魔法科高校の異端者   作:無淵玄白

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難産の限りであった。

この後の三高との対抗戦、クラウド・ボールというよりも魔法大学に向かうことに繋げるための話でしたが……まぁ読んでいただければ幸いです。


第十五話『異端開帳』

 

 

「仙石の彼氏(オトコ)がどーとかハッキリ言って興味ないんだけど」

 

「け、けども唐橘くんってD組だから、なんというか―――嫉妬とかしないの?」

 

「火狩だったらばそうなんだろうけど。お前がどうこうしようが俺には更に興味がない。学内の人気者たるお前と一緒にいることで、俺はアレコレ面倒なことになる」

 

シロウとしては十文字と仲は良くない。一方的に絡まれているだけだとしても、多くの人間……特に男子は妙な想像をして嫌悪を向けてくる。

 

やっかみの類ではあるとして無視しているのだが、劣等生であるシロウを好ましく想っていない人間は多いのだ。

 

よって、いろいろな意味でやっかみではあるのだ。

 

もっとも『実戦能力』においては、昏睡状態(?)の某OBと同じくスゴイものがあるとはどこからか伝わったらしく、そういった『シメてやろう』とかマウントを取るようなことは無かったのだ。

 

アーツ部の千種先輩を手のひら1つでダウンさせ、1年次席の火狩を倒して、十の系譜たる『ふたりはアリマリ』をも圧倒するその実力は口の軽い誰かが広めていったことなのだろう。

 

そんなこんなで帰宅の途に着いていたシロウに着いてくる十文字アリサ―――今日は部活は休みのようだ。反対に遠上はどうやら部活、何だか知らないが気合いを入れている様子だ。

 

待ってなくていいのかとは問いかけたが、どうやらいいらしい。その理由は分からんが……などと話しながら、どうせ個別電車の乗り口までだとして、十文字お嬢様(悪役)のお話相手をやっていたわけだが、その途上で……。

 

「十文字さん、衛宮君」

 

少し話題に出した山岳部の火狩がやってきたことで、これはチャンスだなと思いながら十文字から離脱をする機会を伺う。

 

火狩と話をすることなく、おさらばでございますするには、前回の誘酔2年生とのアレのごとく―――。

 

「それじゃ見学させてもらうわ」

「どんな話が火狩とまとまったのかは知らないが、俺は無関係だろ。HANARERO!」

 

シロウの腕にがっしり組ませてくる十文字に対して、抗議するも本当に無理やり引っこ抜けば色々と嫌なことになりそうな所で組み付いてきたのだ。

 

「じゃ、じゃあ案内するよ。こっちに来て」

 

山岳部のイケメンマギクスは少し戸惑いながらも、何処かに連れて行くらしい。

 

察するに十文字の前でカッコつけたかったようだが、おジャマ・レッド(☆2の通常モンスター)が場に出されてこんな形になったようだ。

 

道中聞いた限りでは山岳部はボルダリングよりも本格的なクライミングをするための練習施設があるらしく、そこでの練習を見せるとのこと。

 

興味がなさすぎるシロウだが、案内された「穴」は10mほどの深さ、直径は3mという塩梅で校舎内の一角に作られていたのだった。

 

(蓋はあるんだろうけど、何だか不用心な限り)

 

演習林という多目的に使える場所にて、そんなものがある事実。まぁそれはともかくとして、それを一応は命綱ありで、壁にせり出した「岩場」を手がかり足がかりに底から登っていく様子。

 

登攀としてはなかなかにいいかもしれないが……。

 

(まぁ、あえて言う必要もあるまい)

 

十文字も門外漢ながら褒めてるみたいだし、特に場を冷やす発言をする必要もない。要は、火狩次第なのだ。

 

……ちなみに、腕と腕を絡ませた状態は継続中。解せぬ。

火狩を褒める時ぐらいは、男を挟むなと言いたい。

 

