ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー   作:ミハイル・シュパーギン

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チャプター7 後退

 右に左にジグザグ走行するレオパルトの周囲に、追いすがる敵先遣隊の砲弾が次々着弾した。

 レオパルトも負けじと50mm砲で撃ち返すが、照準器が上下左右に大きく揺れてはさしもの鹿屋も命中させる事は出来ない。

 

「あー。また外しちゃったよー」

「撃たなかったらもっと詰めて来るわ」

 

 塚野が装填している間に村江が言った。「だから撃ち続けて」

 

「りょうかーい!」

 

 どちらも命中弾を得られていないが、ジグザグに走る分スピードが限定されるレオパルトに対し、IS-3やT-44は真っ直ぐに走って来る。

 しかもSU-100やⅣ号駆逐戦車は固定砲塔なので砲を後ろに向けられず、応戦出来るのはレオパルトだけなので殆ど回避行動しない。

 そしてレオパルトの主砲では、真正面から対抗するにはあまりに厳しい。

 

「くそぉ!もっと早く走ってよぉ!」

「これが限界なんです!」

 

 必死に試作ドイツ軽戦車を操作しながら田張はそう叫び返した。

 

「うわもう来たし…」

 

 双眼鏡で敵先遣隊の遥か後方に敵本隊を見つけた塚野は小さくそう呟いた。

 敵本隊の存在については、既に通信で聞いている。

 

『こちら隊長。援護するから急いで川を渡って』

「了解!」

 

 塚野は配下の駆逐戦車3輌に、「みんな!味方が援護してくれるからその間に川を渡るようにって!」

 

「隊長、先に黒森峰の人達を渡らせましょう!」

 

 そう言ったのは桐山だった。

 やはり待ち伏せ作戦を台無しにした責任を感じているようだ。

 

 それは塚野も同じで、直接的な責任では無いが、フロンティア学園のチームを纏める立場としての思いだった。

 塚野は2輌の四号駆逐戦車を呼び出す。

 

「こちら塚野。黒森峰のみんなは先に渡っちゃって下さい。その間援護するんで!」

「…え?あ、さっきの事気にしてるなら、もう大丈夫だから!」

 

 塚野の気持ちを察した16号車の車長の声が応答した。

 

「ドンマイドンマイ!」

 

 と、17号車の車長の声も快活に応じた。「だからみんなで渡っちゃお!」

 

 そうは言われても、素直に『はいそうですか』とは答えにくかった。

 

「うーん。でもさすがにちょっちぃ…」

「うだうだ言ってないで渡るよ!いいからいいから!」

 

 尚も渋る塚野の背中を、16号車の車長の言葉が押した。

 

「ミスしない人間なんかいないって!」

 

 と、17号車も励ますと、桐山の声が割って入った。

 

「あの、本当にごめんなさい…」

「へこんでる暇があったら急いで川を渡ろ!」

「そっちの方が敵の攻撃がばらけるから安全だよ!」

「あ、有難うございます…!」

 

 桐山と黒森峰メンバーの通話を聞いて、塚野もやっと気持ちを切り替えた。

 

「おっし!全車で渡河するよぉ!」

「川が見えたわ」

 

 一度ハッチを開けて前方の光景を確かめた村江が言った。「味方も見えたわ」

 

 

 

「別動隊B発見!」

 

 赤星が報告した時には、エリカも双眼鏡で敵戦車隊の砲撃に晒されながら逃げて来る別動隊Bを見つけていた。

 敵戦車隊もこちらを見つけたらしい。

 減速してこちらの様子を窺うように砲を向けて来たが、まだ有効射程外だから安全だ。

 恐らく、後続の敵本隊との合流を待っているのだろう。

 

「全車、煙幕弾装填!」

 

 塚野達と敵戦車隊の間に煙幕を張って視界を遮り、渡河を援護する作戦だ。

 しかしはたして、うまくいくだろうか。

 何か見落としている点はないだろうか?

