纏った戦士、仮面ライダーラルゴ。
エレキギター型の武器を掻き鳴らし、ネックを掴み敵へと向ける。
それはまるでバッターのホームラン宣言にも、宣戦布告にも思える様で。
これは、世界を守るために歌い、踊り、戦う、青年たちの物語。
「お兄ちゃん、早く早くー!」
「ん……」
俺、比企谷八幡は出たくもない外に連れ出されていた。
その下手人は他でもない妹、比企谷小町。可愛い妹だが、せめて強制なのは目を瞑るので事前に「この日に着いてきて」ぐらい言って欲しいものだ。
ドンッ
「あっ、すみません」
「いえ、こちらこそ……」
俺を呼ぶ小町の元に向かおうとすると、うっかり女性と肩がぶつかってしまう。その女性は簡潔に謝意を述べた後、急いでいるかのようにどこかへと走り去っていった。
「……で、何を買うんだよ。残念ながらお兄ちゃんは金欠だから奢れるのはせいぜいドーナツ1つか2つ程度だぞ」
「お兄ちゃん本当に万年金欠だよね……。今日日小学生でもお兄ちゃんよりお金持ってると思うよ」
「違いない」
「って、そうじゃなくて。今日は小町の大好きなアイドルの新しいCDが発売されるのですよお兄ちゃん」
「そうなんでございますか」
「そうなんでございますよ」
何だこの会話。
「早くしないと売り切れちゃうから、急いで!」
「へいへい……」
兄使いの荒い妹だ。
「買えたーっ!」
「おめでとさん」
年甲斐もなくはしゃいでその場でくるくると回る小町。お前中3だろ。
「ってか俺必要だったか?」
「この後も色々欲しいもの買うつもりだからさー」
「荷物持ち、と」
「あはは」
笑って誤魔化すな。
「……悪い、俺トイレ行ってくるから。先行っててくれ」
「はーい。小町はデパート3階の文房具売り場にいるからね」
「あいよ」
俺はそう言ってトイレに向かった。そしてその瞬間、奇妙な感覚に襲われた。
今まで理解していたものが理解できなくなったかのような違和感。
目に映る全てが偽物になったかのようなエラー。
そして、それを更に上塗りして元に引き戻されるような気持ち悪さ。
襟を引っ張られて引き戻される時の息苦しさを頭痛だけで表現したかのような感覚だった。
「っ、……なんだ?」
周囲を見回すも、特に変なものはない。変わらずデパートのトイレ前だ。
「……気の所為か。昨日あんまり寝てなかったし、寝不足だろ」
俺はそう結論付け、気を取り直してトイレで用を足すことにした。
──────そしてトイレから出た時、周囲は一変していた。
休みの日に出かけて来たであろう親子は倒れ伏し、アイスクリームの屋台は無惨にも破壊され。すぐ近くの服屋の中を見れば多種多様な値の張るであろう服が引き裂かれていた。
「なんだよ、これ……」
『デパート3階の文房具売り場にいるからね』
「っ、小町!」
小町はどうなってるんだ。そう思い至り、俺はすぐさま3階へと走り出した。
瓦礫を踏みつけ、重傷を負った人を跳び越え、火災による黒い煙を突き抜けながら3階へと辿り着く。
「小町!?小町ーっ!?」
小町の名前を呼びながら駆け回る。そうしていると、視界の端に先程も見たことのある色が入り込む。
「小町!」
その方向へと駆け寄ると、小町が倒れ込んでいた。腕には謎の棘のようなものが刺さっており、顔色は悪い。棘を引き抜こうとすると小町が苦悶の声を上げたので棘をよく見ると、寄生生物のようにツタのようなものが張り付いており、小町に取り付いて何かエネルギーのようなものを吸い出しているのがわかる。
「……っ、何が起きてんだよ!?」
わからない、わからない、わからない!
僅か数分で何があった!?
どうしてデパートがこんなに酷い有様になっている!?
一体、『何』の仕業なんだ!?
