魔法科高校の異端者   作:無淵玄白

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なんか……えらいことになってるな。

日間ランキングに久々のランクインしましたこと感謝します。

新話お送りします。


第四二話『昔九今九』

 

 

interlude 5years ago time―――

 

 

「キミの出番は無さそうだな。ファンタズム01」

「不労所得が嫌いなわけではないですよ。ただ稚拙なものだ―――このような『ディール』を成立させるならば、1高の生徒などを買収するべきでしょう」

「八百長試合をやるべきだというのは理解しているさ。ただ魔法科高校の生徒たちを万が一にでも買収しようものならば、確実に何処かに噂が入り込む」

 

無頭龍の日本支部にてそんなことを言い合っていたわけだが……。

 

「しかし……万が一ということもありうる。頼めるかな?」

「いいでしょう」

 

首魁とでもいうべきものが他の幹部たちとは違い楽観出来ずに、覆面の少年…ファンタズム01に会場に向かい、事前に頼んでいた様々な工作をするように神妙に頼む。

 

そのことが恐るべき結果を齎すのであった。

 

 

「お兄様……」

「……」

 

不安げな様子で端末を見る自分(達也)を横から見ている妹をいまの自分は振り向くことが出来ない。だが数分して考えをまとめてから遂に口を開く。

 

「ここまで一高は勝ち星という意味では若干ながら落としている」

「ええ……」

「勝負ごとである以上、勝敗のアヤがどうなるかは分からない……しかし、微妙に『勝ちきれていない』。それがどうしても現在の『1位』たる三高との差に繋がっている」

 

別に三巨頭の調子が悪いわけではない。CADも万全である。当然、達也が技術分野で関与していない選手もいるわけで、本当にそうなのかは分からないが……それでも―――。

 

「女子クラウド・ボールでは会長は準優勝、男子ピラーズ・ブレイクでも会頭は準優勝―――」

「そして渡辺委員長はバトル・ボードで3位ですからね」

 

勝てるはずの戦いを。穫れるはずの勝ち星が散らされた結果として、1高の散発的な入賞の間隙を縫う形で、3高が上がってきている。

 

「最初、俺はバトル・ボードで起きたあの七高のCADトラブルのアクシデントなどから機器の不調による失点・失策が響いての敗北だと思っていた」

「ええ……」

「魔法力は魔法師の争いの全てにおいて絶対的なチカラの差……そして、それを少しでも底上げというか、かつての古式魔法であったバイオリズムの変調などにに左右されず術者が過不足なく余計なことに手間取られずに魔法を行使するための機器がホウキ―――CADだと思っていた」

 

それは現代魔法師が信奉してきた絶対不偏のコトワリ()のはずだった。

 

だが、それらとは別のコトワリ(理屈)があるように思えていた。2人の十師族を倒すほどのそれは―――。

 

「これは秘密裏に手に入れた七草先輩と十文字先輩の魔法能力のパラメーターだ。最新のバージョン……期末テストにおける実技でのそれなどだ」

 

普通の人間ならば、どこでそんなもの手に入れたんだと突っ込むところだろうが、深雪はそれを指摘せずに当然のことだと受け入れる。

 

深雪にその端末を見るように言う兄。そして見せられたパラメーターは数値上のものであり、さすがは十師族ではあるが、これならば深雪も負けていない―――などと対抗心を燃やしていたところだが。

 

「そしてこれもまた秘密裏に手に入れた両名の対戦相手の魔法能力のパラメーターだ。顔写真付きだからわかりやすいかと思うが」

「はい……確かに見覚えがある人たちばかりですね」

 

頷きながら、同じくダーティーな手段で手に入れただろうそのパラメーターを見るとたしかに優秀な魔法師ではあるが、それでも2人に勝てるほどではない。

そう感じていたのだが―――。

 

「いまのは各校での期末テスト時の成績表だ。そして……これが九校戦での2人と戦った際のパラメーターだ」

 

重ね合わせるように同一人物のパラメーターの変化が一目で分かるようになった瞬間……深雪は驚く。

 

