魔法科高校の異端者   作:無淵玄白

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大晦日が近い。

きっとあれだな。来年は巴里オリンピックだし。月姫~遠野家編~

いわゆる月の裏側を発売してくれるという特報が来るはず!(必死)

ただ……さっちんルートが含まれるかどうかが分かれ目

などと期待しつつ新話お送りします


第二三話『梅雨恋愛』

 

 

6月―――梅雨の季節に移ったこの時期には既に魔法科高校は、九校戦へ向けてあれこれ準備をするのが常であり、練習相手として出場選手以外も駆り出されるらしい。

 

―――そんな熱気を持った学校とは全く無関係なイタリアンレストランである『コペンハーゲン』の厨房は違う熱気に籠もっていた。

 

大型店ではない小さめのレストランではあるが、雨を避けるためにやってきたお客は軽食を求めるのだ。

 

「シロウくん! ペスカトーラ3つ! 大丈夫!?」

 

「ベーネ」

 

ユイのオーダーを貰う前から実を言えば既にペスカトーラの準備はできていた。それが3つともなれば……。

 

容易い―――。

 

いつでもここの熱気は自分を温めてくれる。そして、ここには……ヒトの暖かさがあるのだから。

 

コペンハーゲンの学生シェフは今日も鍋を振るうのだった。

 

 

学生のバイト時間というのは、今でも厳しい制限が掛けられている。大学生ぐらいになれば成人扱いだから違うが、ユイとシロウは高校生なわけで早めに上がらざるを得ない。

 

「「おつかれさまでーす」」

「お疲れー」

 

これから『酒場』へと移行するための準備をしているネコさんに2人して挨拶しながら店を出ることに。

 

「にしても今日も忙しかったね」

「コペンハーゲンは前から人気店だったからな」

 

だが何となく理由は分かる。それは可愛いウェイトレスさんがいれば寄りたくなってしまうのが男女問わずの欲求というものかもしれない。

 

傘をお互いに差しながら個別電車(キャビネット)のターミナルまで向かう。その間に色々と話をする。

 

特にユイは芸能事務所に通うれっきとしたタレントの卵らしく、CGドール 泰平天下の軍学少女『ユイ・ショウセツちゃん』というものを演じているとのこと。

 

そんなことばらしていいのか? と思いながらも無駄話は続く。

 

ウチ(ラ・フォン)のOGには雪兎ヒメを演じていたヒトもいるからね。なんでも魔法大学付属のOBでレスキュー隊員を目指しているヒトと付き合っているとかなんとか」

 

「はー、世の中狭いな。まぁ多分何となく分かるな。そのOBは」

 

知り合いではない。ただ知っている顔であると同時に、火狩の部活のOBだと気付けた。

 

「シロウくんもラ・フォンの子と付き合ってみたいとかないの?」

「紹介してくれるの?」

「眼の前にもいるんだけどっ」

 

ロングの銀髪に水色の目をした女子の少し怒り気味の顔はCGドール『ショウセツちゃん』とは少々毛色が違ったりするのだった。

 

自分など眼中にないのか?という話の飛び方には流石に思うところがあるのだろう。

 

「いや、付き合えたらそれはそれで悪くないかも知れないけどさ。ラ・フォンティーヌ・ド・ムーサ女学院は芸能関係者御用達の学校。いっときの感情で突っ走るのは不味くない?」

 

アイドルたちがクリスマスに一斉に体調不良になったり、別れた彼氏からリベンジポルノされたり、まぁいろいろだ。

 

「まぁそれはそーだけど……キャリアとライフーーー天秤に乗せるには重すぎるか」

 

「本当、『ショウセツちゃん』とはキャラが違うよな」

 

「そういう同士たちの前で見せる『顔』を私は作っているのだ」

 

いきなり烈士のような口調と顔で言うユイに完璧で嘘つきな君は天才的なアイドル様などと思ったりするのだった。

 

「それじゃね」

「ああ、またな」

 

いつもどおりの別れ。そうして、日々は過ぎていく。同時に探りは続行中でありこの都内に司波達也の身柄はあることは分かりつつある。

 

