本物を目指して   作:転音

2 / 11
前回の改訂も行いました。気になる方はそちらからどうぞ。
多分今後もちょくちょく改訂しながら進めていくことになると思います。


怪物との出会い

 ことの発端は初日、つまり入学式の後自分のクラスで席を探していた時のことだ。俺をはじめとした高等部から入学したウマ娘は、中等部からトレセン学園にいるウマ娘とは別クラスとなるのだが、教室に張り出された座席表の中に見覚えのある名前があった。オグリキャップである。

 

*****

 芦毛の怪物『オグリキャップ』

 生涯戦績 32戦22勝・・・うち地方での戦績が12戦10勝

 主な勝ち鞍 有馬記念88年、90年 マイルCS89年 安田記念90年 等

 

 ダイユウサクと同じ1988年代にクラシックを駆け抜けた通称88世代の顔ともいえる馬であり、『オグリより強い馬は生まれても、オグリより愛された馬はいない』といわれるほどの絶大な人気を誇った日本競馬史に残る伝説的アイドルホースである。

 

 その人気はいかほどかというと

・オグリキャップのぬいぐるみが300万個売れ、競走馬のぬいぐるみを定番化した。

・オグリキャップが中央に来てから年間の馬券売上額が1988年に2兆円に、引退した1990年に3兆円に、それぞれ初めて到達した。

・引退レースの有馬記念で17万人ものファンがレース場に詰めかけ、オグリが勝利すると馬券が外れた人が多い中オグリコールが起きた。

等々・・・

 

 競馬を知らなくてもオグリキャップは知っている人がいるほどの人気があったのだ。

 

 

 なぜそれほどに人気があったのか?様々な要因はあるが、『地方から中央へ成り上がった』というわかりやすい物語性があげられる。

 そう、地方から中央へ途中で入ってきた馬なのである。

 

*****

 当時の俺はダイユウサクが学園にいないことなんて全く知らなかったので、自分のことをただのモブだと信じて、呑気にこれからの学園生活に思いをはせていたのだ。そのうえ先述した通りオグリキャップは史実では地方から中央へ入ってきた馬。まさか普通に入学してくるなんて想像すらしていない。

 そんなところにまさかのアイドルホース登場である。そりゃあもう驚いたのなんの。たっぷり数秒間フリーズした後、俺にできたのはロボットみたいな動きで自分の席にすわって机に突っ伏すとかいう奇行だった。

 

 さて、当然だがしょっぱな机が割れるような勢いで突っ伏した奴に話しかけるような奴は、人間にもウマ娘にも少ない。見事にクラスメイトとの友情のスタートダッシュにこけた俺は、なんともなく周りを見渡してみたのだ。そしたら捕まった。怪物に。どうやらオグリキャップはあまり話すのが得意な方ではないらしく、俺と同じように誰かと話すこともできずにさみしそうにしていた。そんな時目が合ったものだから、多分こう思ったのだろう。

 (ボッチ仲間だ・・・!)

 大変遺憾である。俺が教室に入った時点で、オグリキャップはまだいなかったうえ、クラスメイトと会話もしていなかったので俺の奇行を知らなかったのだろう。

 

 「わ、私はオグリキャップだ。オグリと呼んでくれ!」

 

 キラキラ輝く大型犬のような眼には勝てなかった。

 

*****

 

 「ふう・・・ここの食堂の料理はおいしいな」

 

 そういってもはや姿が隠れてしまうほど山積みになった皿の向こうで一息ついた芦毛のウマ娘。先ほどからお代わりを続けること数十杯。ようやく満足したようで、まるで妊婦のように腹が膨らんでいる。

 

 「あー・・・オグリキャップ?ずいぶんよく食べるんだね」

 「ああ。少し恥ずかしいんだが・・・私は昔から大食いでな。ここの料理があまりにもおいしいから、つい食べ過ぎてしまった」

 

 初日だし抑えようと思ったんだが、などと若干顔を赤らめて頭を掻くオグリキャップ。その姿はかわいらしいが先ほどまで厨房を阿鼻叫喚の地獄に陥れたのもコイツである。よく食べるとは聞いていたが、ウマ娘になってもその健啖ぶりは健在らしい。見てるだけで腹いっぱい・・・どころか胃もたれしそうなぐらいだ。一体彼女の胃はどうなっているのだろうか?質量保存の法則が仕事をしていない気がする。

 

 思わず圧倒される食べっぷりはともかく、オグリキャップが普通に中央にいるのはまずい気がする。史実オグリの人気は『地方から来た』ことによるものが大きい。もちろん、強いから人気があるのは間違いないだろうが、それだけなら無敗の三冠と七冠を成し遂げたシンボリルドルフを始め、オグリキャップより強いだろう馬はほかにもいる。

 オグリの人気は史実でJRA・競馬界のみならず社会現象にもなった。たしかJRAの規定に変更があったりもしたはず。その人気が落ちるとなると影響は計り知れない。

 

 「オグリってどこの出身?」

 「岐阜県の笠松トレセンだ。良いところだぞ?」

 

 杞憂だった。

 

*****

 

 オグリ曰く、地元笠松トレセンに入学し()()()()活躍したらたまたまレースを見ていた中央のトレーナーからスカウトを受けたとのこと。だから、普通の高等部入学ではなく転入という形でトレセン学園に来たらしい。どうやら彼女は地元が大好きらしく、郷土料理がどうとか、同期のなんちゃらマーチがうんたらかんたらと話し出したら止まらない。ひとまず地方で活躍したのは間違いないらしいと胸をなでおろした。

 

 「それでな!私の昔の夢はどて煮だったんだが・・・」

 「わかった!わかったから!落ち着いて・・・いやわかんないけど!なにどて煮って!?しかも夢が!?」

 

 かってに、漫画の主人公のような奴を想像していたのだが、なんだか思ったより変な奴な。なんとなく気が抜けるというか・・・まあでも、悪い奴じゃないのは間違いないし。

 

 (くだらない話で盛り上がって大笑いして・・・うん。悪くないな)

 

 なおそのあと食堂のコックさんにうるさいと怒られた。ごめんなさい。




感想、評価などいただけると嬉しいです。モチベにつながります。

トレーナーは誰にする?

  • シリウストレ
  • (アニメ)スピカトレ
  • アプリトレ
  • オリトレ
  • 何でもいいから早くかけ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。