 

 エリカは腹に力を入れて、ふつふつとこみ上げて来る得体の知れない不安を押し殺し、目前の作戦手順に意識を集中した。

 

「別動隊B、間もなく川に到達!」

「停止!」

 

 黒森峰戦車隊は楔形陣形から横一列陣形に移行する形で停車し、砲塔の向きと主砲の仰角を調整した。

 

 

 

「…急げ。時間が無いぞ」

 

 観客席では、まほが小さくそう警告していた。

 モニターには、中継ドローンから送信されてくるリアルタイム映像が黒森峰とフロンティア学園の合同チーム、そしてイズベスチヤ社のアグレッサーチームが同じ画面内に映し出されていた。

 

「…これ、大丈夫でしょうか?」

 

 萩原が不安そうに国崎と土橋を交互に見た。

 

 

 

「隊長、スモーク準備完了!」

 

 田村副隊長の言葉に、カリンカは頷くと

 

「撃て!」

 

 瞬間、5輌のIS-3の主砲が火を噴き、5発の煙幕弾は次々と川面に落下し、一瞬のタイムラグの後に濛々と濃い白煙を膨らませ始めた。

 

 

 

「IS-3が煙幕弾を発射した模様!」

「くそっ、これじゃ援護出来なくなるじゃない!」

 

 エリカは愕然として川に広がっていく煙幕を凝視した。

 相手は確かにまだこちらに射程が届かない位置にいるが、まさか妨害の手を打って来るとは思っていなかった。

 

 …いや、どうしてこんな事を予想出来なかったのか?

 

 エリカは自己嫌悪に襲われて、砲塔の天板に左の拳を叩きつけた。

 しかし赤星の声が正気を取り戻させた。

 

「どうしますか!?」

「くっ…弾種切り替え!徹甲弾!」

 

 

 

「敵戦車増速!」

 

 16号車の車長が叫んだ。

 かなり動揺していて、目が大きく見開かれている。

 

「おい、早くしないと追いつかれるぞ!」

 

 さすがの野島も焦りの表情で塚野を見る。

 

「…あたし達で気を引こっか」

「あ?」

 

 言ってしまうと、塚野は急に肝が据わる感じがした。

 これが覚悟を決めた、と言う事だろうか。

 

「黒森峰には先に渡河して貰って、こっちは援護するっきゃないよ!」

「何言ってんのよ、こっちも応戦するから!」

 

 16号車が言い返してきたが、塚野は部隊長権限で一蹴した。

 

「黒森峰は渡河!これは命令だし!」

「…了解。やられないでよね」

「き、気を付けてね…!」

 

 16号車と17号車は、SU-100とレオパルトを後に置いて渡河を開始した。

 敵の砲弾が再び降り注ぎ始め、周りの地面を抉り、水柱を上げた。

 見ると、本隊と合流しつつあった敵先遣隊が前進を再開し、じりじりと距離を縮めて来ていた。

 

「ちっ、100mm砲を舐めんなよごらあ!」

 

 SU-100が負けじと撃ち返したが、それに対して返って来る砲弾の量はこちらを怯ませた。

 

「このままじゃやられちゃうよ~!」

「泣き言言ってねえで弾を込めろ!」

 

 伊関は野島に叱咤されつつ砲弾を込めた。

 

「装填!」

「ファイヤ!」

「ここが踏ん張りどころだよ!」

 

 中村が鼓舞するように言った。

 それは同時に、この激しい攻撃に対して自分自身を落ち着かせる為でもあったが、緊迫した状況に操縦桿を握る手は否応にも力が入っていた。

 

「やっぱりこれ…私のせいですよね…」

 

 またまた自分の発言による失態が脳裏に蘇って来た桐山は、もはや半べそをかいていた。

 

「いいから撃ちやがれ!」

 

 野島はそう言い返した。

 

 

 

「横に回り込みながら攻撃するよぉ!」

「分かりました!」

 

 田張はレオパルトを発進させると、アーチを描くようにしてアグレッサーチームの側面に回り込むコースを取った。

 全長に対して横幅が広いレオパルトだが、幅広の履帯のおかげで機動力は非常に高い。

 

