ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー 作:ミハイル・シュパーギン
チャプター1 罰ゲーム
その夜。
タールツァイ隊長は塚野達フロンティア学園戦車道チームを、バラトン工業高校学園艦に招待した。
第一試合と第二試合が2日連続の実施という強行スケジュールだった為、学園艦はここで1日停泊してから朝一で出港する事になっていた。
それまで時間に余裕があるので、二校の交流の時間が持たれたというわけである。
バラトン工業高校には人工温泉ながら多種多様な大浴場が設けられており、交流しつつ試合の疲れを癒すにはうってつけの舞台だった。
「ぶくぶくぶくぶく・・・」
「ちょっとデスク」
鼻より下がお湯の中に沈んだ状態で泡を吹く福地を萩原がつついて注意すると、福地は素直に浮上した。
「フロンティア学園の皆様、今日は有難うございました。そしてお疲れ様でございました」
アンヌ副隊長がバラトン工業高校戦車道チームを代表してフロンティア学園戦車道チームを労った。
「こっちも有難うございました」
と、塚野もバラトン工業高校のメンバー達に頭を下げたところで、
「…あれ、タールツァイ隊長とマヨルさんは?」
周囲を見回して首を傾げる塚野に、隣に座っていたニコラが、
「罰ゲームの真っ最中」
「罰ゲーム?」
するとアンヌが肩をすくめた。
「どっちがフラッグ車を仕留めるか賭けてたのでございますが、負けた方が嫌いなものを召し上がるという罰ゲームでございますわ」
「隊長がグリーンピースで、マヨル先輩が梅干しなの」
「あ!なんか分かるよ!」
土橋が挙手しながら同意する。
「ふーむ」
塚野は顎に手を当てて数秒考えていたが、「…なーんかさぁ、すっごく不毛じゃねぇ?」
「私達もそう言ったんですが」
「まあ聞く耳をお持ちでなかったでございますわよ」
「だよねぇ」
そう言うと、塚野は立ち上がって湯から上がった。
野島の声が後ろから、
「おい、どこ行く気だ」
「あ、もしかして…」
塚野の動きを察したニコラも後を追おうとしたが、熱さでのぼせてフラフラになっていた平衡感覚で引っ繰り返りそうになり、アンヌが咄嗟に支えた。
塚野が振り返りながら、
「あー、連れて来よっかなって」
「それじゃ猶更ご案内して差し上げないと」
ニコラをやんわり座らせてから、アンヌが後を追った。
2人は小部屋の1つにいた。
そしてタールツァイとマヨルは、丸テーブルを挟んで座りながら尚も皿の上の物体と睨めっこの真っ最中だった。
タールツァイの皿には茹でたグリーンピースが、マヨルの更には梅干しが5個並んでおり、タールツァイはフォークでグリーンピースを何度も突いている。
「ここでございますわ」
アンヌの声に気付いた2人が顔を上げると同時に、塚野がアンヌと一緒に小部屋に入って来た。
「ワオ」
「ああ、塚野隊長。すぐ行くから気にしないで」
そう言うタールツァイに対し、アンヌが溜息を吐くと
「もうかれこれ30分はここに缶詰めでございません事?」
「え、もうそんなに経ってるの?」
タールツァイが塚野と会話している隙にとばかりにマヨルが梅干しに手を伸ばしたが、触れる寸前で指が止まった。
「あ~、どうしても躊躇してしまうわ」
「マヨル先輩もいい加減にするでございますわ?」
「でも罰ゲームだから…」
「罰ゲームの相討ちなんて前代未聞でございますわ」
「いやだからアンヌ。すぐ済ませるから。ね?」
「31分経過でございます」
直後、塚野が進み出ると、先にタールツァイのグリーンピースの皿を取り上げてそれを平らげた。
「え!」
唖然とするタールツァイをよそにもぐもぐしながらコップの水で流し込むと、今度はマヨルの梅干しの皿を取り上げて一気に頬張った。
「ああ…」
マヨルも信じられないと言う目で塚野を見る。
「むぐ~しゅっぱぁ…」
塚野の顔全体がしかめっ面になったが、単純に酸っぱさに歪んでいるだけで梅干しへの嫌悪では無かった。
それから皿に種を出すとテーブルに戻すと、パンパンと手をはたいた。
「はい。じゃあ行こっかぁ」
「…やれやれ。ここでも負けちゃった」
と、タールツァイが首を横に振りながら言った。
「よくよく考えてみると、なんだか不毛だったわね」
少し前に塚野が言ったのと同じ感想を述べたマヨルに、塚野とアンヌは苦笑しながら顔を見合わせた。
続く