【サブノーティカ×ヒロアカ】二十少年漂流記   作:アママサ二次創作

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不安を吐き出して

「これ、何が起きてるの……」

 

 耳郎のつぶやきに、八百万は返すことが出来ない。彼女もまた、何が起きているのかわからないからだ。と。

 

「みんな! 出席番号順に点呼を取ろう!」

 

 遠くから飯田が大声を上げる。彼は青山と同じポッドに乗っていたようで、甲冑ぽい見た目の2人が並んで近未来的な脱出ポッドの見た目と少しばかりミスマッチに見える。

 

「1!」

「にー!」

「3!」

「4番! 4番はいないのか!」

「飯田君4やろ! うちが5!」

 

 出席番号の順に点呼をしていく。耳郎と八百万の脱出ポッドは一番端っこにあるようで、逆の反対側にある爆豪と切島の声は叫んでいるのだろうがかなり聞こえづらい。逆の端は30メートルほど向こうにあるのだ。

 

「これがどうなっているのか、わかる人はいるか!?」

「わからねえ! 誰もわからないだろこんなの!」

「うるせえ! 叫んで何が解決するわけでもねえだろ!」

「うむ、そうだな! ではどこか1箇所に集まろう!」

「全員が入るほど広くねえぞ」

「轟君! もう一度言ってくれ!」

「あ、あの! みんなが入るほど広くない、って言ってるよ!」

 

 おかげで会話するだけでも叫ばねばならず一苦労である。

 

「やっぱり! なあみんな! PDAでメッセージのやり取りが出来るぞ! 叫ぶよりこっちのが楽じゃね!」

 

 会話に参加せずにPDAを操作していた上鳴がそう声を上げたことで全員端末、PDAを操作し始める。それを報告する上鳴すらが全力で叫んでいる様子だったので、声ではなくPDAをを使うことには皆否やはない。

 やがてイライラとしていた爆豪や、個性的にあまり日光が得意でない常闇などがポッドの中へと戻っていった。

 

「ヤオモモ、ウチらも戻る?」

「そうですね。日光に当たりすぎると体力を失います。何がどうなっているかわからない状況ですし、なるべく疲労することは避けた方が良いですわ。皆さんにもメッセージを送っておきましょう」

 

 はしごを使って一旦ポッド内へと帰還し、2人で並んで床に座り込む。床はガッチガチの金属ではなく若干だがスポンジのような柔らかさがあって、座るのが多少は楽だった。安全装置つきの椅子もあるが、再び座りたいようなものではないし。更に言えば、今は少しでも誰かの隣に。人の安心感が欲しかった。

 

 耳郎と八百万は壁にもたれ、互いに肩を寄せ合いながらPDAのグループ通信を呼び出していた。残念ながら音声通信は無いようだが、それ以外の使い勝手はよく使っているチャットアプリと変わらないようである。

 

「あ、砂藤さんが……」

「『話し合いの前に脱出ポッド調べた方が良くねえか、食料とか水もあるかわからねえと困るだろ』だって。たしかにそうだね」

「では私は皆さんに日光に当たらないように伝えておきますわ」

 

 そう言って八百万がメッセージを打ち込んでいる間に、耳郎は立ち上がってポッドの中を調べ始める。突然の事態に呆然としていたい気持ちはあるが、何もしていないとどうしようも無い不安感に襲われてしまう。

 

「あっ」

「ん? どしたのヤオモモ」

「いえ、何かオーロラ号のスキャナールームからのデータ共有が……」

「どゆこと?」

「おそらく、オーロラ号の設備でこの周辺をスキャンしたのではないでしょうか……そうですね。ファイバーメッシュやシリコンゴムと言った工業用の基本的な素材をこの場所にあるもので作ることが出来るみたいです。金属の鉱石もある程度存在していると……」

 

 そう言いながら八百万はPDAを操作し、追加された情報を確認する。それぞれキノコのようなものや海藻らしきものが色々なものになるとは書いているものの、それぞれがどんな場所にあるのか、どう採取すれば良いのか、どんなものなのかといった説明が無いのである。データの共有が中途半端なのだろう。

 

「てことは、多分こいつだね」

 

 それに対して耳郎は、壁にくっついている1つの装置を軽く叩く。横にある液晶を見ると、アイコンが複数のものを示していた。それを操作すると装置が口を開き、奥に何かを入れる穴と、50センチ四方ほどのテーブルが現れる。

 

「それは何の装置ですか?」

「多分、今ヤオモモが言ったのを原料から素材に加工してくれるんじゃないかな。ほら、こことか、スクラップメタルからチタニウム、って書いてるし。多分こっちの穴に入れて……どうやって出てくんの?」

「確かにその使い道のようですが、一度使ってみないとどうなるかわかりませんね」

「だね」

 

 PDAによるとファブリケーターという名前らしいその装置以外の設備は壊れているらしく、今のところどう出来るというものでも無いようだった。

 

