PhantasyStarOnline2-IF-「A.B.T」 作:あるふぃ@ship10
激戦による損傷や今後の試合を考慮し、フィールドのメンテナンスが行われることになったと共に、時間も良い頃合いだったため、大会から1時間のお昼休憩が設けられた。
1時間の休憩が与えられた出場選手及び観客達。
昼食を食べながら、先程までの試合を思い返して盛り上がる者たち。
試合での選手達の激戦に影響を受けてか演習クエストに向かう者たち。
各々が休憩時間を自由に過ごす中、アリス、リラン、アリシア、セラフィムは、フランカ'sカフェで昼食を摂っていた。
「ここに居ましたか。さながら、反省会といった雰囲気ですね。」
そこにもう2人、蝉時雨といリスが歩み寄る。
「大丈夫なの?蝉さん。そんなすぐ動いて...」
アリスが心配そうに蝉時雨に問いかける。
「VR空間だったこともあってか、使用直後の反動は想定通りでしたけど、実際にかかった負担はそこまでだったみたいです。それに、いリスがフォトンを分けてくれたおかげですぐに動けるようになりました。」
「それは良かったです。じゃあ、座って一緒に食べましょう?」
アリシアに誘われ、蝉時雨といリスは同じテーブルに着く。
席に着いたばかりの2人は端末からメニューを開いていくつか料理を注文する。
「皆さん、試合お疲れ様でした。想像以上の大激戦で、びっくりしました。」
セラフィムが、最終ブロックに出場した4人に労いの言葉をかける。
「...まぁ、私とアリシアに関しては、大激戦を繰り広げたのは私達じゃないんだけどね....」
アリスがごにょごにょと少し小さな声で言う。
「え、それってどういう...」
「えっとね―」
*****
セラフィムの疑問に対し、アリシアが"繋"について、その場にいる全員に説明した。
「―なるほど、そのような技がハルコタンにはあったのですね。」
"繋"について説明を聞いた後、まず最初に蝉時雨が口を開いた。
「結局私もアリシアも、あの2人には勝てなかったけどね。」
「でもその技を覚え始めたのは2日前でしょう?それであれだけやりあえたのですから、十分なのでは?」
「そうですね。本当はもう少し善戦したかったんですけど...やっぱり本気になった2人には歯が立ちませんでした。」
「まリスさんは謎の羽が生えるし、あるちゃんの蹴りは想像以上に強烈だし、あの2人どんだけ規格外なの...」
「まリスの"エクシオン"には私の"レリクシオン"と同じく、フォトンを溜め込む特性があるんですよ。まリスがその身に備えているフォトンと"エクシオン"の溜め込んだフォトンを一気に放出すると、溢れ出たフォトンがあのように羽の形となって現れるんですよ。」
蝉時雨はまリスの羽について説明をすると、続けて試合中に【薪炎の魔眼】を一撃で場外へと飛ばしたあるふぃの蹴りについて説明を始める。
「あの時見せたあるふぃの蹴りはただの蹴りじゃありません。フォトンは本来、武器を通して使うことで初めて威力を発揮するもの。ですがあるふぃの場合、武器を使わずとも、身体の一部に自身のフォトンを纏わせて打ち込むことができます。武器を通さない点から、求められる技術とフォトン量は非常に高い為、能力によってほぼ尽きることの無いフォトンを扱えるあるふぃだからこそできる芸当です。格闘技術に関しては、ファレグから教わったそうですよ。」
「うっそ...ファレグって、マザークラスタのあのとんでもなく強い人よね?あるちゃんやまリスさんが本気で挑んで、なんとか勝負には勝ったけど、直後にはピンピンしてたって...」
蝉時雨から事の次第を聞いたアリスは、最後の言葉に驚きを隠せなかった。
「そのファレグを師としたあるふぃの格闘術ですから、桁外れの威力も納得できるでしょう?あれでも手加減しているでしょうけど、少なくとも私はまともに受けたくないですね。」
「あはは...」
蝉時雨の言葉を聞いたアリスは、思わず苦笑いをする。
そんな様子を見ながら、蝉時雨は次にリランへ声をかける。
「リランは大丈夫でしたか?武器の方、かなり無理をさせてましたが。」
