PhantasyStarOnline2-IF-「A.B.T」   作:あるふぃ@ship10

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最終ブロック予選第3試合。
できる限りの拘束を解いた蝉時雨だったが、守護輝士として腕を上げていたユウには届かなかった。
ヒーロークラス同士の対決はユウの勝利に終わり、予選最後となる第4試合へと続く。



第7話「白き戦姫vs白の巫女」

『第4試合...選手入場!!』

 

司会の声に応えるように、フィールドに新たな2人が入場する。

 

『第4試合の選手はこの2人!!あるふぃと並ぶナウシズのもう1人の守護輝士、まリス!!そして対するは...ハルコタンの白の巫女、アリシアだぁぁぁ!!!』

 

2人目の守護輝士の登場に会場は一層の盛り上がりを見せる。

そんな中、まリスは目の前に立つアリシアをまじまじと見つめる。

 

「......その雰囲気、アリシアじゃないわね?」

 

「おや、さすがは守護輝士、理解が早いようですね。」

 

「普段あたしを前にした時のアリシアとは雰囲気が全然違うもの。それ、アリスもやっていた技よね。」

 

「その通りです。私達の星(ハルコタン)ではこれを、"(つなぎ)"と呼びます。普段は巫女が私達《魔眼》の力の一部を行使するのに対し、"繋"は私達が一時的に巫女の器を借りることで、《魔眼》の力を最大限に行使するというものです。」

 

「つまり...あるふぃとシバみたいなものかしら。」

 

「そう思っていただいて構いません。当代の白の巫女は黒の巫女より"繋"の扱いに長けていたので、【薪炎の魔眼】(彼女)とは違い、こうして最初から【氷桜の魔眼】()が前に出ているのです。」

 

『それでは2人とも準備はいいかぁ!?...第4試合!!まリスvsアリシア!!バトル...スタァァトォォォ!!!』

 

まリスは試合開始の合図と同時に、"聖剣エクシオン"を構える。

 

「...武器を構えなくていいの?」

 

まリスは一向に武器を構えない【氷桜の魔眼】に疑問を投げかける。

 

「武器を出さずとも、私は戦えますから。」

 

「舐められたものね...でも武器を出さないからといって、容赦はしないわよ!!」

 

まリスは勢いよく【氷桜の魔眼】へと突撃し、横薙ぎに"エクシオン"を振る。

未だ動かぬ【氷桜の魔眼】に直撃するかと思われた刹那―

 

ガキンッ!!

 

金属同士が激しくぶつかった様な鈍い音が鳴り響く。

まリスの"エクシオン"を防いだ正体は、【氷桜の魔眼】を守るように突如現れた、氷の壁だった。

 

「っ!!」

 

まリスは何かを察し、素早く距離をとる。

 

『おっと、まリスどうした!?先手を打ったにもかかわらず素早く後退したぞ!?』

 

「へぇ...これは中々厄介ね。」

 

見ると、氷壁に触れたエクシオンの剣先がほんの少しだが凍ってしまっていた。

 

「いい判断です守護輝士。もしあのまま無理に押し通そうとしていたら、私に届くよりも先に剣が凍って砕け散っていましたからね。」

 

「なるほど...これが【氷桜の魔眼】の力ってわけね。」

 

まリスは剣先にまとわりついたままの氷を炎属性のテクニックで溶かそうとする。

 

「無駄ですよ。【氷桜の魔眼】の影響による氷は、私自身の意志か、【薪炎の魔眼】の炎でしか溶かせませんから。」

 

【氷桜の魔眼】の言う通り、炎属性のテクニックがエクシオンを包み込むが、氷は一切溶けることはなく、逆に消化されるかのように、燃え尽きてしまった。

 

「...貴方が勝利する方法はただひとつ。武器が完全に凍りつく前に、勝負を決めること。ただそれだけです。」

 

「そう、面白いじゃない。」

 

まリスはそう言うと、武器をソードからツインマシンガンへと切り替える。

 

