PhantasyStarOnline2-IF-「A.B.T」   作:あるふぃ@ship10

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休憩時間が終わり、ついに準決勝が始まる。
ナウシズの代表となるアークスは誰になるのか。
それが決まるのも目前となっていく。


第8話「黒き死神vs双星の一」

『―さて!!続々と会場に戻って来ているようで何よりだ!!まもなく最終ブロック準決勝が始まるわけだが、予選の激戦を鑑みて、フィールドを囲む防護バリアを大幅にアップグレードしたぞ!!これにより、今後の試合も安全に観戦することができるだろう!!』

 

観客達が続々と戻り、一通り席に着いたのを確認した司会は、再び声をあげる。

 

『次の選手達の準備は既に万端!!観客達もそろそろ集まりきってきただろうか!!!』

 

観客達は、大きな歓声で司会に応える。

 

『いい返事だ!!それではさっそく再開していこう!第2回A.B.Tナウシズブロック準決勝第1試合!!選手入場ぉぉぉ!!!』

 

直後、会場が暗転すると同時に、両側の選手ゲートにスポットライトが照らされる。

 

『...第1試合ではアリスを圧倒し勝利!!この流れで、ナウシズ代表の座を再びその手に掴むのか!!ナウシズ守護輝士が1人、あるふぃ!!!そして対するは、第2試合でリランを手玉に取り快勝!!第1回A.B.Tのリベンジなるか!!双星の一、クオン!!』

 

両者がフィールドに現れ、互いを見据える。

2人とも既に武器を構え、準備を済ませていた。

 

「...最初から全力というわけか。」

 

「うん。あるちゃん相手に長期戦は分が悪いからね。」

 

普段鍔の辺りに着いているリボンは既に解かれていた。

クオンは武器を構えた時から既に、"プルクラケウス"を解放していたのだ。

 

「良い判断だ。前回の私との戦いで学んだようだな。なら、最初から私も本気でいこう。」

 

言葉を言い終えると同時に、あるふぃの瞳と"グリムリーパー"の刃が紅く染まる。

 

『両者とも開始前から本気モードだ!!それではさっそく始めよう!!ナウシズブロック準決勝第1試合!!あるふぃ対クオン!!バトル...スタァァトォォォ!!!』

 

試合開始のブザーと同時に、あるふぃはクオンの前からフッと姿を消す。

 

「っ!!」

 

背後から恐ろしい殺気を感じ、咄嗟にバリアを展開する。

だが一切攻撃は来る事がなく、あるふぃは依然、開始時と同じ位置に立っていた。

 

「...その技、相変わらず厄介だね。」

 

「それはお互い様だろう?全方位からの攻撃を全て吸収し溜め込むフォトンのバリア。硬さ、持続、吸収性、解放時の威力...どれをとっても"アルトリウス"を持ったお前に勝るエトワールなど居ないだろう。どれだけ殺気を放ったところで、全方位を守られては打つ手がない。さて、どうしたものか...」

 

あるふぃは考える素振りをする。

 

「そんな悠長に考える時間なんか与えないよ!」

 

クオンはふわっと浮き上がり、"アルトリウス"を掲げる。

 

「"グリッターストライプ・イクシード"...フォイア!!」

 

無数のフォトン帯が放たれ、あるふぃへと向かっていく。

素早く避けたあるふぃだったが、クオンの放ったフォトン帯は僅かに数を減らしただけで、なおもあるふぃへ向かって飛んでいく。

 

「追尾付きか...!!」

 

迫るフォトン帯を避け続けるあるふぃに対し、クオンは更に追い打ちをかける。

 

「"ブラックホールラプチャー・イクシード"...フォイア!!」

 

「っ!!」

 

あるふぃの回避先を読み、吸引性のフォトンドームを設置する。

一般的なブラックホールラプチャーよりも更に強力となった吸引性は、あるふぃの動きを止めるには十分なものだった。

 

「"ルミナスフレア・アドバンスドフォーカス"...フォイア!!」

 

無数に展開された方陣から放たれたフォトンのビームは、一際大きな方陣に集中し、その方陣を介することで、より強力なビームとなってあるふぃへと放たれるかと思われたその時―

 

パチンッと指を鳴らす音と同時に、クオンが生成した全ての方陣が、どこからともなく現れたレーザーで撃ち抜かれ形を失う。

 

「っ!?いったいどこから...」

 

「私を追い込むのに頭を回しすぎたか?私がただお前の攻撃を避けてるだけだと思わないことだ。」

 

クオンはハッとして上を見る。

上空には無数のビットが浮いていた。

 

「しかし..."アルトリウス"があってこそか、バリアを張りながら攻撃も行えるとは、中々に厄介なものだな。隙があればいつでもビットを使ったのだが...」

 

『クオンの猛攻を避けながらもしっかりと反撃の態勢を整えていたあるふぃ!!さすがは守護輝士!これは一筋縄では行かないぞぉ!!』

 

「でもあるふぃさん、試合が始まってからまだ1度もクオンさんに直接攻撃を仕掛けていませんね。」

 