「思ったよりもダメージは少なかった。たぶんあのVR空間、実害が出ないように本来よりも早めに限界を迎えるようになっているのかもしれない。」
「...なるほど。私があの場を出た後、身体が少し楽になったのもそれなら納得がいきます。」
「でも驚きました。リランがあんなに鬼気迫る勢いで暴れてるの、初めて見ましたよ。」
セラフィムが述べた感想に対し、リランは少し恥ずかしそうにしながら答える。
「あれはその...相手がクオンだったっていうのもあったからつい気合いが入っちゃって...」
「そのように全力で挑める相手がすぐ側にいるというのは良い事だと思いますよ。ただあの暴れっぷりは、普段のリランからはとても想像できない立ち回りでしたけどね。」
ふふっと笑う蝉時雨を見て、リランは少しむすっとした顔をしながら言葉を返す。
「そういう蝉さんも、ユウさん相手に結構本気だったじゃん。」
「ユウの実力を推し量るには、あそこまで解放しなければならないと思ったからです。今回負けはしてしまいましたが、十分な情報を得ることが出来ました。」
「その感じだと、次は勝てるってこと?」
「...それはどうでしょうね。私やあるふぃ、まリスと違い、能力にあまり頼らず、自身の持つ力のみで守護輝士にまで上り詰めた正真正銘の実力者です。きっと私が今回得た情報をもとに様々な作戦を仕掛けたとしても、機転を利かせてすぐ対策されてしまうでしょうね。」
「それは次また負けた時用の保険?」
「...リラン?」
一瞬空気がピリつく。
あるふぃやまリス程ではないにしろ、彼女も負けず嫌いであることには変わりないのだから、癇に障るのも分からなくもない。
蝉時雨以外の全員が理解した。
あ、これ
「...ごめんなさい。なんでもないです。」
「よろしい。」
リランは事が起こる前にすぐに謝った。
その言葉を聞くと、蝉時雨からは先程までの周りが凍りつくような雰囲気は消え、いつもの優しい蝉時雨に戻っていた。
「アリシアもまリス相手に中々奮闘していましたね。《魔眼》の力は、それほどまでに強力ということですか。」
「...私たちが今まで《魔眼》の力を行使していた時は本来の3割程度、さっきの試合で引き出せたのは6割程と、【氷桜の魔眼】は言っていました。」
「6割の時点でまリスに本気を出させるとは...その"繋"を完全に扱えるようになった時、勝つのはまリスではなくアリシアかもしれませんね。」
「一体いつになるのやら...ヒメ様が言うには、母様達も"繋"の修練に励んだそうですけど、完全習得に数年かかったそうです。」
「でもコトシロが言ってたでしょう?『お前たちには先代の2人よりも秘めたる才能がある。"繋"の完全習得にはそう時間もかからないだろう』って。」
アリスのコトシロの声真似を聞いてか、アリシアが思わず吹き出し笑い出す。
「え、そこそんな笑うとこ?」
「ふふ...ごめんごめん。思った以上に似てたものだからつい...」
「あっ、皆さん、もうそろそろ時間になりますよ。」
注文した品を黙々と食べていたいリスは満足気に完食すると、ちらりと時間を確認して皆に伝える。
「うっそ...私まだ食べ終わってない...」
「まったくダメだなぁアリシア。お喋りに夢中になるからそうやって時間ギリギリになって―」
「お待たせしましたー!追加でご注文のあったデザートです!」
誰が頼んだのか、皆それぞれが顔を見合わせる。
「あ...追加で頼んだの忘れてた...」
アリスが小さく声を漏らす。
「では、お転婆な巫女2人は置いて、私たちは先に席を取っておきますか。」
蝉時雨はいじわるな顔をしながら他の3人に声をかける。
「ちょっと待って!!すぐ食べ終わるから...んぐっ!!」
「もー...急いで食べると危ないでしょアリス...ほら、始まるまでまだ少し余裕はあるんだから、無理しないの。」
忙しなく食べて喉を詰まらせるアリスに対し、姉のようにアリシアは語りかける。
アリシアは蝉時雨にアイコンタクトすると、蝉時雨も理解したようで軽く頷き、他の3人を連れて一足先に会場へ向かっていった。