「なら、それに触れないように戦えば問題ないってことよね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************

 

 

 

 

まリスはツインマシンガンで至る所から弾丸を浴びせるが、全てが氷壁に防がれてしまっていた。

タリスのワープを巧みに使い、多方面からの同時攻撃も試すが、それすらも全て氷壁によって防がれてしまう。

 

「どれだけ攻撃をしようとも、私に届かぬと知りながら...存外、粘りますね。」

 

「この程度で諦めるほどあたしは甘くないわよ。あんたも、いつまでも守ってないで、少しは攻めてきたら?」

 

「良いでしょう......なら、こういうのはどうです!!」

 

【氷桜の魔眼】は足場をトンっと音を立てて踏み直す。

すると踏み直した足先からまリスに向かって、氷が素早く這っていく。

 

「っ!!」

 

まリスはタリスで空高く飛び、這い寄る氷を避ける。

 

「そこです。」

 

空中のまリスに対し、【氷桜の魔眼】は氷の槍を複数生成し投擲する。

 

―氷桜流「氷槍無尽」

 

「くっ!!」

 

ツインマシンガンでは撃ち落としきれないと察したまリスは、投擲された複数の氷槍を"エクシオン"の一振でまとめて砕き割る。

だが、氷槍を砕くと同時に、"エクシオン"の凍結が一気に進行する。

 

「...どうやら安全なところなんてどこにも無さそうね。」

 

「当然です。私がその気になればこのフィールド全体を氷漬けにすることも容易いですが、それではこの催しが面白くなくなってしまいます。これでも、情けをかけている方なのですよ?」

 

「......へぇ?」

 

【氷桜の魔眼】の言葉に、まリスの声色が僅かに怒りを露わにする。

 

「守護輝士に情けなんて、随分と舐めたことしてくれるじゃない。なら、まずはあんたのその余裕を無くすとこからね!!」

 

まリスは先程と同じように、タリスのワープを駆使しながら、ツインマシンガンによる多方面からの射撃を浴びせる。

 

「またですか。残念ですが、その技が通用しないことは、先程証明したはずです。」

 

「それは、あたしが踏み込まなければの話でしょう?」

 

「っ!!」

 

気が付けば、まリスが"エクシオン"を構えて飛び込んで来ていた。

 

「いつの間に...!!」

 

「これが慢心ってやつかしら。上空からの射撃に気が行って、こんな簡単な侵入すら気づかないなんて...この距離なら、壁なんて関係ない!!」

 

まリスは"エクシオン"を勢いよく振るう。

ついに【氷桜の魔眼】に一撃入るかと思われた。

だが【氷桜の魔眼】に届くよりも前に、"エクシオン"が再び何かに阻まれる。

 

「!?」

 

「...その素早い身のこなしは賞賛に値します。ですが、私の守りが氷壁だけだなんて、一体いつ言ったのでしょう?」

 

『こ...これは、まリスの渾身の一撃が入るかと思われたが、アリシアの飛翔剣がそれを防いだぁぁぁ!!!』

 

【氷桜の魔眼】の両手には、アリシアが扱う"残雪"が握られていた。

 

「それは...アリシアの...!!」

 

「えぇそうです。彼女の持つ"残雪"に、私の氷を纏わせたもの。名はそうですね..."氷華残雪"とでも呼びましょうか。そして私の氷に触れたということは...分かりますね?」

 

「っ!!」

 

気づいた時には既に、まリスの"エリクシオン"が完全に凍りついてしまった。

 

「...貴方の負けです。」

 

『まリスの持つ武器が完全に凍ってしまったぁぁぁ!!!これば続行不可能か!?』

 

「.........ふん、あんまり守護輝士を舐めない方が良いわよ......【氷桜の魔眼】!!!」

 

「っ!?」

 

まリスは無理やり、"エリクシオン"を押し込み【氷桜の魔眼】を弾き飛ばす。

 

「くっ...なぜ...なぜ砕けない!!」

 