観客席から観ていたセラフィムは疑問に感じた。

それに対し蝉時雨が答える。

 

「エトワールのバリアは一定量の攻撃を吸収、蓄積し放つ強力なもの。そして"アルトリウス"の許容量は一般的なエトワールのそれとは比べ物にならないほどです。いくらあるふぃといえど、下手に攻撃をすれば吸収されてクオンの攻撃手段を増やすだけでしょうね。」

 

「でも、それだとあるちゃん一生攻撃できなくない?」

 

アリスが更に疑問をぶつける。

 

「クオンのバリアも無尽蔵という訳ではありません。なんなら、どの技を放つよりも、バリアを維持し続ける方がしんどいでしょうね。一瞬でもバリアを解けば、周囲に散りばめられたビットとあるふぃの殺気による騙し討ちが待っている。消耗戦を仕掛けられているのは、あるふぃではなくクオンの方なのですよ。」

 

「でも問題なのは時間...ですよね?」

 

アリシアの問いかけに蝉時雨はこくりと頷く。

 

「その通りです。この状態が続くのであれば、制限時間内にクオンのバリアが解かれることは無いでしょう。時間切れとなれば、常に攻めに回っていたクオンの判定勝ちとなります。あるふぃはあるふぃで、どこかのタイミングで必ず仕掛ける必要があります。」

 

 

 

「―って感じでお互い考えてるんじゃないかな?」

 

「さすがだなクオン。戦闘における読みの鋭さは素晴らしいものだ。...普段のお前もそのぐらいしっかりしていると助かるんだがな...」

 

あるふぃは小声で、不満の声を漏らす。

 

「...最後よく聞こえなかったけど...なんか言った?」

 

「いいや何も?幻聴か何かだろう。」

 

試合中のクオンは普段とは比べ物にならないほど集中力が高い。

おそらく聞き直さずとも、あるふぃの小言も聞こえていたのだろう。

クオンは少しむすっとした顔をする。

そんなことも気にせず、あるふぃは話を戻す。

 

「さて、お前の言う通りこの試合、私がいつ仕掛け、クオンがどれだけ耐えられるかが勝負の分かれ目だ。すぐ根を上げてくれるなよ?」

 

「...根性対決なら負ける気はしないよ。あるちゃんなら、理由は言わなくても分かるでしょ?」

 

「ふん、ただの強がりにならないといいな。」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すよっ!!」

 

再び、クオンが攻撃を仕掛け、あるふぃがそれを避け始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

―試合開始から十数分。

1試合の制限時間は原則として20分、その時点でお互いの有利不利に明らかな差が無ければ、さらに時間が10分追加され、1試合の最大時間は計30分となる。

 

『さぁ試合時間はまもなく残り僅か!!この流れは...延長戦に突入かぁ!?』

 

「ちょこまかと逃げ回ってばかり...あるちゃんらしくないね!!」

 

「まぁそう言ってくれるな。それなりに反撃はしているんだから。」

 

あるふぃの言う通り、序盤は回避の一手だったが、中盤からは徐々に反撃を仕掛け、今となっては攻防の差などほぼないようなものだった。

 

試合時間残り5分。

この会場にいる誰もがこの試合は延長戦にもつれ込むと確信していた。

―ただ1人を除いて。

 

「...さて、そろそろ時間だな。」

 

「...時間?どういう意味?」

 

「そのままの意味だよ。」

 

「...通常の試合時間は20分。そして残りは5分。でもこの状況が続けば間違いなく延長戦に入るね。それを含めると残り15分。まだまだ時間はあるように思えるけど?」

 

疑問を感じるクオンに対し、あるふぃは含み笑いをしながら答える。

 

「"この状況が続けば"な。」

 

あるふぃはロッドからライフルへと切り替える。

 

「さてと、準備は整った。まずはこれでいこう。」

 

パチンッと指を鳴らすと、空中には序盤に見せた時と比べ、数え切れないほどのビットが出現していた。

 

「何この量...!!」

 

『これは...空を覆うほどの大量のファントムビットだ!!!一体いつから準備していたのかぁぁぁ!!!』

 

「気づかれないようだいぶ神経を使ったよ。その分、お前へと向けた攻撃のほとんどが命中することは無かったが...まぁそれも結果的には正解だっただろう。」

 

あるふぃは腕を振り上げる。

 

「時間にしておよそ2分。さぁ、自慢の根性で耐えてみろ!」

 

あるふぃが腕を振り下ろすと同時に、無数のビットがクオンに向けて一斉に射撃を始める。

 

「くっ!!」

 

クオンはバリアの強度を上げ、維持に集中する。

まるでゲリラ豪雨のように勢いよく降り注ぐフォトンの弾丸に身動きが取れず、ただバリアで凌ぐことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―クオンにとって、2分がこんなにも長く感じたことなど無かっただろう。

なんとかビットの一斉掃射を耐え忍んだクオンは、軽く息を荒らげながらも、顔を上げあるふぃを見据える。

 

「...はぁ...はぁ......」

 

「あれを耐えるとは、さすがの根性だな。」

 

「...言ったでしょ......根性なら....負けないって....」

 

