ナマケロに転生した俺 作:ひん
「もぉ!なんで、連続して技を出してくれないのよ!」
そんなことを言っても、オレはナマケロだからとしか答えることができない。
いや、ポケモンだから会話自体が無理だわ。
オレは普通のナマケロではない。
前世は人間だったと記憶を持つ変わったナマケロだ。
とはいえ、人間だったこと、そもそもオレが生きていた人間世界には『ポケットモンスター』は、長年続いているゲームシリーズのタイトルであり、現実に存在しなかった。
自分がどのようにしてこの世界のナマケロとして生を受けたかなんて知らない。
所謂、転生というものだが……どうせなら『ポケダン(ポケモン不思議のダンジョン)』の世界に飛ばしてくれよ。
あ、転生てのは、日本のラノベ文化で愛された物語の冒頭に使われる設定だ。
異世界に転生、転移すればチート能力というものが付与されるのが決まりだ。
チート能力ってのは、人間なのに1トン以上の物体を発泡スチロール並みに軽々持てようになる、休まずに地球一周泳げる力を持つみたいな感じの常識を逸脱した身体能力を授けられることだと思ってる。
で、ナマケロに転生した俺のチート能力は?
……はい。ポケモンの技が使えるそれだけです。
特性『なまけ』が『はりきり』や『こんじょう』に変わるわけでもなく、ただポケモンになり、技が使えるというのがチート能力です。
このチート能力は人間基準なので間違いではない。
普通、ポケモンになるってあり得ないからね?
「お願いだから、『なまけ』るの止めてよー!私、まだあなたしか手持ちにいないのに!」
ポンポンと優しく頭を連打される。
無理はモノは無理だ、特性で一度攻撃したら休みたくなるのだ。早くヤルキモノに進化させて、『しんかのきせき』を持たせて戦わせるんだな。
あ、戦うのオレじゃん。
成長段階どのくらいなのいま?
わかり次第頑張るよ、なまけが発動しない限り。
「うう、他のポケモンを捕まえようかな。でもわたし、下手くそだしなぁ」
「ナケロー」
「『泣ける真実だね』って言った今?鳴き声で、そんなニュアンス出した今?」
おおう。私の『親』勘が鋭いね。
勘の良いガキは大好きよ。
この主人のボール投げセンスは皆無だ。
俺を捕まえるときも、態々、近づいてきて顔にモンスターボールを当ててきたからね。
俺?攻撃するのもなんだかなぁ、って見てただけ。
戦闘で繰り出される際も、正面での対面じゃなくて背後だったり、俺が岩や木にしがみつく態勢にならざるを得なかったり、そもそも叢に隠れてしまったりと残念です。
「ナマーケー」
「うう、このやる気の無い鳴き声が癖になってくるぅ」
ぎゅっと抱き締めて頬擦りを始める。うーん、スベスベで柔らかいけど鬱陶しい。
暑いから離れてくれ。というか、情緒だいじょうぶ?
嫌がる素振りとして、前脚で頬を押すがなんか怠くなって数秒で終わる。やばいね、この体。
「嫌がるけど抵抗できないのも可愛らしいよぉ」
「な、ナマケ!?」
この主人は将来、女王様になりそう。