2人との相性を測るためのピラーズバトル。それらが行われることになったわけで準備に少しだけ時間がかかりながらも、遂に行われることになったわけだが。
「アナタたちの相手はワタシよ!!」
などと―――準備室で言ってきたのは…。
「誰だっけ?」
知らない女性なのだった。当然、すっとぼけているわけで、本当は誰であるかは理解しているのだがなんでここにいるのやら。
「お、覚えていないノ!?」
「あー、いま思い出しました。ちょっと前に来た教育実習生の東道さんでしたっけ。わざわざどうも」
「ナンダカ、すごいお座なりヨ……」
「特別関わることはありませんでしたし、俺なんて目立つ生徒じゃないし、特別出来が悪いわけでもありませんしね。手がかからなくて良かったでしょ?」
そう、あの教育実習期間中に確かに東道里奈ことアンジェリーナとシロウが関わることはなかった。
だが、あの期間のことをアンジェリーナは疑惑を覚えている。だからこその今回の来訪となったわけだ。
そんなわけで、今回のテストマッチの相手を二つ返事で引き受けることにした。ちなみに言えば別に誰かに呼び出されたわけではなく一応のOGとして何となく大学も暇なので九校戦の協力をしてあげようと思ったからだ。
つまりは偶然でしかない。
そしてJDのくせにヒマな女なのだった。
だが少しだけ羨ましい想いもあったのだ。だからこそこの時期に一高に足を向けたのかもしれない。
なんせアンジェリーナの在学期間中に、この魔法師の祭典に参加したことはなかったのだ。
当然だ。そもそも一度目の留学は短期で様々な思惑が絡んだもの、そして色々と反則気味な行いで一高に復学したのも3年の2学期ないし3学期の期間中であり……彼女は一高のOGとしては微妙なラインの存在であった。
だからこそ、この祭典に参加出来るくせにその機会を
「それじゃ東道先輩が相手ということで……シロウくん……」
「小陽……」
緊張した様子で、お互いに視線を交わし合う2人。
如何にアンジェリーナ・クドウ・シールズという魔法師があまり有名でなくとも知る人ぞ知る実力者であることは、よほど情報に疎い人間でなくとも何となくは知っているのだろう。
などと少しだけイイ気分であったリーナはとてつもない勘違いをするのだった。
「アレを出すしかないですね!」
「アレですね……!」
「うん、アレだよ……!」
「しかし、アレには色々と懸念が」
「けどその懸念を払うためにもアレを見せようよ!!」
「分かった。ならばアレでいきますよ!!」
秘め事を明かすかのように小陽とシロウの間で謎めいた会話がアンジェリーナ及び、生徒陣をのけ者にした上で繰り広げられる。
その会話に若干イラつきながらアンジェリーナは卒業生のセンパイとして問いただす。
「
会話に混ざれないことと、男女で触れ合っていることに、色んな嫉妬心を燃やしながらアンジェリーナは怒りを前面に出しながら問いただしたのだが―――。
『『ニヤリッ』』
「
わざわざ擬音表現を口に出して人の悪い笑みを見せる2人の後輩に圧倒されるアンジェリーナ。
(ナンなの!?この後輩たちは!在校生……センパイも同級生にも
ネオジャパンの委員長のように狼狽した様子を見せる元・アメリカ人。
余裕の笑みで以てアンジェリーナを見てくる日本人2人。
不穏とコメディなものを混ぜたやり取りの後に……戦いは始まる。
・
・
・
・
「東道センパイは一人。対する我が一高側は小陽と衛宮君だが」
東道OGの正体は、アンジェリーナ・クドウ・シールズという元・米国人にして……元・十師族の九島の系譜であることを理解している面子は多い。
九島の最優秀ともいえる人間はもう1人いたのだが、『彼』はこのヒトと入れ替わるように米国へと渡った。政治亡命というものだ。
その傍らには一高の生徒がいた……その
魔法師界の上位にいる人間たちからすれば、たまったものではなかった。
この逃避行の手助けをした『ノーブル・ファンタズム』の介入は、本当に『余計なことしやがって!!!』と怨嗟を込めて今でも言われているのだ。
結果的に……司波達也を欠いた現在の日本の魔法界においては、喉から手が出るほどに貴重な人材なわけで日本への帰国を促す丁重な書簡を何度も出しているのだが……よい返事は貰えていない。彼らが軟禁されているわけでもなく、望まぬことに従事されているならば、色々とあるのだが。
どうやらUSNAとしては、アンジェリーナ・クドウ・シールズを日本にやったことの補填としての人材とも捉えており―――まぁそういうことだ。
