魔法科高校の異端者   作:無淵玄白

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ひむてん―――両方買おう。

特に氷室さんの水着がモアセクシー! hollowが出た後、すぐさま氷室ルートをアンソロでも同人でも書いた映一郎の全力を思い知った。

夏コミも買おう!


第十話『蛇猪十闘』

 

 

「はじめっ!」

 

先輩の合図が響き、魔法戦闘が始まる。すぐさま……何かの遠距離攻撃の嵐舞が吹き荒れると予想していた周囲の面子は、肩透かしを食らった。

 

火狩の時のような轍を踏まないように、アーマーを展開した茉莉花は、超速で突っ込んでいく。

 

猪がいない大地を故郷としている少女の『猪突猛進』という言葉が似合うチャージを受けても、シロウはそれに対して後退を選んだ。当然、その距離を詰めようと低く、低く懐に入り込もうとする。

 

バックしながらの滑らかな移動。その歩法は、いっそのこと華麗と称するにたるほどのムーブである。

 

そうしながらも茉莉花から目を切らずに、その目の狙いを即時に判断する。広い武場を縦横無尽に移動する2人の一年。

 

(遠上は何度も攻撃をしているが、リーチを理解されているからか皮一枚程度で躱しを実行されている)

 

手だろうと足だろうと出しているが、それが衛宮シロウに届くことはない。

 

こうなってくるとリアクティブアーマーの使用が重くなってくる。

 

だが、解除した途端に攻勢に出られたならば、溜まったものではない。このアーマーを纏っての攻撃がプレッシャーになるならば、いくらでも持続してやる。

 

その心が茉莉花を前進させていた。

 

そして、この茉莉花を支援するように、効くかどうかは別にしても、攻撃術を放てば最高なのだが……。

 

(まぁ分かっちゃいたことだけどね)

 

裏部アキとしては親友の危難から彼女―――十文字アリサが一皮剥けることを狙っていたのだが。

 

などと考えている内に変化が起こる。

 

「むっ、どうやらようやくガス欠のようだな」

 

「ええ」

 

あの速度で背面走りをしていたことによる疲労からか、段々と茉莉花の攻撃がシロウにヒットしていく。

 

当然ガードの上からなのだが……。

 

そして、それを見たアリサは必殺の好機であると理解して、魔法を打ち出すことにした。

 

任意の場所に『壁』を作り出す。十文字家の魔法―――強固なそれをシロウの背後に作り出すことにした。

 

茉莉花のフルスイングのナックルのタイミングに合わせて、シロウの逃げ場を塞ぐ。その意図で放たれた壁は……。

 

茉莉花も理解していたらしく会心の一撃を繰り出すべく、拳を練り上げる。

 

この一撃で終わらせる。その思いで繰り出した攻撃は―――。

 

横合いから来たナックルによって不発に終わるのであった。

 

倒れ伏す遠上茉莉花という女子アーツ部の新鋭の姿のみが、そこにあった。

 

 

その様子を見届けたものは唖然とする。

 

「強烈なサイドステップで遠上の横に移動。その上で攻撃に集中していた遠上の『顎』(ジョー)に一撃」

 

「十文字が背後に壁を作ると理解していたのか、力を込めているのが筋肉の強張りで悟ったか」

 

更に言えば遠上の攻撃がヒットしていたのは衛宮が若干ながらバック走の速度を落としていたから。

 

誘われた形だ。

 

どちらにせよ。衛宮士郎の能力値は普通ではない。

 

「―――神技再現・愛神羅刹(カーマ・マーラ)

 

そして遠上を倒したあとに狙うのは、当然―――十文字アリサであった。

 

いつぞやの火狩と同様に手を向けて狙われたアリサは、十文字の魔法である多重障壁を展開。

 

球形の障壁たるものを展開しながらも、迫りくる蒼炎の波濤から移動することは忘れない。

 

(位置が良かったわ!)

 

正直、自分がいたのが火狩の時のように壁際だったらば、どうしようもなかったと想うが……。

 

(反撃の一手がないんだよね!!)

 

球形の障壁を生成しながら、その波濤を乗り越えたアリサだが、こと此処に至ってもシロウを攻撃することができない。

 

けれど―――。

 

「動きを阻害するぐらいならば!!!」

 

先程の応用。壁たる障壁をシロウの周囲にいくつも作ることで動きを阻害する。先程は自分のミスで側面にも作らなかった。

 

(今度は失敗しない!!!)