 アグレッサーチームも、こちらの横を取ろうとするレオパルトに注意を向けざるを得ない。

 本隊も間もなく攻撃を開始するだろうから、焼け石に水にしかならないだろうが、塚野達にとっては2輌の四号駆逐戦車を逃がす目的を達成すればそれで良かった。

 一方、村江は通信機のつまみを動かして仲間を呼び出そうとしていた。

 

 

 

「勇敢ね。でも・・・無謀だわ」

 

 カリンカは、味方の渡河を援護しようと必死の抵抗を試みるレオパルトとSU-100を見て評価しつつもそう言った。「手近な車輛はレオパルト及びSU-100に照準!」

 

 カリンカの言う『手近』なIS-3やT-44の砲塔が回り、レオパルトとSU-100に向けられた。

 それ以外の車輛は、渡河が半分に差し掛かったⅣ号駆逐戦車に照準を合わせており、IS-3は定期的に煙幕弾を川に撃ち続けて煙のカーテンを維持し続けている。

 

 発射命令を出そうとした瞬間、後方で軽い調子の銃撃音が響き、何発かの銃弾がカリンカのIS-3の車体にも当たって跳ね返った。

 

「うん?」

 

 身を捻って振り返ると、相手はルノーUEタンケッテ仕様だった。

 8mm機銃以外にロクな武装が無い、小さくてかわいらしいフランスの装甲車輛が、健気にもこちらに突撃しながら断続的に機銃弾を浴びせかけてきている。

 

「あれは無視して…発射用意…!」

 

 息を大きく吸い込んでいると、またしても集中力を邪魔された。

 

「3時方向!ハリーホプキンス!」

 

 味方からの報告と同時に鋭い砲撃音が3時の方角から轟き、ハリーホプキンスから放たれた2ポンド砲弾が一番右側にいたT-44の砲塔に当たって上向きに弾かれた。

 そこにレオパルトとSU-100からの砲弾が着弾する。

 

「全く、ちまちまと小うるさいわね」

 

 田村の声が低くぼやき、「どうします?」

 

「まずはレオパルトとSU-100からよ」

 

 そして今度こそ、目下脅威度の高い標的に射撃命令を出そうとした直後。

 

「カリンカ隊長!黒森峰本隊が渡河してきました!」

 

 またも命令を中断して川に双眼鏡を向けると、煙幕の壁の中からティーガーⅡの主砲のマズルブレーキがぬっと突き出て来る瞬間が目に入った。

 

 

 

「煙幕を抜けました!」

 

 操縦手がホッとしたように言い、エリカがハッチを開いて身を乗り出す。

 

「よし、行進間射撃用意!」

 

 エリカは対岸の味方を助ける為に固定砲塔戦車隊を後方に待機させ、回転砲塔戦車だけで渡河してきたのだった。

 別動隊Bを逃がしたあと自分達もバックして、それを待機させている固定砲塔部隊に援護させるというわけだ。

 

 ティーガーⅡやパンターは川をざぶざぶとかき分けながらが砲塔を動かして前方にずらりと並ぶIS-3やT-44の集団に狙いを定める。

 相手もレオパルトやSU-100からこちらに狙いを変えて砲口を向けて来るのが見えたが、ただでさえ重い重戦車が川を渡っているこの状況では、余計に回避行動をままならなくしていた。

 

「16号車と17号車が煙幕に入りました!」

 

 様子を見届けた赤星が言った。

 

「よし。撃て!」

 

 ドイツ戦車隊が発砲すると、ソ連戦車隊も撃ち返してきた。

 地面を抉ったり水柱を上げたり跳弾したり掠めたりと、互いに有効弾は得られなかったが、照準を調整して次は撃破せんとする。

 そして再び砲弾の応酬。

 

「こちら11号車!撃破されました!」

「こちら7号車!左履帯に異常!ですがまだ動けます!」

 

 一方で黒森峰もT-44を1輌撃破したが、ジリ貧になるのは目に見えていた。

 

「あと2輌は…」

 