「そうか。なら、次はどうだ?」

 

あるふぃはロッドへ切り替え軽く一振する。

 

「っ!?」

 

クオンの目に映ったもの、それは突如としてあるふぃの頭上に現れた、無数の氷槍だった。

だがそれはただの氷槍ではなく、光属性のテクニックでコーティングしたものに、炎を纏わせたものだった。

 

「私の友人の技を参考にしたものだ。炎を纏わせる点はアリスとの戦いでおおよそ理解した。フォトンの消費はかなり激しいが、これだけあれば数も威力も申し分ないだろう。」

 

あるふぃはロッドを振り上げ、にやりと笑う。

 

「そら...いくぞ!!」

 

あるふぃがロッドを振り下ろすと同時に、3属性を使った無数の槍がクオンへと放たれる。

 

「くっ...!!お願いアルトリウス...もう少しだけ頑張って!!」

 

クオンは息を上げながらも、なんとか力を込め、再びバリアの強度を上げる。

 

「っ!?」

 

一発目の槍を受けたクオンがわずかに後ろへと押し出される。

 

(なにこの威力...!!このまま受け続けたら...確実に場外に...!!)

 

槍をバリアで受けるごとに、クオンが徐々にフィールドの端へと押し込まれていく。

 

「.......!!」

 

『残り時間わずかのタイミングであるふぃの壮絶な反撃!!!そして少しづつフィールド端へと追い込まれていくクオンはこれを耐えきり延長戦に持ち込めるのかぁ!?』

 

(...延長戦までとっておきたかったけど...もう使うしかない!!)

 

クオンは攻撃を耐えながらバリアの内側にフォトンを溜めていく。

 

「"ブーステッド・オーバードライブ"..."プロテクトリリース・アドバンス"!!」

 

エトワールのスキルである"オーバードライブ"のエネルギーを、"アルトリウス"によって強化された"プロテクトリリース"に乗せることによって、自身を中心にとてつもない威力の大爆発を起こす。

それはあるふぃの放った3属性の槍を全て消し飛ばした。

なんとか、場外へと押し出される危機を脱したクオン。

だがあるふぃは、この瞬間を待っていた。

 

「やっと殻を外したな。」

 

「っ!!」

 

フィールドのほぼ中心にいたあるふぃは、一瞬でクオンの懐へと潜り込んだ。

クオンがバリアを再展開するまでの時間は僅か1秒。

そのたった1秒に、あるふぃは勝負を仕掛けた。

 

あるふぃがクオンの目の前から姿を消し、背後に現れる。

 

(これは幻...本物はきっとまだ目の前に―)

 

身構えるクオンに対し、あるふぃが更に仕掛けた。

 

「っ!!」

 

(何これ...幻が...複数...!?)

 

クオンが視たものは、背後のみならず、左右、更には上からも迫ってくるあるふぃの姿だった。

 

「っ...!!」

 

予想外の出来事にクオンの思考と身体が僅かに固まる。

既に1秒は経過していたが、思考が硬直したことによって延ばされたこの一瞬の隙が、勝敗を決した。

 

武器と武器が交わる。

静寂が訪れた会場に、場外へとカランと音を立てながら落ちる"アルトリウス"の音が鳴り響く。

 

『...しょ...勝負ありぃぃぃぃ!!!!クオンがバリアを解いた一瞬の僅かな隙を突いたあるふぃ、クオンの武器を場外へと弾き飛ばし、見事勝利だぁぁぁぁ!!!』

 

盛大な歓声が巻き起こる。

力無く座り込んだクオンに対し、あるふぃは静かにしゃがみ、声をかける。

 

「大丈夫か?クオン。フォトンの使いすぎで疲れたか?」

 

「...いよ...」

 

「ん?」

 

かすかに聞こえた小さな声に、あるふぃは聞き直そうとする。

 

「ずるいよあるちゃん!!あんなに何度も殺気ぶつけなくてもいいじゃん!!ほんっっっとうに怖かったんだけど!!!」

 

クオンは俯いていた顔を上げ、あるふぃへと訴える。

顔を上げたその目には、僅かながらに涙が浮かび上がってきていた。

 

「なっ...」

 

あるふぃは慌てて、クオンの頭に優しく手を乗せる。

 

「す、すまなかった。お前が相手だから、どうしても加減が難しくてな...」

 

いつ涙が零れてもおかしくないような状態のクオンを、あるふぃは必死になだめる。

 

「そ、そうだ、今度、カフェで新メニューが追加されるんだが、なんでも地球の料理をモチーフにしたみたいで、エビが多く使われたものらしい。お詫びとして、今度それを奢ってやろう。」

 

「......ほんと?」

 

「あ、あぁ......だからその...泣くのは勘弁してくれ...な?」

 

「.......うん...」

 

クオンは零れそうになる涙をぐっと堪え頷く。

 

「...あんなに慌てているあるふぃさん、新鮮ですね。」

 

「...ちっちゃい子の涙に弱いのかな...」

 

セラフィムとアリスは、そんな事を呟きながら、驚いた顔でフィールドの様子を見ていた。

 

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