「エクシオンにはね、相手に剣の間合いを分からせにくくするために、刀身が見えないよう透過性のある特殊なフォトンの膜を纏っているの。」

 

「そしてこの膜は刀身が見えていたとしても完全に消えたわけではないのよ。だからあんたが凍らせようとしていたのは、エクシオンを覆っているフォトンの膜だっただけ。」

 

まリスは凍った"エリクシオン"をまじまじと見つめる。

 

「それにしても、これはこれで良い見た目ね。まるでクリスタルのように輝いていて...綺麗だわ。」

 

「この...!!」

 

「さて、ネタばらしにだいぶ時間がかかってしまったわね。制限時間も残りわずかだし、この辺で決めさせてもらうわよ。」

 

まリスは片手で振り回していた"エクシオン"を両手で握り、力を込める。

 

「行くわよ..."エクシオン"!!」

 

まリスが声を上げると同時に"エクシオン"にまとわりついていた氷が弾け飛ぶ。

同時に、まリスの背にフォトンで形成された羽が生える。

 

「これほどのフォトン量...一体どこから...!!」

 

「どこも何も、あたしが元々持っているフォトンに他ならないわ。あんたは今まで、あたしの力のほんの一部にしか触れてなかっただけよ。」

 

「そんな馬鹿な...アリシアの記憶には、そんな桁外れのフォトンなんて...」

 

「そりゃあ無いでしょうね。これを今まで見たアークスは、あるふぃと蝉といリスぐらいよ。」

 

「...っ!!」

 

「あんたには()()を使うだけの相手だと認めてあげる。さぁ、自慢の氷壁であたしを止めてみなさい!!!」

 

まリスは勢いよく【氷桜の魔眼】へと突撃する。

 

「くっ...!!」

 

【氷桜の魔眼】は向かってくるまリスを止めるため、氷壁を幾重にも張る。

 

―氷桜流「多重氷壁」!!

 

だが、まリスは"エクシオン"で難なく氷壁を破壊していく。

 

「っ...まだです...!!」

 

【氷桜の魔眼】は無数の氷槍を生成し、まリスへと降り注がせる。

 

―氷桜流「氷槍無尽」!!

 

だが"エクシオン"による圧倒的な剣速によって、氷槍の全てが砕き落とされた。

 

「なるほど、これが守護輝士...どうやら、多少の無理は必要なようですね...!!」

 

―氷桜流奥義...「永久凍桜」!!

 

【氷桜の魔眼】は"氷華残雪"の片方を勢いよく地面に突き刺す。

すると、突き刺した場所から扇状に一瞬にして巨大な氷桜が出現した。

 

「っ!!」

 

「はぁ...はぁ...これでどうです...!!守護輝士!!」

 

『なんという大技!!突然現れた氷塊に、まリスが飲み込まれてしまったぁぁぁ!!!』

 

氷桜に囚われてしまい、微動だにしないまリス。

だが数秒後―

 

 

 

 

 

 

ピキッ

 

 

 

 

 

 

氷桜にヒビが入り始める。

 

「なっ...まさか...!!」

 

 

 

 

 

 

ピシピシピシピシ...!!

 

 

 

 

 

 

氷桜に更に亀裂が入る。

直後、轟音と共に氷桜は崩れ落ち、砕けた氷による白い煙の中から、まリスが飛び出てくる。

 

「...言ったはずよ!!守護輝士を舐めるなってね!!!」

 

まリスはついに【氷桜の魔眼】の目の前に辿り着く。

 

「とった!!」

 

「くっ!!」

 

まリスは"エクシオン"を素早く振り上げ、思いっきり振り下ろす。

【氷桜の魔眼】はなんとか受け止めようと、"氷華残雪"を頭上に構える。

 

(【氷桜の魔眼】...!!)

