ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー   作:ミハイル・シュパーギン

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第7話 フロンティア学園vsバラトン工業高校
チャプター1 戦闘配置


そして迎えた翌日の午後。

フロンティア学園vsバラトン工業高校の試合が幕を開けた。

両チームともこれ以上負けられない…敗者復活戦はあるが…ので、隊員達の気合は嫌でも高まっていた。

因みに昨日の試合の疲労からはすっかり回復していたが、これは若さの特権と言うべきか。

 

「あ、人増えてね?」

 

塚野が観客席の様子に気付いて言った。

確かにフロンティア学園の制服を着た人間は前よりも多く、恐らく同学園艦の一般住人だろうか、大人達も少し増えているように見える。

 

「放送部のライブ中継が相当効果あったらしいです」

 

と、萩原が言った。「我々も派手に宣伝打っておきました」

 

「ああ、あの朝刊か・・・」

 

野島が呆れたように溜息を吐いた。

萩原の書いた学園新聞の朝刊分がチームにも送られてきたので、朝食ついでにそれを読むと塚野隊長の事をえらく褒めそやしていたのである。

 

「嘘は書いてませんって」

「でもよ、『全国大会優勝確定!』は幾らなんでも言い過ぎだろうがよ」

「まあまあノイジー」

「あ?」

 

塚野は野島に観客席をもう一度見るよう手ぶりで示した。

 

「注目が集まんのはいい事じゃん?」

「人目が嫌いなんだよ」

「あーそれで帰宅部だったんだぁ」

「うるせえな」

「隊長!そろそろ・・・」

 

大地が塚野を呼び、間もなく両チームが対面した。

 

「両校、礼!」

 

この試合の審判長を担当する女性の号令で頭を下げ合うと、塚野がタールツァイに手を挙げながら軽い口調で、

 

「よろっす!」

 

タールツァイもノリが良く、同じ仕草で返すと

 

「昨日の友は今日の敵。なんてね、冗談冗談」

 

塚野は苦笑しながらタールツァイと分かれるとチームメイトを追って持ち場に戻った。

 

「ほお?すっかり仲良くなっちまったな」

 

SU-100に向かう前に野島が言った。

 

「なんつーか、肩が軽い感じかなぁ」

「ぜってえ油断すんじゃねえぞ」

「もー、分かってるってぇノイジー」

「ふん」

 

どうだかと言う風に肩をすくめると、野島は慣れた動きでSU-100をよじ登る。

塚野も座乗のレオパルト軽戦車の車内に収まると、井上がヘッドフォンに右手を当てながら振り返り、

 

「隊長、村江さんからです」

「繋いでぇ」

「了解」

 

村江の要件は塚野も分かっていた。

なので村江が、

 

『隊長』

 

と言った時には塚野はすかさず言葉を挟んで、

 

「あー。引き留めても無駄だかんね?」

 

昨夜の作戦会議では相当揉めたが、塚野に方針を替える気持ちは無かった。

 

今回の試合会場は東欧某国の都市を再現したテーマパークで、長崎県佐世保市にあるハウステンボスと似ているが、規模はこちらの方が大きい。

このテーマパークは南北に最大幅300m程の広さを持つ大河が走っており、この大河を挟むように両チームが配置されていたが、くじ引きでフロンティア学園は城塞がある側に当たり、バラトン工業高校は街並みが広がる側に配置となった。

 

塚野は自軍が城塞に籠って戦うと同時に、大河の向こう側にフラッグ車を渡らせて敵をこちらまで誘き出す作戦を考えていた。

勿論護衛はつけるが、その役割を塚野座乗のレオパルトが担当する事になったのだ。

これに村江のラムⅡ巡航戦車が遊撃で援護し、残りの車輛が城塞に籠って待ち構えると言うわけである。

 

もっとも相手にもあっさりこちらの意図は透け透けだろうが、その前にフラッグ車を仕留めようと乗って来るだろうと塚野は予測していた。

 

ただ昨夜の作戦会議で塚野の方針を聞いた村江や大地は、隊長車が直接敵地に出張る事に反対の立場を取ったが、塚野も考えを変えるつもりは無く、議論は平行線を辿った。

野島も2人に賛同したが、

 

「フラッグ車を餌にすんのに高みの見物なんてできないっしょ」

 

塚野は3人にそう言って隊長として強権を発動し、議論を無理やり終了させたのである。

野島や大地は不満そうだったが、村江が他の打ち合わせ内容に話題を変えた事でこの議論はそれっきりとなった。

 

というわけで、塚野は村江が改めて自分に作戦方針の転換を要請しに無線を繋いで来たのかと思ったが・・・

 

『・・・いえ、隊長。ただ、念の為確認したかっただけよ。私も出来るだけカバーするけれど、くれぐれも気を付けて頂戴』

 

塚野は唾を飲み込み、真剣な面持ちで頷きながら返答する。

さっき野島からも油断するなと言われたばかりだ。

その矢先にあっさりやられたら目も当てられない。

何せ言い出しっぺは自分なのだ。

 

「・・・勿論、分かってるから」

「OK。それならいいわ」

 

村江との交信を終えてから、塚野は田張、鹿屋、井上の3人がこちらを見ている事に初めて気付いた。

塚野は3人の顔を順々に見ていきながら、

 

「たばっち、操縦は任せんね」

「万事オーケーですよ」

「かのやん、撃って撃って撃ちまくっちまって」

「わーい!弾切れにするよー!」

「まあほどほどによろ。井上さんは・・・」

 

すると井上は心外そうに塚野を睨んだ。

戦車道用敷地を提供してくれた女性の孫という事でつい遠慮してしまったが、それが気に入らなかったらしい。

 

「何よ。普通に綽名付けちゃっても別にいいんだけど」

「んじゃあ、イノシシは?」

「はあ・・・」

「あー、じゃあ」

「いいわそれで」

「え?」

「いのっちも面白くないし、それならイノシシでいいわ。他にいい名前思いついたら教えて」

「んじゃあ・・・イノシシは、味方との連絡を密に」

「了解」

 

その時、誰かがレオパルトをよじ登る音が反響し、上からノックされた。

 

ハッチを開いてみると、桑田だった。

 

「何?」

「差し入れだよ隊長。受け取ってくれると嬉しいね」

 

桑田はサランラップで包んだ例のお手製焼きそばパンを差し出した。「『腹が減っては戦が出来ぬ』って諺もある・・・だろ?確か」

 

「みんなにも配ってんの?」

「そりゃそうよ!1人1個ずつ。ついでに水をサービスしとくぜ」

 

確かに桑田の傍らには500mの水入りlペットボトルが人数分置かれている。

焼きそばパンを受け取ろうとすると、桑田が手を差し出してきた。

 

「え?」

「1個500円なんで2000円」

「は、金取んの?」

「今無いならツケでどうです?」

「じゃあいらねぇ」

 

塚野がハッチを閉じようとすると、桑田が慌ててその手を抑えて

 

「ああ!分かった、分かったから!今回は特別にタダにしときますぜ。でも学園艦じゃ、是非ご贔屓に」

「ああ、はいはい」

 

適当に頷きながら塚野は桑田の差し入れを受け取ると、仲間達に配った。

 

桑田が全車に差し入れを配り終えた直後、試合開始の合図がアナウンスされた。

 

 

 

続く

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