「計測していたのは国防軍の情報部。彼らとしても目視だけでは見えない才をもった人間を発掘するには、ピッチャーの球速をスピードガンで測るようにしなければならないからな」

「全員が、十師族級の干渉力や速度に『成長』している……」

「中には師族ではなくとも数字持ちの家もいるから一概には言えないが……なんとも奇妙な話だ」

 

だが、これだけ十師族である七草、十文字に追随してくる能力値の魔法師に予選一回からぶち当たって、それが連続していけば当然ながらスタミナは削られ疲労は蓄積していく……。

 

結果として決勝戦では限界を迎えるのであった。

 

(意外とどちらかのCAD整備のサポーターとして試合会場に同伴していれば、早急に気づけたかもしれんが)

 

本戦でのCAD技術者として達也は帯同出来なかった。それは、色々と理由はあったが、一番大きなものとしては1科生の技術者、それも上級生のプライドゆえ、あるいは三年生の最後の戦いにおける意地とかだったりした。

 

(意外と服部副会長や桐原先輩が思うような結果を残せていなければ…)

 

達也にも『お鉢が回る』こともあったかもしれない。特に七草会長の方に回されていた可能性もあったが…まぁ考えても詮無いことではあるので、最大級の疑問に挑戦するのだったが…答えは出そうにない。

 

(それにしてもこの変化はどういうことだ?)

 

CAD技術で何か自分以上のそれがあったとも考えたが。

ここまでの変化は自分には無理だ。そもそも能力値の変化などをもたらすなど……その瞬間、思い出したくないことが達也の脳裏に出てきた。

 

それは4月の入学直後に起こったこと。すこしだけ震えながらもありえないことだとしてそれを振り払ってから口を開く。

 

「―――分からぬことだらけだ。ともあれ勝負のアヤは分からぬことだらけだ。それを『何か変』だとしても、実のところは、このパラメーターの向上も各校の努力かもしれないからな」

「本気でそう思っていらっしゃいます?」

「イヤミな事を言うなよ」

 

理屈と理論ばかりを信奉する兄がそんな絶対の理屈を覆すことを信じているわけがないとする深雪の言葉は色んな意味で辛すぎた。

 

「何かいつもと違うこととか分かればいいんだけどな」

 

深雪はともかくとして、達也はあまりこういう魔法師の表舞台な行事というものにそこまで詳しくない。ゆえに変化というものに気付けない。

 

「そう言えば雫が言っていましたが、今年の九校戦の『出店』はちょっといつもと違うと言っていましたよ」

「出店……」

 

いわば屋台とも言えるが、この九校戦が魔法師に関する一大イベントである以上、様々な企業や会社がスポンサーとして協賛金を出す代わりに出店する権利を得ているのだ。

 

それは魔法工学関係の企業だったり、食品会社やファストフード店だったりとetcなのだが……中でも今回はかなり『国際色』が強い『国際食』があるとのこと。

 

「ビリヤニや刀削麺……珍しいところではギリシャの料理『キュケオーン』なるものまで作っているお店があるとのことで」

「キュケオーン……なんだ特撮怪獣映画で敵ではないが、サイドキック的に主役怪獣のサポートとか時間稼ぎでもしてそうな怪獣にありそうな名前の料理は?」

 

多弁すぎる!!などと呆れつつも深雪は咳払いをしてから説明をする。

 

「古代ギリシャの麦粥らしいです。もっとも具体的なレシピは残っていない謎の料理らしいですが」

「こちらも不明瞭なものなのか」

 

別に深雪を責めるつもりはないが、すこしだけ落ち込むような顔をしてしまう。

そうなったことに責任を感じたので―――。

 

「明日はそれを食べに行ってみるか?」

「―――はい!!」

 

笑顔を取り戻した深雪に安堵したのだが、その願いは叶うことはなかった。

その国際食を出していたキッチンの出店は昨日……九校戦本戦前半までで、今日―――九校戦新人戦からは他の協賛企業の出店日だったようだ。

 

そんな肩透かしを食らいながらも、不穏なものを匂わせながら新人戦は始まる。

 

