本物を目指して   作:転音

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間違いか、救いか

 

 あのお出かけから数日たった放課後、普段のようにトレーニングをしようと寮へ帰ろうとしたとき、オグリから「用意ができた」とついてくるように言われた。

 

 「どこ行くの?」

 「すぐにわかる」

 「・・・なんか怖いんだけど?」

 「安心しろ、私の友人だ。きっと仲良くなれる」

 「友人て、さっき階段も登ったし上級生じゃないの?」

 

 なぜだか詳しくは話そうとしないオグリについていくこと数分。たどり着いたのは生徒会室・・・そしてその主

 

 「やあ、私はシンボリルドルフ。君がダイサンゲンかい?」

 「ハ、ハイ。ダイサンゲンデス・・・」

 

 柔らかくほぐれた表情とは反対に強烈な威圧感を放つ無敗の三冠バが、こちらを見据えていた。

 

*****

 

 「そう怖がらないでくれ。私はオグリキャップから相談を受けてね君の力になりたいと思っているんだ」

 

 カチカチに緊張している私に対して、幾分雰囲気を和らげてそう話しかけてくるシンボリルドルフ。もちろんそういわれたところで全く緊張がゆるむことなどありはしない。というかさっきから私の頭の中はなんでオグリとシンボリルドルフが友人なんだという疑問で埋まっている。馬のほうで何かかかわりがあったのだろうか?にわかの私にはわからない。

 

 入学初日にオグリがいた時以上の衝撃でフリーズして動けない私をよそに、二人は会話を進める。

 

 「ルドルフ。忙しい中、時間を作ってくれてありがとう。この間話した通り、ダイが困っている。助けてほしい」

 「ああ、彼女については噂の件もあって私も気になっていたんだ。力になれるかは分からないが、話ができる機会を作れたのは、私のほうこそ感謝したい」

 

 私が呼び出したりしたらますます彼女が注目を集めてしまうからね。そういって会長は席を立つ。

 

 「時間はあることだし、ゆっくり話そう。コーヒーでいいかな?」

 「ああ、ありがとう」

 「砂糖は?」

 「少し」

 「承知した。ダイサンゲン、君はどうする?」

 「へ?い、いや!お気になさらず!」

 

 「遠慮しなくていいさ。君にだけ出さないというのは、むしろ私のほうが嫌なんだ」

 「な、ならうんと甘く」

 

*****

 会長が気を使ってくださった雑談とコーヒーのおかげか緊張もほぐれてきたころ。さて、という一言とともに、ついに本題に入った。

 

 「まずは謝罪したい。学園に流れている君のうわさは生徒会も把握している。可能なら噂を消し、君を守りたいところなんだが・・・」

 

 一呼吸

 

 「トレセン学園の生徒会には、かなり大きな権力が渡されている。言わば、私も学園を運営する側なのだ。君のうわさの内容を鑑みるに、我々が下手に動くとかえって噂の内容を補強しかねない」

 「今は学園内の、噂好きな生徒が話のタネにする程度で済んでいるが、信ぴょう性が増し大事になればトレセン学園の運営に影響が出てしまう。だから君を守れない」

 

 申し訳ない。そう言って頭を下げるシンボリルドルフ。

 

 「ちょ、謝らないでください!もとはといえば、私が中央に入れたのが疑問なくらい弱すぎるのが悪いんですし・・・」

 「そうだが、そうじゃない。君の実力が中央のレベルに届かないほど低いことも、我々は知っていた」

 

 会長は座っている椅子から少し前のめりになりながら、話を続けた。

 

 「君が学園に入ることができたのには理由がある。一つが君の体質。一つは君の才能。そして一つは・・・理事長と、私の判断だ」

 

 そこから会長が話した内容は、まとめると以下の通りだった。

・現在のトレセン学園は、人間の学校を手本として作られている。

・しかし、ウマ娘と人間とはいたるところに差異がある。そのため、システムと現実にひずみがあった。

・理事長たちはウマ娘のことを思い、ひずみを解消するため近年改革を実行している。

 

・そしてその一つが入学制度の改革であり、私が入学できたのもその改革によるもの

 

 「特殊な体質や本格化が来るのが遅かったなど。様々な理由でその輝かしい才能を磨くことができないウマ娘が多くいる。体質は改善できる。病気は治せる。本格化に至っては、待ってやればそれでいい・・・ほかでできなくとも中央トレセンでなら、日本最高の学園なら可能なはずだ」

 

 「そう思い、テストケースのような形で君とほかに数人のウマ娘を入れたんだ。未来の多くのウマ娘の希望として・・・そしてもちろん、君自身の夢を応援するため」

 

 「しかし今のこの事態・・・つまり入学した生徒に裏口じゃないかなんて言う疑惑が出るような事態は想定していなかった。生徒たちとトレーナーのことを信じていたといえば聞こえはいいが・・・間違いなく、私は間違えた。本当に済まない。何度謝っても足りないくらいだ。こんな・・・誰かが犠牲になりうることはすべきじゃなかった」

 

 改革をしていた学園と、そこにタイミングよく虚弱体質を持ちながら中央に入りたいと志願してきたウマ娘。うまく歯車がかみ合った結果、私は入学できた。ずっと疑問だった入学できた理由は、一発屋にふさわしい運のよさだった。

 

 「それでも・・・私は、理事長とあなたのおかげで学園に入ることができました。すべきじゃなかった、なんて言わないでください。普通なら入れなかった夢の・・・そのスタートラインに立てた。だから、謝らなくていいですよ」

 

 私がそういうと、会長は少し目を見開きうなづいた。

 

 「被害者である君がそう言うんだ。これ以上言葉で謝罪を連ねても無意味だな。では、前置きはここまでに本題に入ろう」




 今回の内容を補足すると、黒幕は理事長です。
 カイチョーは大きな権力を持っているとはいえ生徒ですから、学園の大規模な改革にかかわれるのなんてほんとうにごく一部です。

 体質やらなんやらで特殊な生徒を入れるのならちゃんとサポートしろ!と思われた方。これについてはノウハウがなかったためと言い訳しておきます。
 史実ダイユウサクが“走らない”とあきらめられていたのと同じようにウマ娘たちも言い方は悪いですが、見捨てられてきました。
 つまり今まで誰もこういった“走らないように見える”ウマ娘の育成をやってきていないわけです。何が必要なのかわからない→それを調べるためのテスト、ですから理事長はダイサンゲン達テストケースのウマ娘については犠牲にするつもり満々です。黒い・・・

アプリの理事長とは別人なので、ご安心を

 史実のダイユウサクのあんまりにもあんまりな初期のころを再現するために作った設定ですが、穴がありそうで怖いし自分自身納得できてなかったり・・・

感想、評価などいただけると嬉しいです。

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