 

「俺をカゴに閉じ込めるつもりか、はたまた『蔵』か」

 

何かを呟くシロウだが―――。その後には球形の障壁を『素手』で壊していく。

 

まるで紙切れでも裂くかのように呆気ないそれの理由は―――。

 

「電気!?」

 

四肢を光らせているチカラであった。

 

「雷を四肢に付与したのか……」

「ねぇアイツ、本当に2科生なの……?」

 

誰もが想う疑問をアキは感心した千種のあとに言ったのだが……。

 

相対するアリサは余裕がない。次から次へとキャストする球形障壁が雷四肢は砕いていくのだ。

 

(なんて………)

 

アリサは現代魔法師として優秀の極み。その発動速度はそれに違わぬ。

 

だがシロウはそれを後の先で砕いていく。手を変え品を変えではないが、角度を変えてシロウを封じ込めようとする球形障壁が手ずから砕かれていく。

 

シロウはそこから動いていない。アリサの壁をミット打ちか、サンドバッグよろしく砕いているだけだ。

 

それはある意味では―――残酷かもしれない持久戦だったが……。

 

(なんて優しいの……)

 

独特の思考回路を持つアリサにとっては、そうではなかった。

 

自分が攻撃術を『ヒト』に向けられないことを知っていたシロウは、不動でその障壁を砕くことでアリサのサイオン切れを狙っていたのだった。

 

その気になれば、その雷手からスパークよろしく放電を放つこともできただろうに、それをしないシロウにそういう念を抱くのであった。

 

(お前が攻撃術を放てないのは理解している。けれど―――これがお前の戦い方なのか?)

 

こんなヤツに俺の母親の■を伝授するのか? お前の覚悟は―――こんなものかよ?

 

言いたいことは理解した。

 

明朗ではないが眼で訴えかけているシロウの言葉を理解して、そして―――起き上がった茉莉花(ミーナ)が、ヘルメットを脱ぎ捨てて、シロウへと殴りかかってきた。

 

背後からの一撃。ソレに対して―――。

 

「行儀が悪い」

 

「あいにく!! レディ(淑女)として育てられてないからね!」

 

いいながらも背後からの攻撃にシロウはたやすく対応してのけた。

 

しかし――――。その攻撃が途中で止まる。

 

リアクティブアーマーを発動させた瞬間、なにかの重圧を感じる。それが茉莉花の身体を動けなくしていた。

 

「ミーナの身体に鎖が!!」

 

「―――ぐっ!!」

 

(恐らくダウンを取ったときに既に衛宮は鎖を遠上に着けていたんだろうな)

 

それが、ここまで露呈しなかったのは、あの鎖がサイオンに反応する形で目に見える形で出現するものだからだ。

 

ミーナを守らなければ。その想いで球形障壁を。となる前に。

 

どういう術理なのかは分からないが、鎖で囚われたミーナをボールでも投げるかのように鎖分銅の要領で、アリサの方に投げだした。

 

彼我の距離20mほどだが……身動き取れないまま放物線を描くようにやってきたミーナを障壁で受け止める。

 

「―――ミーナ……」

 

「カッコ悪い所見せちゃったね。けど大丈夫! もう油断しないよ!!」

 

「ズルい。あの鎖で縛ってもらえるなんて…」

「……」

 

最近、親友であり姉妹とも言える相手との隔意を感じた瞬間だった。あの術が欲しいからアーシャは、あれに縛られたいと想っていたのに……。

 

「顎から頭を揺さぶったのにまだ立つか」

 

「うっさい!! あたしの顎は時には硬すぎる煎餅も噛み砕いてきた原始人の顎よ! ガラスジョーだと思うな!」

 

「いい心がけだが。そんなんで鍛えられるか? まぁいいさ―――俺もそろそろ他の術で仕留めてやろうと思う」

 

ここまででも結構、スゴイ技法ばかりで、正直頭がこんがらがっている中でも……新たなる術を見せてくると言ってきた。

 

相対する距離20m―――遠距離攻撃か、それとも接近しての近接攻撃か……構えを取るシロウ。

 

それは―――。

 

(螳螂拳……か?)

