ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー   作:ミハイル・シュパーギン

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チャプター6 タイムリミットは3日

 塚野は保健室のベッドで目覚めた。

 鈍い頭痛と吐き気で気持ち悪い意識の中で記憶を辿って行くと、確かカヴェナンターの蒸し風呂地獄に耐えながら校門を通り抜けたところでとうとう暑さに耐え切れずハッチを開き、誰かが自分の腕を掴んで引っ張り上げ…そこで意識が途切れていた。

 

 保管倉庫から出発して間も無く車内の温度が上がり始めたが、操縦桿やクラッチの操作で手一杯だったので、ハッチを開いて顔出しが出来なかったのである。

 死ぬ程の蒸し暑さと息苦しさに耐えながら、何とか校内まで自走させて来たものの、そこで限界だったようだ。

 

 塚野は暫く脱力状態でぼんやり天井や蛍光灯を眺めていたが、何かに思い当たったかのようにガバと身を起こした。

 

 しかしまたしても襲って来た鈍い頭痛に頭を抱えた。

 

「もう少し寝てなさい」

 

 様子に気付いた保健室の先生が机仕事を中断して立ち上がり、歩いて来ると塚野を優しく寝かし付けた。

 

「うげぇ…頭がグリグリするぅ…」

「もう少しで回復すると思うわ」

「いや、もういけるっす」

「…オリエンテーションの事?」

 

 考えている事を察した保健室の先生がそう尋ねると、塚野は顔をしかめながら頷いた。

 

「どうなりましたぁ?」

 

 保健室の先生は、壁掛けの時計を振り返った。

 塚野も視線で後を追うと、あれから数時間経過していた事を分かった。

 保健室の先生はまた塚野を見る。

 

「それについて生徒会から伝言を貰っているの。回復したら、生徒会長室まで来るよう伝えるようにって」

 

 そう聞くと寝ても休んでもいられなくなり、ふらつきながらもベッドから下りた。

 

「…あざっす」

 

 止めても無駄だと分かった保健室の先生は、記録帳にベッド使用終了のサインをするよう求めた。

 あとは体力の回復を待つのみだったので、問題無いと判断したのだ。

 

 

 

「会長は今、ちょっと用事があって不在なんです」

 

 応対した生徒会員がそう説明した。「こちらで知らせておきますので、会長室でお待ちください」

 

「用事あんなら後にすっけど…」

「実は、塚野さんが来たらすぐに呼んで欲しいって言われてるんです」

「そーなんだ」

 

 塚野は生徒会長室に向かって歩いて行ったが、傍を通りかかった生徒会員達が一端作業の手を止めて、なぜかこちらを二度見してくるのが気になった。

 

 彼女達の視線を訝しく思いながら生徒会長室に入ると、佐伯が中にいて、青いファイルを開いて立ち読みいた。

 塚野の入室に気付いて顔を上げたが、佐伯もさっきの生徒会員達と似たような表情をした。

 

「…あ、そうか。化粧溶けたからね」

 

 それで塚野は、やっと自分の顔が、化粧が溶け落ちたすっぴん状態である事に気付いた。

 だから傍を通った生徒会員達は二度見してきたのだ…一体どんな顔をしていたのだろう。

 

 そんな事を考えていると、佐伯が青いファイルをパタンと閉じて本棚に直し、皮肉たっぷりの視線を向けて来た。

 

「あの戦車、熱がこもるんだって」

「…え?」

 

 佐伯は腕組みをし、嫌味な口調で説明を続ける。

 

「しかもあの戦車特有の欠陥。よりによって欠陥品を選んじゃうなんて、ある意味天才じゃない?」

 

 塚野が気を失っている間に、野島や土橋が今回の戦車の事をより詳しく調査した結果、ラジエーターや冷却配管等の配置の関係により、熱がこもりやすい性質を持つ事が判明していた。

 

 もっとも、ミリタリーに詳しい人間からすれば基本中の基本の情報だろうが、よもや戦車にそのような欠陥があろう筈も無いと考える素人にとっては、寝耳に水も同然だった。

 