(虱潰しに病院ないしメディカルを探るのは不味いな。もう少し絞り込めればいいのだがな)

 

雨降りの都内に思う。あの時も雨ではないが水が降りしきるばかりだった。

 

別に特別恨みがあったわけではない。だが、あれを自由にさせてはいけないという使命感があったのは間違いない。

 

(生命のリスクを取れない臆病者が開くべき門扉なんてのは無いんだよ)

 

そうして1人。孤独な戦いを続ける砦なきものは歩き続けるのだった。

 

 

翌日、昨日までの雨などどこ吹く風で晴れ上がった天気を前にシロウは、いつもどおり放課後のアルバイトに向かおうとした時。

 

「衛宮くん。ちょっといいかしら?」

「全然良くないので、すみません」

「時間は取らせないから」

「そういう問題じゃないので進みます」

「ちょっとは待ちなさいよ!! 私は話があるってのにそれを聞こうともしないっての!?」

「そのように声を荒げるとは、あんまり気分が良くない話でしょうねー。誰だか知らない顔だし」

 

友好的とは言い難い顔と言葉と声を上げる女子生徒。恐らく先輩だろうヒトは、自分の前に立ち塞がろうとするがーーー。

 

武芸の心得もない。自己加速魔法による慣れもないだろう相手を躱すことなど別に容易かった。

 

そうして上手く躱したあとには……廊下を歩き遠く離れていくシロウを見るだけだったのだが、ナメられたことで切れて自己加速魔法を発動させて、更に掴みかかろうとした先輩だったが……。

 

「風紀委員です!! シロウくんに何をやろうとしているんですか!? 松崎先輩!!」

「じゅ、十文字さん……!?」

 

風紀委員の巡回ということで見つかるのであった。

 

そう言えば風紀委員だったなと思いながらも、結局の所ーーー抵抗しても無駄だと思ったのか十文字曰くの松崎という女子の先輩はさしたる抵抗もせずに相方である遠上が主導するもと、お縄につくのだった。

 

 

その後、風紀委員の詰め所にしょっ引かれる松崎を見送ってシロウは帰ろうかと思ったのだが、調書を作るために来いと言われて引っ張られることにーーー

 

結局、彼女は魔法の不正使用など諸々あって一週間の停学処分に処されることになるのだった。

 

 

その翌日、昼食時にカーストがクソ高い連中の集まりに『無理やり入り込まされた』シロウは、1人孤独な食事を静かに取ることができなくなったのだ。

 

特に聞きたくもない松崎 秋湖なる2年生の先輩の事情が話される。彼女はシロウに接触する数日前に十文字アリサの方にも接触をしていたらしい。

 

その目的は『火狩 浄偉』という後輩と十文字アリサが付き合っているのかどうかという確認だった。

 

それに対して『絶対にノゥ!!!』と否定しきった十文字ではあるが、それを信じきれる根拠として。

 

『自分が気になっている男子は衛宮士郎くんです』

 

などと宣ったらしい。完全にとばっちりである。

 

それを2人が入った空き教室の扉で耳をそばだてていた遠上は半狂乱になりそうになったりしたそうだが、十文字の言葉を疑ってかかったのが松崎秋湖だったということだ。

 

数日間の内にアレコレありつつも、最後に松崎はシロウに「確認」を取ろうとして躱されて……ああいう顛末になったということである。

 

 

ここまでを傍から聞いていて、シロウが思ったことは……。

 

「火狩が一発『シードホース』にでもなればいいと思うが」

 

その言葉を聞いて意味を盛大に理解した人間の大半が食っているものを逆流しそうになったが、一部の面子は何事もなくそれを聞き流し食事を普通にしている辺り何となく差はあるようだ。

 

「あはー。つまりカガリインパクトってことですね。現役時代から種牡馬生活を満喫するとは、このどエロめ!」

 

「ああ、一発4000万円の男ということだ」

 

「いやいや! それはジョーイを高く見積もりすぎですよ!うーん……3万円ぐらいでよろしいかと」

 