 と、右前方の河原で砲撃音が轟き、そちらに視線を転じると、SU-100がまだ渡河を始めず砲撃に加わっていた。

 

「隊長からSU-100へ。早く川を渡りなさい!」

『わ、分かりました!』

 

 野島の声と共に、SU-100は信地旋回するとエリカの言葉通りに川に分け入り始めた。

 それからエリカは、これまた横槍を入れ続けているレオパルトに向かって渡河を促す。

 

「レオパルトも早く渡河しなさい!」

 

 隊長の命令とあっては塚野も命令に従わざるを得ない。

 

『あっ、わっかりました!』

 

 田張が巧みにレオパルトを反転させて川へ一目散に戻り始めた。

 何発か後を追ってきたが、何れも後ろを掠めただけに留まった。

 

「世話を焼かせるわねもう…」

 

 しかし同時に、新参者ながら勇敢に戦いを挑む彼女達に好感も抱いた。

 思わずちょっと頬を緩ませたところで、重戦車隊は川を渡り切って対岸に上陸した。

 これで足に地を付けて腰を据えた砲撃が出来る。

 

「停止!」

 

 エリカは右腕を上げて隊列を停止させる。

 がくんと前に一度つんのめってから顔を上げるように姿勢が元に戻ると、砲塔と主砲を少し動かしてアグレッサーチームに狙いを付け直す。

 

「撃てっ!」

 

 この撃ち合いでまたパンターが1輌撃破され、今度はこちらが敵に与えた損害はゼロだった。

 

 エリカは後方の駆逐戦車隊に催促を入れる。

 

「まだ煙幕は晴れないの!?」

『…やっと薄れてきました!』

 

 駆逐戦車隊の指揮を執るヤークトティーガーの車長がそう答えたので、一瞬後ろを振り返ると、薄れつつある煙幕の向こう側に駆逐戦車隊の姿がうっすらと見え始めていた。

 

「じゃあ早く援護して!」

『もう少し待って下さい…!』

 

 ヤークトティーガーの車長はそれから数秒沈黙し、『援護射撃開始!』

 

 瞬間、後方の隊列からフラッシュが瞬き、エリカ達の頭上を駆逐戦車隊の砲弾が通過してアグレッサーチームに殺到していった。

 特にヤークトティーガーの128mm砲の弾丸は強力で、IS-3を1輌ノックアウトしたのだった。

 

「IS-3、1輌撃破!」

 

 赤星が嬉しそうに言った。「あ、レオパルトも渡河を開始しました!」

 

「よし、後退!長居は無用よ!」

 

 履帯の後ろが川に浸かり始めた直後、エリカは我が目を疑った。

 

 なんとアグレッサーチームが急加速し、突撃し始めたのだ。

 

 20秒程でこちらに到達するが、こちらを抱き込んで駆逐戦車隊の攻撃を封じるつもりだ。

 数で圧倒的だから、殲滅も楽勝だろう。

 

 それでもエリカは冷静を保とうと努め、息を深々と吸い込むと、

 

「隊長車に照準!あれをやれば指揮系統が崩れる筈!」

 

 逸見エリカは、隊長車撃破に活路を見出そうとした。

 殲滅戦ルールだが、指揮官を失えばたとえ一瞬にしても隙が出来る筈だ…とだけ言えば聞こえは良いが、実際には至難の業だった。

 

 正確な照準を行う為には一端停止しなければならないが、敵戦車隊の猛烈な弾幕の中でそのような事をするのは自殺行為だ。

 

 ガギーン!