 確かに、カヴェナンターという戦車について詳しく調べていればすぐに分かった問題ではあった。

 

 ただ、入手した販売サイトにそのような事は書いていなかったし、いわば『思い付き』でスタートした戦車道だ。

 

 この場合、運が悪かったとしか言いようがない。

 とは言え、よく調べなかった事も非である。

 

 

 

 同じ頃、保健室の扉がガラガラと開いた。

 

「すみませーん。塚野さんいますか?」

 

 野島だった。

 土橋と萩原は、それぞれの部活中で一緒にいなかった。

 保健室の先生は、事務作業から顔を上げた。

 

「塚野さんなら、少し前に退室したわよ?」

「どこに行くか聞いてますか?」

「多分、生徒会長室じゃないかしら?国崎さんから、呼び出しの伝言を預かっていたから」

 

 

 

 佐伯の煽りに奥歯を噛み締めて黙っていると、佐伯は腰に両手を当てて語を継いだ。

 

「…で、これからどうするのかな?確か仮予算は、この欠陥品にかなり吸われたんじゃなかったっけ?正に、安物買いの銭失いってわけね」

 

 塚野の自制心が、まるで吊り橋のロープが1本1本弾け飛んでいくみたいに音を立てて切れ始めた。

 息が荒くなる塚野を見て、佐伯が挑発を重ねる。

 

「否定出来ないからって逆ギレかしら?」

 

 そして塚野に向かって一歩踏み出す。「…さっさと諦めちゃいなさいよ。その方が楽でしょ?」

 

 瞬間、塚野のストレートパンチが佐伯の左頬を捉えていた。

 

「ぐっ…!」

 

 佐伯は左頬を押さえながら、こちらを睨む塚野を睨み返した。「ちっ…やったわね…!」

 

 が、その頃には塚野の左手が佐伯の襟を掴んで引き寄せ、また顔面にパンチを浴びせていた。

 パンチすると同時に襟を離したので、佐伯はよろめいて後ずさりしたが、その先は会長の執務机で、もろにその上のファイルやら電燈やらを派手に床に散らかしてしまった。

 

「いったた…」

 

 肘を突いて執務机から身を起こす佐伯。

 

「3年生だからって調子乗んなよ…!」

 

 塚野の理性は完全に弾け飛んでおり、国崎から注意されていた敬語の使用も消し飛んでいたが、もはや佐伯もそんな事はどうでも良かった。

 

「ちっ。逆ギレとは上等ね!」

 

 立ち上がると、拳を握り締めて殴り掛かり、それを塚野が防御し、2人は乱戦に突入した。

 

「こいつ!」

「ふざけやがって!」

 

 喧嘩に夢中になっていると、慌ただしく扉が開いて、2人同時にその方向に顔を動かすと、国崎と野島が唖然とした表情で立っていた。

 扉の傍では生徒会員が様子を窺っているが、どうやら室内で起こった乱闘騒ぎが聞こえていたらしく、そこに国崎と野島が現れたという塩梅のようだ。

 

 国崎は暫く二人を交互に見ていたが、徐に佐伯の方に歩いて行くと、いきなり右手の甲で佐伯の頬を引っぱたいた。

 

「あ痛っ…!」

「何やってるんですか、佐伯さん!」

 

 声こそ荒らげていないが、その冷然さは佐伯をたじろがせた。

 

「いや会長…こいつが先に手を出したんです!」

 

 佐伯は弁明しようと塚野を指差したが、国崎は首を横に振った。

 

「あなたが挑発したんでしょう?でなければ、殴り合いに発展する説明がつきません…それとも、証人が必要ですか?」

 

 国崎が、まだ戸口で様子を窺っている生徒会員達を見た。

 また、国崎も直に見たわけでは無いものの、状況を一瞬で察したらしい。

 

「そ、それは…あの…つまり…」

「あなたには追って処分を伝えます。今は退室して下さい」

「か、会長…?」

「…二度は言いませんよ?」

「…はい会長」

 