「やめんかいっ!! 小陽もそんな悪ノリしないでくれよぅ!!」

 

シロウと小陽の『ツーカー』なやり取りに流石の小陽の幼なじみで話題の中心人物である火狩も抑えが利かなくなるのだ。

どちらかと言えば自分以外の男と下ネタ混じりの軽口を叩く幼なじみの姿なんて見たくなかった……というのが大きかったりする。

 

「これでも真面目に考えたんですけどね」

 

「一発3万円がかよ!? ああ、いやそれはともかくとしてあんまり食事時にそういう下品な発言をするな!!」

 

「―――だが、事態に対する積極的な解決策であることも間違いないんだが」

 

幼なじみ同士のやり取りに対して冷水ではないが、士郎の考えの奥底にあるものを言おうと思うのだった。

 

「十文字と火狩の恋愛模様だか何だかはまぁ置いておく。んでもって十文字がクラウドの保田先輩から聞いたことと世相のアレコレ、そして松崎という先輩の現況からして推測したんだが」

 

「どういうことよ?」

 

五十里がシロウの作ったコシャリをぱくつきながら問うてくる。

 

「確かに火狩はいい男なのかもしれない。だが、松崎氏あるいは『松崎家』が狙っているのは火狩の遺伝情報が詰まったものであろうってことさ」

 

「―――つまり……僕は松崎先輩からすればシードホースでしかないということなのか……」

 

顔も声も知らない女子の先輩とはいえ、ここまでの騒ぎをおこすぐらいに、自分を男として見ていると思っていたのに……ショックを受ける火狩 浄偉である。

 

「当人の男の趣味までは分からんがな。だが結局の所、本当の意味で将来性溢れる男にコナかけたいっていうんならば、別にそれは『魔法師』に限らなくってもいいはずだ。大学―――魔法大学に関わらずそれなりに偏差値の高いところに行けば、また別の『将来性』がある男がいるはずだが」

 

その言葉に数日前の保田の『説明』と自分の中にある魔法師の『常識』だけに囚われていたアリサは目を見開かれる。

 

「じゃあ……シロウくんの推測だとして火狩君を種馬・種牛としか見ていない理由ってのは……」

 

「目的は『子供』。カガリインパクトという優秀な魔法素質の父親を持った我が子(マイチャイルド)なんだろ?」

 

一応、自分と火狩がそれなりに気を遣って直截な表現を避けていたのにあっさり『たねうま』『たねうし』という表現を使う十文字。

 

これが道産子の心意気、ゴール〇ンカムイ、銀〇匙、〇姓貴族なのかもしれないが……話を進める。

 

「現役時代は有名なアスリートだった親にありがちな自分では叶えられなかった夢を託す。あるいは自分の魔法師としての限界ゆえに生まれる子供が辛い立場に追いやられるぐらいならば、せめて生まれる我が子には素質ある父親からの遺伝子を与えてやりたいとか、色々とパターンは考えられるわな」

 

「言われてみれば確かにそうかも……高レベルの魔法師の卵を狙うってのは高収入・高待遇ってだけでないのか」

 

「そもそも今後、火狩がどうなっていくのかすら不透明だ。先程の例で言えば高校・大学ではブイブイいわせていたプレーヤーがプロリーグではパッとしないなんてことはざらだしな」

 

保田の考えを十文字と同じく聞かされていたのか仙石が納得したように呟く。

 

「けどもそれは子供を愛しているのではなくて、子供の才能を愛しているわけだ。ろくでもない考えだよ。おまけに狙い通りに遺伝するかどうかすら不透明だ」

 

「まぁそうだよね……魔法師の遺伝情報ってのは、やはり両親が魔法師だと絶対にそうなるのかな?」

 

「それもどうだか。高い確率ではあるけど均一じゃないと思うわ。……あの司波達也様ですら素の魔法力・魔法技能という意味では妹さんには叶わなかったんだから」

 

五十里の知った話は疑問を発した唐橘役にとって「?」マークが頭に浮かぶものだったわけで、話を振ったシロウとしては彼にフォローを入れなければならない。

 