「GrrUuuUUAa……」
その解答は、直ぐに現れた。
唸り声のような音と共に少し離れた店の入口から、
背部から無数の棘を生やした、二足歩行の怪物。
その棘が小町に刺さっているのと同一のものであると理解した瞬間に一気に怒りが沸点に達し、崩れ落ちた屋台の骨子に使われていたであろう鉄パイプを引っ掴み殴り掛かる。
「ンの野郎ッ!」
だが、振るわれた渾身の一撃は──────直撃こそしたものの、怯みすらしなかった。まるで、壊れないという概念そのものをぶん殴ったかのように。微動だにすらしなかった。
「─────────」
「あ?」
何か唸ったような気がした……次の瞬間。
「おぐっ!?」
ラリアットが腹に直撃し、10m以上吹き飛ばされる。あっやべぇ朝飯が胃酸ミックスされて口から射出されそう。
「ごはっ、げほっ……クソ野郎がッ!」
血反吐と悪態を同時に吐き捨て、軋む身体に鞭打ち立ち上がる。
「鉄パイプフルスイングすりゃ大抵の野郎は死ぬだろうが……あいつは論外だ。ロープ括りつけて飛び降りて重力に引きずり下ろさせるか?いやパワーも洒落にならん。なんでラリアットで俺を15m近く吹き飛ばせるんだよ」
考えれば考えるほど打つ手なしだ。クソッ、小町に引っ付いてるクソ棘を早くどうにかしたいのに。
怒りのままに地面を殴りつけた時。
『──────♪』
音が、聞こえた。単音じゃない。複数の音が連なった、激しくも優しい旋律が。
「っ、誰だ!こんな時に曲流してる馬鹿は!?」
俺がそう叫ぶと、音が近付いてくる。
その度に、違和感を覚える。なんだ……怪物が、苦しんでる?
頭を抱え、振り払うかのように悶え苦しむ怪物。この音は、一体なんなんだ。
「……あら」
現れたのは、一人の女性。鋭い目をし、銀色のアタッシュケースを脇に抱えて周囲を見回している。
「そこの君」
「……俺ッスか」
「ええ、そうよ。貴方、さっき『こんな時に曲流してる馬鹿は』って言ったわよね」
「それがどうした……今それどころじゃねぇんスよ!」
余計な話してる暇はないんだよ。
「……貴方にいい話と悪い話があるわ」
「……?」
「まず悪い話。このままだとそこに倒れてる女の子は死ぬわ」
「……っ!?」
小町が……死ぬ?
「そしていい話。あの怪物を倒せば、女の子は助かる」
「でもどうやって倒せっつーんだ!?鉄パイプでぶん殴ってもビクともしねぇんだぞ!?」
明らかに歳上相手なのに、敬語も外れて吐き捨てる。我ながら大分不安定だな、と。心のどこかで独りごちた。
「そして、もう一つのいい話。貴方は、あの怪物を倒す力に適性がある」
「適性?」
「そうよ。……怪物を倒す力、欲しくない?」
「……やってやる」
「妹を……小町を助けられるなら、何だってやってやる!」
「OK。……これを」
俺がそう言い切ると、女性はアタッシュケースを地面に置いて錠を外し、中から妙なガジェットとカードを取り出す。
「使いなさい。そうすることで、貴方は超人となれる。使い方は──────」
渡された物をまじまじと見つめる。カードは薄型だが……ボタンのようなものがある。……徐に押してみた。
「ちょ、待ち──────!?」
次の瞬間、世界が一変する。
荒れに荒れたデパートは見る影もなく、アーティストのライブに使われるような大勢の人が入れるライブステージへと様変わりする。
「は……はぁ?」
俺の16年ちょいの人生で一番気の抜けた情けない声が出た。
『Foooooooooooooo!!!!!』
うわびっくりした。ステージに立ってたから一瞬気付かなかったが、客席を見れば満員御礼と銘打っても詐欺にならないであろう程の人、人、人。やっべコミュ障だから怖くなってきた。怪物よりも怖ぇ。
「GRrRRrrrrrRRR……」
しかも怪物までいるし。何でライブステージ?何で観客こんな居るの?疑問が無限に現れて尽きない。
「gUuuuUuAaAaaaッ!!!」
「えちょ、ま」
