本物を目指して   作:転音

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前話を大幅に改定しました。ぜひご確認いただけると嬉しいです。


レース戦略(場外)

 

 今日も変わらずオグリ以外の娘に腫れ物に触るような扱いを受けながら、私はターフを走りながら考えていた。

 

 (家族への恩返しを目標に、そのために勝つ!とは言っても・・・)

 

 選抜レースであれほどの惨敗を喫したのには様々な要因があるだろうが、あの時あの場にいたトレーナーたちは圧倒的な才能不足を理由に考えている人が多かった。それはまあ当然の結論だろうが、俺は、俺自身に才能がないと考えるには時期尚早ではないかと思う。

 

 (才能以前に積み重ねた年月が違うからね。自業自得、仕方ない)

 

 ほかのウマ娘に比べて、レースの経験や知識、基礎的なステータスも精神力も・・・今の俺には足りてないものが多すぎるが、それらはひとえに重ねてきた努力の差。ついこの間まで中央で走ることになるなんて全く考えていなかった自分と、幼いころからトゥインクルシリーズで活躍することを目標にダイヤの原石を磨き続けてきたライバルたち。これでは才能なんてあろうとなかろうと勝負にならない。

 

 (だからまずはトレーニングを重ねて力をつけないと・・・でも)

 

 俺の場合は問題がある。虚弱体質と腰の弱さだ。宝塚記念のゴールドシップより盛大に出遅れているところから追い付こうと思ったら相当なトレーニングをする必要があるが、何の知識もない素人が安直に強度の強いトレーニングを行えば怪我をして、最悪の場合走れなくなってしまうかもしれない。それは絶対に避ける必要がある。

 だから強くなるためにはトレーナーが・・・可能なら、俺のようなウマ娘を育てた経験のあるトレーナーが欲しい。しかしそのためには選抜レースを勝つ必要がある。

 

(堂々巡りの袋小路、どうしたもんかな~)

 

 トレーナーに直接突撃しようにも、私のようなウマ娘を育てた実績のあるトレーナーなんて知らない。トレーナー側がウマ娘を知ることはいくらでもできるが、その逆にウマ娘がトレーナーについて調べるのは難しいのである。リギルレベルの有名どころともなれば話は別だが・・・

 

 (と、これで10週か・・・今日はここまでにしよ)

 

 特に考えも浮かばないまま、気づけばいつものメニューも終わり夕焼けの中帰路をたどる。ただでさえ量がこなせないのだから、集中して取り組むべきなのだが・・・焦りや不安がそれを邪魔する。

 

 (よし。楽しいことを考えよう!ちょうど週末だし、明日は商店街にでも行こう。学校にない本も探したいし・・・学校にない本なんてあるのか?)

 

 オグリも誘ってみよっかな。(勝手に)お世話になってるし。アニマルセラピー的な感じで

 

*****

 

 「おはよーオグリ、来てくれてありがとね」

 「ああ、おはよう。気にしなくていいさ。私はまだこの辺りはいっていないところだらけだからな。機会があれば、出かけてみたいとは思っていた」

 「オグリ、方向音痴だからね・・・そういうことなら、私も誘ってよかったよ。気分転換に出かけようと思ってさ、普段オグリにはお世話になってるし・・・どこか行きたいところとかある?」

 「ラーメン・・・とかどうだろうか?」

 「相変わらずだね。けどさすがに早すぎるからそれはお昼にするとして、とりあえず商店街歩いてみよっか。私は本屋とかも行きたいんだけど」

 「ああ、大丈夫だ。行こう」

 

 そんなこんなで始まった商店街巡り。ウィンドウショッピングというには庶民的すぎる気もするが、田舎育ちだからか、オグリはそんなこと気にした様子はないし、元男の俺も普通女の子が行くようなお店はわからないのでちょうどいいように思う。

 

 (案内といってもどこ行こうかな・・・?やっぱり服屋さんとかかな)

 

 しかし俺は甘かった。オグリキャップというウマ娘が食べることにどれだけ比重を傾けているのか。歩く大食い選手権開始・・・!

 

 まず最初に餌食となったのは商店街の比較的入口近くに位置する、安くておいしいと評判のお肉屋さん・・・そう!コロッケだった。どうやらオグリキャップ選手、漂ってくるおいしそうなにおいを目ざとく、いや鼻ざとく嗅ぎ付け通行人を華麗にかわしながら流れるように列に並んだ!列に並ぶだけの理性はある様子。朝食という名のタイムリミットが消化されるまでにあとどれだけの猶予があるでしょうか。

 

 案内役ダイサンゲンはいかなる戦略で彼女の胃袋を黙らせ、商店街巡りを完遂するのでしょうか?どう思いますか、解説のナイスネイチャさん

 

 「はい、え?何この声!?どっから聞こえてんの!?」

 

 どうやらネイチャさんにも想像がつかない次元の戦いのようです。さあ買える数に制限がある中、ダイサンゲンを一人としてカウントし手に入れた10個のコロッケがあっという間に消えていきました。自販機で飲み物を買い、一息ついて奥へと向かいます!