 

中国拳法というものに疎い連中でも、それぐらいは何となく想像がつく構えだ。

 

腰を落として、脚を大きく広げて上半身の向きに対して平行になるようにしている。

 

そして腕は何かを切り裂き砕くように五指を下にして爪牙のようにしてアリサたちに向けていた。

 

だが、この距離では―――あまり意味が―――。

 

(サイオンではないけど―――何かのチカラが高まる……紫色のオーラ……)

 

 

それが明確な像を結んでいき―――アリサの眼に写った時に……。

 

「―――ヘビ!!」

 

「複合神性・万魔神蛇(パンデモニウム)!!」

 

声と共に手の五指が揃えながら突き出されて、それが明確な蛇の姿を投影して、それが身を躍らせながらこちらに突撃してきたのだ。

 

しかもただの蛇ではない。大蛇とかいう規格に収まるか分からぬものだ。

 

魔力で作られた化生体。現代魔法の前では完全にお株を奪われたものだが、それでも再現された『モノ』次第では―――現代魔法師とて恐怖に縛られる。

 

一般的な大陸古式においては『鳥』『犬(狼)』『狐』など……有り体に言えば寒冷化した地球においても、それなりに既知の存在で、その再現された『鳥獣』の身体も小さいものばかり……。

 

大型の―――それこそ『神話』にでも出てきそうな。もしくは寒冷化前にはいくらでも見られた巨大UMAのような……。

 

現実離れしすぎたもの(ファンタスティックビースト)なんてものは、魔法師では再現出来ないのだ。

 

―――なんせ『あり得ない』のだから!!

 

それをあっさり覆すは―――衛宮シロウなる『魔法科高校の劣等生』なのだ。

 

「ッ!!!」

 

顎を開き前衛の茉莉花(ミーナ)を襲おうとした大蛇の攻撃を球形障壁は防ごうとする。

 

しかし―――――。

 

どんな構造をしているのか『顎は一杯に開かれ』―――卵を丸呑みにする蛇よろしく『呑み込まれる』のだった。

 

「痛っ!!」

 

「アーシャ!!」

 

魔法式を『食われた』ことによるフィードバックだろうか……痛みが、アリサの身に奔る。

 

じくじくと痛む。この感覚―――変だ。こんなの……痛くて、誰かが怪我をするところを見るのも嫌なはずだったのに……。

 

「アーシャをやらせない!!」

 

「お前が前に出れば、十文字がガードをするだけだぞ!」

 

再びの蛇拳。距離を詰めるべく接近する茉莉花(ミーナ)を押し返すべく打ち出された大蛇。

 

「ちぇあぁああ!!!」

 

打ち出されたあとも『操作』は出来るらしく、手の動きでサイドワインダーが発生。

 

正面ではなく、横から襲いかかる蛇に茉莉花は苦慮する。

 

視覚的な恐怖とその魔力の圧が桁違いなことは、こちらからも分かる。だがそれにしても精彩を欠いた動きだ。

 

「侍郎くん、なんか遠上さん。動き鈍くないかな?」

 

「まぁね……。多分だが遠上君の『弱点』を突いているんだろう」

 

「分かるのか矢車?」

 

「遠上さんの身長を考えれば分かる。何回かアーツ部の見たけど、彼女は低身長だからね。あのスタイルの戦闘だと……上下の反応はいいんだけど左右の反応が遅れる」

 

アーツ部にも、アウトファイトをする人間がいないわけではない。しかし、インファイトで真正面から向かってくる遠上茉莉花の姿勢に呼応するように、組み合うことが多い。ようは……打ち合ってみたくなるのだ。

 

「……失態だよ。正面からの戦闘だけではないことを教えておくべきだった」

 

「だが、この姿勢が、相手の懐に果敢に飛び込むというファイトスタイルが、北海道チャンピオンたらしめたならば、間違いでもないだろう」

 

北畑千佳の言葉にそうフォローを入れるも見えてくる絵は、茉莉花にとってかなり旗色が悪い。

 

ロングパンチにしてロングフックに戸惑うインファイターの絵面だ。更には下と見せかけて上に上昇。

手の動きに連動しているとはいえ、ソレ以上に機敏に動く蛇の襲撃は、巧みに茉莉花の前進を阻む。

 

