本物を目指して   作:転音

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噂の二人

さすさす・・・もみもみ・・・

 

「ふーむ・・・まだ未発達だが柔らかい良いトモだ。筋肉のつき方も悪くn「キャー!?」

 

 明らかに誰かに足を触られている感覚に、つい思いっきり足を振りぬき。何かを蹴飛ばした感覚に遅れてやってきたドスン、という音。後ろを振り返ってみると、頭の左側を刈り上げて後ろ髪を結んだ男性が地面に転がっていた。

 

「な、ななななんですかあなた!声掛けもせずに突然人の足を触るなんて!?け、警備員さーん!」

「ま、まったまった!俺トレーナー!怪しい奴じゃない!」

 

そう宣う不審者の襟元を見てみれば、確かにトレーナーバッチが光っていた。

 

「と、トレーナー・・・?いやいやいや、だとしてもというか尚更!ウマ娘の後ろに座って足を触るなんて死にたいんですか!?」

「いやープレゼンしてみたはいいものの担当がつかなくってさ・・・ほとほと困り果てて練習風景見に来てみれば、噂のウマ娘がいたもんだから確かめたくなった」

「理由なんて関係ないです!」

 

(全くこんなトレーナーがいるなんて・・・信じられない)

 

 男のころの自分なら困惑も怒りもするだろうが、全力で顔面を蹴っ飛ばすようなことはしなかっただろう。だが今の自分はウマ娘、成人男性に突然足を触られればこのぐらいの反応はする。

 

(というか、もしかして・・・)

 

「・・・プレゼン会場で警備員に連れてかれた変態って、もしかしなくてもあなたのことですよね。納得です。クビにならなかったんですか」

「いやー勘違い勘違い・・・理事長さんにはちゃーんと分かってもらったよ」

 

「そんなことより」などと言いながらじりじり近づいてくる変態。

 

「君、なかなか才能がありそうじゃないか」

「・・・嫌味ですか?」

「まさか!今触って見て確信したよ。君は確か、体が弱いんだったよな?けがを防ぐためにストレッチをよほど真剣にやってるらしい。さっき触ってみたどの子よりも君の筋肉は柔らかい。レースでも、緊張してる様子がなかったしフォームもこの時期にしてはかなりきれいだ」

 

「ほめていただけるのはうれしいですが、でも私は遅いです」

「今は、だ。今の君には純粋な身体能力が足りない。だから遅い。けど、逆に言えば筋肉さえつけば君は一気に早くなる」

「アドバイスはありがたいです。でも、ほかのウマ娘みたいにトレーニングができない以上、私だけでは・・・」

「そう!だから・・・俺と契約しないか?」

 

「は・・・?」

 

「す、スカウト・・・ですか?」

「おう」

「な、なんで・・・?」

「聞いてなかったのか?君に足りないのは筋肉。君だけじゃ必要十分なトレーニングができないが、俺がいれば」

「そうじゃなくて!」

 

 このトレーナーは馬鹿なのだろうか?プレゼン大会にいたということは新人トレーナーのはず、最初の担当が私みたいなイレギュラーなんてどう考えても手を出すべきじゃない爆弾だろうに。

 大声で遮ったきり言葉が出なくなってしまった私に、トレーナーが話し出す。

 

「あのな?トレーナーってのはウマ娘が夢をかなえる手伝いをする仕事だ。俺はお前とならG1でも何でも取れると思った。だからスカウトした。納得したか?」

「・・・私の夢も聞かずにそんなことを言うんですか?」

「・・・しまった、確かにそうだな。じゃ、お前の夢は何だ?」

 

「私は・・・家族に恩返しがしたいんです。いろいろ迷惑をかけたので・・・」

「そうか。ならそうしよう」

 

 G1を勝つとか、三冠をとるとか。具体的な目標を何も言っていないのに、目の前のトレーナーは迷わず肯定した。質問の仕方も、答え方も。軽く言ってるように感じるのに目は私をまっすぐ見ていて。

 このトレーナーが間違いなく真剣に言っているのだと分かった。

 

「・・・はあ。わかりました」

「おお!ってことは・・・OKってことだよな!いやーよかったよかった!そうと決まれば早速・・・」

「待ってください!契約はしますが、まずは仮契約です。新人で変態のトレーナーなんて、すぐ信用できないですから」

「わかったわかった。仮だろうと何だろうと、担当するなら変わらん」

 

 何というか、変なトレーナーと出会ってしまったものだ。変人で変態だが、さっきの話を聞く限り私のことはちゃんと見てくれていたようだし、ウマ娘思いではありそうな・・・不安もあるけど、レースへの第一歩を踏み出せたことに、ひとまず安堵し・・・ってあれ?

 

「そういえば、トレーナー。名前、なんて言うんですか?」

「え?あ、自己紹介もしてなかったな・・・俺は沖野だ。お前は?」

 

「私はダイサンゲンです。これからよろしくお願いしますね?トレーナー」




 ようやっとトレーナーがつきました。ここからは今までより時間の流れをかなり早めるつもりなので、ダイサンゲンの話が終わるのも案外近いかも・・・そうでもないかも。

 アンケート通り、沖野Tになりました。スぺが98世代でダイサンゲンは88世代なので、この作品の沖野Tはまだ20代の新人です。そのためアニメの沖野Tより、若く見えるように書きたいなあ・・・と思っています。違和感がありましたら教えてください。

感想、評価などいただけると嬉しいです。モチベになります。

高松宮杯・・・どうする?

  • 芝2000m GⅡ(原作)
  • 芝1200m GⅠ(オリ)
  • やんなくていい。
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