とりあえず冒険最新刊はゲット。はやく読まねばと思いながら新話お送りします
とある儀式を遂行するべく、3つの魔道の家が一つどころに集まった。
そして、その儀式を遂行していく家にも一つの欠陥が出てきた。
それは次代の家の魔道を受け継ぐべきものたちに芽が無くなりつつあったのだ。
「土地の相性が悪かったんだろうな。とはいえ、その家は諦めなかった。引っ越せばなんとでもなろうものだが、まぁその土地に固執して……最後には3家のうちでも健常な人間―――その家では男子だけが後継だったからか、何なのか。まぁともかく俺のお袋は衰退しつつある家に『胎盤』としての機能だけを目的に『養子』に出されたのさ」
その事実、あまりにも遠すぎる現実に誰もが言葉を失う。
「結果としてだが、そうはならなかった。色々あってお袋は養子先の家の妄執から開放され、俺の親父と一緒になったそうだ。おしマイケル」
色々とすっ飛ばしすぎな終幕に、それを耳に入れていた全員がズッコケそうになる。
しかも終わりの言葉がいつの時代の流行語だと言いたくなるのだ。
「古式魔法の家にはそういう家もあるのかしら?」
「さぁ。そこの詳細は俺も知らんよ。養母から教えられた主観も多分に含まれているからな」
五十里の質問というほどではないが、独り言のような疑問に答えつつ、今回の主題たることの私見を述べる。
「今回の一件は俺のお袋とは似て非なるものだが、あんまり気分がいいものでないことは確かだな」
「……なのに俺には種馬になれとか君は言っていたのかよ」
「それが手っ取り早いしな。火狩が、そこいらに節操なしに種蒔きしたいという願望があるかもしれない―――という悪意的な推論も入っていたわけだ」
恨みがましい目でこちらを見てくる火狩に言いながら、次に向けるのは十文字と五十里だった。
「魔法師の早婚及び若年出産を推奨しているというのが世事の習わしらしいが、そんなものお前たちは実感しているの? 特に五十里と十文字には大学生の兄貴がいるらしいけど、そういう気配とかある? 同じ大学の女子を家に連れてきたりとか、女とどっかに遊びに行ったり」
その言葉に随分と今回の騒動にある種、肯定的な考えを持っていた2人はいたい所を突かれた風になる。
「ま、まぁウチの兄貴は婚約者がいるわけだけど……アナタが言う通りまだ私が『叔母さん』になっていない辺り、確かに魔法師の風潮からは外れているわよね……」
「私の兄さんなんて家に女子を連れ込むことも全然ない。何か七草家の長女と食事はするみたいだけど、そういう浮いた話とはちょっと無縁状態かも……」
2人して若干しどろもどろになる様子に、ダメだこりゃという想いをシロウは抱く。
「克人さん。ものすごい
「ミーナ!!」
遠上の茶化すような言葉で、やはりあの
そして何となく思い出せるに……まぁ会わんとこと思えた御仁である。
「まぁ以上のことから、俺は別段この高校時代からそんな風にしなくてもいいと思うわ。数字持ちの家ですら遵守していないことを金科玉条のごとく信奉して男漁りするなんて低劣な話ではある。
十代の小娘・小僧に
「何か茉莉花さんとアリサさんは、かなり同意していたような気もしますけどね」
「完全に合コンでイイ男GETしようとする
小陽の言葉に一般的なJKの感覚じゃないと断じると、ぐさり!といろいろなものが突き刺さる面子は多いようだ。
「こ、小陽は誰かいいヒトとかいないのか? 幼なじみとして俺は心配だよ」
嘘くさいことを言う火狩に苦しすぎると周囲にいる全員が苦しすぎる話だと思う。
「いや、私これでも社長令嬢だからね。まぁ誰かお見合い相手でも来るのかも知れないけど、望めるならば―――士郎くん、衛宮士郎という男子かな?」
その平淡な言葉から少し熱を持った言葉と、視線の移り変わりに火狩の表情が固まる。
「生憎ながら遊び相手としてならば相手は出来るけど、衛宮の血も、トオサカの術も、マキリの呪いも全て俺の代で絶やすつもりでいるんだ。そういうのは勘弁してくれ」
「フラれたー」
演技くさく机に突っ伏すようにして顔を見せない風にする小陽。
本気かどうかは分からない。そして火狩に反応してほしくて自分と親しくしていたとしても、そこの線だけは越えたくないのだ。
「ふーん。アナタってそういうヒトなのね」
「俺を分かってる。理解した風な顔をするなよ五十里、ひどく心外だ」
後方理解者面というほどではないが、コシャリへのスプーンの侵入を皿を引き寄せることで防ぎながら言っておく。
因みに、片手は下がっているわけで大変に行儀の悪い食べ方をせざるを得ないのだ。
「結局、松崎さんが停学明けから帰ってきたらば、僕はどうすればいいんだろうな?」
『『『『どうもしなくていい』』』』
「みんなが冷たい……」
火狩への総ツッコミというオチで今回の一件は片がつくのであった。
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「結局、アレって松崎さんへのフォローだったのかい?」
「いきなり何を言っているんですか副会長」
午後の授業、ティーチング・エージェントことT.Aということで実技練習をする下級生の面倒を見に来た副会長に返す。
