ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー   作:ミハイル・シュパーギン

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チャプター4 合同説明会

 そして合同説明会当日。

 

 学園艦が横須賀に寄港すると、朝早くから塚野と野島の2人はJRを利用して横須賀駅から横浜駅に移動し、そこからベイサイドブルーと呼ばれる連接バスで合同説明会用の貸会場があるパシフィコ横浜まで移動した。

 

 会場より海を臨む方角にある臨港パーク南口広場では、2輌のカヴェナンターと共に既に佐伯と鹿屋が待っていた。

 

「おっはー」

「ちゃんと挨拶してよ」

「グッモーニング」

「…はいはい」

 

 佐伯はうんざりしてスルーした。「隼の車輛はまだよ。今日の午後に到着予定みたい」

 

 2輌のカヴェナンターは広場の右側に配置されており、スペースがある左側がSPK-5とアレクト・ドーザーの為に空けられていた。

 

 そして広場には運動会等で見られる白屋根のテントが2つ並び、その下に折り畳み机や折り畳み椅子、パワーポイント用の機械にまだ展開されていないスクリーン、何か道具が入っているらしい段ボール箱やクーラーボックスが積み上げられている。 また、海風から書類や身を守るための仕切りも立てられていた。

 

「え、ここでやんの?」

「戦車は中に入れられないわ」

 

 と、佐伯が会場の方を指差した。

 

「入れてもいいと思うんだけどなー」

「だから無理だって言ってるでしょ」

「そんなー」

「クーラー利いてないのマジやばいんですけどぉ…」

 

 と、塚野は早速暑さにやられる自分を想像してしょげている。

 

「ちょっと我慢も出来ないの?」

「つかそろそろ始まるぜ」

 

 野島の言葉で、4人は最後の準備に取り掛かった。

 因みに土橋と萩原は、少し遅れて到着する事になっていた。

 

 とは言え、早々経験者を引き入れられるものでは無かった。

 広場に展示されている戦車を見に来る来場者は多いものの、説明を受けに来る人間はなかなか現れなかった。

 

 それでも3人が興味を持ってくれたが、やはり『仮承認段階』である事が引っ掛かって席を立って行ったのだった。

 

「厳しい状況ですね…」

 

 と、戦車の前で記念撮影する来場者を見ながら萩原が言った。

 物珍しさに『客入り』はいいが、『交渉』は散々だ。

 

「ネックはやっぱり仮承認だよね…覚悟してはいたけどさ…」

 

 と、土橋が物憂げに言った。「うまくいくか不安になってくるね…」

 

「まだ始まったばっかだし、まだまだこれからよ」

 

 そう言いながら、塚野がクーラーボックスから冷えた緑茶のペットボトルを取り出した。「ねえ、ブラックコーヒーは無いの?」

 

 佐伯がポカンとした表情で塚野を見た。塚野のため口に反応したのではない。もう面倒になったので、その辺は無視する事にしたからだ。

 

 彼女が気になったのは、『ブラックコーヒー』である。

 

「…は?」

「ブラックコーヒー。缶でもペットボトルでも」

「そんなの飲むの?」

「よく飲むよぉ。で、あんの?」

「…無いけど。買って来たら?」

「そうしよっかなぁ」

 

 しかし今日はよりによって日差しがきついし、ましてや太陽が最も昇る正午に近い時間帯だ。

 実際、外を歩く人々の顔は汗だで、日差しを受けて辛そうに目を細めている。「まあだるいし、お茶でもいっか」

 

 ペットボトルのキャップを回して外し、一気に3分の1まで飲み干す。

 

「ふぅ。すっきりするぅ」

 

 と、そこへ。

 

「あのすみません。戦車道経験者を募集してるって話聞いたんですが」

 

 全員がハッとして声の主を見ると、1人の女子高生がテントの前に立っていた。その手には今回の合同説明会の案内パンフレットが握られている。

 

「はいはい、座って座って」

 

 と、塚野は緑茶のペットボトルを持ったまま椅子を指し示した。

 相手もそれに応じて椅子に座った。

 

 ただ、これまでに3人が席に座り、フロンティア学園の戦車道が『仮承認段階』である事を知ると失望して去って行った。なので、誰ももはやぬか喜びなどはせず、今回も同じように去って行くだろうと思っていた。

 

 先の3人と同じように概要を説明し、しかし『仮承認段階』なので本当にこのまま続くかどうかはまだ分からないと注釈を付ける。

 

 だが、今回はなんと反応が違った。

 

「じゃあ、正式承認目指して頑張りましょうよ!」

 

 予想外の反応に、塚野は驚いて相手を見返した。

 相手は熱心に話し続ける。

 

「折角始めたんですから、正式承認を勝ち取るべきですよ!」

「ま、まあ、そうだけどさぁ…」

「私で良ければ、力になりますよ!」

 

 と、相手は少し身を乗り出してきた。「実は私も、戦車道を立ち上げようとしていたんですが、そうなる前に廃校になってしまいまして…なので、あなた達の活動に共感出来ます!」

 

「元々はどこ出身?」

 

 と、佐伯が尋ねると、

 

「大鳥高校です」

 

 と、相手は答えた。「大地ヒデミです。2年生です。お会い出来て嬉しいです!」

 

「どれくらい戦車道やってたんですか?」

 

 これは萩原の質問である。別に疑うわけでは無いが、それでも戦車道歴がどのくらいかは確認しておきたいものだ。

 

 「えーっとですねえ。小4くらいから始めてるんで、大体6年ですかね。地元の大鳥高校で戦車道チームを立ち上げたいと思って頑張ってたんですが、実を結ばず、この通り漂流の身です」