 

「っ!?待ちなさいアリシア!!今出てきてしまっては―」

 

大きな爆発音が鳴り響くと共に、フィールド全体が煙で見えなくなる。

 

『まリス、アリシアに渾身の一撃!!これは決着かぁ!?』

 

煙が徐々に消え、視界が晴れる。

 

「...っ」

 

「......急に出てきたら危ないじゃない、アリシア。」

 

『これは...まリスの攻撃はアリシアに当たっていない!!わざと外したのかぁ!?』

 

「ごめんなさい...【氷桜の魔眼】(彼女)がこれ以上無理するのを見ていられなくて...」

 

「【氷桜の魔眼】の実力ならともかく、今のはあなたがこれをまともに受けたらいくらVR空間でも無事でいられる保証はできなかったわよ?」

 

「まリスさんなら、気付いてくれると信じていたので。」

 

「......た、たまたまよ。」

 

「それでも、さすがはまリスさんでした。ありがとうございます。」

 

アリシアの感謝の言葉に、まリスは照れくさそうに顔を背ける。

 

「あっ、そうだ―」

 

アリシアは"残雪"を場外へ放り投げる。

 

「あっ...」

 

「どちらにしろ、今ので私の負けは決まっていましたから。」

 

『おぉっとアリシア、ここで自ら武器を場外へと手放した!!これはルールにより...まリスの勝利だぁぁぁ!!!!』

 

司会の決着コールに、観客席から歓声が巻き起こる。

 

「いいの?あんなことして。【氷桜の魔眼】が怒ったりしない?」

 

「元々、最後の技を突破された時点で、どうすることもできませんでした。それは、【氷桜の魔眼】(彼女)自身が1番分かっているはずです。」

 

アリシアはさらに、言葉を付け加える。

 

「本当は私が表に立って戦いたかったんですけど...今の"繋"の練度じゃまリスさんとまともに戦える気がしなくて...」

 

「じゃあ、アリシアとアリスがその"繋"ってやつを完全にマスターしたら、あるふぃも混ぜてハルコタンで2対2なんてどう?」

 

まリスの提案に対し、アリシアは驚きつつ、少し間を空けてから答える。

 

「えぇっと...【氷桜の魔眼】(彼女)はやる気満々ですね...」

 

「それは何よりだわ。でもあたしが望んでいる戦いはアリシアの器を借りた【氷桜の魔眼】ではなく、【氷桜の魔眼】の力を最大限に扱えるようになったアリシアよ?」

 

「うっ...それはだいぶ先になりそうですね...」

 

「ゆっくり慣れていったらいいわ。脅威が去った今、特訓するだけの時間はたっぷりあるもの。」

 

「...まリスさんとあるちゃんとどこまで戦えるようになるか分からないけど...もっといい勝負ができるように頑張ります!」

 

『激戦を繰り広げた2人に盛大な拍手を!!!』

 

観客達の喝采を浴びながら、まリスとアリシアはフィールドを後にした。

 

『さぁ!!最終ブロックの予選はこれにて終了だ!!そして時刻はちょうどお昼!!ここでフィールドのメンテナンス等もあるので、1時間ほど各自休憩をとってくれ!!』

 




【氷桜の魔眼】
星の意志によって創造された、ハルコタンの巫女に代々引き継がれてきた氷の加護。
現白の巫女であるアリシアの内に宿り力を貸している。
炎を放出する攻めに特化した【薪炎の魔眼】と対極に位置し、氷を纏うことや氷壁を生成するなど、守りに特化している。


【聖剣エクシオン】
まリス固有のソード。
透過性のある特殊なフォトンを纏っており、刀身を視認させづらくすることも可能。
蝉時雨の持つ"光跡剣レリクシオン"と同じ特製を持っており、溜め込んだフォトンを一気に放出する技も兼ね備えている。

【氷華斬雪】
アリシアの扱う"斬雪"に、【氷桜の魔眼】の扱う氷を纏わせた状態。
触れた物は例外なく凍り付き、これによって斬られると、傷口から徐々に体が凍り付いていく。
この武器とまともに打ち合えるのは、【薪炎の魔眼】の扱う多岐にわたる炎纏の武具のみ。
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