そんなアンジェリーナ・クドウ・シールズとの戦いに同じく外国住まいであった帰国子女な男は思うトコロは無いようだ。
「はてさてどんな魔法であのヤンキーボインを倒すつもりなのかしらね」
「やっぱり蛇を使った術なのかしら? いや、そもそも小陽がどんな系統魔法を得意としているのかも知らないから……」
改めて思うと、本当に異色のコンビである。そんな異色のコンビは―――。
『アレでいいですよ。私は『メカニカル』でいきたいんです!』
『キミに合わせるけど、まぁ違反とされる可能性を今のうちに確認しておくのも一つか』
遠く離れた観客席からでも声が情報として伝わるアリサの『目』で『見た』限りでは……そんなやり取りがあり、テニスか卓球のダブルスのサーブ前のパートナーとの打ち合わせのようだが……果たして。
「準備は、よいか?」
審判役である千種の言葉に親指を立ててハンズアップするサイン。
オーケーだとする3者のサインを見た千種は、機器を動かしてスタート前のシグナルが点灯していき、その間にCADの読み込みをするアンジェリーナに対して、櫓の前に立ち小陽を守るように後ろに下がらせたシロウ。
そして、魔法と『マホウ』がぶつかり合う―――。
先手を取ったのは当たり前だが、アンジェリーナである。放たれるのはムスペルヘイム―――指定された位置及び対象を強電磁界に取り込むものだ。
当然指定された領域は相手……一年方の氷柱がある領域全てである。
生意気な一年相手に対して情け容赦ない……ある意味、大人げないJDに殆ど全員が白い目をするが、それでも流石はあの司波深雪と双璧とされるだけの魔法力である。
しかしながら、その現実も異端の魔術師を相手には何の価値もないラベリングであった。
「DARK SHAME」
古めかしい口頭言語による『呪文』というものが変革する現実。
放たれたのは蒼黒のピンポン玉程度の魔弾の乱舞であった。
シロウの手から放たれたそれは魔弾の射手などと呼ばれている七草真由美とは違い、原始的なシュートマジックではある。
しかし、蒼黒の玉は猛烈な勢いで飛んでいき高重力のプラズマの雲を蹴散らす。当然対抗しようとアンジェリーナも『踏ん張る』のだが、その蒼黒の玉は彼女の干渉力では、抗しきれないほどの『何か』があるのだった。
(ドウイウコト!?)
蒼黒の玉はアンジェリーナが『触れてみた所感』でしかないが、術の干渉力が強いわけでも、重いわけでも、疾いわけでもない。
しかし、アンジェリーナの術式は確実に破られていく『現実』に、彼女は驚くばかりだ。
この日本に来てから久方ぶりのカルチャーショックだが、それはファーストショックであったあの兄妹と同質のものであった。
後の先を取ることでアンジェリーナの術を打ち破ったシロウ。その目が赤く輝いていることに気付いたアンジェリーナ。その目をどこかで見たようで、思い出せないままでいると。
「俺のターンは終わりだ。ネクストは―――」
「―――私が主役ですよ!!」
言葉と同時に後ろにいた永臣小陽が声を出す。そして見えてきた姿に―――
『――――』
全員が絶句した。そう、小陽の姿が完全に変わっていたのだ。
そう、『変身』していたのである。
そしてその姿は――――。
「「「「どこの美少女プラモだよぉおお!!!!」」」」
多分、『ブキヤ』じゃないかなと思った人間は多いが、それでもツッコミを入れる勇気は誰にも無かった。ともあれメカニカルな衣装に変化した小陽が、前に出てアンジェリーナに攻撃する。
最初にやったのは『本来』の彼女の腕力では両手ですら持てないはずのバズーカランチャーとでもいうべきものを片手で持ちながらアンジェリーナの氷柱に向けることだった。
「ちょっ!アノ衣装も装備も、もしかして!?」
「多分……全てが魔法式の産物だと思う……!!」
「う、ウソだろ!? 小陽には無理―――とまでは言わないが、とりあえず全てをまるっと信じるならば、あのFAガールじみた衣装も『武器』もシロウが全てを用立てたってのか!? どれだけの秘術をアイツは持っているんだ!?」
三者三様の反応を見せる一学年の成績優秀者たち。中でも火狩は幼なじみを信じたいが、あまりにも現実離れしたものを見せられて驚愕しているのは分かるのだが……。
「遠上さん。なんで3人はこんなに驚いているのかな?」
いままで魔法に縁遠い生活を送っており、まだまだ馴染みが薄い世界であると情けなくも自認する唐橘役は、3人の内の誰かではなく、驚愕を少しだけにしている茉莉花に聞くのだった。
