【サブノーティカ×ヒロアカ】二十少年漂流記   作:アママサ二次創作

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目覚めの朝

 翌日の朝。

 

 耳郎が目を覚ますと、すでに八百万は起きてPDAはをなにやら操作していた。あぐらなどではなく正座して背筋を伸ばしているあたりに八百万の育ちの良さを感じる。

 

「ん……ヤオモモ……?」

「おはようございます耳郎さん」

「ん……おはよう……」

 

 寝起きの耳郎は、普段から二度寝を決め込むほど寝起きが悪いわけではないものの、それでも数分はぼんやりとした状態になる。八百万の隣に座り込んでぼんやりとその肩に頭を預けている様子に、八百万は微笑ましげにその様子を見る。

 

「ん……何してるの?」

「起きている皆さんといろいろとお話していました。このような状況ですし、少しでも情報共有をと。他に出来ることも無いですし」

「ああ、そうだね。スマホはあるにはあるけど、ヤオモモは普段紙の本だもんね」

 

 情報共有よりも暇つぶしが出来ないことに反応した耳郎はまだ頭が回っていないのだろう。

 

「……あれ? うちのPDAは?」

「ああ、それならあそこに」

 

 そう言って八百万が指す先には、最初入っていた壁のスペースに戻されているPDAがある。

 

「どうやらあそこに置いておくと充電出来るようなのでとりあえず戻しておきました」

「そっか。ありがと」

 

 そう言う耳郎は目がだいぶ覚めてきた様子だが自分のPDAを取りに行く様子はなく。八百万に断りを入れてそのPDAを一緒に覗き込んだ。

 

「まだ結構みんな寝てるのかな」

「まだ6時前ですから、寝ている方は多いのでは無いでしょうか」

 

 PDAに表示されているトークルームで会話に参加しているのは、飯田と轟、尾白、蛙吹、八百万の5人であり、他に既読が1人ついているが反応が無いので、おそらくは誰かが開きっぱなしにして眠ってしまったのだろう。

 

 会話の内容は、何故こうなったのか、ということについてだ。今後どうするかについては、不和を生まないためにも全員で話し合うべきであるということで、後々相談することにしたらしい。

 

「耳郎さんはここに来る直前何をしていたか覚えてますか?」

 

 起きている面々での会話の内容はちょうどそれで、この場所にいる原因を探るために、何をしていて、あるいは何が起こった結果ここに着たのかを皆で意見を出し合っていた。

 

「何、って……朝起きて……あれ? 起きた後何をしたかな。え? なんで、わからないの……?」

 

 気づいた記憶の不自然さに、耳郎が怯えたように震える。普段はサバサバとした振る舞いをしている耳郎だが、こういうわけの分からない不気味な物事は苦手なのだ。

 

「おそらく記憶の混濁が起きているのですわ」

「記憶の混濁……?」

「私達も今起きているみなさんも、目を覚まして準備をしているところまでは覚えているのですが、そのさきを覚えてないんです」

「みんな同じ、ってこと?」

「はい。そしておそらく────」

「そこで何かがあった」

「おそらくは」

 

 その何かはわからないんですけど、と困ったような表情で八百万は笑う。

 

「そっ、か……」

 

 解決策の見つからない現状に、耳郎の雰囲気がどんよりと暗くなる。昨日は皆で不安を吐き出しあって溜め込むことを防ぐことが出来たが、それでも不安は存在している。ヒーローとして突然の事態でも動揺しないように訓練しているので大きく取り乱すことは無いものの、それはあくまで行動に見せないようにしているだけで現状を何ら改善できているわけではないのだ。

 

「どう、しようか」

「……サバイバル、ですわね。何がどうなっているのかわかりませんが、まずは生きていくしかありませんわ」

「でも……どうやって? 泳いで島を探すとか? それか常闇に飛んでもらうとか」

「……陸地を探すのは、確かに常闇さんが最適ですわ。飛行出来るのは常闇さんだけですし。でも……」

「でも?」

 

 わずかに躊躇った後、八百万は自分の考えを口にする。

 

「異星となると、どんな危険があるかわからないんです」

「それは……そうだけど」

「常闇さんに飛んで探してもらうにして、飛んでいる対象を捕食するような生物がいないとも限りませんし、逆に海が危険であるかもしれません」

 

 八百万の言葉に、耳郎がはっとした表情をする。

 

「そっか。知らない星となるとそうなっちゃう可能性もあるんだ」

 

 ここが異星であるということを耳郎も八百万も疑っていない。そうでなければ、つまりここが地球なら心配する必要はなく、最悪の事態を想定するのがヒーローとして必要な考え方だからだ。

 

「ええ。それとPDAのデータによると、ファブリケーターで様々な道具を作ることが出来るようです。その中にビルダーという建築物を立てるための道具があるようで、海中に部屋を作ることが出来るようですわ」

「海中? 大丈夫なの?」

「PDA内の情報を読んでみたのですが、どうやらこの端末を作った人たち、文明というのが正しいですね。その文明は、私達よりも高い技術力を持っているようです。そのビルダーで作った建築物も、『極限状態下での生活を可能にする』と書かれているので、それを信頼するのであれば大丈夫です」

「でも……怖くない? それに今は、この脱出ポッドがあるし」

「そうですね。あ」

 

 そう言って八百万が、何かを思い出したのかPDAにメッセージを打ち込み始める。

 

「どうしたの?」

「皆さんに毛布や衣服を作ることが出来るとお伝えしておこうと思って」

「あー、そっか。ふふ、じゃあ昨日はウチだけ得したんだ」

 