「五十里、唐橘君はお前のよく知る『有名人』の司波兄妹に詳しくないからもう少し詳しい説明したれや」

「あ、あなたに言われなくてもするつもりだったわよ!!」

 

嘘つくんじゃない。と言いたい顔である。今年度から魔法師……有り体に言えば魔道へと進んだ彼は魔法世界の世俗に詳しくないのだ。

 

ある意味、マグルと生活していた『Harry Potter』みたいなものなのだから。

五十里や他の連中(ウィーズリー家)からすれば『一般常識』なことでも彼にとっては違うのだから。

 

そこで小休止的に五十里に話のボールを預けつつ、シロウはランチを楽しむ。

五十里曰く司波深雪は現代魔法師として最優秀な能力値であって司波達也は技術者として超優秀―――されどフォーマルな魔法能力では最劣等な能力値だとか何とか。

 

「逆に北山雫っていう先輩もいるんだけど、このヒトは―――」

 

五十里曰く、北山雫の両親は母親が魔法師で父親が一般のヒト。とはいえその父親は財閥の社長らしくそっち方面でも有名であった。

 

「ただこのヒトには弟さんがいるんだけど……先程の衛宮くんの説明に言わせれば……」

「遺伝しなかったヒトなんだ」

 

当人がそのこと(非魔法師である)をどう思っているのかは分からない。ただ巷間の噂として姉がホクザンの経営者業務を引き継ぎつつあるとの話もある。

 

別に決して女だからと後継者にはなれないなどとは言わないが、せめて上に姉がいれども『長男』がいるのならばそちらに継がせればいいのにと思う。

 

何も渡されていない長男がどう考えるのか、少しだけ考えてしまう。

 

「まぁ結局の所、どうなんだか分かんないな。松崎さんが本気で打算も何もなしに火狩に惚れ込んだというのならば保田先輩の考えは下衆の勘繰りだし、打算で火狩の将来と『sperm』だけが目的だとしても別に火狩次第だしな―――」

 

「で、衛宮君がまとめると?」

 

「―――火狩が十文字を『視姦』しなければこんなことにはならなかった」

 

松崎氏が十文字に絡んだ原因。

 

火狩と男女の仲であると勘違いさせたのはA組教室で火狩が十文字に熱い視線を送っていたことが原因だったのだから、それしかない。

 

「言い方ァ!!」

 

対して色々な感情を込めて食堂の机に拳を叩きつけんばかりに俯きながら叫ぶ火狩。

十文字に促されてシロウがまとめたことは火狩を除けば満場一致なのだった。

 

「……ちなみに聞くんだけど、何でアンタはそういう風なことに詳しいのよ?」

 

「そういう風なことってのは何だよ? 遠上」

 

「魔法師同士の婚姻というか遺伝とか……」

 

不機嫌そうな遠上。どういうことなのかは分からない。

 

最近になってようやく十師族関連のこととかを理解して『仕事』をしていた頃はあんまり理解していなかったこと……日本の魔法師社会の通り一遍を理解した『つもり』でいるシロウにもまだわからないこともあるようだ。

 

「あっ、シロウくん。ミーナは家の事情で魔法にあんまり深く関わることを禁じられていたから―――理解してっ!!」

 

「します。するから腕にしがみつくなっ!! 俺の作ったコシャリが五十里と仙石に食い尽くされる!」

 

「火狩君に視姦されるから守って!!」

 

守り、防御、守護のイメージである十文字家のご息女を守るとはこれ如何に、と面倒くさい思いをしながらも、遠上を納得させるために秘密の暴露……身の上話ともいえる『事情』を説明することに。

 

「先程あげた優性遺伝の考え―――これらを元に俺のお袋は、没落しつつある魔j―――魔法家の家に『胎盤』としての用途だけで出されたヒトだったんだよ」

 

「えっ……?」

 

思わずアリサも呆けたような声を出さざるを得ないほどに、ヘビーな話題がシロウの口から出てくるのだった。

 

「要は……ある種、我が事(私事)だからこそ、理解が深いんだよ」

 

……少しだけ衛宮士郎の過去が明かされる。

 

 

 

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