「ちなみに衛宮くんは何か分かったことはあるかい?」

 

「門外漢だから何も分かりません」

 

「ならば……思ったことを言ってくれないか?」

 

「意味がわからないな」

 

「少しだけ見ていたが、どうにも俺の練習を無駄なことだと言わんばかりの視線だったもんでな」

 

成程、学年次席は伊達ではないということか。と思いつつも、表情をコントロールしきれなかったのは失態だなと自戒しつつ思った所を言っておく。

 

「まぁ最初の内、1年がやる分にはいいんじゃない。ただ、人間なんでも「慣れ」というものが恐ろしいんだ。登攀するには難儀する箇所があるとはいえ、直径が3mほどの円筒の壁ってことは、ある程度はルートを覚えてしまう可能性がある―――それを現実の山登りと連動させると不味いということさ」

 

フリークライミングで言うならば既に先導しているものが設定した整備ルートであろう。

 

「――――――――」

 

「おい。想定していなかったわけじゃないだろ? こんなもの、底の浅い外部からの意見だと言ってくれ」

 

人工壁にだけ慣れた所で、それが現実の岩山と同じ質感であろうと、危険とは隣り合わせなのだからことごとく慣れとは恐ろしいものだ。

 

「ああ……いや、よく考えてみればそうだよな…」

「まぁ、ここだけとは限らんしな。あんまり真に受けんなよ」

「実を言うとこれを設定した2年前の部長さんは当初、これをある程度変化に富んだものにしたかったそうなんだが……」

 

戸惑い気味の火狩曰く、結局の所……色々あってそれらは無くなった。

魔法を利用して曜日ごとに変化に富んだ「壁」にしたかったらしいが、技術協力などに頼りにしていた司波達也に降り掛かった不幸な事故で、それらが出来なかったようだ。

 

「西城っていう先輩も今はレスキュー隊員養成の訓練校にいるけど……あんまり学校に来てくれないそうだ」

 

「ふぅん」

 

別にどうでもいい話―――というほどではないが、それでも一大決戦の後に、あの大男が、そのような進路を取ったとは。

 

蛇足的な情報を耳に入れつつ、もう帰りたい想いでいたというのに。

 

「衛宮君もやらないかい?」

「ラペリングだというのならば、やんない」

「それじゃ、私が下に行ってるから迎えに来て」

 

なんでそうなるんだよと罵ってやりたい気持ちを抑えながら10mもの底へと『ぴょん』と向かう十文字アリサに頭を痛めつつ、縋るような視線を向ける火狩に更に頭を痛める。

 

「あの女のCADには飛行術式ぐらいあるだろ。暫く山村貞子でもやっていりゃいいんだ」

 

「なんて無情なことを言うんだ……ただね。僕ら山岳部の男子部員たちの練習の邪魔だし、何より下心がある部員も多くて」

 

「そしてお前が助けに行ってもやっかまれるからどうなんだということか」

 

山岳部の先輩、同級生たち―――全男子部員たちが、シロウの視線に顔を背けた。

 

「理解が早くて何よりだよ」

「ぶっちゃけお前が付き合ってしまえばいいだけだと思うな。俺は小陽の方がタイプの女の子だし」

 

不意に出てきた人物名に気付かされたように、火狩は勢いよく聞いてくる。

 

「な、なんだって!? まさか最近、アイツが付き合い悪くなったのって!!」

 

どうやら存外、鈍くはないようだ。とはいえ親しい女の子の動向をチェックしているとか……意外とあのホクザンの令嬢と同じく家絡みでの付き合いなのかもしれない。

 

「―――『ジョーイは、いつまでも免許取らないから、正直こうしてツーリング相手……同年齢の男子とツーリングデート出来るっていうのは嬉しいんですよね』―――とのことだ」

 

