まぁ色々ですねぇ。そんなこんなでお送りします。
再度、またもや、二度目の……一高重鎮たちの前に引っ立てられたシロウは面倒なことだと想うのだった。
「……何で俺は呼び出されたんでしょうか?」
「―――ええとですね、一昨日のカエルが空から落ちてきた現象を知っていますか?」
「ええ、皆さん……校門前に整列して三矢会長も見られてましたね。皆さんが踊っている中の脇を通り過ぎましたのでよく覚えていますよ……何かの儀式だったんですか?」
会長の言葉に、
「「「「「そんなわけあるかぁあああ!!!!!」」」」」
裏部アキや北畑チカなどの剛毅な女子すらも涙目で叫んで、否定してくる。そうしてさらなる『説明』をする。
「カエルは、地域によっては雨乞いの達人ですからね。五穀豊穣の前段階として適切な雨量で水不足を解消しようという試みだと想っていたんですが……まぁ違うというならば、誰かの仕業か、本当にファフロツキーズ現象でしょうよ」
「……恍けるのもいい加減にしてくれないか? キミがやったんだろうが……」
「俺がやったという証拠はあるんですか? 副会長」
「……ないさ。学校に設置してあるサイオンセンサーにもキミが何か強烈な術を発動させたような
悪魔の証明だとは認める副会長。
「だが―――キミがやったんじゃないかと想っている。アリサは、キミを見つけた瞬間に……し、視線を感じたと言っていた。つ、つまり!!! キミがアリサを遠ざけるために、あのような混乱を校門前に起こしたのだと俺は想っている!!!」
苦しげに、まるで口に出すことすら憚られるような調子で吐き出した副会長。十文字に対してそこまで懸想するなら、とっとと告白すればいいのに。
「その前に―――、そもそも何で、この室内にいる面子全員で校門前に立ち塞がっていたんですか? その理由を教えてくれないんですか?」
「―――端的に言えば……キミが持つ鎖の魔法を教えてほしかったんだ。アリサが欲していたしね……」
「上級生そして優秀生総出で劣等生に対してカツアゲですか。クソですね」
カツアゲ……。まぁそうとしか取れない行動だが、どうしてこう……。ヘイトを溜め込ませるのか。相手を逆撫でする言動ばかりを取るシロウには悪感情が発生する。
この魔法科高校で無頼漢のはぐれものであることをそのままに生きていくなど……。
「よかったな十文字。お前さん一人の気儘と自儘のためにお前の義兄殿や上級生の皆さん方は、徒党を組んで一人を取り押さえようとしたそうだぞ。
これからは東京卍會ならぬ一高八卍會とか組織したらどうだ」
あからさまに煽るシロウ……。その言葉に―――アリサは立ち上がる。
「そんなことはどうでもいいわよ」
「あ、アーシャ?」
憤懣やるかたない様子でいた茉莉花ことミーナが驚くほどに、冷たい声を出すアリサことアーシャだが……椅子から立ち上がり―――。
ツカツカとシロウに近づいていくアリサ。
対称的に椅子に座っているシロウ。
「―――そんなことはどうでもいいって……お前のためにお前の兄貴や親友はカツアゲをしようとしているんだぞ。もうちょっと嬉しそうにしろよ。でなければ、何のためにかえるぴょこぴょこ みぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ むぴょこぴょこ―――したんだか分からんぞ?」
達者な早口出来るんだな。と、この時代の魔法師には全く以て意味のない特技が披露されて、それでも少し感心していたのだが……説得しているようで、その煽り文句に取り合わず十文字アリサは――――。
「あの女は誰なのよ!!!!???? エミヤくんの彼女とか、囲われているの!? 色々考えたけど、とにかく明確な関係性を教えてよ!!」
「ぐぇええええ!! く、首をしめるな十文字!!! というか先輩方のお白州に引っ立てて真っ向一番にやるのが、これなのかよ!?」
先程の問答は何でも無いことのようだったが―――。
制服の襟元を掴んで、シロウに詰め寄る十文字アリサの顔。再び接近する両者の距離―――。しかし―――。
「違う―――これはシロウ君じゃない!!!」
「俺、お前に下の名前で呼ばれるほど親しくないと想うけどね……」
