前回の話の改訂を行いました。最後のところが変わっていますが、大筋に影響はありません。
午後の授業であるトレーニングのために着替えているとき、ふと思い出したようにオグリが話しかけてきた。
「そういえば、ダイサンゲン・・・長いな。何か呼びやすいあだ名はないか?」
「え?うーん・・・だいちゃんとかかな?いきなりどうしたの?」
一緒に食事をとってから、オグリと友達になることができた私は学園生活で最大の懸念点だった友達ゼロ人を何とか回避し、トレーニングに勉強にと前世以上に充実した学園生活を謳歌していた。だから浮かれていたのだろう。いや、目をそらしていたというべきか・・・
「いや、選抜レースは何に出るのか聞きたくてな」
「・・・あ」
つまるところ、完全に忘れていた。
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選抜レースとは、トレセン学園で年に4回行われるウマ娘がトレーナーたちに自分の実力をアピールするために、そしてトレーナーが担当ウマ娘を決めるために行われる最初の関門。トゥインクルシリーズに参加するのにトレーナーの存在が必須であるため、夢を目指すウマ娘たちが避けては通れない登竜門である。
また、学園主催で行われるレースのほかにも学園に存在するいくつかのチームが個別に行う選抜レースも存在する。有名どころだとリギルの選抜レースなどだ。
「あ・・・?」
「あ・・・いや、芝のマイルとか・・?オグリはどうするの?」
「私はダートのマイルだな。地元のトレセンでもしょっちゅう走っていたし、慣れているから」
「あ~地方はダートが多いんだっけ」
「これでも地元では強かったんだぞ!」ふんす!と胸を張るオグリ。いや、知ってます。史実を知らなくても中央のトレーナーにスカウトされてる時点で実力は折り紙付きである。
それより問題は私のほうだ。全然勝てるビジョンが浮かばない。教官につけてもらうトレーニングは腰の弱さなどを考慮してほかのウマ娘に比べていくらか強度を落としてあるものだし、レース経験も全然ない。ほかのウマ娘より少ないトレーニング量で、ほかのウマ娘より少ない経験では、勝てる要素が見つからない。
史実のダイユウサクはいったいどうやって有馬記念を勝つに至ったのだろうか?所詮にわかファンの俺が知ってることなんで有馬をレコードで勝ったことと、それ以外に目立った戦績がないことくらいだ。
(これ、有馬どころかデビューできないのでは・・・?)
目をそらしてきたやばすぎる現状を見つめて、俺は頭を抱えた。
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オグリと選抜レースについて話した数日後、俺は放課後にトラックで練習に励むウマ娘たちを眺めながら黄昏ていた。
あの後自分の置かれている状況を理解した俺はこれは何とかしなくては!と動き始めたものの、トレーナーには相手にされず、教官にも「あまり特別扱いするわけには」と断られてしまった。当然である。
図書室に行ってみたところ、役立ちそうな本は見つけたものの内容を全然理解できずに諦めた。これまで努力してこなかったツケが出ている。今から勉強を開始してもいいが、最初の選抜レースがあるのは6月上旬。確実に間に合わない。
仮に最初のレースを捨ててそれ以降のレースを目標とするにしても成果が出るのがいつになるのかわかったもんじゃない。学園だってトレーナーがつくのをいつまでも待ってくれるわけじゃないのだ。そもそもとして、今でさえ勉強にトレーニングにと非常にハードな毎日を送っているのである。そこにさらに追加で勉強に研究に・・・なんてとてもじゃないができる自信がない。人間、たとえ生まれ変わってもいくら強く決意しても変わらないものがあるのだ。
正直諦めたい。だって難易度が明らかに高すぎる。冷静になって考えてほしい。トレセン学園は偏差値60以上の普通に頭もいい学校なのだ。そのうえでトップアスリートとして日本のほかのどのトレセンと比べてもハードなトレーニングを頑張っているのである。そこにさらに追加でスポーツ医学はじめとした専門的な勉強も行うとか不可能だ。体は将来G1を勝つくらいだから才能があるのかもしれないが、少なくとも頭は天才にも秀才にもなってない。
そうは思うものの、あきらめるという選択は取れなかった。俺が背負っているものは史実でダイユウサクにかかわった人たちの思いであり、夢であり、この世界の俺に期待してくれる家族や周囲の人の願いだ。それらを簡単に投げ捨てることができるほど、俺は決意が固まっていない。
そうだ、俺は中途半端なんだ。名前はダイサンゲンで、立ち位置はダイユウサクで。人間だけどウマ娘で、あきらめたくないけどあきらめたくて・・・体も心もとても・・・弱い。
(ああ・・・なぜ神は俺をダイサンゲンにしたんだ・・・?)
今日までに幾度となく考えた答えの出ない疑問を胸に、ひとまず、走ることにした。
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初めての選抜レース
結局、名案なんて出るはずもなく、腰に負担のかからないようなトレーニングを探して素人なりに気を使いながら精いっぱいトレーニングを積み重ねた俺は、明らかに以前よりも強くなった自分とそれ以上に強くなった同級生たちとの差をまざまざと見せつけられていた。
芝1600m 天候は晴れ 良馬場 10人フルゲートで行われたレース。
2枠4番から出走した俺は・・・10着。着差は、少なく見積もって数十馬身といったところか。1着から離されること10秒以上・・・完膚なきまでの敗北だった。
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