「私も半端な理解かもしれないけど原則として、『サイオンを用いた術』では、高度な物質創造は出来ないんだよ。ある程度ならば、その辺にある岩や土……はたまた水素なんかを用いて『原始的なもの』ならば作れるけどね」
茉莉花も頭を掻きながら、苦い顔をしながら説明をする。
弾丸やら稚拙な人形のようなものならばサイオン操作で作ることは出来る。その辺りは唐橘も分かるが、あそこまでの物質創造は『魔法』では不可能なのだろうか?地頭がいいが、物理法則の枠を超えた魔法にまだまだ夢見がちな少年にシロウの魔法はカルチャーショックがすぎるのかもしれない。
いや、本当の意味でショックを受けているのは昔から魔法師であれ、魔法師になるとしてきた連中なのだが……。
「けれど衛宮シロウの術は、そういった括りじゃない。私も小陽の方に注目していたけど見ていた限りでは、後ろの方で何かの術式展開がされていき、その都度……小陽のドレスアップが済んでいった」
「もちろん。これが
ようやくショックから立ち直った五十里がこちらの会話に付け加えるようにして言ってくる。かなりメチャクチャなことを衛宮シロウがやっていることは、唐橘にも分かったのだが……。
「じゃあ、結局のところ永臣さんが着ているメカニカルな術装備?とでもいうべきものは―――『どっち』なの?」
「「「それが分かれば嘆きもない!!!」」」
と三人は言うがそのうちの1人……アリサだけは、恐らく
明確なところはまだ言えないがそれでも見えにくい魔法式の『先走り』から作っていることが何となく視えたのだ。
直観的なものでしかないが……。ともあれ、その術(?)を用いて二人が黄金世代の中でも特筆すべき女性魔法師を追い詰めているのは間違いなかった。
「くうぅうう!!!」
後輩の女子の装備から放たれる火線の全て……それがただの軍用兵器だとしても、アンジェリーナはそれを防御するだけのチカラはあったはずだ。
戦略級魔法師であるアンジー・シリウスの殺し名は伊達ではない―――はずだった。
しかしながら、それらは化学ではない理論であり、また通常の魔法式でもない理屈で『覆われたもの』……それはかつて『とある世界』において『触れるべからず』と呼ばれたもの。
いわく、元来は悪魔のみが持つはずだった
いわく、世界律をねじまげ、独自の異界をつくりあげる、最も魔法に近い禁呪。
―――己の心象風景をもって世界を裏返す、魔術理論・■■卵。―――
そんなものの『一端』『切れ端』程度のものがアンジェリーナが相対しているものなど分かるわけがない。
レールガンなのか、超高速で飛来する弾丸が何の抵抗もなくアンジェリーナの氷柱を砕いていく。
障壁で覆われたはずのそれが素の……ただの氷柱のごとく砕けていく様子は悪夢でしかない。
「―――」
歯噛みする現実を前にして―――それでもアンジェリーナには何故か、その一方で嬉しさもある。
それは……あの日以来、停まり続けている自分たちの時間。その中で新鮮な驚きがあるからだろうか……。
しかしながら次に来るものに関してはどうしても許容出来なかった。
「これでフィニッシュです東道OG!!」
快活に言うコハルという子が持つ銃砲。向けられた銃口の先にエネルギーが溜め込まれていくのが分かる。
まさか!! それを見た時からアンジェリーナはそれを阻止しようとしたが。
「おっと。東道先生、そういうのはナシでいきましょう」
「エミヤシロウ!!」
銃砲に対してスパークを掛けようとしたアンジェリーナを制するようにレジストを掛けた衛宮シロウという魔法師……なのか疑わしくなるが、それでも術式を妨害する手並みは……尋常ではない。
自分の術を発動前、発動後に防いだ人間はいたが……このシロウという男の手並みを見せられたあとでは如何にも荒っぽくて拙いように思えた。
―――思い出補正が掛からないほどに、そう感じたのだから。
そして―――。
「フルパワーシュート!!!!」
言葉が必要なのかどうかは分からないが、小陽の持つ銃砲から放たれるは俗にレーザービームと言うべきものであり、その大口径の砲に違わず太いビームの柱はアンジェリーナの陣の真ん中で炸裂。
「ビームは……レーザービームは―――」
そのビームの熱は弾けるようにドームを展開。抗うことが出来ないほどの熱量を前に自分を守るための障壁を展開しながらアンジェリーナは叫んだ!!
「ビームは!! ワタシの特技ダッタのよ―――!!!!!!!」
もはや過去形でしか言えないほどに、遠くなってしまったかつての自分の特技を放つ