 ヤオモモと一緒で良かった、と笑ってみせる耳郎に、八百万も笑顔になる。

 

「毛布とかがあるなら、わざわざ家を作らなくても大丈夫じゃない?」

「ある程度快適にはなりますわね。ですが、あまり閉塞的な場所にずっといるのは精神的によろしくないという研究結果もありますわ。だから──」

 

 八百万がそう言っている途中で、八百万のPDAにメッセージが届く。個人メッセージで届いたそれは、爆豪からのものだった。

 

「爆豪?」

「みたいですわ」

「もしかして既読1って爆豪?」

 

 そう言いながら確認したメッセージの内容。

 

『頑丈なロープを大量に用意しろ。脱出ポッド同士で引っ張っても切れないようなやつ』

 

 その内容に、八百万がハッとした表情で立ち上がる。

 

「え、なに?」

「いえ、少し確認を……!」

 

 驚く耳郎を横に、八百万ははしごを登って天井のハッチを開けた。ハッチから顔を出すと同時に、ダン、という足音とともに、飛んできた爆豪が八百万と耳郎の脱出ポッドに着地した。

 

「爆豪さん……!」

「今のところは大丈夫だろ。ちゃんと10個浮かんでる」

 

 説明不足にも思える爆豪の言葉だが、八百万にはそれで十分だった。爆豪の言葉にコクリと頷くと、爆豪を招いて一旦脱出ポッドの中へと引っ込む。

 

「は、爆豪!? なんでいんの!?」

「うるせえ」

 

 コスチューム姿の耳郎に対して、爆豪は籠手や頭の装備などを外していくらか軽装になっている。

 

「さっきのメッセージ、なんなの?」

「……脱出ポッド同士を結んどかねえと、変な方向に流されかねねえ」

 

 耳郎の問いかけに、めんどくさそうにしながらも爆豪は答えた。いつもなら丁寧に対応することは無いのだが、この状況下で余計な不和を生むのがまずいとわかるぐらいには爆豪は大人だった。

 

「それ、やばいよね……?」

「今はまだ大丈夫だ。それにまともに飛んで移動できるのは俺と常闇だけだろうが」

 

 こともなげに応える爆豪に、耳郎はショックを受けた顔をした後、気弱に笑った。

 

「……んだよ」

「え?」

「なんか言いたそうな顔してんだろ」

 

 黙っていても気づいたら鬱陶しんだよちゃんと言え、という爆豪に、耳郎は弱々しく答えた。

 

「爆豪は、ちゃんと考えてるし、色々気づいてるなって」

「あ?」

「うちは何も気づけなかったし、不安で考えてるばっかりなのに、爆豪はしないと行けないこととかちゃんと気づいてて、凄いなって」

 

 うつむく耳郎に、八百万はロープを作りながらも心配そうな表情をする。そんな2人を見た爆豪は、めんどくさそうにため息をついた後話し始めた。

 

「取り乱して発狂してねえだけ十分だろうが」

「え……?」

「普通こんな状態になったら泣きわめくか呆然として何も出来ねえか、とにかく普通の思考は出来ねえんだよ。けどてめえは考えようとできてるし泣きわめいても暴れてもねえ。それで十分だろうが」

 

 まあ、俺の方が考えてるのは確かだけどな、と、慰めているのか自慢しているのかわからないことをつけくわえるあたりが爆豪らしい。

 

 だが、その言葉が耳郎にとってはすくいだった。

 

 不安になっているとき、その劣等感を感じている対象に認められるのは二つの効果をもたらす。

 

 1つは、憐れまれていると感じての嫌悪感。

 

 そしてもう一つは、認められていると感じての肯定感。

 

 今回の耳郎の場合は、爆豪自体ではなく状況によって追い込まれていたこともあって後者の作用をもたらした。

 

「ふん、ウチだってちゃんと考えてるし」

「あ゛?」

 

 にらみ合うようにする2人に、八百万は手を叩いて注目をひいた。

 

「できましたわ。爆豪さん。お願いしてよろしいですか? 結び方は大丈夫ですか?」

「ロープワークは知ってる」

「でしたら大丈夫ですね」

 

 八百万が作ったロープを3人で輪になるように集め、二束程を肩にかけて爆豪ははしごを上っていく。続いて八百万と耳郎が上がると、爆豪はふと八百万を振り返った。

 

「おい、ついでに水着作れるか?」

「水着って、あんた海に入るつもり?」

「水質は問題ねえ。ロープを上の方に結んで引っ張りあったらひっくりかえる可能性があるだろ」

 

 ポッドとポッドをつなぐためのロープを結ぼうとしているのは、ポッドの側面にある梯子だ。その一番下に結ぶためには海に入るしか無い。

 

「はい。ですがそれなら私達も」

「俺の方が泳ぐのはうまいしいざとなったら飛べる。大人しくしてろ」

 

 荒々しく言いおくと、爆豪は八百万の渡した水着を持って自分のポッドに飛んでいった。

 

「耳郎さん……」

「今は爆豪にお願いしておこ。悔しいけど、あいつのほうが得意だろうし。それにPDAの言う通りなら、飲み水とかのためにどうせウチらも泳がないといけないんでしょ?」

「そう、ですわね」

 

 コスチュームを脱いで水着で出てきた爆豪が早速ロープを結び始めているのを見て、耳郎と八百万はロープを輪にしておくためにポッドの中へと戻っていった。




細かく描写したくなって展開的には進んでないです
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