ともあれ証拠というわけではない。しかし、火狩への嘆きを記録した映像。

端末にいつぞやのライダースーツ姿で語る永臣小陽を録画したものを火狩に見せると、何だか物凄く悔しそうな顔をするのだった。

 

まぁ幼馴染が別の男とどっか出かけたとか、疎遠にでもなっていない限り、何か『くるもの』はあるのだろう。先の想像も当たっているかもしれないが。

 

「衛宮士郎……!!!」

「フルネームで呼ぶなよ。因縁のライバルみたいでキモいだろ」

 

歯を噛み締めながらこちらの名前を言う火狩にすげなく返す。

 

「俺はお前を許さない!!」

「誰も謝ってなどいない」

『『『『俺たちだって許さん!!』』』』

「謝ってないと言っている!!」

 

火狩に同調するように山岳部の男子部員全員が叫ぶ。意外とあのメカニカルガールは、ここにいる山ボーイ(笑)たちのアイドル(推しの子)だったのかもしれない。

 

完全に趣味が真逆だと思うのだが。その辺りはツッコまずにおく。

 

「ちなみに言えば、『サイドカー付けて火狩をツーリングに誘えばいいんじゃない?』とは言っておいたよ」

 

動画の続きを見せて火狩の怒気を鎮火させることに成功する。

もっともその続きでは……。

 

『ジョーイはカッコつけのカッコマンですから、そんなことしないと思うなー』

 

などと辛辣なことを言っていたりするのだが、それはともかく10mもの穴の底を目指して、衛宮士郎は舞い降りる。 質量操作と気流制御の二重呪法による自律落下。

熟練の魔術師であれば苦もなくこなす芸当であり、むしろその練度を問うならば、優美さの度合いによって格付けが決まるところだ……。

 

しかし、この世界では特に何の意味もなかったりするかくし芸であった。

 

「ーーー随分と遅かったわね」

「勝手に飛び込んで、勝手に助けを待つとかどんだけなんだよ」

 

膨れた面を見せる十文字を抱きかかえて岩の取っ掛かりに手をやる。

 

「腕、しっかり首に回してろよ」

「う、うん!!」

 

いきなり男に抱きかかえられて、色々と緊張しているのかもしれないが、それでもこんな荒行をやらされた以上は、少しは火狩たち山岳部にも変化をつけてやるかと想いつつ、修行の時を思い出すのだった。

 

3分後……ひと1人……女子としては長身であり、その分体重もそれなりにあるだろうハーフの少女を抱きかかえながら1人の男子が岩壁を登り切るのだった。

 

「当然、術は使った」

「―――フリークライミングのプロでもそんなこと出来ないんだが、君は片手と両足のみで……十文字さんを抱えながら登った―――……信じられないよ」

「だから術を使ったと言っているだろうが」

 

その様子を見た全員が驚かざるを得ない。

ボルダリングやリードクライミングなどの『道具』を殆ど用いない登攀よりもとんでもないことをやったのだから……。

 

身体強化(フィジカルエンチャント)肉体制御(マッスルコントロール)。そんな所だ」

 

「前半はともかく後半は、聞いたことがない術式だわ」

 

「そりゃ適当な名前だからな」

 

詳細は明らかに出来るわけがないので、そこで話は終わるのだが……ここでのことを嗅ぎつけた遠上がいきなり後ろから殴りかかってくるわ。

バイクに乗って『シロウくん大丈夫!?』などと小陽が山林に仮面ライダー1号(本郷猛)のように入ってくるわ、騒ぎを聞きつけた風紀委員長や部活連会頭がやってくるわ。

 

そんな塩梅になりつつも、シロウは何とかその場を脱することが出来たのだが……。

 

この事―――エミヤシロウなる男の異常性が誰か……魔法師界の重鎮の耳目に入ることは間違いなかった。

 

それはシロウにとって好ましからざる結果をもたらすことになるのは間違いないも、司波達也に接触をする上では好材料で悩ましいことになるのであった……。

 

 

 

 

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