 有無を言わさぬ口調に、佐伯は渋々、しかし黙って従い、生徒会長室を出て行った。

 その背中を見送りながら、野島が塚野に声を掛ける。

 

「おい、大丈夫かよ?」

「スッキリしたかな」

 

 扉が閉まると、国崎は塚野に頭を下げた。

 

「ごめんなさい。副会長が暴言吐いたのでしょう?」

「いや…まあ…殴った私も…悪いです…」

 

 塚野もバツが悪そうに謝ったが、

 

「佐伯さんには何度か忠告していたのですが…」

 

 と国崎は、床に散乱した文房具やファイル等を慎重に避けて歩きながら執務机を迂回して、片付けは後回しで椅子にゆっくりと座った。

 

「でも最初は誰かと思いましたよ」

「え?」

「あなた、化粧が取れたら凄く美人ですよ」

「ですよね。私も初めて塚野の素顔を見ました」

 

 と、野島が言った。

 

「ええ。そのままの方が好きですよ、私は」

「その意見に一票です」

 

 2人の言っている意味が分からず、塚野は戸惑った。

 

「え…何言ってんの?」

「逆になんであんな化粧してたんだよ」と、野島が問い返した。「コンテストでも開いたら優勝レベルじゃねえのか?」

 

 どうやら褒められているらしい事に気付き、何とも言えない感情が塚野を包んだ。

 

「な、なんか…褒められたの初めてなんだけど…」

「何?」

「いや、なんて言うか…」

 

 すると国崎が話を転換して、

 

「まあそれはそうと、今の状況を説明します」

 

 塚野と野島が体を真っ直ぐにすると、「塚野さん、あなたが気を失っている間に、乗って来た戦車は、この前認可した倉庫に移動させました。野島さんが運送屋さんに頼んで、運び込んで貰いました」

 

「あ、ありがとね」

「気にすんな。あたしも、ちゃんとあの戦車について調べてなかったし」

 

 国崎が再び話し出した。

 

「ただ、このままでは、戦車道の活動継続困難と見なされます。そうなると、直接あなたの学業継続困難に繋がります。これ以上の説明は…いりませんよね?」

「うっ…」

 

 塚野はその先の意味を察して言葉に詰まったが、返事を絞り出した。「…はい…」

 

「続けるには、あなたが証明しなければなりません。戦車道の活動が、継続可能であるという証明を、です」

 

 塚野は唾を飲み込んだが、釈然としない部分もあった。

 

「で、でも…戦車道以外の活動に移ったら、問題無いんじゃ…」

 

「それは認められません。他の活動への切り替えが、退学を回避する為の延命措置の手段となるからです。もし他の活動に移っても、恐らく同じ事を繰り返すでしょう…次から次へと、癖となって」

 

「…戦車道で挽回すると決めたから…ですか…?」

「その通りです」

 

 しかし、国崎の言う証明を、一体どうやって示せばいいのか、何一つ名案は思い浮かばない。

 頭の中をループしていたのは、『退学』という二文字で、前よりも現実味を帯び、説得力を増しつつあった。

 

「一応、どうすべきかは伝えます。3日の猶予を与えますので、それまでにオリエンテーションのやり直しを成功させて下さい。また失敗したり、タイムリミットを越えた時は…戦車道は活動継続困難と見なします」

 

 野島は少し目を見開き、塚野は驚愕で思わず一歩前に出た。

 

「たった3日…ですか…?」

「はい」

「それって、幾ら何でも無茶過ぎじゃないですか!?」

 

 しかし国崎は、キッパリと首を左右に振った。

 

「それ以上は、認められません」

 

 もはや梃子でも動かないだろうし、これ以上の抗議は良い結果を招かない。

 

 どうやら吞むしかなさそうだった。

 

「…分かりましたよ…」

 

 話はそれで以上となった。

 

 

 

「…3日とか無理ゲーじゃね?」

 