 

 「あ、朝から10個もコロッケを・・・!?う、ウマ娘でも胃がもたれそう・・・」

 

 なるほど。大食いが多いウマ娘であっても、油ものであることの影響はやはり大きいということでしょう!

 

 「はい。・・・ほんとに何なのこの声。頭おかしくなっちゃった?」

 

 さあダイサンゲン、コロッケと飲み物で作った隙で靴屋へと足を運びます。トレセン学園が近いからか、服屋や靴屋といったファッション関係のお店が多く出店しているのもこの商店街の特徴ですからね。定番と言っていいでしょう!

 

 「さっきのお肉屋さんを除けば、食べ物屋さんはもっと奥の方に多いからね・・・っていやいや、なんで私は普通に解説してるのさ」

 

 なるほど。勝負は後半というわけですか、となると前半にいかに余裕を作れるかが勝負のカギとなるでしょうダイサンゲン、どのような戦略を立ててくるのか!?

 

*****

 

 「あ、あの・・・オグリ?』」

 「む、どうした?ダイ」

 「いや~ちょー----っとだけ食べすぎじゃないかな・・・って」

 

 のんびりだらだら商店街を歩くつもりだったのに、いつの間にかオグリの手綱を握るのに必死になっていた私は、心と体の疲れをいやすつもりがあっという間にへとへとになってしまっていた。楽しくなかったわけじゃない。多少は覚悟もしていたが、まさか朝からコロッケやらクレープやら肉まんやら・・・こんなに食べ物だらけになるとは、覚悟の準備が足りていなかったようだ。

 

 「おいしそうなものばかりでつい」

 「ついですむ量じゃないよ・・・わかったから、ラーメン屋さんいこ?そこで腹いっぱいにしてからまた来よう」

 「わかった。すまない」

 「う・・・悪いわけじゃないからいいよ・・・」

 

 初対面の時に抱いた、大型犬を相手にしているような感覚は今でも変わっていない。無表情に見えて案外感情が素直に出ている。とてもかわいい。これが伝説のアイドルホースか。

 

 ラーメン屋のほうは、オグリが気になっているところがあるらしくどこにあるかを調べていくことにした。オグリに案内はさせられないのでしょうがない。

 

 ついたラーメン屋は、少し汚い・・・いや、趣のある店だった。商店街から横道に少し入った、複雑というわけじゃないが、オグリ一人なら確実にたどり着けなかっただろう店。俺たちは「一緒に来てよかったね」などと言いながら食券を買い(オグリは特盛で固め濃いめ多めと注文していた)、やってきたとんでもない量のラーメンにビビりながら食べ始めた。

 

 「おいしい・・・」

 「ああ」

 

 食事中のオグリには話しかけるだけ無駄であることを一緒に過ごすうちに学んでいた俺は、黙ってラーメンを食べ進めた。しかしそうして暇な時間が出来ると、どうも嫌なことも頭をよぎってしまう。

 考えないように、と思っていると

 

 「ダイ」

 「?どうかし・・・って早!?」

 

 私の食べている「ウマ娘ラーメン」のさらに二倍はあったとんでもない量のラーメンがスープまできれいに食べられていた。オグリは私の驚きをよそに、何やら少しまじめな雰囲気で話し始める。

 

 「最近の君は、なんだか元気がないような気がしてな・・・やはり、噂が原因なのか?」

 「え?そ、そんなことないと思うんだけどな・・・」

 「いや、私が言うのもなんだが最近の君は少しボーっとしている時間が多い。何かあるなら・・・」

 「いやいや、大丈夫大丈夫・・・そりゃあ、ちょっと悩んでることはあるけどさ。噂は気にしないけど、ぼろぼろに負けたのは事実だからね・・・強くなりたくても、体が弱くて鍛えられない。トレーナーは欲しいけど、実力が無かったらそれも無理」

 

 「でも、今頃のウマ娘ならだれでも悩んでるようなことだよ。これくらいは乗り越えて見せないと、私にも目標があるからね!」

 

 軽く力こぶを作ってむん!とわざとらしくアピールする。するとそれを見たオグリが一つうなづいて

 

 

 「ダイ・・・よし。わかった。友人として君の助けになろう」

 「え?」




読んでいただいてありがとうございます。感想、評価などいただけると嬉しいです。

説明文が冗長で、会話が少なすぎるという悩みがありまして・・・特に前回はそれがひどかったように思うので、かなり大きく変えました。反応をいただけると嬉しいです。

トレーナーは誰にする?

  • シリウストレ
  • (アニメ)スピカトレ
  • アプリトレ
  • オリトレ
  • 何でもいいから早くかけ
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