「あ、水と食料あった」

 

 八百万がファブリケーターとPDAにを並べてデータを見比べながら確認している間にポッド内を調べていた耳郎は、壁のモニターの下の収納スペースに食料と水が多少しまわれているのを見つける。

 

「栄養ブロック? カロリーメイトみたいなものかな。それとペットボトル入の水だね」

「この装置でも水は作れるようですわ。後は、食用の魚、でしょうか。見た目が地球の魚じゃないですけど」

「さっき異星のサバイバル、って言ってたもんね。もしそれが本当なんだとしたら、ここは地球じゃない、って、ことになる、よね……」

 

 言っている間にまた不安が増したのか、耳郎の言葉はおぼろげになっていく。そしてゆっくりと歩いてファブリケーターを操作している八百万の後ろに行くと、その背中にギュッと抱きついた。

 

「じ、耳郎さん?」

「ごめん、ヤオモモ……。ちょっとだけこうしてていい?」

 

 そう言う耳郎の手は小さく震えていて。それに気づいた八百万は耳郎の腕を一度解いた後、振り返って正面から耳郎を抱きしめる。

 

「や、ヤオモモ?」

「……耳郎さん」

「……」

「私、とても不安ですわ。突然脱出ポッドの中にいて、突然知らない星にいて、海しかなくて」

「……うん。うちも、不安。多分、みんなも不安、だと思う」

 

 自分たちは、日本の未来を背負うヒーローである、という自負と覚悟が、雄英のヒーロー科の生徒にはある。

 

 だからこそ不安を吐き出すことが出来ない。不安を吐き出すようなヒーローには、誰も頼ることが出来ないから。

 

 けれど。

 

 彼らもまた幼い少年少女だ。吐き出さなければ潰れてしまう。

 

 ピコン、と八百万のPDAにから聞こえた着信音に、2人は抱き合っていた身体を離して端末を覗き込む。

 

「『そして一体ここはどこなんだー! わけわかんないー!』。プッ。三奈らしいね」

「上鳴さんも。『わけわかんないんだけど! えめっちゃ不安てか俺たちどうなんの!?』って」

 

 クラスのムードメーカー2人のメッセージを見た2人は顔を見合わせて。どちらからともなくクスリと笑う。

 

「よし、ウチも!」

「私も書きますわ! とても不安です! って」

 

 それぞれの端末を覗き込むのではなく、八百万のPDAにを2人で覗き込んで、耳郎と八百万は芦戸と上鳴の言葉に同意する文章を送る。

 

 怖い、ということを、みんなで共有しよう。

 

 大丈夫。ここにいるのは、ヒーローを目指す仲間たちだ。誰かが苦しんでいるなら助けてくれるし、解決策が見つからないならみんなで探してくれる。

 

 八百万と耳郎の言葉を皮切りに、他のみんなも思うところを吐き出していく。

 

『ここはどこ!!』

 

 と叫ぶ葉隠や、

 

『海!! 水着!!』

 

 と叫ぶ峰田。

 

 何らかの答えが返ってくるわけではないけれど、それでも吐き出すということは心を軽くしてくれる。

 

 皆で吐き出す時間は一時間以上続き、気がつけばいつの間にか、室内を覆っていた不安は薄れていた。

 

 やがて外も暗くなり眠くなったのか、ポッド内にあったものの情報の共有だけをして、皆それぞれに眠ることにする。

 

「耳郎さん、コスチューム寝づらくはありませんか?」

「ん? そーでもないよ。ヘッドホンとかは外せるしね」

 

 そう言って耳郎は笑うが、八百万はコスチュームを外し始める。

 

「ちょ、ヤオモモ!?」

「毛布を出すだけですわ」

「あ、そっか。個性で……」

「はい。こういうときに使ってこそ、ですから」

 

 そう言った八百万は、毛布を2枚、自分と耳郎の分出す。

 

「床が、水を吸ってくれているようで良かったです」

「そうだね。なんか、結構ハイテク、なのかも、これ」

 

 床が海水で汚れたりベタついているということもなく、八百万の出してくれた大きな毛布に、それぞれコスチュームの上を脱いでインナーだけになった2人は一緒にくるまる。

 

「フフッ」

「どしたの?」

「なにか、お泊りでもしているようで、こんな状態なのに面白くて」

「ふふっ、そうだね。お泊りみたいだ」

 

 互いの体温が不安を掻き消すように感じられる。明るい照明をPDAを操作して常夜灯へと変えて、2人は穏やかに眠りについた。




耳郎と八百万のカップリングの意図はありません! 
本作で今後カップリングが出てくる可能性は高い(これはガッツリした長編ではなく書きたいところだけ、という感じなので、作者の練習に使わせていただきます。)ですが、ここでの耳郎と八百万は、友人として、そして抑えきれない不安を抑えるものを求めてこんな感じになってます!
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