怪物が身を捩り、背部の無数の棘が射出される。咄嗟に横に跳び回避するが……わ、深々と床に刺さってやがる。喰らったらやべぇぞ。
「ちょ、こっからどうするんだよ!」
怪物の攻撃を避け、走って距離を取るのを繰り返す。そして走り回ってかいた汗を乱雑に拭いながらふと上を見上げると、ステージの上のモニターに見覚えのあるものが映っていた。俺が渡されたガジェットだった。えっと……『
モニターに映し出された説明の通りに、ドライバーを腰に当てる。
そして……カード、『ラルゴチェンジカード』を装填する。
「ん、おおっ!?」
その瞬間、俺の姿が変化する。虚空から現れたスーツと装甲に身を包み、灰色の戦士へと変質した。
「これで、戦える……?」
軽く踏み込むと、生身の時とは比べ物にならない程の速度で駆け出すことが出来た。これなら行ける……!
「行くぞ化け物──────往生しやがれ!」
一気に懐に潜り込み、がら空きの腹に拳を叩き込ぐべらっ!?
「痛ってぇ!ダメじゃねぇかどうなってんだ!?」
普通に返り討ちにあったぞ。何ががら空きだ、普通に振り下ろしで脳天殴り抜かれたわ。生身で直撃してたら死んでただろうから意味はあったんだろうけどさぁ!……ちょ、一回退避!
後ろに跳んで距離を取り、隙を伺う。どうなってんだ、何が戦えるだ。普通に歯ァ立ちそうにねぇぞ。
『……聞こえるかしら』
「あァ!?さっきの人!全然ダメなんだけど!?」
『……そりゃあそのニュートラルでは無理よ。まず人の話は最後まで聞きなさい』
「……ごめんなさい」
正論だった。本当にすんません。
『……一先ず、左腰を見なさい。ホルダーがある筈よ』
「ホルダー?……これか」
見ると確かにホルダーのようなものが。指先を引っ掛けて開けてみると……。
「何だこれ。……ディスク?」
『それはロックスタイルディスク。貴方が使っているそのシステムの真の力を発揮するためのものよ。説明する前に貴方が勝手に突っ込んで行ったわけだけど』
「その節は誠に申し訳ございません」
正座して頭下げた。めっちゃシュールな構図だこれ。
『そのディスクのボタンを押して起動したら、ドライバーにあるスロットにセットしなさい。そうすることで、貴方は真に変身できる!』
「ボタン……良し!」
ディスク……厳密には光磁気ディスクのような、ディスクの入ったケースに取り付けられたボタンを押し込む!
次の瞬間、ステージの無数のライトが落とされる。ステージ中が暗闇に染まり──────スポットライトが俺に集まり、ステージ後ろのスクリーンにロックンロールの演出が映し出される!
その言葉と共に、ドライバーのスロットにディスクを装填、更に操作!
更に姿が変わる。
全身に新たな装甲『LGライブテクター』を、頭部には制御装置『ラルゴシグナル』と顔面装甲『LGロックンロールマスク』が装着され、俺に真の力を齎してくれる。
これが怪物らを打ち倒す力──────仮面ライダー、ラルゴ。
『変身出来たようね。ここで貴方に一つ伝えなきゃならないことがあるわ』
「なんスか」
『そのライダーシステムは、運用にある制約が存在するの』
「制約?」
『歌よ。そのライダーシステムは変身者の歌声をエネルギーに変換し、力を発揮するの』
「だからライブステージなんだなってオイ。陰キャぼっちに大勢の前で歌わせるのもはや虐めだぞ」
『いいから歌いなさい。妹ちゃんを助けたいのならば』
「……ああもう、やってやるよ!」
……と啖呵をきったはいいが。
「……アニソンとかでもいいの?」
『何でもいいわよ、歌えるなら。ライダーシステムのお陰で息切れはしにくくなってるから気にせず歌いなさい』
「っし、それなら──────この曲だ」
俺がその曲をイメージすると、願った通りの音が耳の装置から、ステージのスピーカーから鳴り響く。意識が高揚し、戦意に満ち溢れる。
「行くぞ、『千の翼』」
まず初撃───今度こそ叩き込む!再び懐に潜り込み……相手が拳を振り上げた瞬間!
