悪魔とモルモットの等価性について   作:ウィルデンシュタイン

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2.introduction:My body

数か月後、満席のカフェテリアにて。

 

「わぁ、タキオンさんのお弁当、いい匂い……」

「そういうスカーレット君のものも色彩に富んでいるじゃあないか。

ウチのモルモット君の用意するものは栄養と味は間違いないのだが、何せ茶色くてねぇ」

 

結論から言って、モルモット君はある意味完璧だった。

まず実験の邪魔をしない。それどころか必要資材の調達程度ならこなしてのける。

 

学業に関しては教員と死闘を繰り広げたらしく、テストさえパスすれば問題ないとのこと。

食事に関しては……このとおりだ。厭になる。なんせ、

 

「トレーナーさんにお弁当作ってもらうの、流行りましたね」

「たかだか数%、個人ウマ娘専任や少人数チームのトレーナーのうち、

心得のあるものの所業だが……

確かに目立つよねぇ。流行りというのはわからないものだ」

 

言いながらスカーレット君に意識をやると、

信じられない物体を見る形で深紅の相貌が向けられている。

「……震源地、タキオンさんのトレーナーさんだと思ってたんですが」

 

弁当のアジ南蛮漬けを飲み込む。骨まで柔らかい。

「ン?彼がこの騒動が始まる前に毎朝毎朝圧縮睡眠剤キメて光輝きながら弁当製造していたのは

間違いないが、それがこの学園の風潮とどう関係があるんだい?」

 

直後、全周囲のウマ娘が信じられない物体を見る形で眼を向けてきた。

無い袖をクルクル振ってごまかす。

「……タキオンさん、速いし実験でも有名ですし。

トレーナーさんも睡眠時間削って栄養管理!!っていうのは……なんというか……」

 

周囲のバ群から言ってやれ言ってやれ!!とささやきが飛ぶ。

そして彼女はそのまま言い放った。

「──タキオンさんのトレーナーさん、

きっとタキオンさんを一番に大事に思ってるんですよ!!」

 

「いやそれは違わないかなぁ!?」

約全員が文面だけは同意した。

 

 

栄養補給後、グラウンドまで歩く歩く。

 

「まったく、君の純粋さは買っているが、ここまで反応性が薄いと肝心なところで損をするぞ」

「周りの人たちのことですか?──分かってますよ?」

「末恐ろしいねぇ」

 

ありがとうございます。とスカーレット君は笑い、続ける。

「でも、本当に大事なんです。

一番とまで言わなくても、私たちに優先度高く接してくれるトレーナーさんというのは」

 

「……人生50年。ウマ娘が純粋に“ウマ娘”でいられるのは、その2割程度だ

数十戦無故障という怪物もいるが、“全力”を出せるのは人生で10度もない」

……私の場合、その半分あるかも怪しいものだがねぇ。

 

「私はもう少し先ですけれど、タキオンさんのメイクデビューはもうすぐでしょう?

きっと、一番速いウマ娘になれますよ。そのトレーナーさんと居れば」

そうだなぁ。

「でも、知っているだろう?私の目標はそこではない、と」

「……ウマ娘より、速くなること」

 

わかりやすくていいね。

「知っての通り、ウマ娘という存在自体が不可解極まりないのだよ。

よく言われる仮説はこうだ。“ウマ娘は、走るために生まれてきた”」

 

しかし、

「近年、ウマ娘の最高速度は頭打ちだ。

最高のトレーニング理論を持ってしても、自動車には勝てない」

「走るだけなら、もっといい方法があるってことですか?」

 

「スカーレット君はいつも私の脳みそをクリアにしてくれるねぇ」

つまり、

「“ウマ娘にしかできない走り”とは何か?」

それは、

「ウマ娘としての“レース”。そうですよね、タキオンさん」

 

そうだね。今はそうだ。

「数千数万の眼が十数のウマ娘の走りに注目し、歴史に確実に名を残すことのできる舞台

トゥインクル・シリーズは、またとない実験の機会なのさ!!」

 

それじゃあ、

「タキオンさん。タキオンさんが、“一番”を出し切る、目標の場は、今はどこなんですか?」

答えはモルモット君と決めてあった。最高の舞台、最高のブレゼンテーションの場。

「“最強”。菊花賞、3000m、そのラストスパート。そう決めてあるよ」

 

そして、私の肉体の役目も、そこで終わる。

 


 

Blood

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