魔法科高校の異端者   作:無淵玄白

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第四五話『神子裁決』

 

とある場所(ところ)、とある時代(じかん)に、とある3つの魔術の大家(おいえ)が集った。

 

「詳しいところは割愛しますが、そいつらが目指したものは『万能の願望機』の作成―――はたまた新たなる『チカラ』への萌芽。概ねそういうものを目指した」

 

そして、その大家による実験は都合四度―――50年周期で行われて、そして四回目の時に散逸したものこそが、問題であった。

 

「万能の願望機……俗に聖杯と呼ばれるもののカケラを手にした大家のうちの1人が、そのカケラを胎盤として譲り受けた養女に移植することを決めた」

 

「それがシロウくんのお母さん……?」

 

「そう。そして、結果として俺のお袋は、ある種の願望機であり、巨大なチカラを有することになった―――まぁそこはいいんだ」

 

「いいのかな?」

 

かなり重要な部分をはぐらかされ、ぼかされている気持ちにもなる。

 

「結局のところ、お袋のチカラと俺のチカラは違う。しかし、それでもその擬い物としての願望機の能力が俺には歪な形で発現した。それこそがあの降霊能力なのさ」

 

シロウの能力は、とある吸血鬼の指導?というよりも冷やかしのようなもので完成した。

 

「そんなことが可能なのか……?」

 

「嘘か真かは知りませんがね。とある場所において動物と心を通わせ、ヒトの願いを具現化する『神子』(かみこ)がいたそうで、そいつの子孫だかなんだか曰く」

 

―――ボクとキミの能力は同じようなもんだよエミヤ―――

 

―――具現化出来るのは「他人の願い」(よくぼう)のみ―――

 

―――彩色指定(色付け)はボクら次第。そこは努力次第かな―――

 

―――あれだね。ランプの魔人を呼び出せるのはボクらなのに、願いを叶えるのはボクらじゃないとかどんな罰ゲームでクソゲーだよ―――

 

―――そうだね。けどもいいのさただ1人……ボクのことを認めてくれる『月』があるというのならね―――

 

映像機器というよりも一種の思念投影で当時の『司祭』との会話を映像として映したシロウは、シメの言葉を放つ。

 

「メレム・ソロモン曰く そのチカラは、こう呼ばれた。

第一階位の降霊能力『デモニッション』具現化出来るのは他人の願いだけ、いかに強力な能力であっても自分一人では何も出来ない。まさに『悪魔』そのものだ―――もっとも、映像に出ているピーターパンとは違って俺の方は五体満足であったからか、はたまた魔力の規模の大小なのか……まぁ、ああいうのが限界だな」

 

沈黙。更に沈黙。しかしニコニコ笑顔の小陽だけが異質な空間において―――。

 

誰もが何も言えない。衛宮シロウが言う『ああいうの』とは、要するにメカニカルなアーマードスーツともパワードスーツとも言える……しかもエロスを感じさせる美少女擬人化なものも含まれたそれが……。

 

(こんなチカラがあっただなんて……)

 

確かに現代魔法でも不可能領域とされたものはある。いわゆる物質転送・物質創造。

無から有を作り出す……そんな術を使っていただなんて……。

 

あまりに衝撃的すぎて、どうとも言えない。

 

「けれども、それじゃなんでアリサさんでは無理なんですか?決してアリサさんとて想像力が無いとまでは言えないと思いますが……」

 

疑問は当然出てくる。

 

「想像力というよりも理に混ざりすぎた人間、この場合は現代魔法師として優秀なヤツほど、俺の能力とは相性が悪い。世のすべてを理詰めでこうしてやろうという心が俺とは相性が悪い―――要するに夢見る心が無い人間ほど、俺の『デモニッション』(空想悪魔化)が反応しないんですよ」

 

三矢会長の言葉に無情な結論が言われた。

 

「その点、小陽は良いね。俺をキャタリスト(触媒)としてよく扱ってくれるよ。モデラーとして、モデルとしてもな」

「えへへ、部屋に入った時に私のプラモコレクションを笑わずに見てくれましたからね」

「笑うような趣味じゃないだろ。まぁ俺も別に嫌いじゃないしな。美プラは」

 

仲睦まじく会話をする2人。そこで色々と聞こえてくる新事実にアレコレとツッコミを入れたりしたい気分が全員に蔓延していたのだが、ともあれ結論は出た。

 

「ならば衛宮くん、永臣さん。新人戦ペアピラーズでの健闘お願いしますね」

「「はい。頑張ります」」

 

2人の決意とは裏腹に疑問の解消はしたいという面子は多すぎた。

 

そんなわけで―――

 

 

「俺の小陽にあんなエロ衣装を着せるなんて許せない!」

 

学食にて反省会ともなんともいえる第2ラウンドが開かれる。

 