 

「じゃあ、来てくれる?」

「凄い即決だね」

 

 と、土橋が苦笑しながら感想を述べつつ、「いや、反対じゃないけどね」

 

「確かにこれと言った実績は無いですけど…」

 

 と、大地は弁明するように言う。「それは実際の練習や試合等で証明していければと思っています」

 

「ほら、こう言ってるし、そんな疑わなくていいじゃん」

 

「まあ、隊長はスズネだしな」

 

 と、野島がそう指摘した。「決定権は隊長にあるからな」

 

「そうゆう事」

 

 野島は暗に、決定権の掌握は同時に責任も伴う事を示したわけだが、塚野に迷っている様子は無かった。

 人材確保を急いでいた事もあるし、何よりこの大地という人物の言葉に嘘偽りといったものは感じられなかった事もあった。いわば塚野自身の直感だが、信じても問題は無いという思いがあったのである。

 

「なるほど。あなたが隊長ですね。宜しくお願いします!」

「こっちこそよろっす!」

 

 塚野が手を差し出し、大地がそれに応じて互いに握手を交わした。「期待してるよぉ!」

 

「はい、頑張ります!」

 

 

 

 そして時刻が正午となり、一端昼休憩となった。

 

「それでカヴェナンターを」

「すっげぇなんか掴まされたって感じ」

「でも、あとその2輌があるんですよね?」

「そうそう。ちょっちぃ予想外だったけどねぇ」

 

 塚野と大地は、合同説明会に合わせて出店した飲食店の屋台から買ったカレーライス入りの容器を収めたビニール袋を手に提げながらテントに戻っているところだった。隊長として、この戦車道経験者の事を知っておく必要があった…まあ、こちらは素人で、相手は経験者なのでなんだか奇妙な感覚だが。

 

 因みに他のメンバーは他の屋台で買い物をしているらしく、一緒にいない。

 

 とにかく、歩きながら大地が話した簡単なプロフィールとしては、彼女の元在籍校である大鳥高校は名古屋を母港とする学園艦をプラットフォームとしており、学園艦は旧日本海軍の香取型練習巡洋艦をモチーフにしたデザインで、大きさは学園艦としては小ぶりな3000mらしく、これまで戦車道は設置された事が無かった。

 

 しかし、四日市市出身の大地が入学以来、戦車道発足に向けて活動を開始しており、当初は見向きもされなかったが1年強も粘った結果、漸く生徒会や学園長といったトップの人間にも検討が始まるところまで漕ぎ着けていた。しかしその直後に文科省による学園艦の統合政策における廃校の対象に選ばれてしまい、計画は頓挫するという憂き目を見たのであった。

 

 だからこそ塚野達の取り組みに共感し、参加を決意したというわけである。

 

 当時の大地の計画では、軽戦車を中核とした編成で、その中に切り札となる高火力小型戦車を1、2輌程組み込む予定だったらしく、その高火力小型戦車とはヘッツァー軽駆逐戦車だったらしい。

 

 塚野も近年の戦車道の試合の動画を視聴しているので、本当は大洗の運用するヘッツァーも見ているわけだが、今はまだ名前と姿が一致しなかったので、その場では首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 さて、話を2人の会話に戻そう。

 

「戦車の配置が不自然だったんで、多分そうなのかなあって思っていましたが、やっぱり他に戦車があったんですね、やっぱり」

 

 隼高校の機械部の保有する作業車の事だ。午後から到着予定だが、まだそれらしき車輛が来ている様子が無いので、少し気になっていた。

 

「戦車っつうか…クレーン車とかブルドーザーだけどねぇ」

「いえいえ、戦車に改造できるから実質戦車ですよ!」

 

 名前を聞いただけで、大地はそれぞれどういう種類の戦車に改造出来るか熟知しており、塚野も大地の知識量に感心していた。

 

「やっぱ経験者は違うなぁ」

「いやいや、そんな事無いですよ」

 

 その時大地は、擦れ違った女子高生に気になる点があったのか、鼻をクンクンさせた。相手がその行為に気付いて不審げに目を細めて振り返って来たので、慌てて背中を向けたが、塚野は何だろうと気になった。

 

「…どしたの?」

「いや…あの人…微かにオイルの臭いがした…」

 

 と、呟くように言う大地。「…ひょっとして、あの人も戦車道経験者かも…?」

 そしてまた振り返ったが、その時には『オイル臭』のした女子高生は人混みに紛れて見えなくなっていた。

 

「なんで臭いで分かんの?」

「戦車道やってる人は、特徴的なオイルの臭いがするんです。って言っても、意識しないと分かんないんですが、どうも私は鼻が利く方みたいなんです」

「へぇ。すげぇじゃん」

「あんまり自慢出来た事では無いですけどね…」

 

 と、苦笑しながら大地は答えた。

 少し気にはなるが、テントに近付いてきたのでその話はそれで終わりとなった。

 

 やっと腰を落ち着けて昼飯にありつけるようになったが、現実は意地悪とでも言うべきか、すぐにお預けになってしまった。

 

「あ、塚野さん。あれじゃないですか!?」

 

 大地の視線を追うと、トレーラーの荷台に乗せられてやって来る3輌の装軌車輛の姿があった。

 

 …そう、3輌である。

 

「…3輌?」

 

 塚野が思わずキョトンとすると、

 

「多分、もう1輌を見つけて来たのではないですか?」

「ふーむ。行ってみよっか」

 

 よく分からないまま、トレーラーに向かって歩き出す。また、荷台の上には3輌の他に長大な牽引砲も積載されており、益々訳が分からなくなった。

 

 

 

続く

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