 

 前後運動で回避するティーガーⅡの正面傾斜装甲に、122mm徹甲弾が当たって弾かれ、衝撃と轟音が車内を揺るがせる。

 この衝撃と轟音も正確な照準を妨げ、砲手の集中力を奪っていた。

 苛立ったところで無意味な事は頭で分かっているが、エリカは苛立っていた。

 

「…隊長車にロックした!?」

 

  と、切羽詰まった口調で砲手に催促するが、

 

「まだです!」

 

 砲手も歯を食いしばり、なんとかスコープの中心線に、敵隊長車のIS-3をたとえ0.1秒でも捉えようとする。

 

 と、赤星小梅のより一層緊張を帯びた声が通信機に入る。

 

「隊長!3時の方向から、敵戦車が新たに6輌現れました!」

「ぬっ!?」

 

 双眼鏡をそちらに回すと、はたして十字砲火を組もうと回り込んできた6輌のIS-3とT-44の部隊が横一列に展開しつつあった。

 

「…塚野達が危ない…!」

 

 

 この新手は、塚野達が待ち伏せ地点を放棄した後、カリンカが隊列から分離して回り込ませるコースで川に向かわせていたのだった。

 そしてレオパルトは未だ渡河中で、エリカ達の隊列の一番外側にいるから真っ先に狙われるだろう。

 

 しかしエリカ達や後方の駆逐戦車隊も、突撃してくる正面の敵部隊に手一杯だ。

 もう敵戦車隊はあと10秒もあればこちらに達する筈である。

 

「一気に抱き込むわよ!」

 

 カリンカは先頭を走るT-44のすぐ後ろのIS-3の車長用キューポラから身を乗り出していた。

 

 エリカ達は十字砲火を組まれた上に押し潰されようとしていたが、諦めるわけにはいかなかった。

 

「…全車、隊長車に照準!」

 

 もう1度敵隊長車の撃破に賭ける。

 しかも今度は、エリカのティーガーⅡ単独では無く、味方の全射線を集中するのだ。

 照準にじりじりする数秒を使う。

 

「撃てっ!」

 

 カリンカ車に向かって黒森峰の全射線が降り注ぎ、先頭のT-44を巻き込む形で何発か命中し、カリンカ車の履帯が千切れ飛んで急停止した。

 車体は至近弾による土煙で覆い隠される。

 

 しかし効果はあった。

 随伴車輛は隊長車への一点集中に虚を突かれたのか一斉にブレーキをかけ、隊長車を守るように陣形を整え直し始めたのである。

 

「やった…!?」

 

 エリカはペリスコープの向きを、カリンカ車を覆う土煙に回した。

 くどいようだが殲滅戦ルールなので、隊長車撃破=勝利ではないが、それでも心理的ダメージは大きい筈だ。

 

 が、やはり現実は甘くなく、すぐ前を走っていたT-44は砲身を破壊され車体のあちこちから黒煙を噴き上げながら白旗を上げて擱座していたが、カリンカ車は撃破されていなかった。

 恐らく巻き込まれたT-44が壁となって砲弾を何発か吸収したのだろう。

 

 カリンカ車も履帯が千切れ飛び、車体後部の燃料タンクが直撃弾で引火して炎上しており、見た目は派手だがIS-3の防御力は伊達では無かった。

 

「うーん。ダメみたいですね…」

 

 赤星が残念そうに歯噛みしたが、

 

「休まず撃ち続けて!」

 

 エリカが更に砲撃を集中させた事で、防御力の高いIS-3が正面に立ちはだかり、T-44が左右に寄り添うようにしてカリンカ車を守った。

 相手も撃ち返してきたが、近距離での撃ち合いに耐えかねたらしく、発煙弾をカリンカ車の周囲に投射して目隠しした。

 

 こちらも撃てなくなるが、相手側もそれは同じである。

 3時方向から詰めて来た敵6輌も砲撃で牽制されてそれ以上は近づいてこようとせず、距離を取っての撃ち合いに留まっていた。

 

「この間に川を渡り切るわよ」

 

 エリカ達は煙幕の外側にいる敵戦車との撃ち合いを続けながら川の中を後退し、やがて駆逐戦車隊が待つ対岸に逃れる事に成功した。

 しかし無傷では済まず、ティーガーⅡが1輌とパンターが2輌撃破されてしまった。

 

 敵戦車隊の監視に自チームのⅢ号戦車と、フロンティア学園のハリーホプキンスとルノーUEを残すと、エリカは態勢を立て直す為に残った味方車輛を引き連れてその場を離脱したのだった。

 

 損害はこちらの方が大きかった。

 

 

 

 続く

 

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