「―――ッ、遠上!! お前は前に出るしか無いんだよ!! 蛇の正体は置いて! 被弾覚悟で飛び込まんかい!!」

 

「お、おい! 千佳!!」

 

流石に見かねたのかリング外のセコンドよろしく女子アーツ部の部長が声を掛ける。

 

男子部長たる千種の制止に構わず、次に声を掛けるのはパートナーたる十文字アリサ。

 

「そしてじゅう―――えええ!?」

 

「「「「「―――アリサが」」」」」

 

「「「「「走った―――!!」」」」」

 

北畑が声を掛けるよりも先に、走り出した十文字アリサ。そして、壁を打ち出していく。

 

それは攻撃というよりも、相手を拘束するようなものであったが、それでも壁で圧迫させんとする勢いであり、それを走りながら打ち出しているのだ。

 

かつて一高のOBにして、彼女の兄である男よりもスマートではないし、『不動』『鉄壁』というほどではないが、その片鱗を見せるものだった。

 

(これが―――ワタシの戦い方なのよ!!!)

 

「なるほど」

 

自分の必死な形相からなのか得心した声がシロウから出てくる。

茉莉花を攻撃していた蛇拳を戻しながら―――。

 

「いいだろうさ。お前の望み通りにしてやるよ―――……偶像愛神の抱擁牢(カレス・オブ・ザ・メドゥーサ)

 

その言葉のあとに向けられた指から鎖が投射される。

 

「ただでは縛られない!! 私の障壁で凌いで!!!」

 

「接近したところでお前さんに暴力的な素養があるのかね」

 

 

投射される鎖は十重二十重にアリサの周囲を槍衾よろしく塞いでいく。障壁ごとこちらを縛り付けようとする様子。

 

「ぐっ!!」

 

「展開した障壁が圧迫する。解除するしか、お前が助かる方法はないぞ」

 

「殻にこもっていればいいってこと!?」

 

「―――鳥は卵から無理に出ようとする。卵は世界だ。生まれようとするものは、ひとつの世界を破壊せねばならぬ―――お前の障壁は、お前の心の容積(カタチ)さ」

 

円形でもなく、四角でもなく……三角でも、星型でもない―――アリサの障壁は、その魂のカタチすら表していたのだった。

 

シロウにクラウド・ボール部での自分の試合の様子を見せた時(強制)にそんなことを言われたことを思い出して、そして―――。

 

 

「おおおおおっ!!!!!」

 

その障壁を囮にして、そこから脱する。それはまさしく居心地のよい殻から出て世界へと飛翔するような様だ。

 

そこにいれば安全である確証など無い。

 

ならば……。

 

「ばっ!!!」

 

「―――空への糸を掴み取ることで、進むだけなのよ!!」

 

「ば、バカも極まったな! お前の手は、クラウドで使うべきものだろうが!!」

 

流石のシロウも驚く行為。打ち出した鎖、未だに進んでいくそれを手で掴んだ。

 

ハンガー式ロープリフトに掴まるのとは、結果が違いすぎる行為。手がボロボロになるのは当然だ。

 

メデューサの鎖は……そういうものなのだから!!

 

そして――――――。

 

その鎖を介して、アリサに何かが流れ込んだ。

 

それは遠い記憶……断片的ながらも悲しい記憶。

 

それは―――■■シロウという少年が衛宮シロウにならざるを得なくなった―――。

 

その時……ブザーが鳴り響いた。

 

試合終了………しかし、アリサは鎖を手放さず、同時にシロウもその鎖を戻すことはなかった。

 

 

「シロウ君……」

 

「矢車先輩、十文字のCADへの転写お願いします。―――俺の過去をあまり探るな十文字」

 

そっ、と優しくという表現が似合うのか、アリサの手の中から抜き去られる鎖。

 

正面から眼を向け合う2人。その姿を見て―――元老院筋の間者たる誘酔は『マズイな』と感じた。

 

何がマズイかは明確には分からないが、それでもマズイものを感じつつも……入学初月たる四月は終わろうとしていた……。

 

 

 

 






今作および他作品とも全く関係ないのですが、違うジャンルの魔法科小説を投稿しようと思っております。

昔はよく、これらと型月のクロスを読んでいたが―――何はともあれ、気付いて読んでいただけたらば幸いです。
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