いつぞやアーツ部において披露された『影人形』としか言えないものと変り身の術よろしく位置を変えた。衛宮シロウの姿が違う位置に立っていたのだった。
「「「………!!!!」」」
恐るべき手際。どの時点で発動していたかすら分からなかった。影人形としかいえない黒子のようなパペットは徐々に消えていく。
「何で学外のことに関与されなきゃならないのか、分からないが―――面倒だから応えてやるよ。彼女―――ミス・モルガンは、俺の家の同居人だよ」
「……僕らは見ていないが、十文字さんが言うようなそんな美女と同棲しているのかい?」
「イギリスに居た頃からの知人でして、日本まで着いて来るのを拒めなかったので」
詳細なことは言わないが、それだけで関係性は知れた。
だが、これに関してはどんなジャッジを下せばいいのか分からない。
シロウが語る通り学外のことでしか無い。生徒のプライベートに関して、確かに生徒会はどこまで首を突っ込んでいいのか、その判断は難しい。
かつて、司波達也が入学をした95年の4月には、反魔法主義団体と当校生徒が繋がっていたことが契機というわけではなかったが、それでも生徒が勧誘されていた反魔法主義団体の大規模テロによって108名もの『魔法能力喪失者』が生まれ、死者こそ出なかったが、その体を十全に治療されてもなお、様々な日常生活に支障をきたす障害を植え付けられたものは多い。
司波達也の『再成』という未だ持って不透明な魔法が、全てを『直せた』わけではないのだった。
そんなわけで、一高としてもかなり……この手のことに関しては、ナーバスにならざるを得ない。
しかし……。
「まぁ男女のことにアレコレ首を突っ込んで馬に蹴られてなんとやらは、ゴメンだね」
「そうだよね。まぁそこに関してはノータッチで」
「何でですか!? 血の繋がりの無い男女が一つ屋根の下!! 不健全です!!」
三矢会長と歯車会計の言葉に噛み付く十文字。もういい加減にしてほしい気持ちで、シロウは譲歩することにした。
ため息一つ吐いてから側聞するに、この人が適任かという想いで任せることにする。
「歯車先輩『矢車だが』―――失礼、要は、こっちの十文字に俺の『ゴルゴーンの鎖』を教授すればいいんですが……」
結構、ドスの利いた声で言われて一瞬、気圧されたが、すぐに持ち直して、要求を出すことにした。
「メンドクサイので、矢車先輩の方で十文字のCADに、俺の術式を打ち込んでくれませんか? あとはそれなりに見たらば、問題ないでしょ?」
その言葉にざわつきが生まれる。まさか、こんな風な譲歩を見せてくるとは思わず、同時にあの鎖の術式名が判明した瞬間であった。
「いいのかい?」
「但し、金輪際、絶対に、なんであろうと、どのような事情があろうと、どんな手段であろうと『十文字アリサが、衛宮シロウに近づくことを禁ずる』という『ギアススクロール』に署名することを厳命させてください」
用意周到な。と言わんばかりに、そんなもの……何かのチカラが鳴動している羊皮紙を取り出したシロウに対して―――。
アリサが悲しい顔をして、周囲の殆どが、もはやそれしかないか―――と、諦めムードであったところに……。
「いいや、そういうことならば俺は引き受けられない。そして、そのように他者の秘術を得てまでも、風紀委員を続けるつもりでいる十文字も認められない。この話は無しだ」
再び、ざわつきが生まれた。まさか、あの矢車会計がそういった風なことを言ってくるとは思わなかったのである。
「衛宮、キミの心の内はよく分からない。けれどキミにはキミなりに譲れない『線』があるからこそ、そこに無遠慮に入り込む十文字アリサを嫌っている―――そういう認識で構わないか?」
「―――その通りです……」
「十文字―――アリサ後輩としては、衛宮の術、力を理解することで、近づきたいと想っていた。だが、それが衛宮にとっては、あまり『快い』ものではなかった。不躾な金持ち、傲慢な権力者にも見られていた。それは理解しているか?」
「はい……」
矢車侍郎の言葉が後輩2人に響く。とてつもない言葉の矢を放たれて、少しだけ後輩2人は呻く。
そんな後輩に再び言葉をかける。