「俺も食堂で昼食を取っていて君の持論公論を耳にしていたからね。まぁそれでだよ」
「さぁ? 単に私見を申しただけかも知れませんよ。
ただ、普通2年生ならばアンタとかキモイザ先輩とか『同級生』を狙っていてもおかしくないのに、なんで『下級生』である火狩に食指を伸ばすのか? という疑問に立ち帰った時にそういうことを考えたんですよ」
「中々に聞き手の品性を疑わせる形容の仕方が出てきたが、まぁそこは流しておこう……確かにな。松崎さんは僕たちが指導していても、中々に……別に落第点を取っているわけじゃないんだ。ちゃんと合格点を取れているわけだし、本人もちゃんと修練しているんだ……けれど、本人の中ではどうしても劣等感が拭えないんだろうな」
10の努力で10の結果を出せる人間もいれば、50でも100でも出せる人間もいる。
逆に10の努力で2,3の結果しか出せない人間もいる。
世の中は不平等だ。全てにおいてセンスがモノを言う、幅を利かす世界では努力や本人の置かれた環境次第では本当に伸びが違うのだ。
そんな世界で生きていれば、その息苦しさから
「んじゃ、結局の所ーーーあんたら指導者が悪いってことだわな。そもそも『デキのいい奴ら』が『デキの悪い奴』が感じている『もどかしさ』『窮屈さ』に気付けるわけがないんだ。理屈だけで思った通りの現象が出来上がるならば、魔法なんてのはどいつにでも使えていてもおかしくないはずですしね」
結論としては、現・2年の指導陣がクソであったということである。
「うぐっ……なんて厳しいことを言う後輩なんだ。それでいながら合格点は取っているし、なんてイヤな後輩なんだ」
どうでもいいことを言いあいながらも、結局の所シロウのフォローはそれなりに実を結ぶのであった。
そして、その日の晩……フォローしきれなかった人物から急報が届くのであった。
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「エート、ツマリ……ソノ一高の後輩に対して探りを入れろ、と?」
「俺もお前と深い付き合いがあるわけではない。しかも、「トウドウ」にある種の腹芸が出来ないことも理解している」
良くも悪くもお前は正直者すぎる。と評された『トウドウ』という女子大生はどう反応を返せばいいのか分からない。
「だが、現在―――昏睡状態に陥っている司波達也を目覚めさせる端緒が彼にあると思っている。古式魔法の権威でもある吉田ですら奴を回復させる術を持たなかった以上……妹の脚を回復させた彼に接触を持ちたいんだ」
「十文字家の権力でドウにかならないんですか?」
「無理矢理に呼びつければ、恫喝・恐喝をしていると噂が立てられる。そして俺の弟妹はどちらも衛宮くんから嫌われているようだ」
転じて、自分も嫌われていると考える十文字克人の姿に、トウドウは図体のデカさの割に本当に小心者と考えるのだった。
だが、説明されたことが達也の回復に繋がるものなのかもしれないということは考える。
素人考えでしかないが、もしも自分がいま以上の回復術を覚えたとしても彼をあの状態から回復させることは不可能だろう。
結局の所、トウドウはこれを受けることにした。
今の所、何というかヒマであったことも一つだった。護衛役として四葉に引き取られた形の彼女だったが、『彼女』を守る役としては『無用の長物』と化していたからだ。
何より四葉家の権勢が衰えつつあるのも一つ……いくら元老院の長老の養女という立場を得たとはいえ、色々と考えたりしなければならないのだった。
「ワカリました。では彼――エミヤ・シロウと自然な接触を持てばイイんですね?」
「ああ、米国の兵隊として君が来日した時のような失態は演じないでくれよ」
「ナ、ナンノコトヤラ〜〜ワタシ、ワカリマセンケド〜〜」
こんな時だけ胡散臭い外国人のような様子を見せるトウドウに苦笑しつつ、彼女ではダメだろうなと克人は次善の策を張ることにするのだった……。
ともあれ、十文字家に呼び出された『東道 理奈』は色んな意味で一高に混乱を巻き起こすのであった。
そして件の衛宮士郎は―――。
『……以上のことから恐らく娘は軽挙に走ると思う。妻が実父に経済的に依存している以上……僕自身がそれなりに多めの蓄えを残せていれば良かったんだが、ともあれ―――これがキミへ出せる最初で最後の依頼だろうな』
「……アンタのお陰で俺は命拾いした。その恩と感謝だけは忘れていないさユーリィ。しかし……その恩を返せる時がこんな場面だとはな」
『ははっ、申し訳ない……しかし、頼まれてくれるか?『奇跡を生む男』よ』
「了解した。アンタの娘が恙無く祖父の会社を継げるぐらいの蓄えは俺にはある―――スイス銀行を通じてならば何の問題もないだろうさ」
『手際が良いな……ならば問題はないんだろう。そろそろ休ませてもらうよ。少々疲れたからな』
「ああ……」
『
「さようなら。ユーリィさん」
その言葉の交わし合いを最後に言葉が途切れた。
そして……ユーリィ・ガルマエフこと亡命ロシア人 軽部裕利の訃報はそれなりに多くのヒトを動揺させるのであった。