Interlude out……5years after time

 

 

「で、衛宮くんはどうなんですか?」

「永臣さんでいいです」

「永臣さんもそれでいいんですか?」

「ええ。最初はCAD担当者として招かれましたが選手として戦えるのならば、その機会を活かしたいです!」

 

ユウキリンリン ゲンキハツラツ キョウミシンシン イキヨウヨウ

 

などと4つの四字熟語が似合う様子でいる小陽に、恥ずかしい戦いは出来ないなと思いながらも、主役に飾り立てるのが自分の役目だなと思う。

 

「それに……あれだけ九校戦に出たくない。出ないと言っていたシロウ君が私をパートナーにしてでも戦いに挑むならば、その心に応えるのが女粋(オンナイキ)ってもんじゃないですか?」

 

そんな心を持ってくれているとは、シロウとしても嬉しい。すごく嬉しいので―――。

 

「小陽」

「シロウくん」

 

視線と視線が重なり、言葉と言葉がぶつかり合いお互いに華が綻んだような顔でいたところに―――。

 

「反対です!!私は絶対に反対です!!」

 

その視線を遮る十文字アリサが割り込んできた。小陽の笑顔で癒やされていた自分の心を波立たせるハーフイワンに頭を痛める。

 

互いに了承していたというのに、この言動……。

 

「アリサ、キミがいくら反対を唱えても、シロウくんがそれを良しとするならば、それを超える理屈を述べるべきだ」

「言ったじゃないですか。一条家の爆裂に対抗するためには十文字の盾が必要だと」

「けどもアリサ、一条茜さんはどちらかといえば一色家の魔法に傾倒した魔法師よ。確かにそれだけで爆裂などの魔法を覚えていない。習得していないと思うのは早計かもしれないけど……」

 

副会長の言に反論したあとに、被せてくる五十里の言……。

この氷柱倒しに一条の息女が出てくるということは紛れもなく、それだけの攻撃魔法が放たれるということだ。

 

「別に無理やり照準をそこに合わせなくてもいいはず。確かに優勝できれば御の字でしょうが、そこまで俺をペアにした組が勝てると思います?」

「やる気がないとも理論的とも言える言動だが……戦うというのならば、勝てるところまで戦ってほしい」

「当然、そのつもりですよ。そしてそれに相応しいパートナーは小陽なわけです」

 

シロウの言葉に反応した碓氷会頭。そこで畳み掛ける。

 

「会頭、俺は前にアナタの意向もあってクラウド女子のデータも渡しましたよね?その判断で十文字アリサに二種目の競技負担が負い切れると判断しましたか?」

 

そう言われて首脳陣が悩む顔をしてしまう。

 

「お前は仙石のパートナーとしていずれは緋色さんとかち合う戦いに挑むんだ。余計な負担は負うなよ」

「うぐっ」

「そして疲労困憊のお前さんのサポートは俺には出来ないよ」

「アレは!? クラウドの練習試合でシロウくんが見せた音による生体調律とかは!?」

「おんぶに抱っことか勘弁しろ」

 

別にやることは構わないが、それをアテにしてのゲーム運びなど下策どころか愚策である。

 

そんな訳で、内心では『勝ったッ!第三部(?)完!』という感じで拍手喝采であったのだが……。

 

「もはやこれ以上は―――勝負を以て議論に決着をつけるべきですね。ということで―――衛宮くん。永臣さんと十文字さん。どちらと組むかは実際のゲーム運びで決めましょう」

 

―――なんで!?―――

 

一部を除いて、全員が三矢会長の言に驚きをしてしまう。

 

「どちらがパートナーとなるかを選ぶ! いうなればこれは『サラボナナイト』です!!」

 

なにげに◯ボラが省かれていると思いながらもかっこつけなのか昔懐かしのマダオ司令官のようなポーズを着けながら三矢会長はそう宣言するのであった―――

 

「なんでさ」

 

思わずオヤジの口調が出てしまうぐらいに急転直下の動きの速さに頭を悩ますのであった。

 

 

 

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