「いや、別に火狩くんの私じゃないし、勝手に自分のもの宣言しないで」

「今まではジョーイ、ジョーイとポケセンのナースさんみたいに呼んでくれていたのに、火狩くんって!カガリくんって!!」

「まぁ男子としての差かな……シロウくんは昔からの名曲で今でもどこかしらで知られているロックとポップスの洋楽―――火狩……ジョーイは……歌で例えるとノリはいい、テンションは上がるかもしれない。流行りの曲なんだけど良く聞くと歌詞は薄っぺらで大したこと言っていないなと感じてしまう―――一言で言えば幼稚?そんな感じ」

 

憤る火狩が遂には泣き崩れる様子に、一同なんとも言えぬ気分になる。

小陽も小陽でド辛辣なことを言うのでフォローのしようが無いのだ。

 

「というか聞きたいんだけど、本当にアリサとかには無理なの?」

 

五十里の質問が飛んできたが、それに対する答えは存在していた。

 

「無理だね。現代魔法においては理屈と言うか理論こそが全てなんだろう? 俺の術はいわゆる『照応』こそが基本なんだよ。一見すれば相通じるものが無い2つの事物に対して『繋がり』と『共通項』を見出してチカラに変えていく。そういうものなんだ」

 

両の手のひらを広げて何か……玉のようなものを置いた様子のあとに両手を立ててからそれを『合掌』のような形で合わせた衛宮シロウの姿が印象的だ。

 

「第一、十文字に聞きたいんだけどキミの中に何かイメージしたい『理想の自分』ってあるの? こうなりたい。ああなりたい。そんなこと現実に不可能なんだけどなれるものならばなってみたいっていうさ」

「そ、そう言われると……」

 

いざ、アリサも問われてみると……なんというかそういう夢見がちなものは無い。

十文字の家に来る前からアリサは現実的な生き方だけに拘泥していた。

 

物質的に満たされる前から……そういうものとは縁遠い女であると理解できる。

 

「現代魔法師は、まずは現実を正しく認識することが原点らしいからな。となると、『ボールは分身などしない。常に一つだよ』『ボールは決して消えたりなどしない』『死角などない』とか言うのがデフォルトなわけだからな。まぁとにかく俺の『デモニッション』は、理と現実に通じ、それを弁えている人間ほど相性が悪いんだよ」

 

嘆息混じりに言ってからミックスジュースを飲むシロウの姿はどことなく落胆しているようにも見えた。

 

「仮にお前が触媒としてエロ衣装……正しい名称は『魔術霊衣』なんて着たらばここにいるKKコンビと副会長に視姦されるだけじゃなく夜のオカズになること請け合いだぞ?それでもいいのか?」

 

その言葉にKKコンビが机に突っ伏して震える。副会長が遠い所で2度のくしゃみをした。

 

赤い顔をするアリサは、自分が男子からどう見られているかは分かっているので『それはちょっと』、と思うのであった。

 

「い、いくらなんでも僕らへの評価が辛すぎないかな!?」

 

泣きそうな唐橘の言葉だが女子陣は思った―――『妥当な推測である』、と。

 

「で、納得できたか?」

「うん……結構、辛いけど納得する」

 

そんなにまでもシロウとダブルスピラーズをやりたかったのかとアリサを見る面子だが……。

 

「ところでこの『メシスタント』ってなんなの?シロウ君にデバイス要らずだからデバイスアシスタントってわけじゃないんだろうけど」

 

千石のもっともな質問……端末に九校戦に関する資料。変更が入った項目が言われたわけで、特に何もなく答える。

 

「遠上の部活の両部長からの提案で俺に時々、メシを作ってほしいそうだ。まぁ昔懐かしい出張料理人、ケータリングサービスってところだ」

 

ホテルで食事だって出るだろうに、そんな機会あるのかねと思いながら、まぁそんな機会は来ない方がいいだろうと思えた。

 

「で、私は生徒会役員だからね。遅刻合流した『海外組』みたいなアンタの質問に答えてあげるわよ。なんか聞きたいことある?答えられることならば答えるわよ」

 

「んじゃ五十里の体重は『言えるかバカ――!!!』まぁそれは冗談だとして」

 

一瞬、アリサの顔がおっかなくなるほどのやり取りをしたシロウとメイではあるが、次に出た質問はかなり真面目であった。

 

「お前さんが言う通り俺は遅刻合流した海外組みたいなもんだ。まぁ実力は下位だからプロスポーツでいうところの海外組とは違うけどな……ただそれでも劣等生が『選抜組』に入ったというのに……一部の連中は――――」

 

―――安堵して、ホッとした顔をしていた―――

 

そう告げた事実が、後々に多大な混乱を巻き起こす。

 

主にいい意味でなのだが。

 

ともあれ―――九校戦準備段階にようやく衛宮シロウは参戦するのだった。

 

それを良しとしない勢力がいたとしても異界の魔術師は世界に晒される……。

 

 

 

 

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