 廃倉庫の前に置かれたカヴェナンターの砲塔を背もたれに、立てた右膝に右腕を乗せながら塚野がぼそりと言った。「あの会長、頭おかしいんじゃね?」

 

 野島はカヴェナンターの正面から塚野を見上げている。

 

 カヴェナンターの売却金を足しにして別の戦車を買い直す手も考えたのだが、二束三文にしかならず、カヴェナンターでオリエンテーションのやり直しに臨まなくてはならなかった。

 

「でもよ、やるしかねえだろ」

「さっさと退学申請出してこよっかな」

「おい待てよ」

 

 野島が声を上げた時、土橋と萩原が現れた。

 

「あ、やっぱりここだったんだ」

 

 と、土橋が萩原を従えて合流した。「ちょうどミツキちゃんとばったり会って、それで…」

 

 土橋も萩原も、化粧が剥がれた塚野の顔立ちに困惑した。「えっと…スズやんだよね?」

 

「だと思いますけど…」

 

 と、萩原も目をしばたたかせていた。

 

「うん、そうだよ」

 

 塚野が答えると、2人とも驚きのあまり暫し言葉を失っていた。

 

「…すっごい綺麗じゃない」

「はい。普通に女優さんとかモデルさんになれそうですよ」

 

 と、萩原も同意した。

 

「ほら、お世辞じゃねえだろ」

 

 と、野島が言った。「あんた、マジで美人だぜ」

 

「ま、まあ…ありがと」

 

 塚野は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

「それで、もう大丈夫なんですか?塚野さん」

 

 と、萩原が尋ねると、塚野はあっという間に素っ気ない表情になった。

 

「全然。最悪」

 

 その素っ気なさに、萩原は困惑した。

 

「ど、どうしたんですか一体?」

「あと3日でオリエンテーションのやり直しを成功させないと、あたし退学になるの」

「え…!」

 

 萩原は、なぜそうなるかをすぐに思い出した。ただ、それを言葉には出せない。

 

「遠慮しなくてもいいよ。どうせあたしはおしまいなんだから…」

 

 項垂れてしまった塚野に、野島と土橋がどうすればいいものかと目を合わせた。

 塚野は完全に投げ槍になっており、持って行き方によっては本当に自主退学を決意させてしまいかねなかった。

 

 が、それでも説得しなければならない。

 

 しかし最初に口火を切ったのは萩原だった。

 

「あの、塚野さん…」

「ん?」

 

 塚野が緩慢な動きで顔を上げた。

 

「大洗女子学園と黒森峰女学園の試合の動画、覚えてますか?」

 

 塚野は、萩原が言わんとする事を図りかねて首を傾げた。

 

「…覚えてるけど、そんで?」

「塚野さんは、御存知でしょうか?あの全国大会、大洗は優勝しなければ廃校になっていた事を」

「いいや。初めて聞いたけど」

「大洗女子学園は廃校を回避する為に、戦車道を立ち上げて、全国大会に挑み、優勝する事で廃校回避を勝ち取りました。でも、まだ終わりでは無かったんです。3週間も経たない内に、廃校の撤回が無かった事にされたんです」

 

塚野だけでなく、野島や土橋も信じられないという風に目を丸くしていた。それもその筈である。廃校回避の条件を満たしたのに、どうして無かった事にされるというのか?

 

「なんでそうなったの?」

 

 と、塚野が3人を代表して聞いたが、萩原は首を横に振った。

 

「分かりません。ただ、文科省の学園艦教育局が、とにかく無い事にしたらしくて…」

 

 萩原はそこで一端間を置いた。「でも、大洗は諦めませんでした。その結果、大学選抜チーム…少なくとも、高校生より経験と練度を積んだ強敵…と試合をする事になって、それに勝てば、今度こそ廃校を回避できる事が認められ…大洗は辛うじて勝利しました。廃校は撤回され、大洗の存続が正式に決まりました」

 

 萩原の真っ直ぐな視線を受けて、塚野は少し目を逸らした。

 

