「さて、どうしたものか……」
陽も落ちびゅうびゅうと風の音が聞こえる午後の刻、顎に手を当てながら男は呟いた。
「プロデューサーさん」
「ん?甘奈か、どうした?」
「最近さ、ちょーっと寒くなってきたと思うの」
「あぁ。ニュースで見たよ。これからはもっと冷え込むそうだぞ」
「そうそう、だからね」
そう言って、彼女は慣れた手つきでスマートフォンを操作しながら画面を見せてきた。
「これ、どう?」
「ん?……これ、空気清浄機か?」
「そうなの。パパが会社の忘年会のビンゴで当てたんだって」
「そうなのか。でもどうして俺にこれを見せてくれたんだ?」
「これさ、貰って欲しくて」
「……え?」
甘奈に話を聞いたところ、どうやら今年のクリスマスに全く同じ機種のものを購入してしまい、貰ったは良いものの行き場に困っているようだ。
「そういうことであれば、もちろんいただきたいけど、本当に俺でいいのか?」
「身近にこういうこと話せるのがプロデューサーさんしかいなかったんだよ〜」
「頼ってくれるのはありがたいんだが、どうもこう良いものを貰うとなんだか悪いような気がするな」
「いいのいいの。日頃のお礼だと思ってどんどん使ってね〜☆使い心地は大崎家お墨付きのものとなります!」
「はは、それは心強いな」
貰った空気清浄機は親御さんが後日家まで送り届けてくれるそうで、さすがに気が引けると思い断ろうと思ったのだが、日頃のお礼をしたいと言われたため、どうにも断れず送ってもらうことにした。
ピンポン、と鐘の音が聴こえた後によく見る顔が現れた。
「プロデューサーさん……こんにちは!」
「こんにちは。甜花、今日は来てくれてありがとうな。お父さんもお忙しいところすみません」
「いえいえ、この子達にしていただいていることに比べれば、朝飯前ですよ」
そう言って彼は手に持っている荷物を下ろした。
言い出した甘奈は今日はどうしても都合が合わなかったらしく、代わりに甜花が来ることになったようだ。
「プロデューサーのお家、初めてきた……。これが大人の部屋……すごい!」
「ははっ。お褒めにあずかり光栄だ」
「プロデューサーさん、ここで開けても大丈夫ですか?」
「ええ。まさか組み立てまでして頂けるとは、ありがとうございます」
「いえいえ。では開けますね」
ダンボールとカッターのシャッという小気味よい音と共にダンボールの擦れる音がする。
新しいものはいつになってもワクワクする。
これから見えるものがどのようなものかと思うと、期待で体が震えるようだ。
「おぉ〜。白い……ね!」
「ああ。やっぱり新品というものはいつになっても良いものだな」
「……そうなの?」
「ははっ。男にしか分からないロマンみたいなものさ」
「……ロマン!」
慣れた手つきでセッティングをしてくれたあと、使い方を簡単に解説してくれた。
最近の空気清浄機というものはスマートフォンからの操作も可能なようだ。お手入れも簡単だそうで道理で人気が出るわけだ。
「今日は色々とありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ。この子達の普段聞かないような話も聞けて嬉しいばかりです。」
「……パパ、ずっとニコニコしてたね」
「ああ。甜花も甘奈も最近忙しそうにしていたからな。娘達の頑張っている話を聞けて、父さん、嬉しいよ」
「にへへ……パパまた嬉しいって言ってる」
「甜花もありがとうな。」
「うん。今度は、なーちゃんと一緒に、来るね?」
「ああ、大歓迎だ。」
軽く別れの挨拶をして、2人を見送った。