すぐさま懐から抜け出し旋回、相手の側頭部に回し蹴りを叩き込む!
今の一撃は確実に入った。その証拠に怪物は脳震盪を起こしたのかふらつき……マジかよ、倒れ込むかと思ったら直ぐに体勢を立て直しやがった。なら、一気呵成に突っ込む!
相手の反応を見極めろ!相手が俺を正確に認識した瞬間に行動パターンを切り替えて隙を作れ!──────今!
咄嗟に振るわれた腕も、まともに力が込められてない上に遅い初動の段階なら容易に捌ける!今度こそ、がら空きのボディに叩き込ませてもらう!
連打連打連打連打連打!相手に反撃の隙を与えるな!継続的にダメージを与え続けろ!
その一節と共に叩き込まれたアッパーが顎に突き刺さり、怪物を大きく吹き飛ばす!
『そろそろトドメよ。ロックスタイルディスクを右腰のスロットに装填、ボタンを押して必殺技を叩き込みなさい』
必殺技とかあんのかよ。いよいよもってヒーローみてぇな感じだな。
そんなことを考えながらドライバーからディスクを取り出し、右腰のスロット『マキシムプレイヤー』に装填、再生マークの彫られたボタンを押す。
その音声と共に、全身にエネルギーが漲る。このエネルギーを必殺技一発で使い切るのはどうも惜しいな……こうするか!
エネルギーで引き上げられた身体能力を活用、目にも止まらぬスピードで怪物に接近し蹴り飛ばす。すぐさま最接近し殴りつけ、ピンボールのように吹き飛ばし続ける!
一撃ごとに怪物の表皮が砕ける。
一撃ごとに確実に怪物を死に追いやる。
一撃ごとに、小町を助け出す!!!
床に叩きつけられた怪物に対し放たれる、最後の一撃。
空中に飛び上がり、相手に叩き込む必殺技。
それこそが、仮面ライダーの一撃……ライダーキック。
その名も、『アジタートストライク・ロックンロール』。
怪物にキックを叩き込み、宙返りの後に着地。
「Gu…GaAAaAAAAAAAッ!?」
断末魔であろう絶叫と共に、怪物は爆散──────こうして、俺の戦いは幕を終えた。
「……ふぅ」
戦いは終わり、怪物を打ち倒した。
疲労困憊でぐったりしている俺は、小町が搬送された病院の廊下の椅子に座り込んだ。
「お疲れ様」
俺にそう声をかけたのは、俺にあのドライバーを渡した女性。
「見事だったわ、あの戦い」
「……どうも」
「それを見込んで、お願いがあるの」
「……なんスか」
「改めて、貴方に仮面ライダーになって世界を「お断りします」すくっ……え?」
「助かりました、お陰で妹を助けられました。……お礼はしたい所なんですけど、そちらが言うようにまた戦うとかそういうつもりはないんで。あ、お返ししますね。じゃ」
俺はドライバーとカード、ディスクを返して帰路についた。
「え、ちょ、待って!?最後まで話を──────」
「いやほんと無理っす。戦いたくないです。それじゃ」
俺は逃げ出した。ほんとすんません。いやマジで。感謝してますけどほんとすんません。
という訳で第一話でした。
八幡初変身。ぐだぐだですが。
しかもラストで変身アイテムを返却するという。
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それではまた次回。