「それがどうしてか、塚野さんは分かりますか?」

「…諦めなかった、から?」

「そうです。大洗は諦めずに、自らの存続を賭けて必死に戦い、存続を勝ち取ったのです。それも2度に渡って。まあ、私も最近知った事なのですが…」

「そういや、会長がちらっと話していたのは、それだったのかな…」

 

 それは、塚野が戦車道を始めると申請した時の事だ。

 あの時、国崎がネットニュースで、高校生のチームが大学生のチームを破った試合の記事を読んだ事をチラッと話題に出していた。

 しかもそれは、自分が『トライポイント』を獲得する為の活動を何にするか、悠長に悩んでいた日に起こった出来事では無かったのか…?

 

 萩原は話し続けた。

 

「試合後のインタビューで、大洗戦車道チームの隊長、西住みほさんは、こう答えています。『どんなに苦しくても、それが何回立ちはだかって来ても、立ち向かい続ける限り、道は開けます。途中で引き返せば、全て終わりです』と」

 

 痛い所を突かれたような感じになって小さく呻く塚野。

 

 それを兆しと見た野島が畳みかける。

 

「そういやお前、ちょっと苦しい事あったら諦めてなかったか?ここの受験通ったのが不思議なくらいに」

「…そうかも」

「そうなんだよ。もう、終わりにしねえか?」

「そうだよスズやん。最後までやってみよ?」

 

 土橋も野島に加勢しつつ、こうも言った。「私も、戦車道に参加するから!」

 

「え、ツッチー、漫画部じゃなかった?」

「実は…戦車道を題材にした漫画を描こうと思っててね。でもそれを描こうと思ったら、実際に戦車道に参加して、実際に戦車に乗った方が理解を深められるんじゃないかって。そうしたら、説得力のある戦車道の漫画を描けるかもって」

「まじか。こっちも負けてられないな。部活浪人やってたし」

「おじいちゃんにも報告しないとね」

「そうだな」

 

 そしてまた塚野を見る。「で、どうする?塚野」

 

 塚野は数秒考え込んでいたが、やがて顔を上げた。

 その表情はまた活力を取り戻していた。

 

「うっし。やってみっかな」

 

 立ち上がると、3人の前に飛び降りた。「ぶっちゃけ退学回避の手段に戦車道選んだけど…あの動画に感動した事も事実だし、どうせならひと暴れしてやろうって意欲がもりもり湧いてきた」

 

「ひと暴れとはなんだか物騒ですね」

「おハギの責任だかんね」

「え、おハギ!?」

「ハギワラだからおはぎ」

「ま、まあいいですけど…」

「調子戻ったな」

 

 と、野島が言った。

 

「あんな偉そうな事言っておいてなんですが…白状すると、私も今日の一件を見て、戦車道への取材をやめようとしちゃいまして…そしたらデスクにこっぴどく叱られちゃったんです」

 

 その時の福地の剣幕は、萩原にとって初めて見る剣幕だった。

 

『いざ駄目そうだと思ったらあっさり捨てるなんて、酷過ぎじゃないかしら?あなたのおかげで、今日のオリエンテーションに人がたくさん集まったのよ。だから、あの子を助けてあげなさい。あなたにしか出来ない事で』

 

 思い返すと、福地デスクはこのままだと塚野がどうなるかを知っていたような口ぶりだった。

 だが不思議は無かった。福地デスクは、あらゆる方面に情報網を張り巡らせているのだ。だからこそ、『あの子(塚野)を助けてあげなさい』と言ったのだろう。

 

「そんな事言われたんだ」

 

 萩原は頷いた。

 

「なので、また私が人を集めます。どうして失敗したのか、どう改善するのか。そういった事を記事に強調して明記します」

「けどよ」

 

 こう言ったのは野島だった。「あの蒸し風呂はカヴェナンター特有の『持病』だぜ。改善するって言っても、どうやるんだ?」

 

「うーん。それは…」

 

 萩原は言葉に詰まったが、塚野は一案が閃いていた。

 

 

 

 続く

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