「そこで、だ……アリサ後輩―――キミが、エミヤシロウと戦え。欲しい物があるというのならば、貫かなければならない物があるならば、時には爪を立てる必要がある。キミを魔法力の優劣だけで、風紀委員にしようとしている裏部とは違って、俺にはその『資質』があるかどうかは分からないからな―――ソレの結果次第だ。でなければ、エミヤの言うような術式のコピーなど承れない」
全員が静まり返る。
だが、そんな中……笑い声が聞こえる。抑えたような笑いは―――。
「え、衛宮くん……?」
衛宮シロウから漏れていた。一頻り笑ったあとには顔をあげて、見たことがない『顔』で矢車を見ながら、口を開く。
「中々に骨のぶっとい所を見せてくれますね矢車先輩。この学校に入ってから初めて面白い人間に出会った気分ですよ」
牙を剥く―――そんな表現が似合うほどに笑みを浮かべる衛宮シロウから目を切らずに矢車侍郎は厳然と言い放つ。
「俺を主に鍛えたのは、当時、俺と同じく2科生だった
「それは?」
「―――成し遂げたいことがあるならば、時にはぶつかり合うことも必要ということだ」
その言葉にはいろいろな意味があった。
だが、ここまで来れば分かった。
こと、此処に至るまで―――十文字アリサは、本当の意味で『衛宮シロウ』を理解していない。知ろうとしていない。
シロウだけが、アリサを理解している風なのだ。その理解とてアリサからすれば半端なもので、アリサは不満を漏らす。
そういう構図なのだった。
「そして、これだけは倫理観から言っておく……あまりヒトを拒絶するな。俺もお前の過去は知らないし、探るなんてこともしたくない―――ただ、自分に興味を持ってくれた女の子を無下にするな。男が廃るぞ」
「その
その言葉のあとに―――その時、初めて衛宮シロウは十文字アリサを本当の意味で『正面』から見たと言えた。
正面から見られたことで、アリサの鼓動が少しだけ早鐘を打つ。
その目を知っているからだ。シロウの目は―――。
(大切なヒトを失った目をしているから……)
自分と同じ目をしていたから、どうしても目を離せないのだ……。
「十文字、お前が俺に何を見ているかは分からないし、知りたくはないが、俺の『原理』は死んだ
その言葉は挑戦状だ。これを受けなければ―――。
「いいわ。私にだって失ってきたものがある。捨てきれなかった矜持・誇りがある。これは十文字の人間としての決意じゃない―――私のマーマ『ダリア・イヴァノヴァ』が、この国に来た覚悟全て―――アナタにぶつける」
―――衛宮シロウとの繋がりは断たれるのだと気付いたから全霊を以て受けるしかなかったのだが……。
そこに嘴を挟むものが出てくる。
「待ってくださいよ! アーシャはヒトを攻撃するようなことが出来ないからこそ、私とペアでの風紀委員登用だったんですよ! 矢車先輩、こんなことで―――」
「危難には俺とて起こってほしくないが、起こってしまった場合。どうしても風紀委員は率先して前に出ることで危難に立ち向かわざるを得ない場面がある。俺は裏部のように『甘くはない』―――いざという時に動けない奴に重責を任せていて、取り返しがつかない事態は避ける」
「「「―――」」」
その言葉。三矢家の
「ず、随分と私の判断に物申してくれるじゃない矢車君」
「魔法能力と実働能力は別だと言っているだけだ。まぁ極まった魔法師ならば何かしらの特異スキルで相手を制圧出来るだろうが、世の中には―――そういった風な『マニュアル』が通じない相手がいることは―――親愛なる我らが同級生諸君は『よくご存知』だろう?」
その言葉に、この場にいる三年全員が目を瞑って思い出したくはないが、思い出さざるを得ないことを苦しい表情で思い出している様子だ。
それを見てから矢車は再び言葉を重ねる。
「勝負の形式は、遠上含めての2対1形式ならば、前回の火狩と同じく、フルコンタクトルール。しかし、1対1のタイマンならば、ノータッチルールでの魔法戦……選択権は衛宮にあるが?」
「ならば前者で、風紀委員としてのスキルを判断するならば、そちらの方がいいでしょう」
「言っとくけど、私は遠慮無しで殴りかかるからね」
「どうぞご自由に」
その素気無い態度で挑発的な茉莉花をいなす様子。
そうして、約2時間後に再び……戦いは始まるのであった―――。
キグナスにおいては部活がメインなのですが、それだと話が進行しづらいんですよね。
一応、時間経過は結構経っているんですが、なかなかに難しい。